人妻の墜落 —甘い蜜に縛られた12の報い—

MisakiNonagase

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CASE 10:許しという名の終身刑 森下 真由美(47)仮名

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​森下真由美(47)の「終わりの日」は、皮肉にも彼女の誕生日だった。
不倫相手であるジムのインストラクター・若林(42)から送られた甘いメッセージを、夫の和彦(49)が見つけたのだ。和彦は激昂して暴力を振るうことも、泣いて縋ることもなかった。ただ冷徹に、不倫の証拠をタブレットに並べ、こう告げた。
​「子供たちの未来のために、一度だけチャンスをあげる。離婚はしない。君を許そう」
​その瞬間、真由美は地獄から救い出されたのだと、安堵の涙を流した。しかし、それは本当の地獄への入り口に過ぎなかった。
​翌日から、真由美の生活は和彦による「完全管理下」に置かれた。
スマホのパスワードは和彦に共有され、アプリのインストールさえ許可が必要になった。外出する際は、出発時、目的地への到着時、そして帰宅時のビデオ通話を義務付けられた。
「君を信じたいからこそ、確認が必要なんだ」
和彦は微笑みながらそう言うが、その目は一度も笑っていなかった。
​不倫相手だった若林は、発覚した翌日にはジムを辞めて逃げ出していた。真由美が必死に守りたかった「女としての自尊心」は、彼によって無惨に捨て去られ、今は和彦の手の中で弄ばれている。
​家庭内での立場も一変した。大学4年生の長女・奈々(21)は、父の徹底した管理を積極的に支持した。
「お父さんは、あんなことされても家族を守ろうとしてるんだよ。お母さんは、自分の立場をわかってるの?」
夕食の席で、真由美が少しでも明るく振る舞おうとすれば、奈々の冷ややかな視線が突き刺さる。和彦は事あるごとに「あんな大罪を犯した君を、僕以外に誰が受け入れてくれるというんだい?」と、慈悲の仮面を被った毒を吐く。
​真由美は、食事を作り、掃除をし、完璧な妻を演じ続けなければならない。少しでも不機嫌な顔をすれば「反省していない」と見なされ、その夜は数時間に及ぶ和彦の「説教」という名の精神的リンチが待っているからだ。
​「自由」は完全に奪われた。真由美には友人と会う権利も、趣味を楽しむ時間も、一人で外を歩く自由さえない。和彦は彼女を愛しているから許したのではない。自分のプライドを傷つけた女を、一生自分の足元に跪かせ、飼い殺しにするために「許し」という名の鎖をかけたのだ。
​夜、隣で寝ている和彦の寝顔を見るたび、真由美の心は凍りつく。
離婚という「終わりのある痛み」を選ばなかった結果、手に入れたのは、死ぬまで罪人として監視され続ける「終わりのない刑期」だった。
かつて若林と過ごしたあの数時間の高揚感が、残りの人生数十年を、家という名の監獄で過ごす代償としてあまりに不釣り合いであったことを、真由美は暗闇の中で噛みしめ続けている。
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