アラフォーリサの冒険 バズったSNSで退職からリスタート

MisakiNonagase

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第2章:退職初日と母の静かな見守り

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退職初日、リサはハローワークで失業手続きに行った。窓口の職員は事務的に書類を処理し、「自己都合退職の場合、給付開始まで3ヶ月の待期期間があります」と淡々と説明した。

「はい、承知しています」

自宅に戻り、リサはベッドに倒れ込んだ。「ああ、積んだな」天井のシミを見つめながら、何もやる気が起きなかった。17年間続けた日常が、突然なくなった虚脱感。SNSの誹謗中傷が頭をよぎる。目を閉じれば、「ビッチ」という言葉が耳にこびりつく。

そんなリサに対して、同居する母・和子は何も言わなかった。これまでのことや、これからどうするかとかには触れず、ただ「行ってきます」とパート先へ出掛けていく。見守るような、しかし干渉しない態度。それが和子の優しさだった。

ダラダラした生活が1週間続いたある朝、リサはふと気づいた。新卒からつい最近まで毎朝6時に起きて身支度し、電車に揺られて会社へ向かっていた。そのリズムがなくなった生活は、どこか物足りない。罪悪感のようなものもあった。

次の日から、リサは母と一緒に朝食をとるようになった。6時半に起き、パンを焼き、コーヒーを淹れる。

「おはよう、リサ。起きれたのね」

「うん、なんとなく」

和子はニコリと笑い、何も深くは聞かない。リサは母を「行ってらっしゃい」と見送るようになった。

外出はまだ気が進まない。他人の目が怖い。深夜のコンビニやスーパーなら、人目につきにくい。23時過ぎに買い物に出かけ、レジ店員と最小限の会話だけ交わす生活。

16時頃に帰宅する母と一緒に夕食の用意をするようになった。料理はリサの担当。和子が「今日の味噌汁、美味しいわね」と言うと、ほんの少しだけ、胸が温かくなった。

経済的には、当面の不安はなかった。自己都合退職のため失業手当が実際に振り込まれるのは3ヶ月後だが、幸いなことにリサには貯蓄があった。17年間の会社員生活で貯めたお金と、少しの投資からの不労所得で月10万弱。父が残していった残債のない小さなマンションに母と暮らしているので、家賃の心配もない。

「お母さん、私の分の生活費はちゃんと払うから」

「そんなのいいのよ。ゆっくりしなさい」

「いや、払う。それが私のプライドだから」

和子は苦笑いした。

「リサは昔からそうだったわね。頑張り屋で」

頑張り屋。その言葉に、リサは胸が締め付けられた。今の自分に、その言葉はふさわしくない。
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