猫好きが転生したら世界最強のテイマーになりました!?

白鷺人和

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十一話③

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涙を出しきり、キャスパリーグの毛がグショグショになったところで私は泣き止んだ。

「泣き止んだかココロ殿、スッキリしたかい?……ココロ殿?」

「すうぅぅぅぅ……はあぁぁぁぁん……」

「……ココロ殿、どさくさに紛れて吸ってないか?」

「いや吸ってないよ、すうぅぅぅぅ……はぁぁ……アアァ香ばしいぃ……」

「……まぁ元気になったなら何よりだよ」

そう言うとキャスパリーグはスルリと私の手から離れた。
あぁ、もう少し吸いたかったのに。

キャスパリーグはコホンと咳払いをした後、森の皆に向き直った。

「今日は宴をしよう、ココロ殿の帰還祝いだ」

ニャー!と可愛いハーモニーを響かせ、皆は散り散りになって食材集めに向かった。

果物や魚などの食材が続々と集められていく。マグちゃんはその間キャスパリーグに遊んでもらっていた。カワイイ。

私は一緒に動物を狩ったり、果物を捕ろうとして木から降りられなくなった子を助けたりして手伝った。

そのかいもあり、十分もしないうちに私が初めて森に来たときのように豪勢な食事が用意された。といっても猫ちゃん達のご飯だから素材そのままなんだけどね。

味付けはされてないけど、猫ちゃん達に囲まれて食べるだけで三ツ星グルメに早変わり。
猫ちゃんは最高の調味料でもあるのか。

猫ちゃん達は私との再会を喜んでいるようで、宴の間中、私は猫ちゃんに囲まれていた。

ある子は私の膝の上にちょこんと座り、ある子は私に体をクシクシ擦り付け、ある子は撫でろと言わんばかりに私の横で腹を出して寝転がっている。

まさに至福のハーレム状態!!
グフッフフフ……苦しゅうない、苦しゅうないぞぉ……!!!!

私は久々の猫ちゃん天国を堪能しまくり、宴を満喫した。

宴が終わり、星空が森を覆う頃、猫ちゃん達はスピー……スピー……とカワイイ寝息をたてて寝静まった。

私は膝に乗っていた猫ちゃんをそっと降ろし、広場を抜けた。
向かった先は、マタゾウの眠るお墓の前だった。

コンモリと盛り上がった地面に、人の頭程の自然石が置かれただけの簡素な墓。この石は墓石代わりに置かせてもらったものだ。

私はゆっくりと腰を地面におろした。

ここに来た目的は、決意を固め直すためだった。覚悟はできているつもりだった。

しかし結果として私は自分の強さに慢心し、レオルダスに恐怖を覚え、マグちゃんと金ちゃんを危険にさらしてしまった。

私がまだ、のほほんと生きてきた前世の雨宮心なのだと実感させられた。

私は強くならなければいけない。グランさんやレオルダスよりも。

「こんなとこに居たんかえ」

後ろから声がして振り返ると、そこには呆れ顔の金ちゃんがいた。

「感傷にでも浸ってるんかえ」

「うん、ちょっとね」

金ちゃんは私のとなりに腰を下ろした。チョコンと座って、マタゾウのお墓を見ている。

「……ご主人は、また人里に行くんかえ」

金ちゃんがマタゾウのお墓から眼を逸らさずに言った。その声は少し震えていて、心配しているのが痛いほどに伝わった。

優しいなこの子は。自分も死にそうな目にあったのに、私の心配をしてくれている。

尚更こんなカワイイ子、危険に晒したくないな。

「そうだね……森から出ない方が、確かに楽しい生活を送れるかもしれない」

視界の端で金ちゃんがこちらを振り向いた。

「……けど、このままじゃマタゾウの時みたいに、危ないやつが襲ってくるかもしれない。それから皆を守れる保証が、今の私には無いんだ」

だからこそ、私は誰よりも強くならないといけない。
だけど……今回ので痛感させられた。
私はまだ、皆を守れるほど強くない。
だから、今後の旅に金ちゃんやマグちゃんを連れていくのは……。

「だから、次の旅は私一人で……うぷっ!?」

私の言葉を遮るように、金ちゃんが私の顔を、その愛らしい手で挟み込んだ。柔らかい肉球が、私の両頬に押し込まれている。

「ご主人、ワタシらも子供じゃないえ、外には危険なこともある、それでもご主人についていきたいんだよ」

金ちゃんは顔をズイと近づけてきた。そして険しかった表情を綻ばせた。

「ダメって言われても、ワタシらは付いていくよ」

私の目から、また涙がジワリと滲み出る。キャスパリーグにも、金ちゃんにも私は励まされてばかりだ。

私は金ちゃんを抱き締めた。金ちゃんも、呼応するように体重を私に預けてくれた。

「ごめんね、もう一人で行くなんて言わないよ」

「ふふ、こう言うときはありがとうでいいんだえ」

私達はしばらくの間抱き合っていた。
その時、私はあることを思い出した。

「金ちゃん、今言うことじゃないかも知れないけど、一つお願いしてもいい?」

「何でもいいえ」

「ご褒美ちょうだい」

刹那、金ちゃんは私の手からチュルンと抜け出し、距離をとって警戒体制をとった。

「なんで逃げるの!?ご褒美で撫でまわしていいって言ったのは金ちゃんじゃぁん!!」

「こんな時に何を言うかと思ったら、少しはマジメにできんのかえ!?」

私はカバディのようにジリジリと距離を詰めていく。

「撫でさせろ~!!」

「ウニャアァァ!!さっきあれ程撫でただろうえ!!」

「あれはノーカンじゃん!ノーカン!ノーカン!!」

金ちゃんと私の追い駆けっこは、夜明けまで続いた。




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