【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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26. 異世界183日目 首都サクラでの生活

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26. 異世界183日目 首都サクラでの生活
 翌朝コーランさんと朝食をとりながら話をする。ちなみに宿の朝食はほとんど決まっているらしく、パンとベーコンエッグ、スープ、サラダ、果物だ。
 果物は見た目と味が違うものもあるので違和感をうけてしまう。酸っぱいと思ったものが甘かったり、逆だったりするからなあ。ブドウとかは普通なんだけどね。

 先日話したフードコートについては自分達が言ったアイデアをベースにいろいろと実践してみるらしいけど、少なくとも1ヶ月ほど待たないと効果はわからないだろう。うまくいくようなら他の町にも展開していくつもりらしい。いろいろお世話になっているのでうまくいってくれるといいなあ。

「まだ確定ではありませんが、自分たちはもうしばらくサクラの町に滞在しようと思っています。そこで今日はその間に泊まる宿を探そうと思っていますので、うまく見つかれば今日のうちに移動しようかと考えています。」

「わかりました。もともと長期滞在の場合は宿は移るとおっしゃってましたね。宿が決まったら連絡をお願いします。
 あと、申し訳ありませんが、私は明日から他の町に移る予定なんです。この後のことは息子のカルニアには言っていますので何かあれば連絡してください。」

 まだサクラに戻ってきて数日なのにもう別の町に行くのか。相変わらず忙しそうにしているなあ。食事の後、先日の打ち合わせの時に簡単に挨拶をしたが、カルニアさんとも改めて挨拶する。

「先日はいろいろと意見を言っていただいてありがとうございます。何かあれば私に言ってもらえればいろいろと対応できると思いますので、今後もよろしくお願いします。」

 ちなみにカルニアさんは20代後半くらいの誠実そうな人であまりコーランさんとは似ていない。どうやら奥さん似のようである。

「もし私に用事がある場合は受付でこの名刺を出していただければ連絡が付くと思います。この名刺は他の町の店舗でも有効ですので、もし他の町に行くことがあったときも、お店に顔を出してくれると助かります。またそのときに何か新しいアイデアがあったら教えてください。」

 そういって渡された名刺にはカサス商会の名前と自分たちとは違う名前が書かれていた。

「いろいろと不都合があるかもしれませんので、とりあえず偽名での名刺を作らせていただきました。この名刺と身分証明証を受付に出していただければ大丈夫です。」

「ありがとうございます。何かあったときには使わせていただきますね。」



 二人に挨拶をしたあと、事前に調べていた宿を回ってみる。アーマトとかで泊まっていた宿と同じレベルの宿だと一日1000ドールくらいなので二人で2000ドールと結構な金額となってしまう。もちろんレベルを下げればもっと安いところはあるんだけどねえ。

「残金とかを考えると一日の宿代は2000ドールくらいが限度だけど、これより値段を下げると一気にランクが落ちるんだよね。折角ならこの程度のレベルはキープしたいし・・・。」

「ねえ、同じ2000ドールだったらツインの部屋であっちの宿にした方が良くない?お風呂とかの施設も充実していたし、他の施設もいろいろあったと思うわ。」

 確かに同じ2000ドールならお風呂のあるあっちの方がいいのは確かだけど・・・。でもツインはなあ・・・。もちろんシングルを二つにする方法もあるんだけど、それだと3500ドールと2倍近くになってしまう。さすがにいくら今はお金があるとはいっても1ヶ月で4万ドールの差は大きすぎる。

「ツインって前の移動の時と同じようなことになるんだよ。・・・自分も男だからね。」

「問題ないわよ。そんな度胸があるなら襲ってみれば?」

「くっ!!」

 くっそー、そんな度胸がないと分かってて言っているな。普通は男の方から「なにもしないから」と言って提案して同意を求めるものではないのか?自分の本の読み過ぎなのか?
 まあとりあえずツインにしてやっぱり無理となれば移動すればいいか。一緒の部屋だったときも楽しかったと言えば楽しかったからね。それに大きなお風呂というのはやっぱり惹かれるし。

「わかったよ。それじゃあ言葉に甘えてツインの部屋にするからね。」

 今回泊まることにした宿はシルバーフローという10階建てのホテルのようなところで、ちょっとした高級宿という感じだ。前にアーマトで泊まったところよりは格は落ちる感じだけど、あれはちょっと別格だしね。

 季節は夏を過ぎて秋になり始めているようだけど、まだ残暑という感じで暑い日も多い。話しを聞く限りあと1、2ヶ月は他の町への移動も問題ないらしいので、とりあえず約1ヶ月の8/31までを予約することにした。

「ほんとにツインでいいんだよね。何かあっても文句言わないでよ。」

 もう一度ジェンに確認してみたんだけど、ツインでいいと言うことで変わらないようだ。自分的にはかわいい女の子と一緒の部屋というのはうれしいけど、あっちの処理には困ってしまうんだよなあ。ただ、ジェンの勝ち誇った顔がちょっと悔しい・・・。


 チェックインまで時間があるので荷物を預かってもらって買い物に行くことにした。サクラにやってくる前に手持ちの服もある程度処分してきたので、衣料店によっていろいろと買っていく。ジェンは気に入ったパジャマがあったみたいでかなり喜んでいた。他にもいろいろと見て回り、宿へと戻る。

 受付で宿泊の手続きをして月末までの料金をまとめて払っておく。大きな店だと、カードから直接引き落とせるのが楽でいい。

 支払いをすると鍵を渡されたけど、カードキーのようになっていた。建物の入退場などにもこのカードキーを使わないといけないらしい。セキュリティーが厳しいな。ジェンと二人分のカードを受け取ってから預けた荷物を回収して部屋に向かう。

 部屋は5階にある502号室だ。移動はエレベーターのようなものがあるので階段を登らなくていいのはうれしい。
 もらったカードキーをあてて目的の階を押すようになっていたんだけど、よく分からなくてジェンがやってくれた。地球でも最近のホテルはこんな感じみたい。そんなホテル泊まったことがないし・・・。

 部屋に入るときもカードをあてると鍵が開いて中に入れるようだ。「出るときにカードを忘れたら入れないからね!」とジェンに釘を刺される。気をつけます。


 部屋にはシングルベッドが二つに、小さなテーブルと椅子とソファー、小さなタンスが二つ置かれている。広さ的には十分という感じか?洗面台とトイレとシャワーも付いているので時間的にお風呂には入れないときは助かるね。まあそのときは浄化魔法で済ませそうだけどね。
 シャワー室の前に脱衣所もあるので着替えの時も大丈夫そうだ。かなりリッチな感じだけど、まあ臨時収入もあったし、たまにはいいだろう。
 もちろん部屋にはエアコンのような魔道具も置いてあるので部屋の温度も快適だ。まあエアコンはそこそこのレベルのところだったらどの宿でも付いているものなんだけど、安い宿のは効きが悪いんだよね。

 部屋には大きめの窓があり、外を見ることができるんだけど、周りに同じような建物があるのであまり展望は良くない。最上階にも行くことができるようなので後で行ってみるかな。

 あとは夕方から夜にかけての3時間限定だけど、地下にある大浴場が使えるのがうれしい。カサス商会の宿にもお風呂はあったけど、大浴場というわけではなかったからね。


 しばらくここでの生活となるので荷物の整理をする。今日くらいはちょっと贅沢をしようと言うことで最上階にある展望食堂で夕食を取ることにした。

「お~~~、なんか大都会という感じの眺めだ。」

 食堂からの眺めはなかなか良くて、思ったよりも夜景がきれいだった。魔道具のライトが設置されているので夜でも結構明るいせいだろう。ジェンもしばらく眺めに見とれていた。こういう景色はこっちではなかなか見ることがないからねえ。


 夕食はコース料理みたいな感じで、順番に料理が出てきた。ジェンは一応こちらのマナーについて確認していたようだけど、特に決まったテーブルマナーというものはないらしい。あまり音を立てないこと、手を使わないことくらいでいいようだ。また皿によってナイフとフォークを使い分けるという感じでもないらしい。

 ジェンは地球でもこういうことに慣れているみたいで、きれいな所作で食事をしている。それに対して自分はまあ・・・。母がこういう料理が好きで家で作っていたから、ナイフフォークの最低限のレベルはあると思うけど、ジェンと比べるとね。

 いつもはほとんど飲まないんだけど、ジェンはワインまで飲んでいた。地球にいたときもちょこちょこ飲んでいたらしい。こっちのワインも結構おいしいようだ。
 自分はあまりおいしいとは思わないのでやめておく。いずれ少しは飲めるようになりたいとは思っているけど、今はいいかな。

 ジェンは何種類かワインを頼んで飲んでいたんだけど、「これだったらおいしいんじゃない?」と渡してきた。ちょっと飲んでみると、ジュースみたいな感じであっさり飲むことができたんだけど、ちょっと体がほてってしまう。って、これってジェンが途中まで飲んでいたやつだよな・・・。といってもジェンには普通のことで、気にしているのは自分だけかな。

 夕食を堪能した後、いったん部屋に戻ってからお風呂へ向かう。ジェンも行くみたいだけど、自分ほどはテンションが上がっていないのはあまりお風呂に入るという風習がないせいだろうな。

 お風呂の案内を見ると、入り方は前行った宿と同じく裸もしくは湯浴み衣装を着て入るようになっていた。中にいるのは数人だけでみんな湯浴み衣装を着ていた。こっちではあまり裸で入らないのかもしれないなあ。

「あ~~~~っ!!」

 体を洗ってから湯船につかると声が出てしまう。うーん、いい気持ちだ。こっちには温泉とかないのかなあ?あっても海外みたいに水着ではいるスタイルかもしれないね。まあそれでもあったら行ってみたいな。

 60分ほどお風呂を堪能してから部屋に戻ると、ジェンはすでに部屋に戻っていた。

「おそかったわね。」

 なんかすねたように言われても、お風呂に行ったらそのくらいかからないか?

「いや、温泉とか行ったらこのくらい普通に入っているよ。まあいつもというわけじゃないけど、最初の日くらいはのんびり浸かっていたいからね。」


 ある程度慣れてしまったこともあり、ジェンと同室と言ってもあまり気にならなくなってきた。というか気にしないようにしているのかもしれないけどね。ただ今までと違ってワンピースタイプのパジャマはちょっと目の毒だ。

 寝る前に「ねえ、こっちにこないの?」と布団に招くような仕草でジェンがからかってくる。結構ワインを飲んでいたので酔っているのかもしれない。

 「それじゃあ・・・」と布団に潜り込むような冗談もできない自分だった。自分のベッドに入るとすぐに眠りに落ちていった。



 よく眠れたのか、目覚ましが鳴る前に起きることができた。なかなかいい気分だ。ジェンの方は・・・って!!布団とスカートがめくれて太ももまでがあらわになっている。お願いだから健全な高校生にそんなものを見せないでくれよ。
 目をそらそうとしてもやはり気になってしまう。さわってみたい・・・って、ダメだ、ダメだ。ジェンは自分を信頼して同室になってくれているんだ。ここで手を出したら、ジェンの彼氏にも申し訳が立たない。

 なんとか理性を働かせて耐えてから、ちょっとトイレへ。部屋に戻ってから準備をしているとジェンも起きたようだ。その格好を特に気にするわけでもなくあくびをしている。気になっているのは自分だけかよ!!

「パジャマがはだけているぞ!!」

 つい大きな声を上げてしまった。

「え~~~、あ~~~、見た?!」

「見たくて見たわけじゃない!!」

 これから毎朝こんなことになったら正直我慢の限界を超えてしまうぞ。

「な~~んだ、見たいなら見てもいいのになあ。」

 お願いだから、それ以上誘惑しないで、お願いだから・・・。



 今日の朝食も宿で食べることにしたので最上階の食堂へ。朝食はバイキング形式となっている(なんて言うのか知らない)が、ここも自分でとるスタイルではなく、こちらで指定したものを持ってきてもらう感じだ。ステーキ、揚げ物、麺類などいろいろと豪華な朝食を堪能してからいったん部屋に戻る。


 このあとの予定についてジェンと再度確認する。とりあえずは今月末までということで25日ほどあるんだけど、まずは自分の考えをジェンに説明する。

「あのあと聞いた話しによると毎月10日に兵士による魔獣の掃討イベントがあるらしいのでやっぱり狩りをするというのは厳しいみたい。それで当初考えていたとおり学識や技術、戦闘術や魔法の習得に力を入れようと思っている。」

「魔法についてもちゃんとした講習に行くってこと?」

「いや、魔法については部屋の中でイメージするだけでも訓練になるし、それ以前に常に魔素を取り込むように訓練しているので大丈夫だと思っているんだ。前に講習を受けたけど、あまり意味があるようにも思えなかったんだよね。あとは図書館で知識を手に入れるくらいかな?
 武器の使い方については役場の講習会や場合によっては私塾で鍛錬しようと思っている。自分は剣と盾、できれば体術くらいまでやってみたい。もちろんそれ以外に毎日1時間くらいは二人で鍛錬する感じ?」

「私も魔法についてはそう思うわ。講習を受けるよりも自分たちでやった方がいいと思うしね。」

「技術として覚えたいのは付与魔法かな。すぐには無理かもしれないけど、自分たちの知識をベースにすればもっと効率よく魔道具が作れるんじゃないかと思っているからね。最低限の付与魔法の知識を覚えてからできるかどうかを検討していけばいいと思う。
 ただ付与魔法を学ぶには基礎を学ぶための学校があるらしいけど、習いたい人も多くてなかなか枠が開かないらしい。まあそれ以前に今から入れるのかも分からないから、カルニアさんに一回相談してみようかと思っているんだ。」

「私も付与魔法は学んでもいいかなと思っているけど、その後は調合について学びたいかな?薬とかの知識もあった方が何かの時には役に立つと思うから。」

「そのあたりはまたどうするか考えていけばいいと思うよ。あと、自分は罠関係のスキルを手に入れたいと思ってる。これは今後探索をする場合に必要になってくると思うからね。それ以外に鍛冶や調合や錬金については状況と時間的余裕を見てやってみたい。」

「今のところ、技術系の知識はほとんどないから分担して覚えたら効率がいいわよね。」

 分担してと言ってくれるってことは今後も一緒に行動すると考えていてくれていると思っていいのかな?

「まあ、あまり欲張ってもしょうが無いのでできる範囲でやってく形になるとは思うけどね。まあ最低限スキルが付くくらいやっておけば自分でも少しは上達できると思うし。」

「それはそうよね。確実に技術を手に入れていかないと中途半端になってしまうわね。二兎を追うものとか言う言葉があったわね。」

「そう思うよ。学識についてはここには大きな図書館もあるから、そこで知識を仕入れればいいと思う。とりあえず取り込んでしまえば宿で勉強できるからね。」


 どうするかを一通り話した後、まずはどこでどういう風に習うことができるのか確認するためにまずは役場に行ってみたんだけど、残念ながらあまり有意義な情報は得られなかった。罠についての講習はあるみたいなんだけど、他の技術については学校などの紹介というレベルだ。

 後の頼みの綱はカサス商会くらいなので受付に行き、カルニアさんに取り次いでもらうようにお願いする。

「支店長との面会の予定は受けていません。」

 さすがにいきなり来て店長に合わせろというのも厳しいみたいで、すげなく断られてしまった。まあ当たり前か。

「あ、すみません。これを出すように言われてるんでした。」

 もらっていた名刺と身分証明証を出すと、態度が一変して連絡を取ってくれた。しばらくすると連絡がついたみたいで奥の部屋に案内され、カルニアさんと面談ができた。宿泊場所の説明などをしてから本題に入る。

「個人的なことで申し訳ないのですが、実は付与魔法について学びたいと思っているんです。ただ付与魔法の学校はさすがに今から入るのは難しいみたいなのですが、基礎的なことだけでもいいのでどこか習うことの出来る場所を紹介してもらうことはできませんか?」

 カルニアさんはしばらく考えた後で提案してきた。

「うちの商会でも魔道具を製作している部門がありますので、基礎的なことで良ければそこで習うことが出来ますよ。もちろんちゃんと講師役もおつけしますし、授業料は特に必要ありません。」

 講習代金も無料?

「それはとてもありがたい話ですが、よろしいのですか?」

「ええ、その代わりと言っては何ですが、なにか新しいものを発見したら優先的にカサス商会に教えていただけますか?もちろん利益が見込めるものであればその対価はお支払いします。」

「えっと、いくらなんでも全くの素人がそんな価値あるものなんか簡単には作れないと思いますよ。」

「技術的にすぐにと言うつもりではないのですが、ジュンイチさんの知識の広さを考えると斬新なアイデアが出るのではないかと思っています。ですので正直なところ、それを見込んだ先行投資ということでさせていただきたいと思っています。」

「ちょっとジェンと相談させてもらえますか?」

「わかりました。こちらでも受け入れが可能かについて確認してみますのでちょっと席を外しますね。」


「無償というのが気になるけど、ありがたい話ではあるんだよね。」

「おそらくカルニアさんが言っていたように先行投資だと思うわ。新しい魔道具が簡単にできるとは思ってないかもしれないけど、アイデアを出してもらうだけでもその価値はあると考えているんでしょうね。
 今までのことを考えると対価を払ってでも自分たちのところでその情報を囲っておきたいというところかしら。」

「まあそうだとしても自分たちにはマイナス要因はないと考えても良さそうだね。」

「ええ、私達と良好な関係を築いた方が商会にはメリットがあると考えていると思うわ。会長のコーランさんがそう考えているみたいだから、なにか手を出してくる従業員がいるようなら言いつけてもいいと思う。」


 防音の魔法を解いてから差し障りのない会話をしているとカルニアさんが戻ってきた。

「お待たせしてすみません。確認したところ、基礎的なことを学ぶのであれば最低限5日、できれば10日は毎日通ってほしいとのことです。あと明日からでも講義は可能ですが予定はどうでしょうか?」

「明日からで大丈夫です。時間などはどんな感じでしょうか?」

「それでは明日の1時半に来ていただけますか?講義は1時半から3時間行う予定です。講師は明日までに決めておきますので受付で名前を言っていただければ連絡が付くようにしておきます。」

「わかりました。それではよろしくお願いします。」

 お礼を言ってから店を後にする。付与魔法については何とかなって良かった。

 このあと役場に行ってから罠に関する講習の日程を確認する。罠の講習も罠探知や解除などの実践なので先に本で勉強しておいた方が良さそうだ。

 せっかく役場まで来たので訓練場を借りて訓練を行う。ジェンと二人で打ち合っていると蠍の尾のメンバーがやってきた。護衛任務も終わったのでしばらくは休養をとっているらしい。せっかくだから相手してやるぞと言うので相手をしてもらうが、もちろんボロボロにされてしまった。


 せっかくなのでデルタさんに魔法の威力のことについて聞いてみる。

「デルタさん、魔法の威力がなかなか上がらないんですが、なにかいい訓練方法とかはないですか?」

 するとデルタさんは不思議そうな顔をする。

「魔法の連射の方に重点を置いているから、魔力をためずに打ち出していると思っていたんだけど・・・違うの?あの威力をあの時間で出せるなら、時間をかければ結構威力が上がるでしょ?
 それとも魔素をとどめることが苦手なの?僕は最大で30秒くらいはとどめておくことができるけど、10秒くらいでもかなり威力が上がるはずだよ。」

「え・・・、もしかして魔力ってためていくとその分威力が上がるの?魔法に慣れてくるとイメージが洗練されて威力が上がっていくのかと思っていたんだけど・・・。」

 ジェンにも確認してみるとジェンも同じように攻撃の時に魔力をためるという考えは持っていなかったらしい。

「マジか・・・。やらかしたか?」

 どうやら魔力をためればためるだけ威力は上がるが、それだけ時間がかかることと維持するのが大変にという問題があるらしい。もちろん使っていけばそれだけ維持できる魔力も増えていくし、時間も早くなるようだけど、貯める時間と威力は個々に調整しているみたいだ。

 威力を上げるにはより圧縮するとかイメージとかで対応することで考えていたんだけど、単純に使う魔力を多くすれば威力が上がるのは当然か。

 もしかして魔法関係のレベルがなかなか上がらないのは威力を上げていなかったせいか?さすがに町の中ではやりにくいので郊外に出てから魔法の威力について検証した方が良さそうだな。



 1時間ほど訓練をした後、彼女たちと一緒に昼食へ行くことになった。彼女たち行きつけの店が近くにあるみたいなので行ってみると、店はちょっとおしゃれな喫茶店風のところだった。

「いらっしゃいませ~!あ、スレインさん。いつもの席で・・・・えっ?あ、すみません、いつもの席でよろしいですか?」

 なんか店の店員と思われる女性が驚いているけどどうしたんだろう?

「ええ、申し訳ないですがお願いするわ。」

 スレインさんたちはいつも個室を使っているようなのでそこに移動して、おすすめと言われるセットメニューを注文する。しばらくして運ばれてきたのは鶏肉っぽい照り焼きとパンとスープのセットだった。確かになかなかおいしいな。

 今回いろいろと予定外の収入があったので、1ヶ月は訓練の他にいろいろやってみたいことに手を出してみることを伝えると、時間があるときは声をかけてくれれば稽古をつけてくれると言ってくれた。
 しばらくはそんなに長期の依頼は受けないし、冬の間は借りている家でゆっくりと過ごすらしい。連絡も取れるように冒険者の連絡先と家の住所も教えてくれたので今度遊びに行ってみよう。

 そのあとスレインさん達がひいきにしている鍛冶屋や雑貨屋などに連れて行ってもらい、店の店員と顔合わせする。なぜかみんなが驚いているように見えるのは気のせいか?1時間ほど店を見て回ってからスレインさん達と別れる。

 デルタさんに聞いた魔法のことが気になったので町の外へ出て威力を試してみた。魔力をためるとたしかに威力が上がっている。ただそれだけ時間もかかるので、相手次第では今まで通りの連続攻撃の方がいいのかもしれない。何かの時に使えるように、時間と威力について事前にちゃんと把握しておいた方が良さそうだ。



 それから図書館へも寄ってみるが、さすがに首都だけあって規模が大きい。入るためには他の図書館と同じように委託金を預けないといけないみたいなんだけど、3000ドールと結構高い。他の町では1000ドールとかだったんだけどね。まあ、何もなければ返ってくるお金だからいいんだけど。
 他の図書館と同じように出入口にはセキュリティーも設けられている。まあガイド本くらいなら持って入れるからいいけどね。
 どんな本があるのかを確認してからざっと目を通していき、とりあえず付与魔法と罠についての本を中心に読んでおく。

 夕食はスレインさん達に教えてもらった店で食べることにした。食事の後で宿に戻り、お風呂でまったり。部屋に戻ってから少し勉強をして眠りについた。


~ジェンSide~
 上階位の試験の後、イチと話してしばらくこの町で生活しようということになった。冒険者としてだけでなく、いろいろと他のことにも手を出したいみたい。確かにそれはいい考えかもしれないし、折角だからこっちの文化にももう少し触れてみたい。

 とりあえず宿を移ろうという話になっていろいろと見て回ったんだけど、やっぱり結構な値段だった。残金とかを考えて泊まる予算はだいたい決めていたんだけど、やっぱり厳しいのは仕方が無いわね。
 値段を考えてツインの部屋にしたらどうかと言ってみたんだけど、かなり迷っていた。私と同じ部屋というのがうれしいと言うより大浴場が付いていると言うことに惹かれているのがちょっと悔しいんだけどね。いろいろと言い訳をしていたけど、同じ部屋に泊まることは納得したみたい。

 夕食はちょっと贅沢に宿の展望食堂で食べることになった。最近大きな収入もあったのでたまにはいいだろうと言うことらしい。お金が一気に入ると一気に使う人もいるけど、イチはまだ堅実なようね。
 いまは140万ドールくらいあるらしいので普通に生活するには十分な金額かな。普通に狩りをしているときでも貯金できるくらいには稼いでいたからなんとかなるかな?どのくらいになるか分からないけど来月からはインスタントラーメンのお金も入ってくるからね。

 夕食の時に久しぶりにワインを飲んでみた。こっちのワインもなかなかおいしいので助かるわ。異世界ものの小説ではお酒がおいしくないというのが結構多いからね。
 私の飲みかけのワインをイチにも勧めてみたら少し飲んでくれた。飲んだ後で、私が口をつけたものと気がついたのかちょっと挙動不審になっていたのはちょっとおかしかった。こんなことで照れるなんてかわいいものね。

 食事の後でお風呂に行くことになったんだけど、イチはかなりテンションが上がっている。大浴場というのはそんなにいいものなのかな?
 湯浴みの服を着てからお風呂に入ってみると、確かにかなりリラックスするものだった。いつもはシャワーとかバスタブくらいだったから、あまり大きな風呂に入ることはなかったのよね。温泉とかもプールという感じだったからあまり大きなお風呂という感じではなかったしね。

 部屋に戻ってからしばらくたってもイチが帰ってこない。60分ほどたってから満足した顔で戻ってきた。遅かったわねと聞くと、お風呂に行ったらこのくらい普通だろ?って返事が返ってきた。そんなものなのかな?

 寝るときに「こっちに来ないの?」とからかってみたんだけど、顔を赤らめて自分のベッドに潜り込んでしまった。ワインのときの事を考えてもまだウブな感じね。まあ私も自分の気持ちがどういうものなのか考えていかないといけないけどね。


 朝起きるとなんか横でイチのうなっている声が聞こえてきた。うっすら目を開けてみると、イチがこっちを見ながらうなっていた。手をこっちに伸ばそうとしたり引っ込めたりしている。どうしたのかと思ったら、昨日着ていたパジャマがはだけて足があらわになっていたようだ。
 さすがにこれは恥ずかしい・・・。起きた方がいいかな?どうしようか?と悩んでいると、しばらく凝視していたイチはトイレに行ってしまった。ははぁん。

 部屋に戻ってきたところで、今起きたようにあくびをしながら声をかけると、イチは顔を真っ赤にしながら叫んできた。やっぱり女の子には興味あるみたいね。ふふふ・・・。
 イチがちゃんと自制してくれたけど、私も気をつけないといけないわね。やっと気に入ったパジャマが手に入ってちょっと気が緩んじゃったかな。でも、もしイチが手を出してきたら・・・そのとき私はどう対応するんだろう・・・。


~喫茶店の店員Side~
 ひいきにしてくれている蠍の尾のメンバーのスレインさん達がやってきた。スレインさん達は良階位の冒険者で礼儀も良くていい人たちだ。ただ男性にはかなり不信感を持っているみたいで、食事の時は個室を用意してくれと言われている。美人の部類に入る4人がいると声をかけてくる人たちが多いので仕方が無いわ。

 今日もお昼を食べに来てくれたのだけど、珍しいことに他の人たちも一緒だった。ただ驚いたのはそのうちの一人が男性だったことだ。しかもかなり親しげにしており、食事の間もみんなでいい雰囲気で食事をとっていた。
 気になって話を少し聞いていると、なんと連絡先や家の住所まで教えているようだった。今度遊びに行くと約束までしていたのでかなりびっくりだ。なにか心境の変化でもあったのかな?4人の他に女性もいるんだけど、もしかして、もしかして5人で付き合っているのかしら?

 さすがに今日のことをあまり広めることは出来ないけど、やっぱり誰かに話したくなるのよね。だけどあれだけの美女5人と付き合っているとしたらすごいわね。



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