【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界らしい冒険

42. 異世界184日目 首都サクラでの生活

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 今日で宿を移るため、荷物の整理をしてからコーランさんと一緒に朝食をとる。朝食はほとんど決まっているらしく、パンとベーコンエッグ、スープ、サラダ、果物だ。
 果物は見た目と味が違うのでかなり違和感をうけてしまう。酸っぱいと思ったものが甘かったり、逆だったりするからなあ。ブドウとかは普通なんだけどね。

 昨日話したフードコートについては自分が言ったアイデアをベースにいろいろと実践してみるらしいが、結果が出るのは1ヶ月ほど待たないとわからないとのことだった。うまくいくようなら他の町にも拡張していくらしい。いろいろお世話になっているのでうまくいってくれるといいなあ。


 コーランさんは明日には別の町に移動するみたいで、相変わらず忙しそうにしている。このため、何かあった場合はここのお店の店長をやっている息子のカルニアさんを訪ねてくれといってあらためて紹介される。

「いろいろと意見を言っていただいてありがとうございます。何かあれば私に言ってもらえればいろいろと対応できると思いますので、今後もよろしくお願いします。」

 20代後半くらいの誠実そうな人であまりコーランさんとは似ていない。どうやら奥さん似のようである。

「こちらこそ、いろいろとありがとうございました。」

 もし他の町に行くことがあったときも、大体の大きな町には支店があるので顔を出してくれるように言われる。そのときに何か新しいアイデアがあったら教えてほしいとのことだった。各店舗には自分のことを話しておいてくれるらしいので、コーランさんの名刺と一緒に自分の名前を言えば話は通るようだ。


 季節は夏を過ぎて秋になり始めているようだが、まだ残暑という感じで暑い日も多い。目星をつけていた宿に行ってから今日からの宿泊をお願いする。とりあえず約1ヶ月の8/31までを予約することにした。

「ほんとにツインでいいんだね。何かあっても文句言わないでよ。」

 もう一度ジェンに確認してみたが、ツインでいいと言うことで変わらないようだ。

 そのあとも一緒に行動するのか、別々に行動するのかも決まっていない。自分的にはかわいい女の子と一緒に行動するというのはうれしいけどね。まああっちの処理には困ってしまうんだけど。



 宿の予約をしてから必要のない荷物だけいったん預かってもらい、町の外へと出る。重量軽減の魔法で一気に走って行くと60分ほどで狩り場に到着できた。
 索敵すると思った以上に魔獣が多い。毎月の10日頃に町の兵士達が一掃すると聞いていたのでその前だったのが良かったのだろう。


 魔獣は角兎や大蜘蛛、大蛇、毒蛾、芋虫、甲虫、狼もどきくらいで初~並階位のレベルである。まれにその上位種が出ることもあるようだが、それでも今の自分たちにとっては十分倒せるレベルなので問題はない。
 途中お昼休憩は取ったが、夕方まで狩り続け、かなりの数を狩った。素材になるのは少ないんだけどそれでもリュックはいっぱいだ。全部で100匹以上は狩ったと思うが、途中で数えるのはやめてしまった。



 帰ってから買い取りのお店に持って行き、素材を売り払うと、肉関係は他の町よりも買取額が高かった。なぜか聞いてみると、需要は多いが、鮮度がいいものがあまり入らないからということだった。

 素材の買い取りで3500ドール、魔獣石は350ドールくらいなので結構いい稼ぎとなった。ただ普通だと日帰りはできないし、荷物もここまで運べないだろうから割に合わないだろうなあ。


 今回サクラにやってくる前に手持ちの服もある程度処分してきたので、衣料店によって買い物をしていく。ジェンは気に入ったパジャマがあったみたいでかなり喜んでいた。普段着も数着購入してから宿へと向かう。



 今回泊まる宿はシルバーフローという10階建てのホテルのようなところで、ちょっと高級宿という感じだ。前にアーマトで泊まったところよりは格は落ちるが、あれはちょっと別格だ。
 受付で宿泊の手続きをして月末までの料金をまとめて払っておく。大きなお店だと、カードから直接引き落とせるのが楽でいい。

 支払いをすると鍵を渡されるが、カードキーのようになっていた。建物の入退場などにもこのカードキーを使わないといけないらしい。セキュリティーが厳しいな。ジェンと二人分のカードを受け取ってから預けた荷物を回収して部屋に向かう。

 部屋は5階にある502号室だ。移動はエレベーターのようなものがあるので階段を登らなくていいのはうれしい。
 もらったカードキーをあてて目的の階を押すようになっていたんだが、よく分からなくてジェンがやってくれた。地球でも最近のホテルはこんな感じらしい。そんなホテル泊まったことがないし・・・。

 部屋に入るときもカードをあてると鍵が開いて中に入れるようだ。「出るときにカードを忘れたら入れないからね!」とジェンに釘を刺される。気をつけます。


 部屋はツインなのでシングルベッドが二つに、小さなテーブルと椅子とソファーが置かれている。広さ的には十分という感じか?洗面台とトイレとシャワーも付いているので時間的にお風呂には入れないときはいいね。まあそのときは浄化魔法で済ませそうだけどね。かなりリッチな感じだけど、まあ臨時収入もあったし、たまにはいいだろう。
 アーマトで泊まった宿よりは部屋も狭いし、置いている家具とか質も落ちるみたいだけど、十分広いし実際に済むにはこのくらいの方がコンパクトでいいよね。

 もちろん部屋にはエアコンのような魔道具も置いてあるので部屋の温度も快適だ。まあエアコンはそこそこのレベルのところだったらどの宿でも付いているものなんだけど、安い宿のは効きが悪いんだよね。

 部屋には大きめの窓があり、外を見ることができるんだが、他にも建物があるのであまり展望は良くない。最上階にも行くことができるようなので後で行ってみるかな。

 あとは夕方から夜にかけての3時間限定だが地下にある大浴場が使えるのがうれしい。カサス商会の宿にもお風呂はあったけど、大浴場というわけではなかったからね。


 荷物を簡単に片付けてから今日くらいはちょっと贅沢をしようと言うことで最上階にある展望レストランへ。

「お~~~、なんか大都会という感じの眺めだ。」

 レストランからの眺めはなかなか良くて、思ったよりも夜景がきれいだった。魔道具のライトが設置されているので夜でも結構明るいのである。ジェンもしばらく眺めに見とれていた。こういう景色はこっちではなかなか見ることがないからねえ。


 夕食はコース料理みたいな感じで、順番に料理が出てきた。ジェンは一応こちらのマナーについて確認していたようだが、特に決まったテーブルマナーというものはないらしい。あまり音を立てないこと、手を使わないことくらいでいいようだ。また皿によってナイフとフォークを使い分けるという感じでもないらしい。

 ジェンは地球でもこういうことに慣れているみたいで、きれいな所作で食事をしている。それに対して自分はまあ・・・。母がこういう料理が好きで家でも作っていたから最低限のレベルはあると思うが、ジェンに比べるとね。

 いつもはほとんど飲まないんだが、ジェンはワインまで飲んでいた。地球にいたときもちょこちょこ飲んでいたらしい。こっちのワインも結構おいしいようだ。
 自分はあまりおいしいとは思わないのでやめておく。いずれ少しは飲めるようになりたいとは思っているけど、今はいいかな。

 ジェンは何種類か飲んでいたんだが、「これだったらおいしいんじゃない?」と渡してきた。ちょっと飲んでみると、ジュースみたいな感じであっさり飲むことができたんだが、ちょっと体がほてってしまう。って、これってジェンが途中まで飲んでいたやつだよな・・・。といってもジェンには普通のことで、気にしているのは自分だけかな。


 夕食を堪能した後、いったん部屋に戻ったあと、お風呂へ向かう。ジェンも行くみたいだが、自分ほどはテンションが上がっていないのはあまりお風呂に入るという風習がないせいだろう。

 お風呂の案内を見ると、入り方は前行った宿と同じく裸もしくは湯浴み衣装を着て入るようになっていた。中にいるのは数人だけでみんな湯浴み衣装を着ていた。こっちではあまり裸で入らないのかもしれないなあ。

「あ~~~~っ!!」

 体を洗ってから湯船につかると声が出てしまう。うーん、いい気持ちだ。こっちには温泉とかないのかなあ?あっても海外みたいに水着ではいるスタイルかもしれないね。

 60分ほどお風呂を堪能してから部屋に戻ると、ジェンはすでに部屋に戻っていた。

「おそかったわね。」

 なんかすねたように言われても、お風呂に行ったらそのくらいかからないか?

「いや、温泉とか行ったらこのくらい普通に入っているよ。まあいつもというわけじゃないけど、最初の日くらいはのんびり浸かっていたいからね。」


 ある程度慣れてしまったこともあり、ジェンと同室と言ってもあまり気にならなくなってきた。というか気にしないようにしているのかもしれないけどね。ただ今までと違ってワンピースタイプのパジャマはちょっと目の毒だ。

 「ねえ、こっちにこないの?」と布団に招くような仕草でジェンがからかってくる。結構ワインを飲んでいたので酔っているのかもしれない。

 「それじゃあ・・・」と布団に潜り込むような冗談もできない自分だった。自分のベッドに入るとすぐに眠りに落ちていった。


~ジェンSide~
 なんとか説得してツインの部屋に泊まることになってちょっとうれしい。最後まで別の部屋にしようかと言っていたけどね。私と泊まれると言うよりは大浴場が付いている宿に泊まれるというのがうれしいというのがちょっと引っかかるけど。

 夕食はちょっと贅沢に展望レストランで食べることにした。最近大きな収入もあったのでたまにはいいだろうと言うことらしい。お金が一気に入ると一気に使う人もいるけど、イチはまだ堅実なようね。
 いまは140万ドールくらいあるらしい。14万ドルくらいだから普通に生活するには十分な金額かな。普通に狩りをしているときでも貯金できるくらいには稼いでいたからなんとかなるかな?どのくらいになるか分からないけど来月からはインスタントラーメンのお金も入ってくるからね。


 夕食の時に久しぶりにワインを飲んでみた。こっちのワインもなかなかおいしいので助かる。異世界ものの小説ではお酒がおいしくないというのが結構多いからね。
 私の飲みかけのワインをイチにも勧めてみたら少し飲んでくれた。飲んだ後で、私が口をつけたものと気がついたのかちょっと挙動不審になっていたのはちょっとおかしかった。こんなことで照れるなんてかわいいものね。

 食事の後でお風呂の時間となったんだけれど、イチはかなりテンションが上がっている。大浴場というのはそんなにいいものなのかな?
 湯浴みの服を着てからお風呂に入ってみると、確かにかなりリラックスするものだった。いつもはシャワーとかバスタブくらいだったから、あまり大きな風呂に入ることはなかったのよね。温泉とかもプールという感じだったからあまり大きなお風呂という感じではなかったしね。


 部屋に戻ってからしばらくたってもイチが帰ってこない。60分ほどたってから満足した顔で戻ってきた。遅かったわねと聞くと、お風呂に行ったらこのくらい普通だろ?って返事が返ってきた。そんなものなのかな?

 寝るときに「こっちに来ないの?」とからかってみたが、顔を赤らめて自分のベッドに潜り込んでしまった。やっぱり私には興味がないのかなあ?それとも我慢しているだけ?
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