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第三章:結婚という現実
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大樹が優子の両親に会ってから三ヶ月後、プロポーズは無事成功した。
これまで冬美は、片親だということで、大樹が大学へ行かずに、自分に気遣って就職を選んだのではないかと負い目を感じていることもあったが、こうしてたくましくなった彼の姿を見ていると、もはやこういったことを考えること自体がよろしくないと、彼女は思うようになっていた。
「おめでとう、大樹」
冬美は結婚が決まった報告を聞き、涙を流しながら大樹を抱きしめた。その抱擁は、母親としてのそれだった。セフレとしての関係は、この瞬間だけは棚上げされていた。
「結婚式は来年の春にしようと思ってる。場所はまだ決めてないけど」
「私、母親代表でスピーチするんだよね?なんて言おうか、今から緊張しちゃう」
冬美は興奮気味に話し始めたが、大樹はその表情の裏にある複雑な感情を読み取っていた。喜びと寂しさ、祝福と喪失感が入り混じっている。
「母さん、一つお願いがある」
「なに?」
「結婚した後も…たまには会わせてほしい。もちろん、危険のないように」
冬美は一瞬ためらったが、頷いた。
「わかった。でもルールを決めよう。第一に、絶対にバレないようにする。第二に、優子ちゃんをないがしろにしない。第三に…もしどちらかがこの関係を続けるのが苦しくなったら、すぐにやめる」
「了解だ」
大樹の結婚準備が進むにつれ、二人が会える機会は減っていった。優子と過ごす時間が増え、また結婚式の準備で忙しくなったからだ。だが、月に一度は必ず時間を作り、団地の家で会った。
結婚式の二週間前、最後の「女体盛り」を行った。
「これが、多分最後の『本格的な』やつだね」
冬美は長テーブルの上に横たわりながら、寂しそうに微笑んだ。
「新しい家でもできるよ。優子の実家に帰省する時とか」
「危険すぎる。やっぱり、ここだけの特別なことにしよう。あんたの実家なんだから。」
大樹は刺身を丁寧に並べた。これまでの中で最も芸術的な盛り付けにしようと、いつもより時間をかけた。
「大樹、聞いていい?一つだけ真剣な質問」
「なに?」
「私との関係…後悔してない?」
大樹は手を止め、冬美の目を見つめた。
「後悔?むしろ感謝してる。だって、この関係がなかったら、俺は母さんに彼女の話も、仕事の愚痴も、結婚の不安も話せなかったかもしれない。普通の親子って、だんだん壁ができるじゃん?でも僕たちにはない。これからもない」
「でも、それは不健全だって人もいるよ。母子の境界線がなさすぎるって」
「そりゃあ、世間的には異常だよ。俺もわかってる。でもな、母さん」
大樹は刺身を一箸つまみ、口に運んだ。
「誰にも迷惑かけてない。二人が幸せで、誰も傷ついてない。それでいいじゃないか」
冬美の目に涙が光った。
「そうね…誰にも迷惑かけてないわ」
結婚式の日、冬美は母親として美しい着物を着て出席した。スピーチでは、大樹の幼少期のエピソードを交えながら、温かい祝福の言葉を贈った。誰もが、理想的な母子関係だと感嘆した。
式が終わり、大樹と優子が新居に向かう車を見送る時、冬美はそっと呟いた。
「幸せになってね、大樹」
その夜、団地の部屋に一人戻った冬美は、寂しさに胸が締め付けられるのを感じた。これまで続いた特別な関係は、形式上は終わった。だが、大樹との約束は続く。秘密の関係は、形を変えて存続するのだ。
これまで冬美は、片親だということで、大樹が大学へ行かずに、自分に気遣って就職を選んだのではないかと負い目を感じていることもあったが、こうしてたくましくなった彼の姿を見ていると、もはやこういったことを考えること自体がよろしくないと、彼女は思うようになっていた。
「おめでとう、大樹」
冬美は結婚が決まった報告を聞き、涙を流しながら大樹を抱きしめた。その抱擁は、母親としてのそれだった。セフレとしての関係は、この瞬間だけは棚上げされていた。
「結婚式は来年の春にしようと思ってる。場所はまだ決めてないけど」
「私、母親代表でスピーチするんだよね?なんて言おうか、今から緊張しちゃう」
冬美は興奮気味に話し始めたが、大樹はその表情の裏にある複雑な感情を読み取っていた。喜びと寂しさ、祝福と喪失感が入り混じっている。
「母さん、一つお願いがある」
「なに?」
「結婚した後も…たまには会わせてほしい。もちろん、危険のないように」
冬美は一瞬ためらったが、頷いた。
「わかった。でもルールを決めよう。第一に、絶対にバレないようにする。第二に、優子ちゃんをないがしろにしない。第三に…もしどちらかがこの関係を続けるのが苦しくなったら、すぐにやめる」
「了解だ」
大樹の結婚準備が進むにつれ、二人が会える機会は減っていった。優子と過ごす時間が増え、また結婚式の準備で忙しくなったからだ。だが、月に一度は必ず時間を作り、団地の家で会った。
結婚式の二週間前、最後の「女体盛り」を行った。
「これが、多分最後の『本格的な』やつだね」
冬美は長テーブルの上に横たわりながら、寂しそうに微笑んだ。
「新しい家でもできるよ。優子の実家に帰省する時とか」
「危険すぎる。やっぱり、ここだけの特別なことにしよう。あんたの実家なんだから。」
大樹は刺身を丁寧に並べた。これまでの中で最も芸術的な盛り付けにしようと、いつもより時間をかけた。
「大樹、聞いていい?一つだけ真剣な質問」
「なに?」
「私との関係…後悔してない?」
大樹は手を止め、冬美の目を見つめた。
「後悔?むしろ感謝してる。だって、この関係がなかったら、俺は母さんに彼女の話も、仕事の愚痴も、結婚の不安も話せなかったかもしれない。普通の親子って、だんだん壁ができるじゃん?でも僕たちにはない。これからもない」
「でも、それは不健全だって人もいるよ。母子の境界線がなさすぎるって」
「そりゃあ、世間的には異常だよ。俺もわかってる。でもな、母さん」
大樹は刺身を一箸つまみ、口に運んだ。
「誰にも迷惑かけてない。二人が幸せで、誰も傷ついてない。それでいいじゃないか」
冬美の目に涙が光った。
「そうね…誰にも迷惑かけてないわ」
結婚式の日、冬美は母親として美しい着物を着て出席した。スピーチでは、大樹の幼少期のエピソードを交えながら、温かい祝福の言葉を贈った。誰もが、理想的な母子関係だと感嘆した。
式が終わり、大樹と優子が新居に向かう車を見送る時、冬美はそっと呟いた。
「幸せになってね、大樹」
その夜、団地の部屋に一人戻った冬美は、寂しさに胸が締め付けられるのを感じた。これまで続いた特別な関係は、形式上は終わった。だが、大樹との約束は続く。秘密の関係は、形を変えて存続するのだ。
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