【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 現実になった異世界生活

ジェンside-2. 異世界2~5日目 魔法と剣術を習って狩りに出てみる

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 家で使っているベッドに比べると寝心地は良くないけど、十分なレベルだったかな。思ったよりもぐっすり眠っていたのは昨日精神的に疲れてしまったせいと、もとの世界で夜だったのにそのまま昼になっていたので実質起きている時間が長かったこともあるのかもしれない。だけど特に時差ぼけにもならなかったので助かったわ。



 朝食はトーストとハムを焼いたものと野菜のサラダとデザートというメニューだった。卵はちょっと高めだったからメニューには入れられないのかな?

 朝食を終えてから、宿はもうここでいいかと残りの9日分の支払いを済ませることにした。もっといいところもあると思うけど、10日間だったらここでも十分と思うからね。簡単に準備を整えてから役場へと向かう。



 受付で講習会費用の200ドールを支払って訓練場に向かうと他に講習を受けると思われる人達がいた。私と同じくらいの年齢の男性だけで、女性はいないみたい。この3人は同じパーティーの人なのかな?
 私の方を見るとすぐにやってきて話しかけてきた。

「講習を受けるんだよね?一人だけ?もしまだパーティーを組んでいないなら俺たちと一緒にどう?」

「一人ですけどまだ冒険者としてやっていくかはわかりませんので、パーティーとかまでは考えていません。ありがとう。」

「わかった。もし俺たちのパーティーに興味があったら声をかけてくれよな。まだ俺たちの中でも役割は決まっていなくて、いろいろ試しているところなんだ。」

「そうそう。今のところ3人とも使えるのは剣や弓だけなんだけど、魔法を使える人がほしいと思って誰か素質がないか講習を受けに来ているんだ。」

 少し話をしていると、私が最後だったみたいですぐに講義が始まった。


 まずは魔法がどんなものなのかの説明を受けてから実践となったんだけど、魔素というもののイメージがなかなかつかめない。指導員が集めた魔素を体に流してくれたことで少し感覚がつかめたのか、しばらくするとやっと魔素というものを体に取り込むことができるようになったみたい。

 このあとはそれを手に集めることに集中すると、結構あっさりとできるようになった。日本の漫画の知識が役に立っているのかな?
 それからイメージで貯まった魔素を物質に変換して飛ばすようにするのだけど、まずは風のイメージで行うのがいいと言われて試していく。「手のひらに貯まった空気があることをイメージをしてそれを飛ばすんだ!」と言われても簡単にできるようになるわけないわね。


 お昼には近くで買ったサンドイッチを食べてからひたすらイメージを繰り返していると、やっと手のひらに空気の塊のようなものができるようになった。これを手のひらから発射するイメージを繰り返していると、威力は小さいけど間違いなく風の塊が的に当たった・・・当たったよね?

 他の生徒は最初のうちは私に助言をしようとしていたんだけど、私がうまくいき出すとそれを見て焦っているようだった。焦れば逆にうまくいかなくなると思うわ。



 講習が終わる頃にはなんと水の生成もできるようになっていた。コップの半分くらいの水が出てくるだけなんだけど、何もないところから水が出てくるのはほんとびっくりしてしまうわ。
 水魔法はまだ生成させるだけで攻撃までできるわけじゃないんだけど、魔法で出た水は普通に飲めるようなので外に出たときには役に立ちそう。


 指導員は1日で風魔法と水魔法が使えるようになったのをみて驚いていた。多分イメージの仕方の問題だと思うけど、これって漫画とか本とか読んでいたせいでイメージしやすかったのかな?でもこれだったら他の魔法もイメージがうまくいけば使えるようにはなりそうね。ただまだまだ威力が弱すぎて戦いには使えそうにないんだけどね。


「なあなあ、もしよかったら夕食おごるからコツとか教えてくれないか?」

 講義の最初の時の態度と違ってかなり丁寧な感じで聞いてきた。

「それじゃあ、お店はこっちで決めてもいいならいいわよ。」

 変なお店に連れて行かれても困るので、宿の近くのお店を指定して行くことになった。事前にいくつかお店を確認しておいてよかったわ。

 最初はちょっと嫌悪感があったのだけど、彼らは本当に魔法のことが聞きたかったようで、食事の間色々と質問を受けたので私が持っているイメージを伝えてあげる。こちらも変な印象を持たれない範囲で情報収集することにした。
 食事を終えると「本気で冒険者になるようだったら、パーティーのことは考えてくれよな。」と言って去って行った。思ったよりもいい人たちだったみたい。

 宿に戻ってからシャワーを浴びてベッドでくつろぐ。覚えた魔法で空気や水を操るととても楽しいわね。やっぱり異世界と言ったら魔法だよね。絶対にもとの世界ではできないことだから。いろいろと遊んでいるとかなり遅い時間になってしまったので慌てて眠りについた。



 夕べは夜更かしをしてしまったせいか朝はなかなか起きることができなかった。宿にモーニングコールをお願いしていてよかったわ。目覚まし時計のようなものがあればいいんだけど、こっちでもあるのかな?なにか考えないといけないわね。

 朝食はロールパンのようなものと、ソーセージとサラダだった。今日は剣術の講習があるというのでしっかりと食べておかないといけないわ。

 準備を整えてから役場に行って講習の受付をすませる。講習費用は魔法の講習よりも安く50ドールだった。訓練場に行くと、今回は講習に女性もいたのでちょっとほっとする。



 今回の講習で受けることができるのは剣や短剣となっていたので短剣の使い方を習うことにした。訓練には練習用の短剣を使って訓練するみたい。
 剣や弓はスキルがあるのだけど、フェンシングや弓道でのスキルなのでさすがにこっちの武器を使えるとは思えないからね。スキルを持っているから使えると言うことではないみたいだし。

 ある程度の基本的な型を習ってから素振りや指導員との対人を繰り返す。さすがにそう簡単に使い方に慣れるわけではないのだけど、しばらくやっているとなんとなく形っぽくなってきた・・・と思う。

 お昼の時に講習を受けていた人たちと話をすると、全員が成人した人ではなく、成人前の人たちも護身術の意味も含めて講習を受けているようだった。ちなみに成人した人は一応冒険者登録しているけど、冒険者になるというわけではないみたい。

 すでに働くことは決めているが、こういう世界なのである程度魔獣とも戦えるようになっていた方がいいと言うことで訓練を受けているみたいだ。

 午後も他の講習生と一緒に訓練を続けたのだけど、これだけで十分なレベルになったとは思えない。とりあえず明日も講習を受けることにしようかな。


 一緒に講習を受けた女性2人から「せっかく知り合ったんだから、夕食一緒に食べに行かない?」と声をかけられた。えっ?私と?
 なんかこんな風に女性から気軽に声をかけられると言うことがなかったのでちょっと驚いたんだけど、せっかくだから行くことにした。女性だからと言って安心するわけではないけど、きっと大丈夫だよね?


 彼女たちが時々行っているというちょっとおしゃれな感じの食堂へやってきた。ここが安くておいしいおすすめのお店みたい。中は綺麗に飾り付けられており、女性を中心とした店の雰囲気だった。まだちょっと時間が早いせいもあり、店内はすいていた。

 日替わりのセットが2種類あったので、ハンバーグセットの方を注文する。セットで40ドールとかなりお手軽な感じだった。

 彼女たちの名前はアキラとマラルで、この町で生まれ育った幼なじみらしく、今年の1月に成人したばかりのようだ。今は2/6なので1ヶ月前くらいなのかな?調べてみたところ、年齢は1/1にまとめて上がると言っていたはず。

 それぞれ親は漁師と雑貨屋経営をしているらしく、今は家の手伝いや事務のようなことをしながら訓練をしているらしい。一応冒険者として時々二人で狩りに行ったりしているようだが、結果は聞かないでと言っていた。

 私は他の村からやってきたんだけど、両親は急用が入ったせいで別の町に行ってしまい、少しの間一人で生活しているということにしている。もともと小さな村で過ごしていてほとんどそこから出たことがなかったのであまり周りの情勢がわかっていないと言うことにした。なんか事情がありそうと言うことでそれ以上の詮索はされなかったので助かった。

 やっぱり女性と言うだけでパーティーに誘われることが多いみたいだけど、実力も確認せずにいきなり誘ってくる人達はどう考えても危なくて一緒には行けないと言っていた。まあそれは当然よね。他にも色々と町の情報や今のはやりなど聞くことができて、とても楽しい時間を過ごすことができた。

 帰りに雑貨屋に行くと目覚まし時計のようなものがあったので購入しておくことにした。どういう構造なのか聞いてみると、「それは1ドール硬貨で使えるタイプだよ」と返答があった。よく見てみると、後ろの部分に硬貨を差し込む穴が開いていたので、ここに魔獣石を入れると魔素を取り出すということなのかな?



 次の日も短剣の講習で一日訓練をした。少しは上達したのかなあ?と思っていたら、指導員から魔法も使えるのなら町周辺の魔獣くらいなら大丈夫だろうと言われてほっとする。明日はアキラとマラルの3人で一緒に狩りに行くことにしているのでちょっと楽しみなんだよね。


 今日は講習の後に図書館に行って色々と調べてみる。魔法には一般魔法と言われる生活に関わる魔法があり、他の魔法についても攻撃魔法だけでなくいろいろと応用ができることが書かれていた。やっぱり魔法ってイメージさえすれば何でもできる万能なものなのね。

 宿に戻ってから浄化の魔法をやってみた。体の汚れを分解するイメージでいろいろと試していると、うまく発動したみたいだ。ただすごくキレイになったという感じでないのはイメージがまだ足りないせいなのか、単に魔法に慣れていないせいなのかは分からない。使っていれば効果も上がるのかな?

 シャワーを浴びたあと、服を洗ってから眠りにつく。浄化魔法が進化すればシャワーや洗濯は魔法でできるようになるのかなあ?本に書かれている内容では簡単に洗う程度くらいにしかならないようだけど・・・。



 朝食を食べたあと、早々に準備をしてから町の出入り口へと向かうと、すでにアキラとマラルが待っていた。

「ごめんね。待たせちゃったかな?」

「大丈夫、大丈夫、私たちも今来たところだからね。」

 二人とも剣に簡単な防具という出で立ちで私とあまり大差がない。マラルは弓も持ってきているが、ほとんど当たらないと言っていた。


 まずは事前に確認していたスライムや角兎が出るという森の周辺にやってきた。スライムは上位種が出ることもあるみたいだけど、速度がないのですぐに逃げれば大丈夫らしい。

 辺りを警戒しながら歩いていると木の陰にスライムを発見。みんなで囲んで順番に切りつけていく。特に反撃もないうちに核の部分を割ることで倒すことができた。
 このあとも交代でスライムを倒していく。せっかくなので風魔法でも攻撃したりもしてみたんだけど、スライムの表面に傷が入るくらいですぐに修復されて意味がなかったのはちょっと悲しかったわ。まあ威力も弱いからしょうがないのかな?

 途中で何度か角兎も見つけるんだけど、すぐに逃げられてしまって倒すどころか攻撃すらできない。遠くから風魔法や弓で攻撃もしてみたけど、うまく当たらないのでどうしようもないのよね。


 スライムは順調に倒していたのだけれど、慣れてきて大胆になりすぎたのか、アキラがスライムから吐き出された液体を浴びてしまった。どうやら普通のスライムではなく、毒スライムだったみたいで皮膚の色が変色してきた。あわてて薬をかけたのですぐに元に戻ったけど、ちょっと焦ってしまったわ。

 薬の価値についてはよく分からなかったので気にしていなかったんだのだけど、二人は「ごめんね、大事な薬を使うことになって。」とひどく恐縮されてしまった。だけど、いくら弱い魔獣でもやっぱり魔獣なので油断してはいけないと改めて考えさせられたのよね。


 お昼は持ってきたサンドイッチで簡単に済ませるが、このあたりは魔獣から襲ってくることも少ないので大分気楽だった。二人といろいろと話しながらピクニック気分だ。

 ここで女性特有のことについての話になる。どうやら月のものや妊娠をさせない薬や魔法があるらしく、女性のほとんどはこの薬を使っているらしい。月のものが来たときから服用すれば、使っている間はそのあとずっとこなくなるらしい。ただし個人差はあるが、7~10日おきに一回は服用しないと効果が出ないみたい。

 「今まで使っていなかったの?」と言われて、「うちは自然のままにというスタンスだったから、教えてもらえなかったのかも。」と言っておいた。「確かにそういう家や村もあるわね。」と納得してくれたので助かった。町に戻ったら買っておいた方がいいわね。


 お昼の後も狩りを続けていたのだけど、風魔法で角兎を攻撃したときにうまく足に当たって動きを止めることができたのでみんなで囲んで倒すことができた。

 素材として買い取り対象だったので持って帰るのかと思ったのだけど、アキラが解体できるようなのでやってもらうことになった。仕事の手伝いで魚を捌いたり、魔獣や動物を捌いたりすることがあるみたい。
 首を落としてから血抜きをして解体していくのだけど、思ったよりは嫌悪感がなかったわね。小さな頃に牛の解体現場などを見たりしていたせいかなあ?

 買い取りの対象である角と肉を切り分けて袋に詰める。あまり長く置くと価値も下がってしまうので、ちょっと早いけど帰ることになった。


 今日はスライムを20匹くらい倒したけど、素材はないので魔獣石が20個だけ。マラルが魔獣石を分解していくと、全部で26個になったので26ドールとなった。
 角兎はちゃんと処理ができていたらしく、80ドールで売れたので魔獣石と併せて一人30ドールくらいの稼ぎとなった。

「せっかくだからこのお金で夕食に行かない?」

 マラルがそう言ってきたので私たちもうなずいた。もちろんそんなに贅沢できるわけではなのだけど、初めて狩りで得られた報酬なのでみんなテンションが高い。食事をしながら今日の狩りについて話し、また都合が合ったら一緒に狩りをしようねと言って宿に戻る。

 もしこっちにずっといるのだったら彼女たちとパーティーをくんで冒険したら楽しいかもしれないなあ。
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