『熟女市場~三つの頭脳と一つの野望~』

MisakiNonagase

文字の大きさ
2 / 4

第二章:最初の調達

しおりを挟む
最初のターゲットとして選ばれたのは「雅代」という四十二歳の女性だった。インスタグラムのフォロワーは約千人。毎日のようにファッション投稿をし、コメントには「素敵!」「おしゃれ!」と称賛が並ぶが、深い人間関係を示すようなやり取りはほとんどなかった。プロフィールには「ショップ店員」とある。

「アプローチ役は勝也がいい」大地が提案した。「穏やかで信頼できそうな雰囲気がある」

勝也は雅代のインスタグラムに丁寧なコメントをいくつか残す。それなりのフォロワーを抱えている人は、コメント欄を閉じていることも多いが、彼女はまだその域まで遠い。コメントにもすぐに応じてくれる。この辺りの層は狙いやすい。ダイレクトメッセージで少しずつ会話を始めた。最初はファッションの話題から。勝也はわざとらしくなく、誠実なアドバイスをするふりをした。

一週間後、勝也は「たまにはインスタとは別の場所で、お茶でもいかがですか?素敵なカフェを知っています」と誘った。雅代は少し躊躇したが、結局了承した。

初めて会ったカフェで、勝也は聞き手に徹した。雅代は離婚して五年、子供は夫に引き取られ、今は一人暮らし。親権が父親になるというのは、おそらく彼女のほうに問題があったのだろうと勝也は推察したが敢えて触れない。彼女のプロフィールはショップ店員という触れ込みだったが、実際は土日にスーパーへ出入りする外部のデモ販(食品や食材を調理して実演する販売員)で、平日は週に三日ほどコールセンターで働く低層寄りのダブルワーカー。収入は不安定、将来への不安が大きいと打ち明けた。

「私と友人が、女性の新しい働き方を提案するプロジェクトを始めようとしているんです」勝也は慎重に言葉を選んだ。「外国人の方に日本の文化や大人の女性の魅力を伝える、いわば文化交流のようなお仕事です。とても丁重に扱われ、謝礼もかなり良いものになります」

雅代は興味を示したが、同時に疑いの目も見せた。「具体的にどんなことをするんですか?」

「まずは食事を共にし、会話を楽しむことから始まります。お客様は日本の成熟した女性の知性や優雅さに価値を感じている方々です。全てプライベートな場所で行われ、安全は徹底的に確保されます」

勝也はあくまで「高級コンパニオン」的な位置づけで説明し、性的サービスを強要しないことを強調した。実際、彼らのビジネスモデルでは、最初の段階では確かにそのような形を取る予定だった。女性たちの心理的ハードルを下げるためだ。

大地と空知はカフェの少し離れた席から状況を観察し、勝けにリアルタイムでアドバイスを送っていた。空知の開発したイヤホンを通して、わずかなささやき声が勝也に届く。

「今、彼女は経済的不安を感じている。将来の保障についてそっと触れてみて」大地の声がした。

勝也はそれに従い、雅代に「このお仕事は短期間でもかなりの貯蓄が可能です。将来のための資金作りとして考えてみませんか?」と持ちかけた。

雅代は長い沈黙の後、うなずいた。「一度、詳しく聞かせてもらえますか?」

最初の調達が、こうして始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】探さないでください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。 貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。 あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。 冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。 複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。 無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。 風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。 だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。 今、私は幸せを感じている。 貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。 だから、、、 もう、、、 私を、、、 探さないでください。

処理中です...