猫好きが転生したら世界最強のテイマーになりました!?

白鷺人和

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十話① 始めてのおつかい

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「う~寒っ!」

洞窟の冷気に当てられた私は思わず叫んだ。
私とマグちゃん、そして金ちゃんの一人と二匹はカリオス王国の西側にある『ドラファム洞窟』に訪れていた。

「そんな変な格好だからだえ、もっと着込んでおけばよろしかったのに」

「いいなぁ金ちゃんとマグちゃんは毛皮があって暖かそうでさー……ねぇ金ちゃん、抱っこしていい?私を暖めておくれよ」

「抱っ!?嫌に決まってるえ!そんなに暖めてほしいならマグに頼みなんし!」

「良いよー!僕で暖まってー!」

マグちゃんは元気にそう言うと、私の服を噛んで持ち上げ、自分の背に載せた。
マグちゃんの体温とモフモフの毛皮が暖かい……。こりゃ天国だね……。

「あ~マグちゃん暖かいんじゃぁ……」

「でしょでしょ?ずっと乗ってても良いよ!」

「ふ、ふん!情けないご主人だえ!」

口ではそう強がりながらも、金ちゃんの尻尾は垂れ下がっていて、明らかに残念そうにしていた。
めんどくさくてカワイイなぁ。
あとで撫でまわしとこ!

こんな他愛ない会話をしながらも、私達は洞窟の奥深くへと進んでいった。

そもそもなんで私達がこの『ドラファム洞窟』に来ているのかというと、
それは一時間ほど前に遡る……


   ◇◇◇◇◇


「う~ん、どれが良いんだろうなぁ」

私はバトルギルドの掲示板の前で頭を悩ませていた。
掲示板にところ狭しと貼られた依頼書を一つずつチェックしていく。

私は今日、依頼を受けにギルドを再度訪れていた。

セイラさんから逃げてまで依頼を受けたがらなかったのに、何で急に依頼を受けに来たのかと言うと、それは信頼を得るためだ。

私のバトルギルドでの目的は、様々な情報を得ること。
その目的通り、バトルギルドには様々な情報が飛び交っており、盗み聞きするだけでもこの国や国際状況のことなどを把握できてしまうほどだった。

上から二番目のランクであるゴールドプレートを貰えたから、それだけで信頼されると思って早速情報収集のために他の冒険者に話しかけたら……

『すみませーん、ちょっとお聞きしたいことが……』

『あん?……ってお前はこの前の!?』

『俺達何もしませんから勘弁してくださいぃぃぃ!』

って感じで逃げられちゃったんだよね。

何が起こってんの?と思って調べてみると、どうやらこの前断ったあの飲み会が原因らしい。

あのあと私抜きで行われた飲み会で冒険者達は、目の前で起こったガースと私の騒動やセイラさんから聞いた私の話をネタに盛り上がっていたらしい。

それをそばで聞いていた冒険者達が別の冒険者に噂話として流し、その噂話を聞いた冒険者が別の冒険者に……といった感じで噂が流れていくうちに、噂に尾ひれがつきまくっていったのだ。

ちなみに、私に関する噂話を纏めるとこんな感じである……
『突如としてバトルギルドに現れたかと思うとマスターのグランさんをボコボコにし、異例のゴールドプレートを強引に獲得した。かと思えば、突然目の前にいたガースの身ぐるみを全て剥がして、その後は誰の目に写ることもなく忽然とギルドを後にした女』

いや、盛られすぎだろ!
グランさんには私がボコボコにされてるし、ガースの件は過程がすっ飛ばされてるし、剥いだのはズボンだけだし!

しかも質が悪いのが、見た目の情報だけは正確に伝わってることなんだよね。
まぁこの世界では珍しい風体だからしょうがないのかも知れないけど……。

というわけで、私はかなりの危険人物として他の冒険者に認知されてしまったのだ。

この不名誉な噂を払拭するため、私は依頼を受けることにしたのだ。
ドンドン依頼を達成してギルドでの評価を上げれば、噂を上書きすることが出きるだろうという魂胆である。

しかし、この依頼の選定がなかなか難しいんだよね……。

難しすぎる依頼だと、マグちゃんや金ちゃんに危険がおよぶかもしれないから受けたくない。

かといって薬草採集みたいなTHE初心者向けみたいなやつだと、評価が上がらないどころか、『ゴールドプレート持ちのクセに初心者向けの依頼しかしない変わり者』みたいなレッテルを貼られかねないよね。

つまりは周りの評価が得られるくらいの難易度で、かつマグちゃんたちに危険が及ばない依頼を受けたいのだ。

だけど私はこの世界では生まれて一年足らずの新参者。依頼の正確な難易度何て分かるわけもなく……。

「あ、ココロ様!依頼を受ける気になったんですか!?」

そうして掲示板の前でウンウン悩んでいると、ちょうど通りかかったセイラさんが話しかけてくれた。

「あっ、そうですねちょっと受けてみようかなって……」

「それでしたらココロ様にはこの依頼がオススメですよ!」

そう言うとセイラさんは掲示板から一枚の依頼書をひっぺがして私に見せてきた。

そうだよ私バカじゃん!
最初からセイラさんを頼れば良かったんだ。
服を買うときとかと一緒で、悩んだ時は店員に丸投げするのが一番良いんだよ。

どれどれ、肝心の依頼の内容は……。

『火竜の討伐依頼
ウェルント山に住み着いた火竜二体の討伐。
この二体は番のため、基本的に二体同時での討伐となる。
ゴールドプレート三人以上のパーティー推奨』

「……ってこんなんできませんよ!」

「えー!ココロ様な余裕だと思いましたのに……」

危ない危ない……。
そうだった、この子私への評価が異常に高いんだった。

「もっと程好い難易度の依頼って無いですかね?ほら、私まだ冒険者としては新米な訳ですし」

「程好い難易度ですか……それでしたらこちらはどうです?」

セイラさんは渋々火竜の討伐依頼書をもとに戻すと、別の依頼を見せてきた。

『魔水晶の採掘依頼
ドラファム洞窟での魔水晶の採掘依頼
五キロ以上の納品が望ましい
シルバープレート二人以上パーティー推奨』

おっ、なんか良い感じっぽい。けど魔水晶って何なんだろう。

「あのすみません、魔水晶って何ですか?」

「魔水晶というのは武器や魔道具の素材となる貴重な鉱石ですね。とても便利な素材なのですが、魔水晶の取れるドラファム洞窟には虫型の魔物がウジャウジャいて、採掘が難しいんですよ」

なるほどね、ただの採掘依頼じゃなく魔物がいる環境での採掘だからこの難易度ってことなのか。

「ですがココロ様は猫型の魔物をテイムしておられるようですし、虫型魔物に脅かされる心配は無いですね、虫型魔物は猫型魔物を恐れる傾向にありますから」

へぇ、魔物にも相性みたいなものがあるのか。
それなら私にピッタリだね。

「じゃあその依頼を受けたいです」

「分かりました、依頼受理いたしますね」

そう言うと、セイラさんは腰のポケットから判子を取り出し、依頼書にポンと押した。

「あっそう言えばこの洞窟一つ注意点が……いや、ココロ様なら問題ありませんね!やっぱり大丈夫です!」

「え、何ですかそれ、不安になるじゃないですか!」

「大丈夫です大丈夫です!ほら早速行きましょうよ!」

セイラさんは私をグイグイギルドの外へと押し込んだ。

「それじゃあ依頼達成頑張ってください!」

こうして私達はドラファム洞窟へと向かったのだった。







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