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第六章:新たな関係へ
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大樹と優子の子供・健太が生まれてから一年が経った。
冬美は週に二回、孫の面倒を見にマンションを訪れていた。かつての「密会」の代わりに、今では子守りが彼女の楽しみになっていた。
「健太ちゃん、ばあばに抱っこされてご機嫌ね」
冬美は孫を抱きながら、満面の笑みを浮かべていた。大樹はその様子を台所から見つめ、静かに微笑んだ。
あの夜から、彼らは一度も肉体関係を持たなかった。最初は慣れない距離感に戸惑ったが、次第に新しい関係が築かれていった。かつての特別な関係の記憶は、二人の心の奥底にしまい込まれ、表面には出さないという暗黙の了解ができた。
「母さん、新しい人とは?この前、職場の人が紹介してくれたって言ってたじゃん」
ある日、大樹が尋ねた。健太が昼寝をしている間、二人はコーヒーを飲みながら話していた。
「ああ、中山さん?57歳の会社員で、子供は独立してるんだって。優しい人だったけど…なんか、火花が感じられなくて」
「相性ってあるからな」
「うん。でも焦らないよ。大樹と健太がいてくれるから、寂しくないし」
冬美はコーヒーカップを手に取り、ゆっくりと一口飲んだ。
「時々思うんだけど、あの時私たちの関係を終わらせて正解だったよね」
「どうして?」
「だって見てよ」
冬美は寝室の方向にうなずいた。健太が寝ている部屋だ。
「この子がいて、大樹と優子ちゃんが幸せで。もし私たちの関係が続いていたら、この幸せを心から喜べなかったかもしれない。いつかバレるんじゃないかってビクビクしながら」
「そうだな…」
大樹は深く頷いた。
「俺も時々思う。あの関係がなかったら、今の俺はないって。あの経験を通して、母さんと本当に何でも話せる関係になれた。でも、時期が来たら終わらせるべきだった。今がその時だった」
「うん。すべてがちょうどよかったのよ」
冬美は微笑み、大樹の手をそっと握った。母親としての、温かい握り方だった。
「これからも、何でも話せる親子でいよう。秘密はない、本当の意味での親友親子で」
「ああ。それでいい」
かつての彼らは、肉体関係を通して親密さを確認し合っていた。だが今は、それなしでも深い絆を感じることができた。歳月と経験が、彼らをより成熟した関係へと導いたのだ。
健太が起きて泣き始めた。冬美はすぐに立ち上がり、寝室に向かった。
「ばあばが来たよー、健太ちゃん」
大樹は母の後ろ姿を見つめながら、静かに感謝の念を抱いた。あの異常で危険な関係があったからこそ、今の健全で深い絆がある。それは決して他人に理解されるものではないが、彼らにとってはかけがえのない経験だった。
すべての関係には終わりがある。だが、終わったからこそ新しく始まるものもある。大樹と冬美は、かつての関係を終わらせることで、真の親子の絆を再構築することができたのだ。
「父さんもおいでよ、健太ちゃんが笑ってるよ」
冬美の声に、大樹は寝室に向かった。そこには、祖母と孫、そして父親の、完璧な家族の風景があった。
かつての秘密は過去のものとなり、今は現在の幸せがすべてだった。彼らは境界線を越え、そして再び適切な距離を見つけた。それは、彼らだけが理解する、特別な親子の物語の結末だった。
冬美は週に二回、孫の面倒を見にマンションを訪れていた。かつての「密会」の代わりに、今では子守りが彼女の楽しみになっていた。
「健太ちゃん、ばあばに抱っこされてご機嫌ね」
冬美は孫を抱きながら、満面の笑みを浮かべていた。大樹はその様子を台所から見つめ、静かに微笑んだ。
あの夜から、彼らは一度も肉体関係を持たなかった。最初は慣れない距離感に戸惑ったが、次第に新しい関係が築かれていった。かつての特別な関係の記憶は、二人の心の奥底にしまい込まれ、表面には出さないという暗黙の了解ができた。
「母さん、新しい人とは?この前、職場の人が紹介してくれたって言ってたじゃん」
ある日、大樹が尋ねた。健太が昼寝をしている間、二人はコーヒーを飲みながら話していた。
「ああ、中山さん?57歳の会社員で、子供は独立してるんだって。優しい人だったけど…なんか、火花が感じられなくて」
「相性ってあるからな」
「うん。でも焦らないよ。大樹と健太がいてくれるから、寂しくないし」
冬美はコーヒーカップを手に取り、ゆっくりと一口飲んだ。
「時々思うんだけど、あの時私たちの関係を終わらせて正解だったよね」
「どうして?」
「だって見てよ」
冬美は寝室の方向にうなずいた。健太が寝ている部屋だ。
「この子がいて、大樹と優子ちゃんが幸せで。もし私たちの関係が続いていたら、この幸せを心から喜べなかったかもしれない。いつかバレるんじゃないかってビクビクしながら」
「そうだな…」
大樹は深く頷いた。
「俺も時々思う。あの関係がなかったら、今の俺はないって。あの経験を通して、母さんと本当に何でも話せる関係になれた。でも、時期が来たら終わらせるべきだった。今がその時だった」
「うん。すべてがちょうどよかったのよ」
冬美は微笑み、大樹の手をそっと握った。母親としての、温かい握り方だった。
「これからも、何でも話せる親子でいよう。秘密はない、本当の意味での親友親子で」
「ああ。それでいい」
かつての彼らは、肉体関係を通して親密さを確認し合っていた。だが今は、それなしでも深い絆を感じることができた。歳月と経験が、彼らをより成熟した関係へと導いたのだ。
健太が起きて泣き始めた。冬美はすぐに立ち上がり、寝室に向かった。
「ばあばが来たよー、健太ちゃん」
大樹は母の後ろ姿を見つめながら、静かに感謝の念を抱いた。あの異常で危険な関係があったからこそ、今の健全で深い絆がある。それは決して他人に理解されるものではないが、彼らにとってはかけがえのない経験だった。
すべての関係には終わりがある。だが、終わったからこそ新しく始まるものもある。大樹と冬美は、かつての関係を終わらせることで、真の親子の絆を再構築することができたのだ。
「父さんもおいでよ、健太ちゃんが笑ってるよ」
冬美の声に、大樹は寝室に向かった。そこには、祖母と孫、そして父親の、完璧な家族の風景があった。
かつての秘密は過去のものとなり、今は現在の幸せがすべてだった。彼らは境界線を越え、そして再び適切な距離を見つけた。それは、彼らだけが理解する、特別な親子の物語の結末だった。
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