3 / 6
第3章:1994年7月〜9月(高1・夏)「0840(おはよう)の支配」
しおりを挟む
夏休み。学校という重石が取れ、彼女の「営業」は24時間体制となった。冷房の効いたホテルのロビーと、炎天下の公衆電話。その反復が彼女の15歳の夏だった。
7月20日: 終業式。明日から夏休み。解放感というより、稼ぎ時が来たという焦燥感。
7月22日: Q2のメッセージを更新。「夏休み限定、特別な出会い待ってます」。
7月24日: ベルが鳴り止まない。114106(アイシテル)が3件。全部別々の男から。
7月25日: 10時、池袋。14時、新宿。18時、渋谷。移動だけで汗だく。
7月27日: 30代のサラリーマン。ホテルを出る時「宿題がんばれよ」と5千円上乗せされた。吐き気がした。
7月29日: 友達からの遊びの誘い。「お金ないから無理」と嘘をつく。財布には15万入っているのに。
8月1日: 8月。本格的な夏。公衆電話の中はサウナ。
8月3日: 10円玉が切れて、初めてお札でテレカを買った。5枚セット。
8月5日: 男の車で江ノ島まで。ドライブ代として+2万。海なんて見たくない、早く帰って寝たい。
8月7日: 日焼けが怖い。商品価値が下がる気がする。
8月9日: 太客の「佐藤さん」。この人は安全。でも、話が長いのが欠点。
8月11日: 盆休みで街に人が溢れてる。おじさんたちの目が、みんな獣に見える。
8月13日: 実家で親戚の集まり。従姉妹が「ポケベルの暗号」の話をしてる。私は裏の暗号を知っている。
8月15日: 終戦記念日。テレビの中の戦争と、私のこの不毛な戦い。
8月17日: 疲れが取れない。栄養ドリンクを飲んで、また渋谷へ。
8月19日: 初めて「怖い思い」をした。車から降ろしてもらえそうになかった。防犯ブザーを買う。
8月21日: 貯金額が50万を突破。通帳の数字だけが私の体温。
8月23日: 自分の名前を忘れそうになる。「あっこ」という偽名が自分に馴染んできた。
8月25日: 24時間テレビを見ながら、ホテルのベッドで男を待つ。愛は地球を救う? 笑わせないで。
8月26日: 今日は5回転。足がガクガクする。でも、1日で10万稼いだ。
8月27日: 鏡の中の顔。目の下にクマ。15歳に見えない。
8月28日: 宿題は一文字も書いていない。どうせ、学校なんてただの「カモフラージュ」。
8月29日: ベルに「0906(遅れる)」の連絡。イライラして公衆電話を蹴った。
8月30日: 夏休み最後の日。贅沢に一人で回らない寿司を食べた。味がしない。
8月31日: 手帳の集計。8月の総売上、88万。私は、普通の女子高生が一生かかって買うものを、一ヶ月で手に入れた。
9月1日: 始業式。真っ黒に焼けた同級生たちの隣で、私は青白い顔をして座っている。
9月3日: 放課後の営業再開。制服が、私を「商品」に変える戦闘服。
9月5日: テレカの残数が「1」。これが私の命の残数みたい。
9月7日: 最近、夢を見る。札束に埋もれて息ができなくなる夢。
9月10日: 秋の気配。でも、ベルの音は相変わらず夏のまま、うるさく鳴り響いている。
7月20日: 終業式。明日から夏休み。解放感というより、稼ぎ時が来たという焦燥感。
7月22日: Q2のメッセージを更新。「夏休み限定、特別な出会い待ってます」。
7月24日: ベルが鳴り止まない。114106(アイシテル)が3件。全部別々の男から。
7月25日: 10時、池袋。14時、新宿。18時、渋谷。移動だけで汗だく。
7月27日: 30代のサラリーマン。ホテルを出る時「宿題がんばれよ」と5千円上乗せされた。吐き気がした。
7月29日: 友達からの遊びの誘い。「お金ないから無理」と嘘をつく。財布には15万入っているのに。
8月1日: 8月。本格的な夏。公衆電話の中はサウナ。
8月3日: 10円玉が切れて、初めてお札でテレカを買った。5枚セット。
8月5日: 男の車で江ノ島まで。ドライブ代として+2万。海なんて見たくない、早く帰って寝たい。
8月7日: 日焼けが怖い。商品価値が下がる気がする。
8月9日: 太客の「佐藤さん」。この人は安全。でも、話が長いのが欠点。
8月11日: 盆休みで街に人が溢れてる。おじさんたちの目が、みんな獣に見える。
8月13日: 実家で親戚の集まり。従姉妹が「ポケベルの暗号」の話をしてる。私は裏の暗号を知っている。
8月15日: 終戦記念日。テレビの中の戦争と、私のこの不毛な戦い。
8月17日: 疲れが取れない。栄養ドリンクを飲んで、また渋谷へ。
8月19日: 初めて「怖い思い」をした。車から降ろしてもらえそうになかった。防犯ブザーを買う。
8月21日: 貯金額が50万を突破。通帳の数字だけが私の体温。
8月23日: 自分の名前を忘れそうになる。「あっこ」という偽名が自分に馴染んできた。
8月25日: 24時間テレビを見ながら、ホテルのベッドで男を待つ。愛は地球を救う? 笑わせないで。
8月26日: 今日は5回転。足がガクガクする。でも、1日で10万稼いだ。
8月27日: 鏡の中の顔。目の下にクマ。15歳に見えない。
8月28日: 宿題は一文字も書いていない。どうせ、学校なんてただの「カモフラージュ」。
8月29日: ベルに「0906(遅れる)」の連絡。イライラして公衆電話を蹴った。
8月30日: 夏休み最後の日。贅沢に一人で回らない寿司を食べた。味がしない。
8月31日: 手帳の集計。8月の総売上、88万。私は、普通の女子高生が一生かかって買うものを、一ヶ月で手に入れた。
9月1日: 始業式。真っ黒に焼けた同級生たちの隣で、私は青白い顔をして座っている。
9月3日: 放課後の営業再開。制服が、私を「商品」に変える戦闘服。
9月5日: テレカの残数が「1」。これが私の命の残数みたい。
9月7日: 最近、夢を見る。札束に埋もれて息ができなくなる夢。
9月10日: 秋の気配。でも、ベルの音は相変わらず夏のまま、うるさく鳴り響いている。
0
あなたにおすすめの小説
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる