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CASE 2:スノー・メルト(指定校推薦の冬)
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偏差値62から68の学校。その幅の中で、ゆかりは「中の上」を維持することに心血を注いできた。都内の中高一貫女子校という閉じた社会において、彼女の居場所は生徒会にあった。会長という花形ではないが、堅実な実務をこなす役員として、教師からも同級生からも一定の信頼を得ていた。
その真面目さが実を結び、12月、彼女の手元には指定校推薦による大学合格通知が届いた。それは、友人が冬期講習や赤本に追われる中で手に入れた、あまりにも早く、そして甘い「特権」だった。
年が明け、1月の冷え込んだ空気の中で始めたバイト。自宅から数駅離れたターミナル駅にあるチェーンのファーストフード店で、彼女は指導役の大学生、流星(りゅうせい)と出会った。ゆかりにとって、流星との時間は、女子校の規律に縛られた6年間をすべて塗り替えてくれる魔法のようだった。
「合格おめでとう。ゆかりちゃん、これまで他校の男が放っておかなかったでしょ? でも、俺が見つけたのはラッキーだったな」
冷え込んだ駅の改札。流星はいつも彼女の冷えた手を自分のコートのポケットに招き入れてくれた。そんな甘い言葉の数々に、ゆかりは自分が一人の女性として熱烈に愛されているという全能感に満たされていた。
2月、周囲の友人が一般入試の正念場を迎える頃、ゆかりの心はもう高校にはなかった。流星は「最後なんだから、一度だけでいいから制服でデートしようよ。ゆかりちゃんの学校の制服、品があって好きなんだ」と囁いた。
ゆかりは、かつて通学電車で「品良く、かつ短く」見せることに命をかけていた制服に袖を通し、繁華街へと向かった。リュックを揺らしながら歩く彼女の隣で、流星は優しく肩を抱き、映画を観て、お洒落なイタリアンで食事を楽しんだ。
「やっぱり、制服のゆかりちゃんが一番可愛いよ」
その言葉を信じ切っていた彼女にとって、食後に誘われた彼のマンションは、愛を確かめ合うための純粋な聖域にしか見えていなかった。
初めての夜。想像を絶する恐怖と、焼けるような痛みに身体を強張らせるゆかりを見て、流星は優しく髪を撫でながら囁いた。
「ゆかり、大丈夫? 無理しなくていいよ。……」
その言葉には、心配を装ったトゲがある表情も含まれていた。ゆかりの心臓は一瞬凍りついたが、ここで泣き出せば「やっぱり子供だ」と失望されてしまう。
「……ううん、大丈夫。幸せだよ」
血の混じった強がりを吐きながら、ゆかりは自ら背伸びをして、泥沼へと足を踏み入れた。交際が始まると、流星の言葉は少しづつ乱暴になり、それまでの過保護な優しさは、所有物に対する支配へと変質していった。
「今日も、あの制服持ってきて。ゆかりの学校の制服で鳴いてるの見ると、興奮するんだよね」
3月の卒業式を終え、書類上の身分だけが高校生である「空白の期間」に入ると、ゆかりは駅のトイレで制服に着替え、流星の家へ通う頻度をさらに上げた。合格祝いに門限が緩くなった両親の信頼を逆手に取り、「友達の家に泊まる」という嘘を重ねて彼の部屋へ向かった。
流星は、ゆかりが自尊心を守るために着こなしていた制服を、彼女自身にリュックへ詰めさせて運ばせ、その場で着替えさせ、行為の最中も脱ぐことを許さなかった。
「人気女子中高の生徒会のゆかり様が、俺の前でこんな格好して。最高だろ?」
流星の手が、かつて規律を守る側だった彼女の象徴であるリボンを乱暴に解き、スカートを捲り上げる。ゆかりは、彼に求められることが「愛」だと自分を洗脳するように思い込もうとした。しかし、本当の卒業である3月31日を前に、現実は泥のように露呈した。
バイト仲間から見せられた、流星が裏アカウントで流していた「元生徒会女子高生の攻略ログ」。そこには、制服姿で泣きそうな顔をした自分の写真と、彼が仲間内で誇らしげに語る蔑みの言葉が並んでいた。
「推薦で合格して暇してる元生徒会。自分から『大人の遊びを教えて』ってすり寄ってきたから、適当に教育してやったわ」
ゆかりが自尊心を削り、必死に背伸びをして受け入れた「痛み」のすべては、彼にとっては単なる「世間知らずを堕とした武勇伝」のネタに過ぎなかった。
3月31日。友人たちが自力で掴み取った合格に沸き、新しい門出を祝う中、ゆかりは一人、自ら招いた喪失感の中にいた。
リュックの中でシワになった、もう二度と袖を通さない制服。指定校推薦という「近道」で手に入れたはずの自由は、春の光に照らされることもなく、取り返しのつかない「汚れ」として彼女の心に焼き付いていた。
その真面目さが実を結び、12月、彼女の手元には指定校推薦による大学合格通知が届いた。それは、友人が冬期講習や赤本に追われる中で手に入れた、あまりにも早く、そして甘い「特権」だった。
年が明け、1月の冷え込んだ空気の中で始めたバイト。自宅から数駅離れたターミナル駅にあるチェーンのファーストフード店で、彼女は指導役の大学生、流星(りゅうせい)と出会った。ゆかりにとって、流星との時間は、女子校の規律に縛られた6年間をすべて塗り替えてくれる魔法のようだった。
「合格おめでとう。ゆかりちゃん、これまで他校の男が放っておかなかったでしょ? でも、俺が見つけたのはラッキーだったな」
冷え込んだ駅の改札。流星はいつも彼女の冷えた手を自分のコートのポケットに招き入れてくれた。そんな甘い言葉の数々に、ゆかりは自分が一人の女性として熱烈に愛されているという全能感に満たされていた。
2月、周囲の友人が一般入試の正念場を迎える頃、ゆかりの心はもう高校にはなかった。流星は「最後なんだから、一度だけでいいから制服でデートしようよ。ゆかりちゃんの学校の制服、品があって好きなんだ」と囁いた。
ゆかりは、かつて通学電車で「品良く、かつ短く」見せることに命をかけていた制服に袖を通し、繁華街へと向かった。リュックを揺らしながら歩く彼女の隣で、流星は優しく肩を抱き、映画を観て、お洒落なイタリアンで食事を楽しんだ。
「やっぱり、制服のゆかりちゃんが一番可愛いよ」
その言葉を信じ切っていた彼女にとって、食後に誘われた彼のマンションは、愛を確かめ合うための純粋な聖域にしか見えていなかった。
初めての夜。想像を絶する恐怖と、焼けるような痛みに身体を強張らせるゆかりを見て、流星は優しく髪を撫でながら囁いた。
「ゆかり、大丈夫? 無理しなくていいよ。……」
その言葉には、心配を装ったトゲがある表情も含まれていた。ゆかりの心臓は一瞬凍りついたが、ここで泣き出せば「やっぱり子供だ」と失望されてしまう。
「……ううん、大丈夫。幸せだよ」
血の混じった強がりを吐きながら、ゆかりは自ら背伸びをして、泥沼へと足を踏み入れた。交際が始まると、流星の言葉は少しづつ乱暴になり、それまでの過保護な優しさは、所有物に対する支配へと変質していった。
「今日も、あの制服持ってきて。ゆかりの学校の制服で鳴いてるの見ると、興奮するんだよね」
3月の卒業式を終え、書類上の身分だけが高校生である「空白の期間」に入ると、ゆかりは駅のトイレで制服に着替え、流星の家へ通う頻度をさらに上げた。合格祝いに門限が緩くなった両親の信頼を逆手に取り、「友達の家に泊まる」という嘘を重ねて彼の部屋へ向かった。
流星は、ゆかりが自尊心を守るために着こなしていた制服を、彼女自身にリュックへ詰めさせて運ばせ、その場で着替えさせ、行為の最中も脱ぐことを許さなかった。
「人気女子中高の生徒会のゆかり様が、俺の前でこんな格好して。最高だろ?」
流星の手が、かつて規律を守る側だった彼女の象徴であるリボンを乱暴に解き、スカートを捲り上げる。ゆかりは、彼に求められることが「愛」だと自分を洗脳するように思い込もうとした。しかし、本当の卒業である3月31日を前に、現実は泥のように露呈した。
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「推薦で合格して暇してる元生徒会。自分から『大人の遊びを教えて』ってすり寄ってきたから、適当に教育してやったわ」
ゆかりが自尊心を削り、必死に背伸びをして受け入れた「痛み」のすべては、彼にとっては単なる「世間知らずを堕とした武勇伝」のネタに過ぎなかった。
3月31日。友人たちが自力で掴み取った合格に沸き、新しい門出を祝う中、ゆかりは一人、自ら招いた喪失感の中にいた。
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