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第一部 異世界での懐かしい人々

135. 異世界653日目 タイガ国へ

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 宿で朝食をとってから準備をしてタイガ国への通関ゲートへ。ここのゲートは町が隣り合ったところではなく、山道を少し登ったところにあるトンネルだった。以前はこのトンネルもなく、結構な山道を登っていかなければならなかったらしい。
 結構早い時間なんだが、すでにかなりの行列になっていた。でもここにも貴族用の通路があったので使わせてもらうことにした。
 身分証明証を出すと、なんかかなり対応が丁寧なのでどうしたのかと思ったんだが、タイガはハクセンとは対等ではなかったことを思い出した。属国とかではないが毎年貢物をしているとか書いていたな。
 たしかにハクセンの貴族には礼を尽くさないといけないかもしれないね。自分たちにしても意味が無いだろうけど・・・。貴族だったせいか、通関料は無料だった。


 すでに11月と季節は冬になっているんだが、思ったほど寒くない。南の方に来ていることと、暖流か何かの影響なんだろう。まあ長袖はいるけどね。

 トンネルを抜けてから山道を下っていくと、町が見えてきたが、タイガ国側の町トルガはなんかちょっと雰囲気が違っていた。周囲を高い山に囲まれている国だったので文化がちょっと異なっているのだろう。もともとは他国との交流も少なかったみたいだしね。
 建物は石造りだが木材も結構使われている。さらに着ている衣装がちょっと違っていて、東南アジアの方のような印象なのである。顔つきも少し異なっているのはもともとの人種が少し異なるのかもしれない。



 まずは役場に行って国の移動について登録しておく。ここでなにか面白い依頼でもないか確認してみるが、特にいいものは見つからない。ただ資料を読んで気になったのは龍のことだ。
 タイガ国の資料はあまり読んでいなかったんだが、タイガ国の東の山に龍が生息しているらしい。この龍は魔獣ではなく、古代文明の時代から生きていると言われる神獣という扱いになっていた。
 特に人を捕食したりするわけではなく、ほとんど人前に姿を現さないんだが、過去に何度か英雄気取りで討伐に向かったものが反撃に遭い、さらに近くの町まで滅ぼされたことがあるようだ。このため現在は龍の住処に行く道は警備されており、変な人間が入り込まないようにしているらしい。

 ちなみに魔獣で竜と言われるものはいるが、それは翼竜や蜥蜴が進化したものであり、龍とは根本的に異なるもののようだ。


 せっかくだから見てみたいと思って聞いてみると、龍の監視塔への立ち入りは普通にできるみたいで、観光地のようにもなっているらしい。これは行ってみなければならないだろうな。


 監視塔はここから南東方向の山の麓にあるチルトという町から行けるらしいが、その町に行くには山沿いの道を走って直接行くか、王都ヒョウマ経由の街道を行くかの2通りあるようだ。安全性を重視すると王都経由だが、時間は倍近くかかるらしい。

 山沿いのルートでも盗賊が出ることはほとんど無いが、魔獣が出ることが結構あるらしい。出る魔獣は上階位くらいで時々良階位の魔獣が出てくるようだ。さすがに良階位の魔獣は怖いので無難に王都経由で行くことにしよう。

 あとスレインさんから連絡が入っていたので確認すると、どうやらクリスさんは今年のヤーマン建国祭の後で王家を出たようだ。そして来年の4月に結婚することが決まったらしい。それで結婚式に出席してほしいとの連絡だった。これは行くしかないだろう。
 とりあえず現在の状況と参加する旨の連絡をしてもらうことにした。ついにクリスさんも結婚かあ。うまくやっているんだろうなあ。



 すぐに出発してから南下するが、タイガ国はやはり国力が低いのか街道の整備は劣っていてグレードが一段落ちている。魔獣よけのレベルも低いのか結構近くまで魔獣が来ているところがあった。
 やっぱりこっちのルートを通って正解だったかもしれない。山沿いのルートだと下手したらかなり危険だったかもしれないからね。

 こっちは結構米の栽培が盛んみたいで町の近くには水田が広がっていた。途中に結構川も多いので水も豊富なんだろう。ヤーマンでも南の方では水田は見たけど、ここまで多くはなかったからねえ。
 料理は香辛料のきついものが多いんだが、煮付けのような料理も多い。もしかしたら日本に一番近い国なのかもしれない。箸を使う文化もあったしね。山に囲まれていたので文化が独自に進化したのかもしれないなあ。


 途中にある町に少し寄りながら走って行くが、泊まるのは拠点だけにした。温泉とかあれば泊まってみたいけど、特に目を引くところはなかったからねえ。なので町に入っても食事をするだけだ。
 特に何が起こることもなく7日ほどして無事に王都のヒョウマに到着する。
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