【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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1. プロローグ

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1. プロローグ
「イチ!!!!!」

 靴を履き替えて教室に向かっていると、目の前にやって来た女子から声をかけられた。

「えっ?」

 驚いていると、彼女は自分の胸に飛び込んできた。

「やっと、やっと、会えた・・・」

 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

「ジェン!?」

 いろいろな記憶が流れ込んできた。
 そうだ、自分は彼女のことをよく知っている、いや、知っていたはずだったんだ。
 ・・・
 ・・
 ・


~~~~~~

 自分の名前は大岡純一郎。友人からは「じゅんいち」と呼ばれている。
 地方のそこそこ大きな町に住んでいて、公立だがこの地域ではそれなりにレベルの高い高校に通っている。見た目は中の上くらいではないかと思っているけど、いままで彼女がいたことがないのでお察しだ。

 趣味と言われるとゲームや漫画となるけど、すごくのめり込んでいるわけではない。中学までは部活で忙しくてそんな時間はなかったんだけど、高校受験が終わった後でゲームにはまってしまったせいでこんな感じになってしまった。とはいえ、勉強も嫌いというわけではないので、中の上くらいの成績を維持している。

 クラスでいじめられているやつがいるというわけでもなく、平和な高校生活だ。友人と呼べるやつも何人かいるし、クラスの奴らとも普通に話すのでぼっちというわけでもない。まあ仲のいい女子がいるわけではないけどね。


 2年生になってから自分は理系のコースを選択したので文系コースよりも授業内容は厳しくなったけど、なんとか成績は維持している。1学期の中間テストを無事に乗り切り、文化祭やクラスマッチが終わった6月末におかしなことが起きた。

 友人たちとお弁当を食べた後、少し教室で休んでいると、いきなり視界がおかしくなった。目の前が急にぼやけて目が回ってしまったんだ。慌てて眼鏡を外すとなぜか周りの景色がよく見えた。
 あれ?眼鏡をしているのにコンタクトをしていたか?そんなことを思ったけど、さっきまで普通だったのでそんなわけはない。
 自分は小学校の時から近眼が進み、視力は0.1と眼鏡やコンタクトがないと日常生活に困るレベルだった。それなのに急に目が良くなったのだ。よく分からないけど、目が良くなったのはいいことだと単純に喜んだ。

 他に変わったのは身体のことだ。家に帰ってお風呂に入った時、筋肉ムキムキになったというわけではないんだけど、かなり引き締まった身体になっていた。もともと太っていたというわけではないんだけど、筋肉がしっかり付いたという感じだ。
 そして訳が分からないのは、その日に着ていた学生服はちょうどいいのに、家にあった服が軒並み入らなくなってしまっていたことだ。身長は変わってないようなのでいいんだけど、筋肉が付いているせいかどの服もぱっつんぱっつんになっていた。

 仕方がないので自分より少し体格のよかった父に服を借りてなんとかしたんだけど、週末にある程度まとめて服を買ってもらうしかなかった。母もさすがにこんな服を見たら買うしかないと思ったみたいでお金をもらえて助かったんだけど、気に入っていた服が着れなくなったのはちょっと悲しかった。

 体の変化と同じく全体的に身体能力が上がっているようだったので、週末に近くの運動公園で簡単に体力測定みたいなことをやってみた。どう考えても足は速くなっているし、持久力も上がっていた。筋力もかなり上がっているみたいで、懸垂なんかかなり楽に出来るようになっていた。

 いくら能力が上がったとしても、改めて何かスポーツを始める気も無かったので特に問題は無いんだけど、正直なところ何があったのか不思議でたまらなかった。いきなり筋力が付いたとか病院とかにかかってもスルーされるだけだろうしね。

 ただ、体育の着替えの時に体を見た友人から「体鍛えたんか?」と突っ込まれたけどね。さすがに水泳の時はごまかしようがない。ただ折角筋力が付いているようだったので毎日簡単な筋トレをするようになった。


 いろいろと驚くことがあったけど、一番驚いたのは知識と語学力のことだった。教科書を読んでみると、すでに内容が理解できてしまうし、特に数学や化学や物理についてはかなりのレベルを理解できた。正直教科書の内容は物足りないレベルだ。
 国語や地理や歴史などの知識はまだ浅かったけど、それでも教科書の内容は十分に理解していた。しかも記憶力が上がっているのか、新たに勉強したことも簡単に頭に入ってきた。

 成績の悪かった英語については正直日本語と同じレベルでわかるようになっていた。英語の本は普通に読めるし、英語の映画を見たら普通に理解できたのには驚いた。発音もかなりいいみたいで、英語の先生も驚いていたくらいだ。どう考えてもネイティブレベルだよね?
 他にも分かる言葉があるかと調べてみたら、スペイン語や中国語などいくつかの言葉もしゃべることができるようになっていた。まあそれを使う機会なんてないんだけどね。

 国語や社会などいくつかの教科は少し勉強しなければならなかったけど、かなり勉強もはかどり、期末試験はかなりの好成績で終えることができた。

 なにかおかしいと思いながらも、特に自分にとって悪いことではないのでそれ以上追求はしなかった。まあ調べても意味が無いと思っていたからね。誰かに相談するわけにもいかないし。


 あと気になったのは海外と思われる町の記憶があることだった。今まで海外に行ったことがないのになぜか大きな街のことについての記憶があった。テレビか何かで見た記憶なんだろうか?それとも父や母から聞いたことなのだろうか?それとも小説でよく見る前世の記憶の一部が戻ってきているのだろうか?
 どうもアメリカについての記憶のようなので、ネットでいろいろと調べてみると記憶にあるような建物や施設がある街があった。そこに行ったら何か思い出すかもしれないけど、さすがに気軽にいけるところではないので、もし行くとしてもだいぶ先になるかなあと思っていた。

 そして忘れてはならない人がいたような気がした。男性なのか女性なのか、何歳なのかも全く覚えていないんだけど、でもたしかに誰か大事な人のような感覚があった。でも思い出すことが出来なかった。



 夏休みが終わって(課外授業があるので夏休みと言ってもほとんど休みじゃない)、2学期が始まったころに隣のクラスにアメリカからの留学生がやってきたという話を聞いた。
 今まで交換留学とかいう制度はなかったはずなのになんで急にこんなことになったのかはよく知らない。こちらから誰かが行ったというわけではなく、短期的な受け入れということらしい。

「かなりかわいい。」

「それよりあの胸!さすがアメリカ人だね。」

「日本語はここのなまりっぽいしゃべり方だな。日本語を習ったのがこの辺の人だったのかな?それとも東洋人の血が混じっているみたいなので、この辺りの出身の人だったのかな?」

「この間のテストで国語も含めてかなりの点数だった。」

「スポーツも万能だ。」

「傲慢なところもなくてかなりフレンドリーだ。」

 聞こえてくる内容は、なんか漫画に出てくる完璧ヒロインという感じで「ほんとにそんな人がいるのか?」という印象だった。

 自分はもちろん女子に興味がないわけではないんだけど、わざわざ隣のクラスまで見に行く気は起きなかった。遠目に見かけるくらいだったけど、確かにかわいいし、スタイルもいいようだった。

 留学生が来てから2週間ほどすると話題も大分落ち着いてきた。それでもクラスの一部の男子は何か接点ができないか画策しているようだった。まあ外国の女性に憧れを持つというのはよくあることだよね。



 うちの学校の体育祭は10月に行われているので夏休み明けから体育祭の練習が始まった。普通の競技の中で高校男子生徒にはちょっとうれしいダンスのプログラムもある。とはいえ、漫画みたいな出来事が起こるわけでもないんだけどね。ちなみにダンスがあるのは2、3年生だけなので、全体練習は予行練習の時だけだ。
 この時初めて留学生である彼女と近づくことができた。彼女の顔を初めてまともに見たんだけど、なにか記憶に引っかかっている感じがした。

 順番になって彼女が自分の隣にやって来た。左手をつなぎ、肩越しに彼女の右手をつなぐ。他の女子とは違ってしっかりと手をつないでくれるのはちょっとうれしい。
 そう思ったところで、彼女の動きが止まってしまった。

「えっ?俺なんかした?」

 彼女は急にしゃがみ込んで動かなくなってしまった。

「えっ?えっ?」

 混乱していると、すぐに先生がやって来て彼女に声をかけたあと、肩を貸しながらどこかへ連れて行った。保健室にでも連れて行ったのかな?

 そのとき彼女が自分の方を見て驚いたような顔をしていたのは気のせいだろうか?

 このあと予行練習が再開され、予定していた練習は終了した。何が原因かわからないが、自分のせいかもしれないと心配になったので保健室に行ってみたけど、すでに早退した後だった。様子を聞くと、しばらく休んだ後は意識もしっかりしていたようだけど、安全を見て帰宅させたらしい。

 そして翌日学校に行くと、彼女から声をかけられた。

~~~~~~

 かなり目立っている女子が自分に抱きついてきたせいでさすがに注目を浴びてしまっている。

『昼休みにF校舎の裏に来てくれ。』

 日本語ではない言葉で彼女に声をかけてから自分の教室へと向かう。朝礼が終わり、授業が始まったが、さすがに集中できない。まだ記憶の整理が追いつかない感じで少し頭が痛い・・・。
 だけど、ちゃんと約束は守ってくれたんだな。まあ本当にあんな条件をクリアできるとは思わなかったんだろうけどね。


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