48歳主婦の宅建試験挑戦―そして年下彼がくれた勇気と恋

MisakiNonagase

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第7話「直前一ヶ月の試練」。

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2026年10月。
街の木々が色づき始める頃、受験生たちのタイムラインは異様な静寂に包まれていた。
あれほど賑やかだったSNSも、今や投稿を続けているのは数えるほど。残った者たちの間には、言葉にせずとも「生還しよう」という戦友のような連帯感が漂っていた。

私は、パートの休みを増やし、食事の準備以外はすべて勉強に充てた。
「お母さん、顔つき変わったね。……本気なんだ」
大学生の択実が、少し引いたような、けれどどこか尊敬の混じった目で私を見るようになった。夫の忠夫も、私が夜遅くまで机に向かっているのを見て、自分で夜食のカップラーメンを啜るようになった。

そんなある夜、幸正さんから一通のDMが届いた。

ゆきまさ:
京香さん、ついに残り2週間ですね。
業法は仕上がりましたか?

私は、ボロボロになったテキストの写真を送った。

京香:
はい。教官の教え通り、「なぜ×か」を呟きすぎて、家族に怪しまれています(笑)
35点の壁、なんとか超えたいです。

すぐに既読がついた。けれど、次の返信が来るまでに、少し間があった。

ゆきまさ:
京香さんなら大丈夫。あの日、新宿で会った時のあなたの真っ直ぐな目を見て、僕はそう確信しました。

……試験が終わって、もしお互いに良い報告ができたら。
その時は、伝えたいことがあります。

スマホを持つ指が、微かに震えた。
伝えたいこと。
それは、リベンジを果たした受験生としての総括だろうか。それとも、この半年間、画面越しに育んできた関係への、別の答えだろうか。

私は、あえて深い意味を問わなかった。今は、その問いに答える資格が「合格」という二文字の中にしかないことを知っていたから。

京香:
わかりました。私も、合格して、その言葉を聞きたいです。
最後まで、走り抜けましょうね。

2026年10月半ば。
試験前夜、私はこれまでの道のりを振り返った。
20歳以上も年下の青年に励まされ、導かれ、一問一答を繰り返した日々。
もし宅建に挑戦していなければ、私は今も「理由」を問われることのない、透明な主婦のままだっただろう。

たとえ彼との間にどんな結末が待っていようと、この半年間で手に入れた「自分を信じる力」だけは、誰にも奪わせない。

私は、幸正さんのアイコンを一度だけタップし、静かに画面を閉じた。
明日は、決戦の日。
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