猫好きが転生したら世界最強のテイマーになりました!?

白鷺人和

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十三話 ④

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雄叫びと共に私と冒険者達は魔物の群れに突っ込んだ。

疲労した体に鞭を打ち、冒険者達は魔物を次々に斬り倒していく。
私に怯え、動きの鈍くなった魔物は、士気の高い今の冒険者たちにとり楽な相手だった。

少数ながら魔物の海を駆け抜け、着実にボスのもとへと近づいていく。

「楽しそうじゃな、私も入れてくれぇい!」

グライスさんも前線の輪に加わり、フェリアスさんが後方に陣取り援護射撃を始めた。

私以外の目的意識が一致した瞬間だった。もう一点突破しか道はない、と。

私達は一直線にボスのもとへと走った。
走りながら、私はボスの方に注意を集中させる。正直ボス以外の魔物は私の敵じゃない。コイツらだけだったら、私がすぐに全滅させて終わらせられる。

けど、ボスがレオルダスレベルだったら……。
私が冒険者達から離れないのもそれが理由だった。

魔物を倒すだけなら、冒険者から離れて一人で動いた方がやりやすい。本気で動いたら巻き込んじゃうしね。

だけど、ボスがヤバイやつだった時に後ろの冒険者を盾にできれば、私の生存率はグンと上がる。だからこそ、私は彼らから離れることができなかった。

士気の上がった冒険者達はグイグイと魔物達を押し込んでいく。ボスのいるであろう歪んだ地はすぐそこまで迫っていた。

そろそろボスだ。後ろの冒険者を焚き付けておこう。

「もうすぐだよ!気張って!!」

「「ウオォォォ!!」」

雄叫びを挙げ突っ込む私達を恐れ、魔物の動きがさらに鈍る。
瞬く間に私達はボスを眼前に捉えた。

よし!あと少し……!

グチャア!!!

後方からトマトを潰したような音が鳴り、私達の勢いが止まった。

後方の人の気配が消えた。そして、ボスがいたはずの蜃気楼は消え失せている。

私はゆっくりと振り向いた。

冒険者の四散した死体。未だ全貌の見えない巨体。絶望の景色がそこにはあった。

残ったのは、私とフェリアスさん、グライスさん、そして冒険者が二人だけ。

「フン、人間風情が調子に乗りおって……」

蜃気楼のなかから、低く重い声が響く。
歪んだ景色が徐々に戻っていき、ボスの全貌が少しづつ明らかになっていく。

死を感じさせる凶悪な牙。全てを切り裂きそうな爪、神々しさを感じさせる豊かな白い体毛。

歪んだ景色から姿を現したのは、山のように巨大な……。

「猫ちゃんじゃん!!!」

猫だった。
大きさはマグちゃんよりも二回りも大きな巨体。私がスッポリと埋まってしまいそうな豊かな体毛は、私をウズウズさせて堪らなかった。

「スター……リヴォア」

体毛に飛び込みたい衝動を必死に押さえていた私の横で、グライスさんが呟いた。

「スターリヴォアって、何ですか?」

「スターリヴォア……星を喰らうと言われる化け物じゃ。一国を滅ぼせる力を持ち、真白な猫の形をしていると伝わるが……なぜスターリヴォアがこんなところに……」

ついにグライスさんからも希望が消えた。顔面蒼白で立ち竦んでいる。
フェリアスさんの手から杖が落ち、地面とぶつかり乾いた音を立てた。
残った二人の冒険者も、力無く武器を手放した。

もう終わったと言わんばかりに、絶望の空気が流れ始める。私以外の全員が下を向いていた。

あぁ、もうダメだ

「ごめん……グライスさん」

「謝ることは、ないワシらは一生懸命やったさ」

「もうモフるの我慢できない!行ってきみゃす!!!」

「え、ちょっ!」

グライスさんの制止を振り切り、私は一目散にスターリヴォアへと向かう。

「ほう、向かってくるのか人間よ。勇敢か無謀か……まぁ後者だろうがな」

ニヤリと笑うスターリヴォアの胸に、私は飛び込んだ。攻撃するでもなく胸に抱きついた私に、スターリヴォアは困惑しているようだった。

「何だキサマ!自爆か?そんなことをしても我を傷付けることは……」

「モッフモフモフモフモフモフ!何これモッフモフ!チョー気持ちいい!!」

その瞬間、私以外の全員が固まった。
誰も何が起こっているのか分からないようだった。

私は構わずスターリヴォアのモフモフを堪能した。

「ハァハァ、いい匂いだよぉ!イイコだねぇ、私のところに来ない!?」

「ええい気持ち悪い!離れんか!!」

スターリヴォアはノミでも払うように体を震わせた。その衝撃で私は吹き飛ばされ、魔物の群れに突っ込んだ。

イタタ……。早く戻らないと、もっと堪能したい……ん?

腕に違和感を感じて見てみると、魔物の一匹が私の腕に噛みついていた。しかし、攻撃力が無さすぎて全く歯が立っていない。

何やってんだコイツは。

私を噛んでいいのは猫ちゃんだけなんだよぉ!
私はその魔物をおもいっきりぶん殴った。魔物が爆発四散する。

私はヨロヨロと立ち上がり、スターリヴォアを見つめた。

「ねぇねぇ、君うちの子にならない?」

「うちの子、だと?なんだキサマテイマーとやらか、フン!人間ごときが我をテイムするだと?やれるものならやってみるがいい!」

「え、テイムしていいの!?」

「あぁやれるものならなぁ!」

私は嫌がる子にはテイムはしないと決めていたが、許可されてるし良いよね?

「テイム!!」

「フン、人間ごときが我を使役できるわけが……」

『個体名を決めてください』

「あ、できた」

「ニャにやってんだキサミャぁぁぁぁ!」

キャラが崩壊したスターリヴォアの突っ込みが響いた。
私はそんなことよりも名前決めに夢中だった。

「名前かぁ……スターリヴォア、スター、星……そうだ、星からとってセイちゃんてどうかな!?うん、カワイイ!決定で!」

私がセイとディスプレイに打ち込むと、正式にテイムが成功した。

「スターリヴォアを、テイムしたじゃと……?」

「そんなこと可能なの?」

フェリアスさんグライスさんから信じられないといった声が届くなか、スターリヴォアはものすごく狼狽えていた。

「我が、人間に使役されるだと?ありえん……者共!この人間どもを蹴散らしてしまえ!!」

シーン……。

スターリヴォアが群れに指示をするも、魔物達はピクリとも動かなかった。

「何をしているお前たち!?早くこの人間どもを……何?人間に従うようなやつにはついていけないだと?いや、我は従っているわけでは……おいどこへいくお前たち!?」

魔物達は続々と去っていった。残されたのはボロボロの冒険者と、失意に沈むスターリヴォアと、鼻息の荒い私だけ。

「あー、取りあえず解決ってことでいいのかの?」

王国の危機をもたらしたデスマーチは、こうして何とも歯切れの悪い結末となった。



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