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③雪解けの真実
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②から続く
相関整理
タカシ(22歳)とシオリ(22歳)は交際中
タカシ(22歳)とミキ(49歳)も交際中※不倫
シオリ(22歳)とミキ(49歳)は実の母娘
※健一(53歳)はミキの夫でありシオリの父親
----------------------------------------------------------
雪の降るクリスマスから一ヶ月後、予期せぬ形で秘密に亀裂が入り始めた。
一月末、シオリが風邪をこじらせて高熱を出した。
心配したミキが娘の看病することになった。タカシも当然のように駆けつけ、三人が顔を合わせるという、危険極まりない状況が生まれた。
「ママ、ありがとう」シオリが布団の中で微笑んだ。顔は熱で赤く、声はかすれていた。
「そんなこと言わないで」ミキが額に手を当てながら答えたが、その手はわずかに震えていた。タカシがすぐそばに立っているからだ。
タカシは台所でお粥を作りながら、背中に流れる冷や汗を感じていた。
ミキがたまに彼の方を一瞥するたび、二人の間に張りつめた空気が走る。
「タカシくんも本当にありがとう。来てくれて」
シオリが咳き込みながら言った。
「当然だよ」タカシが笑顔を作ったが、それはミキには痛々しい偽物に見えた。
その午後、ミキが薬を買いに外出した隙に、シオリがタカシに囁いた。
「ねえ、ママのこと、どう思う?」
タカシの心臓が止まりそうになった。
「どうって…?」
「ママ、最近なんだか疲れてるみたいなの。パパとの関係もよくないらしくて」
シオリの目が曇った。
「私が結婚して家を出たら、ママはひとりぼっちになっちゃうかもしれない。考えると胸が苦しくなるよ」
タカシは言葉を失った。シオリの無邪気な心配が、彼の胸を締め付けた。
「君は優しいね」ようやく絞り出した言葉だった。
「タカシくん」シオリが真剣な目で彼を見つめた。
「私たち、将来ちゃんと幸せになるよね?ママみたいにならないように」
「…うん。なるよ」
その返事には、自分でも気づかないうちにため息が混じっていた。
ミキが戻ってきてからも、不自然な三時間が続いた。タカシとミキは必要最低限の会話しか交わさず、視線を合わせることも避けた。しかし、恋人の間には言葉以上に多くのことを伝える微細な合図があるものだ。手の動かし方、息づかい、間の取り方――長く密かな関係を築いてきた二人には、無意識のうちにそのようなシンクロが生まれていた。
シオリは熱で朦朧としながらも、次第にその不自然さに気づき始めた。
ママがタカシのコップを自然に洗い場に運ぶ様子。
タカシがママの好みをなぜか知っていて、紅茶に砂糖を一つ入れずに出すこと。二人が同時に同じ古い歌を口ずさみ、気まずそうにやめる瞬間。
「変だな…」
シオリは枕の中で呟いた。熱のせいか、妄想のせいかわからなかった。
その夜、タカシは一旦帰宅した。ミキは深夜、シオリのベッドの傍らに座り、眠る娘の手を握っていた。
「ごめんなさい、シオリ。本当にごめんなさい」
涙が一粒、シオリの手の甲に落ちた。
次の朝、シオリの熱は下がり始めていた。ミキが朝食を準備していると、シオリがふと尋ねた。
「ママ、タカシくんのこと、どう思う?」
ミキの手が止まった。
「どうって…いい青年だと思うよ。シオリを大切にしてくれているし」
「それだけ?」
シオリの声には、探るような響きがあった。
「…そうだよ。それだけ」ミキは必死で平静を装った。
シオリはしばらく黙っていたが、やがて小さく呟いた。
「よかった。ママも認めてくれて」
しかし、その目には一抹の疑念が残っていた。
二月に入り、事態はさらに複雑化していった。
シオリの父・健一が、妻の変化に気づき始めたのだ。
ある夜、健一がミキに尋ねた。
「お前、最近なんだか様子が違うな。何かあったのか?」
「何もないわ。ただ、更年期で疲れやすくなってるだけよ…」
「そうか…」健一は新聞をめくりながら言った。
「シオリの彼氏、タカシってやつだろ。あいつ、どうも俺は好きになれない」
ミキの背筋が凍った。
「どうして?」
「直感だ。あいつの目つきがな…何かを隠しているような気がする…」
それは偶然の一言だったが、ミキには鋭い刃のように胸に刺さった。
その一方で、タカシもプレッシャーに耐えきれなくなっていた。大学の友人から、シオリと別れて新しい女性と付き合うよう勧められるたび、彼は苦しんだ。アルバイト先でも、同年代の女性たちから好意を示されることが増え、そのたびに自分がどれほど偽りの人生を送っているかを痛感した。
二月の半ば、タカシはミキの家に行き、決意を伝えた。
「このままじゃダメだ。いつかバレる。それより…すべてを話そう」
「バカなこと言わないで!」
ミキの声は恐怖に震えていた。
「シオリが耐えられると思うの?私の夫が?」
「すべてが崩壊するよ!」
「でも、この嘘は続けられない!」
タカシの声も荒げていた。
「毎日、シオリの前で演技するのが苦痛で仕方ない。君と会うたびに、自分がどれだけ卑怯者か思い知らされる」
二人の間で初めて、本格的な口論が起こった。愛と罪悪感、欲望と後悔が入り混じった感情の渦が、それまで危ういバランスを保ってきた関係を揺さぶり始めた。
その口論の最中、ミキの携帯が鳴った。シオリからの着信だった。二人は凍りつき、ミキが震える手で電話に出た。
「もしもし、シオリ?どうしたの?」
「ママ、今どこ?」
シオリの声は普段と違って硬かった。
「えっと…買い物に。どうしたの?」
「もうすぐ帰るから、ちょっと話があるの…」
ミキの顔が真っ青になった。
「もうすぐ戻るから。何かあったの?」
「うん。話したいことがある。タカシくんのことについて」
電話が切れた。ミキとタカシは顔を見合わせた。
「彼女…もしかして」タカシの声はかすれた。
「知らない。でも、ここからすぐに出ていって。バックドアから」
タカシが急いで出ていった五分後、シオリが家に着いた。彼女の目は真剣で、どこか悲しげだった。
「ママ、本当は買い物に行ってなかったでしょ」
「…どういう意味?」
そこにいたから。
シオリはリビングに立ち、母親を見つめた。
「この一ヶ月、気づいてたの。ママとタカシくんの様子がおかしいって。視線を合わせないようにしてるとか、不自然に距離を取るとか」
「シオリ、それは…」
「最初は気のせいだと思った。でも、先月私が風邪で寝てたとき、ママがタカシくんのことを無意識に『タカシ』って呼んでた。普段は『タカシさん』って呼ぶのに」
ミキの心臓が高鳴った。そんな細かいことまで覚えていたのか?
「それに」シオリの声が震え始めた。
「先週、タカシくんのスマホを見ちゃったの。留守中に着信があって…画面に表示された名前が『ミキ』だった。下の名前で。どうして彼がママを下の名前で呼ぶの?」
ミキは言葉を失った。すべてが崩れていくのが感じられた。
「ママ、答えて。タカシくんと…何かあるの?」
その瞬間、ドアのベルが鳴った。二人が振り返ると、そこにはタカシが立っていた。彼は出ていったが、シオリが帰宅したら、すべてを話す決意をしたのだった。
三人は沈黙の中で立ち尽くした。リビングの時計の音だけが、不気味に響く。
「タカシくん…」
シオリの声はかすれていた。
「どうしてここに?」
タカシは深く息を吸い込み、シオリの目を見つめた。
「シオリ、話さなきゃいけないことがある。君と、お母さんとの間で」
雪が窓の外で静かに舞い始めた。長く危険な秘密の冬が、ついに解け始める時が来たのだ。
シオリは母親と恋人の間を見つめ、ゆっくりとソファに腰を下ろした。彼女の頬を一筋の涙が伝った。
「話して。すべてを」
タカシとミキは顔を見合わせ、重い沈黙を分かち合った。この先、どんな言葉でこの関係を説明できるだろうか。どんな言い訳が、これほどの裏切りを正当化できるだろうか。
しかし、時は戻らない。真実は、雪解けの水のように、三人の間に流れ込もうとしていた。
(続く)
相関整理
タカシ(22歳)とシオリ(22歳)は交際中
タカシ(22歳)とミキ(49歳)も交際中※不倫
シオリ(22歳)とミキ(49歳)は実の母娘
※健一(53歳)はミキの夫でありシオリの父親
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雪の降るクリスマスから一ヶ月後、予期せぬ形で秘密に亀裂が入り始めた。
一月末、シオリが風邪をこじらせて高熱を出した。
心配したミキが娘の看病することになった。タカシも当然のように駆けつけ、三人が顔を合わせるという、危険極まりない状況が生まれた。
「ママ、ありがとう」シオリが布団の中で微笑んだ。顔は熱で赤く、声はかすれていた。
「そんなこと言わないで」ミキが額に手を当てながら答えたが、その手はわずかに震えていた。タカシがすぐそばに立っているからだ。
タカシは台所でお粥を作りながら、背中に流れる冷や汗を感じていた。
ミキがたまに彼の方を一瞥するたび、二人の間に張りつめた空気が走る。
「タカシくんも本当にありがとう。来てくれて」
シオリが咳き込みながら言った。
「当然だよ」タカシが笑顔を作ったが、それはミキには痛々しい偽物に見えた。
その午後、ミキが薬を買いに外出した隙に、シオリがタカシに囁いた。
「ねえ、ママのこと、どう思う?」
タカシの心臓が止まりそうになった。
「どうって…?」
「ママ、最近なんだか疲れてるみたいなの。パパとの関係もよくないらしくて」
シオリの目が曇った。
「私が結婚して家を出たら、ママはひとりぼっちになっちゃうかもしれない。考えると胸が苦しくなるよ」
タカシは言葉を失った。シオリの無邪気な心配が、彼の胸を締め付けた。
「君は優しいね」ようやく絞り出した言葉だった。
「タカシくん」シオリが真剣な目で彼を見つめた。
「私たち、将来ちゃんと幸せになるよね?ママみたいにならないように」
「…うん。なるよ」
その返事には、自分でも気づかないうちにため息が混じっていた。
ミキが戻ってきてからも、不自然な三時間が続いた。タカシとミキは必要最低限の会話しか交わさず、視線を合わせることも避けた。しかし、恋人の間には言葉以上に多くのことを伝える微細な合図があるものだ。手の動かし方、息づかい、間の取り方――長く密かな関係を築いてきた二人には、無意識のうちにそのようなシンクロが生まれていた。
シオリは熱で朦朧としながらも、次第にその不自然さに気づき始めた。
ママがタカシのコップを自然に洗い場に運ぶ様子。
タカシがママの好みをなぜか知っていて、紅茶に砂糖を一つ入れずに出すこと。二人が同時に同じ古い歌を口ずさみ、気まずそうにやめる瞬間。
「変だな…」
シオリは枕の中で呟いた。熱のせいか、妄想のせいかわからなかった。
その夜、タカシは一旦帰宅した。ミキは深夜、シオリのベッドの傍らに座り、眠る娘の手を握っていた。
「ごめんなさい、シオリ。本当にごめんなさい」
涙が一粒、シオリの手の甲に落ちた。
次の朝、シオリの熱は下がり始めていた。ミキが朝食を準備していると、シオリがふと尋ねた。
「ママ、タカシくんのこと、どう思う?」
ミキの手が止まった。
「どうって…いい青年だと思うよ。シオリを大切にしてくれているし」
「それだけ?」
シオリの声には、探るような響きがあった。
「…そうだよ。それだけ」ミキは必死で平静を装った。
シオリはしばらく黙っていたが、やがて小さく呟いた。
「よかった。ママも認めてくれて」
しかし、その目には一抹の疑念が残っていた。
二月に入り、事態はさらに複雑化していった。
シオリの父・健一が、妻の変化に気づき始めたのだ。
ある夜、健一がミキに尋ねた。
「お前、最近なんだか様子が違うな。何かあったのか?」
「何もないわ。ただ、更年期で疲れやすくなってるだけよ…」
「そうか…」健一は新聞をめくりながら言った。
「シオリの彼氏、タカシってやつだろ。あいつ、どうも俺は好きになれない」
ミキの背筋が凍った。
「どうして?」
「直感だ。あいつの目つきがな…何かを隠しているような気がする…」
それは偶然の一言だったが、ミキには鋭い刃のように胸に刺さった。
その一方で、タカシもプレッシャーに耐えきれなくなっていた。大学の友人から、シオリと別れて新しい女性と付き合うよう勧められるたび、彼は苦しんだ。アルバイト先でも、同年代の女性たちから好意を示されることが増え、そのたびに自分がどれほど偽りの人生を送っているかを痛感した。
二月の半ば、タカシはミキの家に行き、決意を伝えた。
「このままじゃダメだ。いつかバレる。それより…すべてを話そう」
「バカなこと言わないで!」
ミキの声は恐怖に震えていた。
「シオリが耐えられると思うの?私の夫が?」
「すべてが崩壊するよ!」
「でも、この嘘は続けられない!」
タカシの声も荒げていた。
「毎日、シオリの前で演技するのが苦痛で仕方ない。君と会うたびに、自分がどれだけ卑怯者か思い知らされる」
二人の間で初めて、本格的な口論が起こった。愛と罪悪感、欲望と後悔が入り混じった感情の渦が、それまで危ういバランスを保ってきた関係を揺さぶり始めた。
その口論の最中、ミキの携帯が鳴った。シオリからの着信だった。二人は凍りつき、ミキが震える手で電話に出た。
「もしもし、シオリ?どうしたの?」
「ママ、今どこ?」
シオリの声は普段と違って硬かった。
「えっと…買い物に。どうしたの?」
「もうすぐ帰るから、ちょっと話があるの…」
ミキの顔が真っ青になった。
「もうすぐ戻るから。何かあったの?」
「うん。話したいことがある。タカシくんのことについて」
電話が切れた。ミキとタカシは顔を見合わせた。
「彼女…もしかして」タカシの声はかすれた。
「知らない。でも、ここからすぐに出ていって。バックドアから」
タカシが急いで出ていった五分後、シオリが家に着いた。彼女の目は真剣で、どこか悲しげだった。
「ママ、本当は買い物に行ってなかったでしょ」
「…どういう意味?」
そこにいたから。
シオリはリビングに立ち、母親を見つめた。
「この一ヶ月、気づいてたの。ママとタカシくんの様子がおかしいって。視線を合わせないようにしてるとか、不自然に距離を取るとか」
「シオリ、それは…」
「最初は気のせいだと思った。でも、先月私が風邪で寝てたとき、ママがタカシくんのことを無意識に『タカシ』って呼んでた。普段は『タカシさん』って呼ぶのに」
ミキの心臓が高鳴った。そんな細かいことまで覚えていたのか?
「それに」シオリの声が震え始めた。
「先週、タカシくんのスマホを見ちゃったの。留守中に着信があって…画面に表示された名前が『ミキ』だった。下の名前で。どうして彼がママを下の名前で呼ぶの?」
ミキは言葉を失った。すべてが崩れていくのが感じられた。
「ママ、答えて。タカシくんと…何かあるの?」
その瞬間、ドアのベルが鳴った。二人が振り返ると、そこにはタカシが立っていた。彼は出ていったが、シオリが帰宅したら、すべてを話す決意をしたのだった。
三人は沈黙の中で立ち尽くした。リビングの時計の音だけが、不気味に響く。
「タカシくん…」
シオリの声はかすれていた。
「どうしてここに?」
タカシは深く息を吸い込み、シオリの目を見つめた。
「シオリ、話さなきゃいけないことがある。君と、お母さんとの間で」
雪が窓の外で静かに舞い始めた。長く危険な秘密の冬が、ついに解け始める時が来たのだ。
シオリは母親と恋人の間を見つめ、ゆっくりとソファに腰を下ろした。彼女の頬を一筋の涙が伝った。
「話して。すべてを」
タカシとミキは顔を見合わせ、重い沈黙を分かち合った。この先、どんな言葉でこの関係を説明できるだろうか。どんな言い訳が、これほどの裏切りを正当化できるだろうか。
しかし、時は戻らない。真実は、雪解けの水のように、三人の間に流れ込もうとしていた。
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