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CASE 01:硝子の檻の若き罠 島田佳織(47)仮名
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島田佳織(47)がその「毒」に触れたのは、深夜のオンラインゲームという、顔の見えない砂漠のような場所だった。夫・泰久(51)との生活は、穏やかだが起伏がなく、佳織は自分がただの「機能」として家の中に存在しているような虚しさを抱えていた。そこに、海斗(20)という眩しい若さが飛び込んできた。
最初は、画面越しに交わされる甘い言葉だけで十分だった。しかし、初めて現実で会った海斗の、自分の息子・一馬(28)よりも若い肌に触れた瞬間、佳織の理性は霧散した。自分はまだ、誰かを狂わせる「女」なのだ。その傲慢な確信が、彼女を奈落へと誘った。
半年が過ぎ、一馬の結婚という現実が迫る中、佳織は「純愛」を終わらせようと切り出した。だが、海斗が微笑みながら突きつけたのは、ホテルのベッドで撮影された、自分でも直視できないほど淫らな姿の動画だった。
「これ、旦那さんや一馬さんに送ったらどうなるかな。おばさんの人生、一瞬でゴミ箱行きだね」
海斗の豹変は、佳織の精神を根底から破壊した。そこから始まったのは、言葉にするのも汚らわしい搾取の日々だった。海斗は佳織を金づるとしてだけでなく、友人たちの前で「生処理係」として差し出した。深夜、泰久が隣で静かな寝息を立てている時、枕元でスマホが青白く光る。その短い通知音が、佳織にとっては処刑台への呼び出しだった。
指定された安アパートの薄暗い一室。海斗の友人だという、名前も知らない若者たちが佳織を取り囲む。彼らの目は、佳織を人間とは見ていなかった。ただの便利な、使い捨ての道具。海斗はその様子を嘲笑いながら動画に収める。
「おばさん、もっと嬉しそうにしろよ。若いやつらに相手にされて幸せだろ?」
屈辱に震え、涙を流しても、彼らの欲望は止まらない。佳織は自分の魂が身体から分離していくような感覚の中で、ただ虚空を見つめ、時間が過ぎるのを待った。
帰り道、駅のトイレで何度も顔を洗い、うがいをしても、若者たちの脂臭い匂いが肺の奥にこびりついて離れない。朝、何食わぬ顔で泰久に朝食を出し、一馬と仕事の話をする。その日常の裏側で、佳織の心はどろどろに腐り果てていた。泰久が優しく肩に手を置くたびに、若者たちの不潔な手がフラッシュバックし、佳織は吐き気を堪えるのに必死だった。
搾取は止まることを知らず、海斗はついに「泰久の退職金を前借りしろ」とまで要求してきた。その言葉に、佳織の中で何かが決壊した。家族の未来までもがこの化け物たちに食い尽くされる。それなら、いっそ。
次に呼び出された時、佳織は震える手で海斗の首に掴みかかった。狂気に満ちた目で彼を睨みつけ、喉が裂けるような声で叫んだ。
「やりなさいよ! 動画でも何でもバラせばいい! 私はすべてを失って、この家を出る。でもね、あなたは警察に突き出す。恐喝、暴行、強姦……あなたの20歳の人生、私の道連れにして地獄の底まで持っていってあげる!」
その気迫に、海斗は初めて怯えた。彼はただのスリルを好む小悪党であり、自分の人生を棒に振る覚悟など微塵もなかったのだ。彼は舌打ちを一つ残し、佳織の前から逃げ出した。
物理的な繋がりは絶たれた。しかし、佳織の「後悔」に終わりはない。
今もスマホが鳴るたびに、心臓が跳ね上がり、全身に冷や汗が流れる。
一馬(28)の晴れやかな結婚式。祝福の拍手の中で、佳織は自分がその場にいることさえ汚らわしいと感じ、偽りの笑顔を張り付かせる。
「許し」も「救い」もない。佳織は、自分が守り抜いたはずの家族の真ん中で、たった一人、誰にも言えない秘密という名の終身刑を生きている。
最初は、画面越しに交わされる甘い言葉だけで十分だった。しかし、初めて現実で会った海斗の、自分の息子・一馬(28)よりも若い肌に触れた瞬間、佳織の理性は霧散した。自分はまだ、誰かを狂わせる「女」なのだ。その傲慢な確信が、彼女を奈落へと誘った。
半年が過ぎ、一馬の結婚という現実が迫る中、佳織は「純愛」を終わらせようと切り出した。だが、海斗が微笑みながら突きつけたのは、ホテルのベッドで撮影された、自分でも直視できないほど淫らな姿の動画だった。
「これ、旦那さんや一馬さんに送ったらどうなるかな。おばさんの人生、一瞬でゴミ箱行きだね」
海斗の豹変は、佳織の精神を根底から破壊した。そこから始まったのは、言葉にするのも汚らわしい搾取の日々だった。海斗は佳織を金づるとしてだけでなく、友人たちの前で「生処理係」として差し出した。深夜、泰久が隣で静かな寝息を立てている時、枕元でスマホが青白く光る。その短い通知音が、佳織にとっては処刑台への呼び出しだった。
指定された安アパートの薄暗い一室。海斗の友人だという、名前も知らない若者たちが佳織を取り囲む。彼らの目は、佳織を人間とは見ていなかった。ただの便利な、使い捨ての道具。海斗はその様子を嘲笑いながら動画に収める。
「おばさん、もっと嬉しそうにしろよ。若いやつらに相手にされて幸せだろ?」
屈辱に震え、涙を流しても、彼らの欲望は止まらない。佳織は自分の魂が身体から分離していくような感覚の中で、ただ虚空を見つめ、時間が過ぎるのを待った。
帰り道、駅のトイレで何度も顔を洗い、うがいをしても、若者たちの脂臭い匂いが肺の奥にこびりついて離れない。朝、何食わぬ顔で泰久に朝食を出し、一馬と仕事の話をする。その日常の裏側で、佳織の心はどろどろに腐り果てていた。泰久が優しく肩に手を置くたびに、若者たちの不潔な手がフラッシュバックし、佳織は吐き気を堪えるのに必死だった。
搾取は止まることを知らず、海斗はついに「泰久の退職金を前借りしろ」とまで要求してきた。その言葉に、佳織の中で何かが決壊した。家族の未来までもがこの化け物たちに食い尽くされる。それなら、いっそ。
次に呼び出された時、佳織は震える手で海斗の首に掴みかかった。狂気に満ちた目で彼を睨みつけ、喉が裂けるような声で叫んだ。
「やりなさいよ! 動画でも何でもバラせばいい! 私はすべてを失って、この家を出る。でもね、あなたは警察に突き出す。恐喝、暴行、強姦……あなたの20歳の人生、私の道連れにして地獄の底まで持っていってあげる!」
その気迫に、海斗は初めて怯えた。彼はただのスリルを好む小悪党であり、自分の人生を棒に振る覚悟など微塵もなかったのだ。彼は舌打ちを一つ残し、佳織の前から逃げ出した。
物理的な繋がりは絶たれた。しかし、佳織の「後悔」に終わりはない。
今もスマホが鳴るたびに、心臓が跳ね上がり、全身に冷や汗が流れる。
一馬(28)の晴れやかな結婚式。祝福の拍手の中で、佳織は自分がその場にいることさえ汚らわしいと感じ、偽りの笑顔を張り付かせる。
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