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第一部 現実になった異世界生活

ジェンside-6. 異世界56~147日目 本気で冒険者になってみる

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 翌朝、彼が私の働いている宿にやってきた。やっぱり他の男性と違って私を見る目にいやらしさがないのが好印象だわ。昨日、話をしていたときも本当に心配してくれていたようだったからね。
 単に女性慣れして本性が見えないだけとか?それとも単に女の子に興味がないとか?大体の男性はすぐに私の胸に視線が行くんだけど、そういう雰囲気もない。まさか幼女趣味とか?


 帰れなくなってからできる限り教会に行っているというのでジュンイチと一緒に行ってみることにした。するとこの世界の神様から声が聞こえてきたのには正直驚いたわ。今までにも転移者はこの世界に来たことがあるらしく、みんなもとの世界に帰ることができていたみたい。
 なにかトラブルがあったようなので確認してみると言うことだったけれど、いつかは分からないけど、少しだけ地球に帰る糸口ができたわ。よかった・・・。


 ジュンイチと一緒にお昼を食べながら今後のことを考える。神様の感覚だと、たとえ戻れるとしても数年、下手をすれば数十年となる可能性もあるわよね。
 事前に聞いた話が本当だとすると、年もとらないことになるので、期間が長くなると同じところにいるのはまずいのかもしれないわ。冒険者として活動していたら、拠点を変えてもお金を稼ぐことができるし、あるという噂の若返りの薬を手に入れたとすることもできるかもしれない。若返りと言っても見た目だけなので寿命は延びないらしいけどね。
 今後のことを考えると、こっちの人と一緒にやっていくよりは転移者同士で一緒にいた方がいろいろと都合がいいかもしれないわ。彼も誠実そうだしね。

「ジュンイチ、一緒に冒険者としてやっていく気はない?」

 彼に声をかけると、彼も同じ考えだったらしく承知してくれた。
 絶対に元の世界に戻ってみせるわ。こんな形で地球のみんなと別れたままなんて絶対にいやだ。絶対に・・・。



 一緒に冒険者をやっていくことにはしたんだけど、うまくやっていけるかもわからないので、次の休みに一緒に狩りに行くことになった。
 まだジュンイチのことをちゃんと信頼したわけではないけど、純粋に戻る方法を探すことを重視しているみたいで私をどうにかしようとは思っていないみたいだからね。私に魅力がないのかなあとちょっと含むところはあるけど、襲われる危険性が低いのなら好都合だわ。



 休みの日になったので魔獣のいる森の近くで狩りを行うことになった。彼は索敵で魔獣の位置を特定しているみたいなので、魔獣を探して延々と歩かなくて良かったのはすごく助かったわ。私の時は狩りをするより探す時間の方がすごく長かったからね。
 索敵の方法を教えてくれたのでやってみたけれど、さすがにすぐには使えなかった。魔法はイメージ次第でどうにでもなるというのは同じ印象みたいで、索敵もレーダーの探知機のように表示するようにイメージしているみたい。

 あと名前の呼び方も変えてもらうことにした。お互いにジェン、イチと呼ぶことにしたんだけど、最初はかなり困惑していたみたい。どうも女性をこんな風に呼ぶことが今までなかったみたいなのよね。そういえば日本の漫画でそういうシーンが多かったわね。


 イチは魔法を補助で使い、剣で戦うスタイルだった。それぞれの戦い方を確認した後、イチが前衛で私が後衛として戦うこととなった。最初に魔法で攻撃をした後はイチを補助する形で攻撃すると、かなり効率よく狩りをすることができて驚いた。意外と戦い方の相性はいいのかもしれない。
 今までは手をだせなかった狼なども倒すことができてちょっとテンションも上がるのはしょうがないわよね。今まで見かけたら逃げていた相手だし・・・。
 イチと一緒に解体もやってみると、お店で色々やっていたこともあり、結構手早くすることができた。収入は私が一人でやっていたときとは雲泥の差だった。


 町に戻ってから先に用事をすませて宿に戻っていると、知り合いから連絡をもらって驚いた。どうもイチが暴力行為で町の兵士に捕まってしまったらしい。いったいなにがあったの?

 役場に行って話を聞くと、どうやら例の3人に絡まれて暴行を受けていたようだった。この町ではけんかなどの暴力沙汰はすぐに捕まってしまうのでそのまま牢屋に入れられてしまったみたい。こんばんはどう考えても引き取りは無理ね。



 翌朝、身元引受人として彼に面談を申し込んだ。特に怪我はなかったと言っているが、治癒魔法で治したのは知っているわよ。イチには特に非はなかったこと、絡んでいた側の問題が役場から報告されたことからすぐに釈放となってよかったわ。

 このあと役場に行って話をした結果、二人でパーティーを組むことにしたのよね。パーティー名は“アース”、昨日もとの世界に戻れることを願って二人で考えた名前だ。
 例の3人組はかなり厳しい罰を受けたみたいだけれど、さすがに仕返しがちょっと怖い。自分たちへの接触を禁止されているのだけど、町の中はまだしも町の外だとどこまで規制できるかわからないので、注意しておかなければならないわよね。イチは索敵が得意なので常に警戒はしておくと言っているけど、私も早く索敵の能力を上げないといけないわ。


 そのあとお金の話になって、イチがパーティー資金を別枠で管理しようと言ってきた。数日一緒にいるだけだけど、この人は信頼できると思う。彼にお金の管理は任せることにして、最低限のお金を残して渡すことにした。もしなにかあったら私の見る目がなかったと諦めよう。
 最初にもらったお金を何に使ったか聞いたらなにかごまかしていた。ちょっと赤くなっていたのできっとあっち方面に使ったと思うわ。やっぱり一応女の子には興味はあるのかな?



 本格的に冒険者として活動するために宿の手伝いをやめようと思ったのだけれど、メイサンとルミナ夫妻に引き留められてしまった。今までお世話になっていたこともあり、結局できる範囲で手伝いをすると言うことで落ち着いた。
 手伝いをすることで宿代を半額にしてくれるようなのでちょっと恐縮してしまった。できるだけ手伝うようにしないといけないわね。



 それから二人で色々と狩りに出たんだけど、野営をしての遠征はかなり効率が悪かったうえ、注意力が落ちて危険なことになってしまった。重量軽減魔法で移動時間もかなり短縮できることがわかったので日帰りで狩りをすることにした。

 いろいろとためした結果、遠出、近場、遠出、近場、休みの5日サイクルで狩りをすることになった。たしかに体力的にもちょうどよかったし、稼ぐ額も結構いい感じになってきて貯金もできる様になってきたのには驚いた。初階位の冒険者でお金を貯められるというのはなかなかないみたいだからね。
 休みもちゃんと取っていたのでアキラやマラルとも一緒に出かけたりした。お金については定期的に小遣いを渡されているし、出かけるときには臨時に少し多めに渡してくれるので特にお金に困ることはなかった。

 狩りから戻ってきて宿に戻る途中、しばらくおとなしくしていた例の三人に襲われかけたけれど、イチがすぐに対応してくれたので助かったわ。でも一歩間違えたら私はもてあそばれ殺されていたかもしれない。イチには感謝しかない。三人組は厳罰に処されたみたいでどこかで強制労働させられることになったみたい。

 30日ののみの市の時には二人で掘り出し物を探して歩いた。食べ物を食べながらいろいろ見て回ったり、掘り出し物を探したりして楽しかった。これってデートになるのかな?
 必死に掘り出し物を探したわけではなかったけれど、3回ののみの市で4つの掘り出し物を見つけてかなりテンションが上がった。売っている人には悪いけど、ありがたく使わせてらもらおう。
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