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第5章:夢の国、約束のキス、そして明日へ(小6・春)
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1. 夢の国、解き放たれた二人
2026年3月、舞浜。
春の柔らかな日差しが、駅のホームを包み込んでいた。
「遥人くん、こっち!」
改札を出てすぐ、朱里が弾むような声で手を振った。
今日の彼女は、塾で見せていたポニーテールではなく、緩く巻いた髪にパステルカラーのコートを着ていた。その姿は、遥人の知っている「仲田さん」ではなく、一人の「女の子」としての朱里だった。
「ごめん、待たせた?」
「ううん、今来たところ。……行こう?」
二人は並んでゲートをくぐった。
今までは人目を気にし、塾の帰りに数メートル離れて歩いていた二人にとって、堂々と隣を歩けること自体が、どのアトラクションよりも刺激的だった。
ポップコーンの甘い香り、耳に届く陽気な音楽。
遥人は意を決して、朱里の指先に触れた。朱里は一瞬、はにかむように微笑むと、自分の指を遥人の指の間に滑り込ませた。
12歳の、小さくて温かい手。
「合格して、本当に良かったね」
朱里の言葉に、遥人は深く頷いた。
2. 夕暮れのシンデレラ城にて
夕暮れ時。オレンジ色の光がパークを染め、シンデレラ城が幻想的に浮かび上がる。
二人は喧騒を離れ、城の裏側にある静かなベンチへと向かった。
朝からたくさんのアトラクションに乗り、笑い転げた二人だったが、この場所に来ると急に言葉が少なくなった。
「ねえ、遥人くん。あの時……」
朱里が、シンデレラ城の尖塔を見上げながら呟いた。
「10月に約束したこと、覚えてる?」
心臓の鼓動が、耳元まで響いてくる。
「忘れるわけないだろ。……合格したら、ここで、って」
遥人は立ち上がり、朱里の正面に立った。
周囲には誰もいない。聞こえるのは、遠くで鳴るパレードの微かな残響だけ。
「俺、……朱里がいたから、最後まで頑張れたんだ。中学に行っても、ずっと一緒にいたい」
朱里が静かに目を閉じる。
遥人は震える肩を抑えながら、ゆっくりと顔を近づけた。
触れるだけの、ほんの一瞬。
温かくて、柔らかくて、少しだけ震えていた、初めての唇の感触。
顔を離すと、朱里の目には涙が光っていた。
「……泣いてるの?」
「ううん。……嬉しくて。本当に、私たち、頑張ったんだなって思って」
遥人は彼女の頬の涙を指で拭い、今度はしっかりと、彼女を抱きしめた。
受験勉強という過酷な冬を共に越えた二人にとって、それは単なる「恋」ではなく、確かな「絆」の証だった。
3. 新しい日常の始まり
それから、中学校の入学式までの数日間。
二人は毎日、メールを交わし、時には公園のベンチで並んで「中学準備講座」の課題を解いた。
「ねえ、中学生になったら、登校の沿線、同じ方向なんだよね」
遥人が、新しいカバンのキーホルダーをいじりながら言った。
「うん。各駅停車に乗れば、毎朝会えるね。……『バカップル』って思われるかな?」
「いいよ、別に。俺、朱里と一緒なら、何て言われても構わない」
朱里は嬉しそうに笑い、遥人の腕に自分の腕を絡めた。
「でも、約束して。中学は出会いも多いだろうけど、絶対、浮気は禁止!」
「当たり前だろ。朱里が他の誰かに取られないように、俺の方が必死なんだから」
4. 桜のつぼみが膨らむ頃
2026年4月。
二人は、別々の中学校の制服を着て、いつもの駅のホームに立った。
遥人の詰襟はまだ少し大きく、朱里のセーラー服のプリーツは真っ直ぐに伸びている。
「行こうか」
「うん」
電車がホームに滑り込んでくる。
二人は並んで車両に乗り込んだ。
かつて、孤独に塾へ通っていたあの頃とは違う。
繋いだ手の中には、4年間の努力と、12歳の決意と、そして輝くような未来が握りしめられていた。
幼かった小学生カップルは、春の風に背中を押されながら、ほんの少しだけ大人になって、新しい扉を開けた。
2026年3月、舞浜。
春の柔らかな日差しが、駅のホームを包み込んでいた。
「遥人くん、こっち!」
改札を出てすぐ、朱里が弾むような声で手を振った。
今日の彼女は、塾で見せていたポニーテールではなく、緩く巻いた髪にパステルカラーのコートを着ていた。その姿は、遥人の知っている「仲田さん」ではなく、一人の「女の子」としての朱里だった。
「ごめん、待たせた?」
「ううん、今来たところ。……行こう?」
二人は並んでゲートをくぐった。
今までは人目を気にし、塾の帰りに数メートル離れて歩いていた二人にとって、堂々と隣を歩けること自体が、どのアトラクションよりも刺激的だった。
ポップコーンの甘い香り、耳に届く陽気な音楽。
遥人は意を決して、朱里の指先に触れた。朱里は一瞬、はにかむように微笑むと、自分の指を遥人の指の間に滑り込ませた。
12歳の、小さくて温かい手。
「合格して、本当に良かったね」
朱里の言葉に、遥人は深く頷いた。
2. 夕暮れのシンデレラ城にて
夕暮れ時。オレンジ色の光がパークを染め、シンデレラ城が幻想的に浮かび上がる。
二人は喧騒を離れ、城の裏側にある静かなベンチへと向かった。
朝からたくさんのアトラクションに乗り、笑い転げた二人だったが、この場所に来ると急に言葉が少なくなった。
「ねえ、遥人くん。あの時……」
朱里が、シンデレラ城の尖塔を見上げながら呟いた。
「10月に約束したこと、覚えてる?」
心臓の鼓動が、耳元まで響いてくる。
「忘れるわけないだろ。……合格したら、ここで、って」
遥人は立ち上がり、朱里の正面に立った。
周囲には誰もいない。聞こえるのは、遠くで鳴るパレードの微かな残響だけ。
「俺、……朱里がいたから、最後まで頑張れたんだ。中学に行っても、ずっと一緒にいたい」
朱里が静かに目を閉じる。
遥人は震える肩を抑えながら、ゆっくりと顔を近づけた。
触れるだけの、ほんの一瞬。
温かくて、柔らかくて、少しだけ震えていた、初めての唇の感触。
顔を離すと、朱里の目には涙が光っていた。
「……泣いてるの?」
「ううん。……嬉しくて。本当に、私たち、頑張ったんだなって思って」
遥人は彼女の頬の涙を指で拭い、今度はしっかりと、彼女を抱きしめた。
受験勉強という過酷な冬を共に越えた二人にとって、それは単なる「恋」ではなく、確かな「絆」の証だった。
3. 新しい日常の始まり
それから、中学校の入学式までの数日間。
二人は毎日、メールを交わし、時には公園のベンチで並んで「中学準備講座」の課題を解いた。
「ねえ、中学生になったら、登校の沿線、同じ方向なんだよね」
遥人が、新しいカバンのキーホルダーをいじりながら言った。
「うん。各駅停車に乗れば、毎朝会えるね。……『バカップル』って思われるかな?」
「いいよ、別に。俺、朱里と一緒なら、何て言われても構わない」
朱里は嬉しそうに笑い、遥人の腕に自分の腕を絡めた。
「でも、約束して。中学は出会いも多いだろうけど、絶対、浮気は禁止!」
「当たり前だろ。朱里が他の誰かに取られないように、俺の方が必死なんだから」
4. 桜のつぼみが膨らむ頃
2026年4月。
二人は、別々の中学校の制服を着て、いつもの駅のホームに立った。
遥人の詰襟はまだ少し大きく、朱里のセーラー服のプリーツは真っ直ぐに伸びている。
「行こうか」
「うん」
電車がホームに滑り込んでくる。
二人は並んで車両に乗り込んだ。
かつて、孤独に塾へ通っていたあの頃とは違う。
繋いだ手の中には、4年間の努力と、12歳の決意と、そして輝くような未来が握りしめられていた。
幼かった小学生カップルは、春の風に背中を押されながら、ほんの少しだけ大人になって、新しい扉を開けた。
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