雷霆のサン・ベネット ~強すぎるクーデレ妻は魔王討伐の英雄でした~

成瀬リヅ

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逸れ龍と天地の神子

93.討伐隊

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◇ここまでのあらすじ◇

 ナツキの刀作りの師匠・フレアの最後の刀を探しにスザク大陸へとやってきたサンとナツキ。
 そんなスザク大陸の首都・シージェン市の奥には、世界的に有名な龍神王・穿天様が鎮座していた。

 だがそこで知ったのは、フレアの刀はスグに手に入れられないという事実。
 その代わりに穿天様が提案してきたのは、最新の逸れ龍の討伐への誘いだった。

 世界的にも貴重な“龍の素材"を手に入れられる機会を得た二人は、目標をフレアの刀から龍の素材へと変更。
 サンにとっては雷光龍以来数年ぶりの逸れ龍の討伐が、いよいよ始まっていくのだった………。

────


 いよいよ逸れ龍の討伐遠征の日がやってきた。
 龍神王の娘・ロンジェンさんの治療のおかげもあってか、俺は心も体も最高の状態に回復している。


「さぁ、素材を獲りにいきましょうナツキさん」
「あまり無茶はするなよサン。君は武器を持っていないんだぞ?」


 だがそうやって心配してくれるナツキさんの言葉が聞こえないほどに、今の俺はワクワクしている。
 なにせ雷光龍討伐以来の逸れ龍討伐だ。

 あの”いつ死んでもおかしくないヒリヒリ感”は、まさに冒険者時代に感じた一番の刺激だったと言っていい。
 意外と俺はドMなのかもしれないな。
 いや、ただ強大な敵に向かっていく壮大な主人公感が好きなだけのような気もする。

 まぁいい。そんな事はどうだっていいんだ。

 この高鳴る鼓動を胸に、俺は討伐隊の集合地へと向かう。
 今朝リィベイの部下が隠密に教えに来てくれた、あの”屋外のシージェン”の集合地へと向かうのだ。

 ポケットには、城塞都市テザールを出発する朝に作ったキャラメルも入れている。
 ナツキさんがお腹が空いて暗い顔にならないように、準備もバッチリだ。


 さぁ、逸れ龍の討伐遠征の日がやってきた。



【ザワザワ………】


 逸れ龍討伐隊の集合地となった、とある山並みの一部。
 ここには俺たち夫婦を含めて、既に50人ほどの人間が集まっていた。
 おそらく風貌や魔力量から見るに、各国の優秀な冒険者なのだろう。

 そんな俺たちが立っている山頂だが、地面はベタァッと平たく広がっていた。
 それこそ数百人がラクに並べるほどに、広く平らな山頂だ。

 そしてこの山の周りにも、同じ高さ程の山が幾千も並んでいる。
 まさに山の密集地でも言っておこうか?


 ちなみにここからギリギリ視認できる距離には、先ほどまで過ごしていたシージェンの中心街も見えている。
 あの都会のような景色からは想像もできない程に、今や誰も住んでいない山地へと様変わりしているのだ。

 だがこれに関しては、前回の雷光龍討伐の時と同じだった。
 もちろん俺も、初めて来た時は戸惑ったよ?
 ”あの中心街から討伐に出発するのではないのか?"と思っていたからね。

 だがあのクエストを終えた今となっては、ここが集合地になる事に何の疑問も抱かない。
 なぜなら"龍は飛ぶ"、当たり前の話だ。
 飛ぶ敵に対抗するには、アレに乗らないと始まらないからな!

 ………なんて事を考えていた時だった。


「全員集まっているな?説明は必要あるまい。出発するぞ」


 最後に山頂へ登って来た男が、俺たちを見るなり出発の宣言をしていたのだ。
 あぁ、俺はこの声の主を知っている。
 なにせ俺は、ソイツに数日前殺されそうになったのだから………!


「引率はリィベイか」


 そう、背後に数人の部下を引き連れて現れたのは、穿天様の正殿で出会った龍族・リィベイだった。
 相変わらず黒い和服に身を包み、太陽に映える赤い髪をしているチビだ。今日も俺よりチビだ。

 そしておそらく背後に連れている黒マントの集団が、彼の率いるしょく部隊の隊員なのだろう。
 俺の魔力感知眼で見る限り、一人一人がAランク冒険者か、それ以上の実力を持っているのは間違いなさそうだ。
 それに加えて高度な連携も出来るだろうから、まさに国家戦力の名に相応しい精鋭部隊である。

 ちなみに、リィベイと同じく正殿にいた大きな白虎びゃっこも、リィベイの横でテクテクと歩いている。
 風格はあるが、モフモフの毛並みのせいか少し可愛い。
 スキがあれば抱きついてみたい所だ。

 あとは龍神王・穿天様の姿が見えないが、逸れ龍の討伐に龍神王が来たという話は聞いた事がない。
 おそらく今回も不参加のようだな。

 すると早速山頂に到着したリィベイは、既に集まっていた俺たち討伐隊を見て言い放つ。


「今回は随分と人手が多いな。まぁ相手が相手だ、多いぐらいが丁度良い」


 そういえばここに集まった人間達、どいつもこいつも雑魚ではない。
 それこそコイツらも、冒険者で言うとBランクか、それ以上の実力者が集まっている。

 それに加えて俺とナツキさん、そしてリィベイの部隊もいるのだ。
 お世辞抜きでも、かなりの戦闘力を誇る討伐隊になっているのは間違いなさそうだ。
 それこそ一国を滅ぼす事なんて、数時間あれば出来てしまうだろう。

 だがこれは、別の考え方も出来る。
 それは今日討伐しに行く”逸れ龍”が、それだけ強いという事だ。

 以前雷光龍の討伐に来た時には、俺を含めた各国の冒険者は15人ほどだった。
 それでも当時は”多いなぁ”と思っていた俺だが、今はその時の3倍以上だ。


「なんか緊張して来た………」


 思わず身震いする俺。
 だがそんな事などお構いなしに、着々と出発の準備は進んでいく。

 そう、いよいよ”アレ”とご対面なのだから!


【ゴゥンゴォンゴォォン………!!!】


 突如、低い音と共に地面が震え始める。
 その震えはドンドンと大きくなり、そして気付けば死角から”何か”が上がってきていた。

 それは一瞬にして前方の景色を全て遮り、まるで夜が来たのかと錯覚させるような巨艦。
 山頂は強風の海に襲われ、シッカリと踏ん張らなければ立っていられないほどだった。

 山のふもとから大きな稼働音を立てて上がって来た、その正体こそ………。


戦艦せんかん龍宮ノ遣りゅうぐうのつかいッッ!!」


 まさに圧巻だった。
 なにせ戦艦が、宙に、浮いているのだ。

 まるで一つの街のように大きな船の全長は、約250m。
 船の両サイドには鉄で作られた羽が長く伸びており、まるで生き物のような形をしている。

 だが実際、この戦艦を飛ばしているのは鉄羽だけではない。
 主な浮遊力を生みだしているのは、船底や鉄羽に付いている”薄ピンク色のほのお”だった。

 あれは魔法などではない。もっと高貴で、もっと強力。
 龍族にしか使えない、”龍神術”と呼ばれる類のモノなのだ。


「さぁ、死ぬ覚悟が出来ているヤツだけ乗り込め。今お前達が踏んでいる大地こそ、生涯最後の大地の感触になるかもしれんぞ」

 
 あまりに巨大な戦艦に圧倒される俺たちをよそに、リィベイは淡々と言い放っていた。
 だがその言葉を聞いて、俺はようやく冷静さを取り戻せたように思う。


「………さぁ行きましょうナツキさん。この戦艦なら、きっと高いところに行っても安全ですよ」
「お、おい!私は高いところが苦手などと言った覚えはないぞ!?」
「それは失礼しました。……………グリーンバード輸送の時のビビってるナツキさん、可愛かったなぁ」


 そう言い残した俺は、地面を強く蹴って龍宮ノ遣りゅうぐうのつかいへと飛び乗っていた。
 この戦艦は、地面に着陸なんて優しい事はしてくれない。
 だってこの距離を飛び乗れないヤツなんて、そもそもこの戦艦に乗る資格も能力もないのだ。


「待てサンッ!!逃げるなっ!!」


 結局俺の後ろから龍宮ノ遣りゅうぐうのつかいに飛び乗って来たナツキさんと共に、俺たちはいよいよ逸れ龍の討伐へと向かっていくのだった………。

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