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15. ジェンside-2 こっちの世界で頑張ってみる
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15. ジェンside-2 こっちの世界で頑張ってみる
昨日ルミナさんに頭をなでられながら眠っていたようなんだけど、思った以上にぐっすり眠れたみたいで久しぶりに頭がすっきりした。
ルミナさんに提案された住み込みのことだけど本当に助かった。あのまま引きこもっていたら本当にどうしようもなかったもんね。とりあえずどうすればいいのかまだ分からないけど、生きていくためには何かしなければならないのは間違いないのよね。
ルミナさんと話して、働く時間や給金などを決めたのだけど、こっちの普通のお給金と比較しても十分な内容でとても助かった。もちろん最初のうちは試用期間という感じでほとんど給金は出ないけど、泊まるところと食事が保証されているのでそれだけでも十分よね。保証も何もない人間を雇ってくれるだけでもありがたいことだわ。
仕事の内容は朝と夕方の受付対応と、朝食と夕食の配膳や後片付けだった。あとは空いた時間に掃除などもやっている。最初は失敗することも多かったけれど、徐々に上達してきていると思う。
食器類の後片付けは最初に浄化魔法を使うことで簡単に洗った状態になるので、仕上げ洗いだけで良くなってかなりスピードアップができた。
部屋の掃除も浄化魔法を使うことでかなり効率アップできた。だけどすべての部屋で浄化魔法を使うのは精神的にきつかったので、掃除が大変そうな時だけにしておく。
宿の台帳は私の知識をもとに効率よくできる台帳を作って二人に見せてみたところ、かなり好評で私が作ったものに変更され、整理も大分楽になった。知識チートはないとは思っていたんだけど、こういう手続きなどはまだ進んでいないみたいね。
しばらく手伝いをしていると、時間的に余裕もできてきたので料理も少し手伝い始めた。料理スキルは低かったけれど、やっているうちにだいぶできるようになってきたと思っている。
オムライスなどこっちの世界では作られていないものも作ってみたらメニューに載せてもらうことになり、結構評判になっている。もちろん卵が高いから値段は高いのだけれど、それでもそれなりに注文が入っているのはうれしいな。
ルミナは最初に私が話した内容から両親が亡くなって戻るところがなくなったと勘違いしているようだった。たしかに両親が他の町に行って、今は一人で残っているという話をしていたように思う。変に設定を作るより、とりあえずはその設定で進めることにしよう。
アキラとマラルには事情があってこの町で生活していくことになったと説明したら、微妙な表情をしていたけれど、「それじゃあ、また一緒に遊ぶことができるね。」と笑ってくれた。おそらく両親が亡くなったと思われているのだろう。
休み時間や休みの日は買い物をしたり、狩りに行ったりしている。アキラとマラルと同じ日に休みが取れたら一緒に行ったりもしている。
冒険者としても活動はしているが、頑張っても1日200ドールくらいしかならないので生活できるレベルではないのはしょうがないところかな。普段は100ドール稼げばいい方だからね。
あとは講習を受けたり、図書館で勉強したりと結構やることがいっぱいで日々に追われていた。逆に忙しくしていやなことを忘れようとしていたのかもしれない。
しばらくして学識レベルが上がったのか、やっと鑑定ができる様になった。鑑定ができる様になっても特にスキルの案内もないので、鑑定しようとしなければ気がつかないというのも大変だ。たしかにスキルをゲットしましたとか案内が出るのはゲームの発想なんだけどね。
鑑定はスキルの一部が見えるだけなんだけど、それでも貴重なスキルみたいなので他言しないようにしないといけないわね。治癒魔法の時みたいな失敗はしたくないもの・・・。
相変わらずパーティーへの誘いが多いのが面倒なところ。特に強引に誘おうとしてくる人たちもいてちょっと辟易しているのよね。やっぱりあの治療が失敗だったかなあ?
あのあと治癒魔法を使える冒険者がかなり貴重で、特に私の年齢で治癒魔法を使える人はさらに貴重なことが分かってちょっと自重している。
基本的にパーティーの治癒は薬を使うことが多いらしく、その出費がかなり大きいようなので、それを無償でできるようになるだけでかなり収入が変わってくるみたい。
2ヶ月くらいたったころ、アキラ達が私を探している男がいるので気をつけた方がいいと教えてくれた。「ジェニファーという人がいるはずだけど」と受付にやってきたらしい。まだ探している人が私かどうかは分かっていないみたいなんだけど、もしそうなら「ニホンのジャパンからやってきた」と言えば分かるはずだと言っていたみたい。
「ニホンのジャパン?日本?Japan?」
これって日本語と英語?もしかして私と同じ転移者?
でも、どうして私のことを知っているの?だまそうとしているの?
でも、本当に転移者だったら、なにか分かるかもしれない。でも同じ転移者だからっていい人である保証はないよね?
でも、でも、でも・・・
いくら考えても答えは何も出てこない。
とりあえず状況を聞こうと、役場に行ってみることにした。受付のマーニさんに話を聞くと、前に私と一度会ったことがあって2ヶ月前くらいにこの町に来ると聞いていたので訪ねてきたということらしい。黒目、黒髪の同い年くらいの男の人のようだ。
来た時期を知っている?そういえばこちらの世界に転移するときにもう一人いたような気もするわね。もしかしてあの人なのだろうか?
今は狩りに行っているようだったので、宿に少し遅れると連絡してから役場でやってくるのを待ってみることにした。しばらくすると黒髪の男の人がやってきた。あの人だろうか?と思ってマーニさんの方を見るとうなずいてくれた。
勇気を出して声をかけてみる。
「あなたがニホンのジャパンからきたと言っていたジュンイチ?」
こっちを振り向いた彼はかなりびっくりしているが、返事がない。
もう一度聞いてみる。
「ニホンのジャパンからきたと言っていたジュンイチなの?ニホンやジャパンって場所はどこで聞いたのかしら?」
「ワタシハジュンイチトイイマス。ニホンカラキマシタ。」
「え?」
片言だが、懐かしい言葉を聞いた。片言だけど英語だ。まちがいなく英語だ。
「A. Are you...」
英語で声をかけようとすると、彼が話しかけてきた。
「すみません。英語は苦手なのでこのくらいしか話せません。自分の出身が日本だからそう説明していたんですよ。ジェニファー・クーコさんでいいのかな?ササミさんとスイサイさんだったかな?という名前に聞き覚えはありませんか?」
「まさか・・・。」
おそらく間違いない。この人が信用できるかどうかはともかく、間違いなく私と同じ地球からの転移者だ。
「少し場所を移して話せない?」
もし本当に転移したら他に聞かれてはまずいかもしれない。マーニさんに言って部屋を貸してもらうことにした。
「こっちへ。」
この部屋で盗聴はないとは思うけれど、安全のために最近覚えた魔法を使ってみる。糸電話のような感じで口と耳につながる空気の振動ラインを作ると他には声があまり聞こえなくなるというものだ。
「聞かれても困るかもしれないので私たちの声は他にほとんど聞こえないようにしたわ。ただなにかしようとしたらすぐに解除するからそのつもりでね。」
直感的には変な人ではないと感じるけれど、男性と二人というのはかなり危険なので釘を刺しておいたほうがいいわよね。
「改めて聞くけど、どこからどうやってやって来たのか説明してくれると助かるわ。」
「それじゃあ、まず自分のことについて話すね。自分は地球の日本からこちらの世界に転移された高校2年生の大岡純一郎と言います。今から50日ほど前にあなたと同じ場所に転移し、そしてこの世界にやって来ました。」
やっぱり転移者という事みたいだけど・・・。
「それを証明するのは難しいのですが、どう見えるか分からないですが、あなたもこれを持っているのではないでしょうか?」
そう言って手帳のようなものを見せてきた。
「あ、あ、これ・・・。」
これは私の持っているガイド本?他の人には普通の手帳のように見えると書いてたし、実際にアキラ達にそれとなく見せたら普通の手帳のように見えていたようなのよね。
「お互いにこれが見えると言うことはやっぱり他の世界から転移してきたということでいいんだよね?」
私の出してガイド本を見て彼も驚いていたので間違いないだろう。
「え、ええ・・・。それじゃあ、あなたも他の世界からやってきたってことでいいんだよね?10日間ってことだったのになぜ戻れないの?どうやって戻ればいいの?それと、どうやって私のことを知ったの?」
「ちょ、ちょっと、落ち着いて。順番に話すから。」
「あ、ごめんなさい。ちょっと焦りすぎてしまったみたいね。」
しまった。慎重に会話するつもりだったのに、聞きたいと思ったら止まらなかったわ。交渉としては失敗ね。
「まず、あなたのことは先ほどの最初に転移した場所で少し見かけました。そのときに担当の人からあなたの名前とこの町に転移されることだけ聞いたんですよ。それと珍しく同じ世界からの転移となると聞いたのでもしかしたら日本という国名には反応するかと思って伝言を頼んだんです。」
あまりはっきり覚えていないけどやっぱりあのときの人って事なのね。
「・・・。ああ、やっぱりあの時いたのがあなただったのね。夢だと思っていてあのときはあまり周りのことなんて見ていなかったわ。」
「説明の後、自分はこの町の北東にあるアーマトという町に転移されました。10日間と言うことで冒険者のまねごとをやっていたんですが、10日たっても元の世界に戻れませんでした。
どうなっているのか?本当に戻れるのか?といろいろと悩んだんですが、結論は出ませんでした。そのときにあなたのことを思い出して、会って状況を確認してみようと言うことを目標としてがんばってきました。」
私は夢だと思ってあまり質問はしなかったけど、この人はいろいろと情報を得ていたみたいね。
「よかった。同じような人がいるだけで大分心強いわ。」
「とりあえず帰る手段もわからないので、地球の時よりも身近であるという神様に祈りを捧げていますけど、特に返答はなく、帰る手段についてはまったく思いつかない状態です。」
「そうなのね・・・。」
やっぱり帰れないのか・・・。
「私はね・・・・。」
おそらく転移者と言うことは間違いないし、自分のことをある程度話さないと先に進めそうにないのでこれまでのことを簡単に話すことにした。
ジュンイチは黙って私の説明を聞いてくれている。そのあと彼のことを聞いたのだけれど、彼もかなり苦労していたみたい。
受付に鍵を返してお礼を言った後、宿に戻るとジュンイチさんがやって来ていた。他にも情報交換したいので、ここに移ってきていいかと聞いてきたので予約をしておく。
時間も遅くなっていたのでここで夕食を食べるみたいだったので食堂に案内する。メニューを見て「オムライスがある!!」と注文してきた。やはりこれに反応すると言うことは日本人なんだろうなあ。
まだ彼のことははっきりとはわからないけど、話した感じからして変な人ではないように思う。だけど、完全に信頼できるわけでもないからちゃんと警戒はしないといけないわよね。
翌朝、彼が私の働いている宿にやってきた。やっぱり他の男性と違って私を見る目にいやらしさがないのが好印象だわ。昨日、話をしていたときも本当に心配してくれていたようだったからね。
単に女性慣れして本性が見えないだけとか?それとも単に女の子に興味がないとか?まさか幼女趣味とか?大体の男性はすぐに私の胸に視線が行くんだけど、そういう雰囲気もない。まあその辺りは正直わかんないけど、今のところ信用は置いてもいいのかな?
元の世界に帰れなくなってからできる限り教会に行っているというので、私もジュンイチと一緒に行ってみることにした。お祈りを捧げていると、突然神様からの声が聞こえたのには驚いたわ。
話しを聞くと、もとの世界には戻れそうなことを聞いてちょっとほっとした。いつかは分からないけど、少しだけ地球に帰る糸口ができたわ。よかった・・・。
ジュンイチと一緒にお昼を食べながら今後のことを話す。確かにもとの世界に戻れるとしても数年、下手をすれば数十年となる可能性もあるわよね。
事前に聞いた話が本当だとすると、年もとらないことになるので、期間が長くなると同じところにいるのはまずいのかもしれない。冒険者として活動していたら、拠点を変えてもお金を稼ぐことができるし、あるという噂の若返りの薬を手に入れたとすることもできるかもしれない。若返りと言っても見た目だけなので寿命は延びないらしいけどね。
今後のことを考えると、こっちの人と一緒にやっていくよりは転移者同士で一緒にいた方がいろいろと都合がいいかもしれないわ。彼も誠実そうだしね。
「ジュンイチ、一緒に冒険者としてやっていく気はない?」
彼に声をかけると、彼も同じ考えだったらしく承知してくれた。パーティーとして活動するんだから話し方も普通に変えてもらうことにしたんだけど、ちょっと言いにくそうにしてるのよね。まあそのうち慣れてくれるわよね。
元の世界には私の大切な人がいるのよ。こんな形でもう会えなくなるなんて絶対にいやだわ。絶対に・・・。
一緒に冒険者をやっていこうということになって、今の時点でどのくらい稼ぐことが出来るのかを確認することになった。お互いの戦闘スタイルについても確認しないといけなかったしね。
いきなり二人で狩りに行くというのはちょっと危ない気もするんだけど、いろいろ話した感じでは私をどうにかしようとは思っていないみたいなのよね。あの年齢でここまでうまく隠しているというのならそれはそれですごいことだと思うわ。
町を出てから狩り場に行く途中でスキルの話になった。ガイド本に書かれている内容を見せあったあと、鑑定をしていいかと聞いてきたのでお願いする。すでに鑑定のレベルが自分より上がっているみたいで知識スキルも見ることが出来るようだった。
今後どの辺りを強化していくかについてはいろいろと話していかないといけない。優先したいのはやっぱり鑑定と次元魔法と考えているみたい。まあこの二つはあればかなり便利だろうからね。
狩り場については順番に戦い方を確認することになったんだけど、魔獣を探すのが問題なのよね。そう思っていたら索敵スキルで魔獣を探せると言ってきた。そんなこと出来るんだ。
索敵の方法を教えてくれたのでやってみたけれど、なかなかうまくいかない。魔法はイメージ次第でどうにでもなるというのは同じ印象みたいで、索敵もレーダーの探知機のように表示するようにイメージしているみたい。
イチは魔法を補助で使い、剣で戦うスタイルだった。剣の腕は自分よりは断然上でこの辺りの魔獣であれば十分に対応出来る感じね。
お互いの戦い方を確認した後、最初は二人で魔法攻撃はするけど、イチが前衛で私が後衛として戦うことになった。
索敵で魔獣がテンポ良く見つかることと、今まで逃げていた狼まで倒すことが出来るようになったのでかなり効率が良い。解体も二人でやると結構手早くやることが出来たしね。水魔法を使うことで血抜きが簡単にできるのは驚いたわ。
素材を持って帰り、精算すると一人当たり1500ドールちょっとだった。
「今までの私の稼ぎと比べたらとんでもない額だわ。」
「まあ、今回は狼とかがテンポ良く狩れたし、大角兎も狩れたのが大きいね。まだ1日だけだからはっきりとは言えないけど、冒険者だけでもなんとかやっていけるかもしれないね。」
「ええ、そうね。あ、ちょっとルミナに頼まれたことがあるから他に寄り道してから宿に戻ってるわね。」
「わかった。今後のことは宿でまた話をしよう。」
ルミナに頼まれたものを買い出ししてから宿に戻る。このあと宿の手伝いをしていたんだけど、イチがなかなか戻ってこない。今日は夕食を取ってから今後のことを話ししようって言ってたのにな。
「こちらにジェニファーさんと言う方はおられますか?」
町の兵士がやってきた。
「えっと、私ですが、何かありましたか?」
「はい、ジュンイチという方をご存知ですか?詳細はまだ確認中なのですが、町で乱闘事件がありまして、いまは牢屋にいます。このため今日は宿に戻れないと伝言を頼まれました。」
「え???ど、どういうこと?乱闘事件?」
「詳細は私からは説明できませんが、今晩は反省の意味も含めて兵舎の牢屋で過ごしてもらいます。明日の夕方には出ることは出来ますが、迎えに来ていただけるのでしたら朝からでも出ることが出来ますのでご検討ください。」
心配だけど、今日はどうしようもないわね。ルミナに話をして、明日はイチを迎えに行くために昼まで休みをもらうことにした。
翌朝、兵舎へと向かい、手続きを済ませる。乱闘事件と言うことだけど、どうやら一方的に暴行を受けていたみたい。相手の特徴を聞くと例の3人組のようだった。私に絡んだせいで・・・。
部屋で待っていると、兵士に連れられてイチがやって来た。特に怪我はないようだけど、治癒魔法で治したんだろうなあ。私のせいだと謝ったんだけど、イチは気にしないでと話を終わらせてしまった。ありがとう・・・。
役場に行って話しを聞くと、例の3人組は厳しい罰を受けたみたいだけれど、さすがに仕返しがちょっと怖い。刑期が終わった後が心配ね。次に何かあったらかなり重い刑となるみたいだけど、油断は出来ないわよね。
そのあと二人でパーティーを組むことになった。パーティー名は“アース”、昨日もとの世界に戻れることを願って二人で考えた名前だ。
お昼をとりながら今後の話をして宿に戻る。
「メイサン、ルミナ。少しだけ時間を取らせてもらっていい?」
「改まってどうしたの?」
二人がやって来たところで今回の話しをする。
「それでね、この間からここに泊まっているジュンイチと冒険者として活動しようと言うことになったの。本当に冒険者の稼ぎだけで生活できるかは分からないんだけど、この間の狩りのことから考えると何とかなりそうなのよね。
いろいろとお世話になってきたのに心苦しいけど冒険者としてがんばっていこうと思ってるのよ。ただまだしばらくはこの町を拠点とするから正規の金額を払うのでこのまま泊めてもらおうと思ってるの。」
二人は少し悲しそうな顔になった。
「でも、まだ冒険者として本当にやってけるか分からないんでしょ?それにまだ彼のことはよく分からないけど、本当に信用できる人なの?」
いろいろと話をしていたんだけど、結局断ることが出来なくて、手が空いたときだけでも手伝ってくれたら宿代は半額でいいという話になった。いいのかな?だけど手が空いて時には出来るだけ手伝うようにしないといけないわね。
イチが戻ってきてから宿のことについて話をした。手が空いたときには自分も少し手伝うと言ってくれたのはうれしかった。
そのあとお金の話になって、管理はイチに任せることにした。最低限のお金を残して渡すことにしたけど、もしこれで何かあったら自分の見る目がなかったとあきらめよう。
そういえば最初にもらったお金を何に使ったか聞いたらなにかごまかしていたわね。ちょっと赤くなっていたのできっとあっち方面に使ったと思うわ。やっぱり一応女の子には興味はあるのかな?
昨日ルミナさんに頭をなでられながら眠っていたようなんだけど、思った以上にぐっすり眠れたみたいで久しぶりに頭がすっきりした。
ルミナさんに提案された住み込みのことだけど本当に助かった。あのまま引きこもっていたら本当にどうしようもなかったもんね。とりあえずどうすればいいのかまだ分からないけど、生きていくためには何かしなければならないのは間違いないのよね。
ルミナさんと話して、働く時間や給金などを決めたのだけど、こっちの普通のお給金と比較しても十分な内容でとても助かった。もちろん最初のうちは試用期間という感じでほとんど給金は出ないけど、泊まるところと食事が保証されているのでそれだけでも十分よね。保証も何もない人間を雇ってくれるだけでもありがたいことだわ。
仕事の内容は朝と夕方の受付対応と、朝食と夕食の配膳や後片付けだった。あとは空いた時間に掃除などもやっている。最初は失敗することも多かったけれど、徐々に上達してきていると思う。
食器類の後片付けは最初に浄化魔法を使うことで簡単に洗った状態になるので、仕上げ洗いだけで良くなってかなりスピードアップができた。
部屋の掃除も浄化魔法を使うことでかなり効率アップできた。だけどすべての部屋で浄化魔法を使うのは精神的にきつかったので、掃除が大変そうな時だけにしておく。
宿の台帳は私の知識をもとに効率よくできる台帳を作って二人に見せてみたところ、かなり好評で私が作ったものに変更され、整理も大分楽になった。知識チートはないとは思っていたんだけど、こういう手続きなどはまだ進んでいないみたいね。
しばらく手伝いをしていると、時間的に余裕もできてきたので料理も少し手伝い始めた。料理スキルは低かったけれど、やっているうちにだいぶできるようになってきたと思っている。
オムライスなどこっちの世界では作られていないものも作ってみたらメニューに載せてもらうことになり、結構評判になっている。もちろん卵が高いから値段は高いのだけれど、それでもそれなりに注文が入っているのはうれしいな。
ルミナは最初に私が話した内容から両親が亡くなって戻るところがなくなったと勘違いしているようだった。たしかに両親が他の町に行って、今は一人で残っているという話をしていたように思う。変に設定を作るより、とりあえずはその設定で進めることにしよう。
アキラとマラルには事情があってこの町で生活していくことになったと説明したら、微妙な表情をしていたけれど、「それじゃあ、また一緒に遊ぶことができるね。」と笑ってくれた。おそらく両親が亡くなったと思われているのだろう。
休み時間や休みの日は買い物をしたり、狩りに行ったりしている。アキラとマラルと同じ日に休みが取れたら一緒に行ったりもしている。
冒険者としても活動はしているが、頑張っても1日200ドールくらいしかならないので生活できるレベルではないのはしょうがないところかな。普段は100ドール稼げばいい方だからね。
あとは講習を受けたり、図書館で勉強したりと結構やることがいっぱいで日々に追われていた。逆に忙しくしていやなことを忘れようとしていたのかもしれない。
しばらくして学識レベルが上がったのか、やっと鑑定ができる様になった。鑑定ができる様になっても特にスキルの案内もないので、鑑定しようとしなければ気がつかないというのも大変だ。たしかにスキルをゲットしましたとか案内が出るのはゲームの発想なんだけどね。
鑑定はスキルの一部が見えるだけなんだけど、それでも貴重なスキルみたいなので他言しないようにしないといけないわね。治癒魔法の時みたいな失敗はしたくないもの・・・。
相変わらずパーティーへの誘いが多いのが面倒なところ。特に強引に誘おうとしてくる人たちもいてちょっと辟易しているのよね。やっぱりあの治療が失敗だったかなあ?
あのあと治癒魔法を使える冒険者がかなり貴重で、特に私の年齢で治癒魔法を使える人はさらに貴重なことが分かってちょっと自重している。
基本的にパーティーの治癒は薬を使うことが多いらしく、その出費がかなり大きいようなので、それを無償でできるようになるだけでかなり収入が変わってくるみたい。
2ヶ月くらいたったころ、アキラ達が私を探している男がいるので気をつけた方がいいと教えてくれた。「ジェニファーという人がいるはずだけど」と受付にやってきたらしい。まだ探している人が私かどうかは分かっていないみたいなんだけど、もしそうなら「ニホンのジャパンからやってきた」と言えば分かるはずだと言っていたみたい。
「ニホンのジャパン?日本?Japan?」
これって日本語と英語?もしかして私と同じ転移者?
でも、どうして私のことを知っているの?だまそうとしているの?
でも、本当に転移者だったら、なにか分かるかもしれない。でも同じ転移者だからっていい人である保証はないよね?
でも、でも、でも・・・
いくら考えても答えは何も出てこない。
とりあえず状況を聞こうと、役場に行ってみることにした。受付のマーニさんに話を聞くと、前に私と一度会ったことがあって2ヶ月前くらいにこの町に来ると聞いていたので訪ねてきたということらしい。黒目、黒髪の同い年くらいの男の人のようだ。
来た時期を知っている?そういえばこちらの世界に転移するときにもう一人いたような気もするわね。もしかしてあの人なのだろうか?
今は狩りに行っているようだったので、宿に少し遅れると連絡してから役場でやってくるのを待ってみることにした。しばらくすると黒髪の男の人がやってきた。あの人だろうか?と思ってマーニさんの方を見るとうなずいてくれた。
勇気を出して声をかけてみる。
「あなたがニホンのジャパンからきたと言っていたジュンイチ?」
こっちを振り向いた彼はかなりびっくりしているが、返事がない。
もう一度聞いてみる。
「ニホンのジャパンからきたと言っていたジュンイチなの?ニホンやジャパンって場所はどこで聞いたのかしら?」
「ワタシハジュンイチトイイマス。ニホンカラキマシタ。」
「え?」
片言だが、懐かしい言葉を聞いた。片言だけど英語だ。まちがいなく英語だ。
「A. Are you...」
英語で声をかけようとすると、彼が話しかけてきた。
「すみません。英語は苦手なのでこのくらいしか話せません。自分の出身が日本だからそう説明していたんですよ。ジェニファー・クーコさんでいいのかな?ササミさんとスイサイさんだったかな?という名前に聞き覚えはありませんか?」
「まさか・・・。」
おそらく間違いない。この人が信用できるかどうかはともかく、間違いなく私と同じ地球からの転移者だ。
「少し場所を移して話せない?」
もし本当に転移したら他に聞かれてはまずいかもしれない。マーニさんに言って部屋を貸してもらうことにした。
「こっちへ。」
この部屋で盗聴はないとは思うけれど、安全のために最近覚えた魔法を使ってみる。糸電話のような感じで口と耳につながる空気の振動ラインを作ると他には声があまり聞こえなくなるというものだ。
「聞かれても困るかもしれないので私たちの声は他にほとんど聞こえないようにしたわ。ただなにかしようとしたらすぐに解除するからそのつもりでね。」
直感的には変な人ではないと感じるけれど、男性と二人というのはかなり危険なので釘を刺しておいたほうがいいわよね。
「改めて聞くけど、どこからどうやってやって来たのか説明してくれると助かるわ。」
「それじゃあ、まず自分のことについて話すね。自分は地球の日本からこちらの世界に転移された高校2年生の大岡純一郎と言います。今から50日ほど前にあなたと同じ場所に転移し、そしてこの世界にやって来ました。」
やっぱり転移者という事みたいだけど・・・。
「それを証明するのは難しいのですが、どう見えるか分からないですが、あなたもこれを持っているのではないでしょうか?」
そう言って手帳のようなものを見せてきた。
「あ、あ、これ・・・。」
これは私の持っているガイド本?他の人には普通の手帳のように見えると書いてたし、実際にアキラ達にそれとなく見せたら普通の手帳のように見えていたようなのよね。
「お互いにこれが見えると言うことはやっぱり他の世界から転移してきたということでいいんだよね?」
私の出してガイド本を見て彼も驚いていたので間違いないだろう。
「え、ええ・・・。それじゃあ、あなたも他の世界からやってきたってことでいいんだよね?10日間ってことだったのになぜ戻れないの?どうやって戻ればいいの?それと、どうやって私のことを知ったの?」
「ちょ、ちょっと、落ち着いて。順番に話すから。」
「あ、ごめんなさい。ちょっと焦りすぎてしまったみたいね。」
しまった。慎重に会話するつもりだったのに、聞きたいと思ったら止まらなかったわ。交渉としては失敗ね。
「まず、あなたのことは先ほどの最初に転移した場所で少し見かけました。そのときに担当の人からあなたの名前とこの町に転移されることだけ聞いたんですよ。それと珍しく同じ世界からの転移となると聞いたのでもしかしたら日本という国名には反応するかと思って伝言を頼んだんです。」
あまりはっきり覚えていないけどやっぱりあのときの人って事なのね。
「・・・。ああ、やっぱりあの時いたのがあなただったのね。夢だと思っていてあのときはあまり周りのことなんて見ていなかったわ。」
「説明の後、自分はこの町の北東にあるアーマトという町に転移されました。10日間と言うことで冒険者のまねごとをやっていたんですが、10日たっても元の世界に戻れませんでした。
どうなっているのか?本当に戻れるのか?といろいろと悩んだんですが、結論は出ませんでした。そのときにあなたのことを思い出して、会って状況を確認してみようと言うことを目標としてがんばってきました。」
私は夢だと思ってあまり質問はしなかったけど、この人はいろいろと情報を得ていたみたいね。
「よかった。同じような人がいるだけで大分心強いわ。」
「とりあえず帰る手段もわからないので、地球の時よりも身近であるという神様に祈りを捧げていますけど、特に返答はなく、帰る手段についてはまったく思いつかない状態です。」
「そうなのね・・・。」
やっぱり帰れないのか・・・。
「私はね・・・・。」
おそらく転移者と言うことは間違いないし、自分のことをある程度話さないと先に進めそうにないのでこれまでのことを簡単に話すことにした。
ジュンイチは黙って私の説明を聞いてくれている。そのあと彼のことを聞いたのだけれど、彼もかなり苦労していたみたい。
受付に鍵を返してお礼を言った後、宿に戻るとジュンイチさんがやって来ていた。他にも情報交換したいので、ここに移ってきていいかと聞いてきたので予約をしておく。
時間も遅くなっていたのでここで夕食を食べるみたいだったので食堂に案内する。メニューを見て「オムライスがある!!」と注文してきた。やはりこれに反応すると言うことは日本人なんだろうなあ。
まだ彼のことははっきりとはわからないけど、話した感じからして変な人ではないように思う。だけど、完全に信頼できるわけでもないからちゃんと警戒はしないといけないわよね。
翌朝、彼が私の働いている宿にやってきた。やっぱり他の男性と違って私を見る目にいやらしさがないのが好印象だわ。昨日、話をしていたときも本当に心配してくれていたようだったからね。
単に女性慣れして本性が見えないだけとか?それとも単に女の子に興味がないとか?まさか幼女趣味とか?大体の男性はすぐに私の胸に視線が行くんだけど、そういう雰囲気もない。まあその辺りは正直わかんないけど、今のところ信用は置いてもいいのかな?
元の世界に帰れなくなってからできる限り教会に行っているというので、私もジュンイチと一緒に行ってみることにした。お祈りを捧げていると、突然神様からの声が聞こえたのには驚いたわ。
話しを聞くと、もとの世界には戻れそうなことを聞いてちょっとほっとした。いつかは分からないけど、少しだけ地球に帰る糸口ができたわ。よかった・・・。
ジュンイチと一緒にお昼を食べながら今後のことを話す。確かにもとの世界に戻れるとしても数年、下手をすれば数十年となる可能性もあるわよね。
事前に聞いた話が本当だとすると、年もとらないことになるので、期間が長くなると同じところにいるのはまずいのかもしれない。冒険者として活動していたら、拠点を変えてもお金を稼ぐことができるし、あるという噂の若返りの薬を手に入れたとすることもできるかもしれない。若返りと言っても見た目だけなので寿命は延びないらしいけどね。
今後のことを考えると、こっちの人と一緒にやっていくよりは転移者同士で一緒にいた方がいろいろと都合がいいかもしれないわ。彼も誠実そうだしね。
「ジュンイチ、一緒に冒険者としてやっていく気はない?」
彼に声をかけると、彼も同じ考えだったらしく承知してくれた。パーティーとして活動するんだから話し方も普通に変えてもらうことにしたんだけど、ちょっと言いにくそうにしてるのよね。まあそのうち慣れてくれるわよね。
元の世界には私の大切な人がいるのよ。こんな形でもう会えなくなるなんて絶対にいやだわ。絶対に・・・。
一緒に冒険者をやっていこうということになって、今の時点でどのくらい稼ぐことが出来るのかを確認することになった。お互いの戦闘スタイルについても確認しないといけなかったしね。
いきなり二人で狩りに行くというのはちょっと危ない気もするんだけど、いろいろ話した感じでは私をどうにかしようとは思っていないみたいなのよね。あの年齢でここまでうまく隠しているというのならそれはそれですごいことだと思うわ。
町を出てから狩り場に行く途中でスキルの話になった。ガイド本に書かれている内容を見せあったあと、鑑定をしていいかと聞いてきたのでお願いする。すでに鑑定のレベルが自分より上がっているみたいで知識スキルも見ることが出来るようだった。
今後どの辺りを強化していくかについてはいろいろと話していかないといけない。優先したいのはやっぱり鑑定と次元魔法と考えているみたい。まあこの二つはあればかなり便利だろうからね。
狩り場については順番に戦い方を確認することになったんだけど、魔獣を探すのが問題なのよね。そう思っていたら索敵スキルで魔獣を探せると言ってきた。そんなこと出来るんだ。
索敵の方法を教えてくれたのでやってみたけれど、なかなかうまくいかない。魔法はイメージ次第でどうにでもなるというのは同じ印象みたいで、索敵もレーダーの探知機のように表示するようにイメージしているみたい。
イチは魔法を補助で使い、剣で戦うスタイルだった。剣の腕は自分よりは断然上でこの辺りの魔獣であれば十分に対応出来る感じね。
お互いの戦い方を確認した後、最初は二人で魔法攻撃はするけど、イチが前衛で私が後衛として戦うことになった。
索敵で魔獣がテンポ良く見つかることと、今まで逃げていた狼まで倒すことが出来るようになったのでかなり効率が良い。解体も二人でやると結構手早くやることが出来たしね。水魔法を使うことで血抜きが簡単にできるのは驚いたわ。
素材を持って帰り、精算すると一人当たり1500ドールちょっとだった。
「今までの私の稼ぎと比べたらとんでもない額だわ。」
「まあ、今回は狼とかがテンポ良く狩れたし、大角兎も狩れたのが大きいね。まだ1日だけだからはっきりとは言えないけど、冒険者だけでもなんとかやっていけるかもしれないね。」
「ええ、そうね。あ、ちょっとルミナに頼まれたことがあるから他に寄り道してから宿に戻ってるわね。」
「わかった。今後のことは宿でまた話をしよう。」
ルミナに頼まれたものを買い出ししてから宿に戻る。このあと宿の手伝いをしていたんだけど、イチがなかなか戻ってこない。今日は夕食を取ってから今後のことを話ししようって言ってたのにな。
「こちらにジェニファーさんと言う方はおられますか?」
町の兵士がやってきた。
「えっと、私ですが、何かありましたか?」
「はい、ジュンイチという方をご存知ですか?詳細はまだ確認中なのですが、町で乱闘事件がありまして、いまは牢屋にいます。このため今日は宿に戻れないと伝言を頼まれました。」
「え???ど、どういうこと?乱闘事件?」
「詳細は私からは説明できませんが、今晩は反省の意味も含めて兵舎の牢屋で過ごしてもらいます。明日の夕方には出ることは出来ますが、迎えに来ていただけるのでしたら朝からでも出ることが出来ますのでご検討ください。」
心配だけど、今日はどうしようもないわね。ルミナに話をして、明日はイチを迎えに行くために昼まで休みをもらうことにした。
翌朝、兵舎へと向かい、手続きを済ませる。乱闘事件と言うことだけど、どうやら一方的に暴行を受けていたみたい。相手の特徴を聞くと例の3人組のようだった。私に絡んだせいで・・・。
部屋で待っていると、兵士に連れられてイチがやって来た。特に怪我はないようだけど、治癒魔法で治したんだろうなあ。私のせいだと謝ったんだけど、イチは気にしないでと話を終わらせてしまった。ありがとう・・・。
役場に行って話しを聞くと、例の3人組は厳しい罰を受けたみたいだけれど、さすがに仕返しがちょっと怖い。刑期が終わった後が心配ね。次に何かあったらかなり重い刑となるみたいだけど、油断は出来ないわよね。
そのあと二人でパーティーを組むことになった。パーティー名は“アース”、昨日もとの世界に戻れることを願って二人で考えた名前だ。
お昼をとりながら今後の話をして宿に戻る。
「メイサン、ルミナ。少しだけ時間を取らせてもらっていい?」
「改まってどうしたの?」
二人がやって来たところで今回の話しをする。
「それでね、この間からここに泊まっているジュンイチと冒険者として活動しようと言うことになったの。本当に冒険者の稼ぎだけで生活できるかは分からないんだけど、この間の狩りのことから考えると何とかなりそうなのよね。
いろいろとお世話になってきたのに心苦しいけど冒険者としてがんばっていこうと思ってるのよ。ただまだしばらくはこの町を拠点とするから正規の金額を払うのでこのまま泊めてもらおうと思ってるの。」
二人は少し悲しそうな顔になった。
「でも、まだ冒険者として本当にやってけるか分からないんでしょ?それにまだ彼のことはよく分からないけど、本当に信用できる人なの?」
いろいろと話をしていたんだけど、結局断ることが出来なくて、手が空いたときだけでも手伝ってくれたら宿代は半額でいいという話になった。いいのかな?だけど手が空いて時には出来るだけ手伝うようにしないといけないわね。
イチが戻ってきてから宿のことについて話をした。手が空いたときには自分も少し手伝うと言ってくれたのはうれしかった。
そのあとお金の話になって、管理はイチに任せることにした。最低限のお金を残して渡すことにしたけど、もしこれで何かあったら自分の見る目がなかったとあきらめよう。
そういえば最初にもらったお金を何に使ったか聞いたらなにかごまかしていたわね。ちょっと赤くなっていたのできっとあっち方面に使ったと思うわ。やっぱり一応女の子には興味はあるのかな?
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