『恐怖王』ジョブを授かったので、復讐を開始します

白鷺人和

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一話 劣等生

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丸められた紙が後頭部にポスッと当たった。
振り返ると、バラガンとその取り巻きがヘラヘラ笑ってこちらを指差していた。

またあいつらか……。とため息をつきたい気持ちを抑え、僕は笑顔を作って返した。

別に彼らのイジメを許しているわけではない。ここで不満気な顔をしてると、放課後に殴られる量が二倍になるのだ。

「アイツらまた……!」

「待ってマキナ!大丈夫だから……」

今にもバラガンに飛び掛かりそうにしているマキナを小声で制した。マキナは暫くバラガンを睨み付けていたが、やがて視線を外した。

不機嫌そうに綺麗な金色の短髪をしきりにかきあげている。

「アレス・アマルザ、この問題を答えてみろ」

ホッとしていると、カリオス先生が僕を指名した。

「ハッ、ハイ!」

僕は慌てて立ち上がり、黒板を見つめた。カリオス先生が指差しているところには『第三位階魔法ファイヤーランスの呪文暗唱』と書いてある。

確かファイヤーランスは……。

「業火の槍よ、我が敵を、穿て……です」

「……よろしい」

後方から舌打ちする音が聞こえる。多分バラガンだろうな。
いくら邪魔しても問題を間違えない僕が気に入らないのだろう。

安心して席に座ろうとしたその時、

「それではアレス・アマルザ、実践してみよ」

とカリオス先生は告げた。
なるほどここで評価を落とすつもりか……!
後ろからクスクス笑いが漏れ聞こえている。

気にするな、集中しろ……!

僕は右手を前方に押し出し、息を整えた。

「業火の槍よ、我が敵を……穿て!」

すると僕の右手に炎が集まり始めた。紅い炎が渦を巻いて収束していく。
よし、イケるぞ!

ッッパァン!!

「うわっ!」

収束していた炎は突然四散し、僕はその風圧に押されて背を後ろの席に強く打ち付けた。

「アレス大丈夫!?」

「あ、あぁ……大丈夫だよ」

カリオス先生は無様な僕の姿を見てフッと鼻で笑った。

「詠唱はあくまで魔法を作動させるためのツールだ、肝心の魔法が放てないのではいくら暗唱できても意味がないぞアレス・アマルザ」

「はい……すみません……」

僕はおずおずと席に座った。自分でも赤くなっているのが分かるくらい顔が熱い。

「それでは別の物に実践を……」

「ファイヤーランス!」

バラガンの雄叫びとともに、大きな炎の槍が教壇めがけて飛んだ。

「アクアランス」

迎え撃つように水の槍がぶつかり、相殺した。

「無詠唱は素晴らしいが放つ方向を考えたまえバラガン・ババルドア」

「すみませーん先生なら大丈夫だと思ってぇ」

本当に凄い……。先生はともかくとして、第三位階魔法であるファイヤーランスを無詠唱だなんて、バラガンの魔力センスは学生の域を越えてるなぁ。

それに比べて僕は……。

キーンコーンカーンコーン。

「今日はここまでだ、各々課題に励むように」

そう言って、カリオス先生は教室を去っていった。
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