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第9章:裏側の深淵
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母と別れ、一人になった途端、心臓が焼けつくような渇きに襲われた。さっきまで目の前で笑っていた「母・麻紀」の温もりを、自分の中に残る「彩子」の残像が塗り潰そうとしている。
深夜2時。僕は吸い寄せられるように、マニアックな撮影会を主催するポータルサイトを開いた。そこは、現役のAV女優から素人モデルまでが、数時間単位で「コマ組み」され、商品として並べられている場所だった。
「10:00~11:30、13:00~14:30……」
無機質なタイムテーブルの枠の中に、あの『中村彩子』の名前が刻まれていた。
【人気五十路女優・中村彩子:プレミアム・ヌード個撮プラン】
それは、事務所が提携している都内のレンタルスタジオにおいて、予約したファンと一対一になり、密室内でカメラを向けることができるという裏の営業形態だった。衣装は、水着から下着、そして完全なヌードまで。「監督」を気取った男たちが、自分の欲望のままにポーズを指示し、レンズ越しに彼女の肉体を隅々まで舐めるように記録する。これまで画面越しに見ていた「蹂躙」が、ここではより個人的で、より生々しい契約によって成立していた。
母は、僕が送る仕送りを受け取りながら、その裏で、見知らぬ男の「もっと脚を開いて」「次はこっちを見て」という卑俗な命令に従い、シャッター音を浴びていたのだ。
秋葉原で見たあの凛としたロングブーツの立ち姿が、狭いスタジオの照明の下で、男たちのリクエストに合わせて崩されていく光景。僕は、その「空き」と表示されたコマを凝視し続けた。
もし、僕が「柿木京介」という名前を捨て、ただの「一人の狂信的なファン」としてこの枠を買い占めたら、彼女はどんな顔をして現れるだろうか。
あの洗練された都会の女の顔で、スタジオのドアを開ける母。そこで待っているのが、自分の息子だと知ったとき、彼女は「母親」に戻るのか。それとも、プロの「女優」として、その絶望さえもポーズの一つに変えてみせるのか。僕は自分の手が小刻みに震えていることに気づいた。
これは、踏み越えてはいけない最後の一線だ。
けれど、僕の中の「息子」はすでに死に絶え、代わりに生まれた「化け物」が、母を完全に支配したいと叫んでいる。
画面の向こう側で、中村彩子のサムネイルが微笑んでいる。その微笑みは、僕を救うための慈悲なのか、それとも地獄へ引きずり込むための誘惑なのか。
僕は、震える指をマウスにかけ、すべてを偽ったプロフィールを入力し始めた。母を、一人の「女」として、そして「獲物」として、僕だけのレンズに閉じ込めるために。
予約完了のメールが届いた瞬間、僕の日常は完全に崩壊した。
深夜2時。僕は吸い寄せられるように、マニアックな撮影会を主催するポータルサイトを開いた。そこは、現役のAV女優から素人モデルまでが、数時間単位で「コマ組み」され、商品として並べられている場所だった。
「10:00~11:30、13:00~14:30……」
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母は、僕が送る仕送りを受け取りながら、その裏で、見知らぬ男の「もっと脚を開いて」「次はこっちを見て」という卑俗な命令に従い、シャッター音を浴びていたのだ。
秋葉原で見たあの凛としたロングブーツの立ち姿が、狭いスタジオの照明の下で、男たちのリクエストに合わせて崩されていく光景。僕は、その「空き」と表示されたコマを凝視し続けた。
もし、僕が「柿木京介」という名前を捨て、ただの「一人の狂信的なファン」としてこの枠を買い占めたら、彼女はどんな顔をして現れるだろうか。
あの洗練された都会の女の顔で、スタジオのドアを開ける母。そこで待っているのが、自分の息子だと知ったとき、彼女は「母親」に戻るのか。それとも、プロの「女優」として、その絶望さえもポーズの一つに変えてみせるのか。僕は自分の手が小刻みに震えていることに気づいた。
これは、踏み越えてはいけない最後の一線だ。
けれど、僕の中の「息子」はすでに死に絶え、代わりに生まれた「化け物」が、母を完全に支配したいと叫んでいる。
画面の向こう側で、中村彩子のサムネイルが微笑んでいる。その微笑みは、僕を救うための慈悲なのか、それとも地獄へ引きずり込むための誘惑なのか。
僕は、震える指をマウスにかけ、すべてを偽ったプロフィールを入力し始めた。母を、一人の「女」として、そして「獲物」として、僕だけのレンズに閉じ込めるために。
予約完了のメールが届いた瞬間、僕の日常は完全に崩壊した。
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