アウトバウンド計画

MisakiNonagase

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第2章:最初の羽ばたき

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茜からの承諾の連絡は、その二週間後だった。彼女の条件は、「絶対に日本の業界関係者には知られないこと」「渡航先では一人にしないこと」の二点。颯太が作成した分厚い契約書(日本語と英語)を、別のカフェでじっくりと読み、疑問点を全て確認した茜は、最後にペンを握りしめ、ためらいながらサインをした。

最初の仕事は、東南アジアの某都市で行われる「日本ポップカルチャーイベント」での、ごく小規模なファンミーティングだった。陽向が、海外のイベント主催者との交渉を全てオンラインで行い(彼の語学力と工学的な交渉術が遺憾なく発揮された)、契約条件、報酬、安全対策を細かく取り決めた。大智は茜に、簡単な英会話と、その国の文化やマナーについてのレクチャーを行った。颯太は渡航に必要な書類と、現地でのトラブル発生時に対応する法律家の連絡先を準備した。

渡航当日。三人は成田空港の見えない場所から、緊張した面持ちの茜を見送った。同行するのは、陽向が信頼できると判断した、現地在住の日本人ガイド兼ボディガード(これにも厳格な契約があった)だった。
「大丈夫ですか?」大智が最後のメールを送る。
「…はい。やってみます」茜の返信は短かった。

三日間のイベントは、予想以上の成功だった。茜の可憐なルックスと、かつて女優だったことから来るわずかな演技力が、現地のファンに好印象を与えた。ファンミーティングは盛況で、主催者も満足した。報酬は、茜がこれまでスナックで三ヶ月働いて得る金額に匹敵した。手数料20%を差し引いてもだ。

帰国後、茜は三人との約束のカフェで、少しだけ笑顔を見せた。
「…怖かったけど、でも、ちゃんと扱ってくれた。お客さんも、ただ会いたいだけって感じで…変な感じじゃなかった」
彼女の目には、久しぶりの自信のようなものが灯っていた。大智はホッとすると同時に、この成功がもたらす危うい期待にも気づいた。
「よかったです。でも、これはあくまで一例です。無理はしないでください」
「次…あるの?」茜の声に、わずかな期待が滲んだ。

最初の成功は、小さな波紋を広げた。茜から直接の紹介はなかったが、彼女の様子を見て、同じスナックで働く知り合いの女性(元グラビアアイドル)が、わずかながら興味を示した。口コミは、ごく狭い、しかし確実な範囲で広がり始めた。
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