【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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30. 異世界225日目 ヤーマン建国祭

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30. 異世界225日目 ヤーマン建国祭
 今日は建国祭で祝日なので基本的に店は休みなんだけど、客相手の商売をしているところはやはり開けているらしい。
 この日は王宮の一部が開放されて国王からのお言葉があるようだ。せっかくなので行ってみようと思っていたんだけど、半端ない人の数でちょっと後悔してしまう。

 そうはいってもせっかくだからと人の流れに任せて開放されている王宮の中央広場へと入っていく。中に入ってからしばらくすると正面の建物に国王以下、王族の人たちが姿を現した。なんか日本の正月にもあるようなイベントだな。遠くてよく見えないんだけど、魔道具らしきもので、空に映像が出ているので助かる。


 現在の国王はクマライアス・ヤーマンという名前で40歳らしい。国王には第一王妃、第二王妃、第三王妃までいて、子供のうち、長女はすでに嫁いだみたいなので今並んでいるのは5人だ。長男、二男、三男と次女、三女だろう。その中で長男が皇太子となっていて、すでに妻が2人と息子が1人いるようだ。おそらく長男の横に並んでいるのがその妻達だろう。

 ちなみに王妃はすべて貴族出身というわけではなく、最近は平民から選ばれた人の方が多いらしい。たしか第二王妃はもと冒険者だったはずだ。まあ貴族という身分もほとんど形骸化しているみたいだからそんなものなのかな。
 他に一緒にいるのは4つの州の領主の4人のようだ。オーマト、アーマト、ターマト、ラーマトの州都の名前ががそれぞれの家の名前らしいが、詳しい名前までは知らない。年齢は30~50歳くらいか?

 「小説ならきっと次女か三女と関係ができるところだな。」とか考えていると、ジェンにいきなりつねられた。

「王女を見ながらにやにやして何を考えているのよ。」

「いやいや、別に変なことじゃなくて、よくある異世界小説だったら次女か三女が襲われているのを自分が助けて王族と関係ができるなあ・・・と思ったんだよ」

「たしかに、ありがちな内容ね。まあ実際の世界では普通はあり得ないことだけどね。」

 同意してくれたところを見ると異世界ものの小説は結構読んでいたんだろうな。まあジェンが言うようによほど力の無い王族とかで無い限り、移動中に魔獣や盗賊に襲われることはないだろうね。


 魔法で声を大きくしているのか、広場全体に響く声で国王から言葉が発せられる。この国がどのようにして興り、どのようにして維持してきたのかの説明の後、今後の国の方針に関する演説だ。歴史については少し誇張されている感じもするけど、まあしょうがないだろう。15分ほどの演説の後、大きな拍手の中を王族の人たちは退場していった。



 町中に戻ると、あちこちに屋台が出ていたので、いろいろと食べながら町をうろつく。この間ののみの市よりも屋台の数は多く、小さな舞台が作られて演劇なども行われていた。

 広場では音楽が流れていて、ダンスエリアみたいになっていた。それを見たジェンはその中に飛び込んでいった。音楽に合わせて好きに踊っているんだけど、さすがに踊りの素養があるせいかかなりレベルが高い。
 ジュースを飲みながら眺めていると、興奮したジェンに引っ張りこまれるが、あまりにもレベル差がありすぎてちょっと恥ずかしいよ。
 しばらく踊った後、「久しぶりに踊った~~~!!」とかなり楽しそうにしていたので文句も言えなかったけどね。

 他にあちこちで演奏をしている人がいて、いくつか楽器が置いてあって、「演奏に自信がある方はやってみませんか?」と書かれている。「それじゃあ久しぶりにやってみようかな。」と言ってジェンはバイオリンのような楽器を手にとった。
 「やっぱりベースがちょっと違うわね~~。」と言いながらしばらく音の調整をしてから弾き始めた。自分は知っている曲だったんだけど、こっちでは聞いたことがない音楽だったらしく、演奏をしていた人たちも驚いた表情でジェンの演奏を聴いていた。
 5分くらいの演奏を終えると、周りから割れんばかりの拍手があった。演奏していた人たちもジェンの弾いた音楽がかなり気になったらしい。アンコールがかかったため、もう一度ジェンが演奏をしていた。
 演奏の後でいろいろな人から「あなたが曲を作ったのか?」とか「どこで習ったのか?」と聞かれていたが、適当にごまかしたようだ。

 ちなみにバイオリンよりもピアノの方が得意らしいけど、こっちにあるピアノのようなものはちょっと鍵盤が違っていて弾くのは厳しいらしい。もし本当にやるのなら特注で作るしかなさそうだね。
 バイオリンも調整がきちんとできなかったからおかしなところが結構あったみたいだけど、それほど耳が肥えていない自分にとっては十分なレベルだったと思う。

 このあとも屋台のゲームや食べ物を楽しみながら練り歩き、宿に戻る。建物の中ではコンサートや演劇とかも行われていたらしいけど、外で行われているものを見るだけでも十分な内容だった。



 結局、今後の予定を決めないまま、9月中旬になってしまった。冬の間はこのままサクラにいるのか、それとも別の町にいくか悩むところだ。
 狩りをするならなんとか日帰りで対応はできるんだけど、兵の討伐の後は一気に収入が減ってしまうのが問題だ。今は副収入があるんだけど、これもいつまでかはわからないのであくまで臨時収入と考えておいた方がいいだろう。
 やはりここを拠点とするにはもっと実力をつけてからでないと厳しそうな気もする。それ以前にここを拠点にするならいろいろな伝がないと仕事もないからね。たしかに居心地はいいんだけど。


 ジェンに自分の考えを話して、とりあえず本格的な冬になる前に行ったことのない南の港町に行ってみようと考えていると話す。

「暖かいところはいいわね~~。っていうことは、港町ルイサレムってことね。久しぶりに新鮮な魚も食べたいし、いいんじゃない?」

 自分と一緒に行く気満々なようだ。

「一緒に行く?」

「当たり前じゃない!!イチとはパートナーでしょ!」

「パーティーメンバーね。」

「同じようなものでしょ。なに?私と一緒だといやなの?」

「いや、一緒に来てくれるならうれしいけど、ジェンも何かしたいこととかあるんじゃないかと思って・・・。」

「もうっ!イチと一緒にいるっていったじゃない!他の人とパーティーを組むなんてことはないからね!!」

「わかったよ。・・・ありがとう。」

 とりあえず、一緒に行動すると考えてもいいようだ。あまり別行動というと機嫌を損ねそうなので今度からは一緒に行動する前提で話した方がよさそうだな。

「それじゃあ、オーマトの町経由でルイサレムに行くけど、オーマトの町は乗り継ぎくらいに考えているのであまり滞在予定はないからね。」

「面白そうだったらまた移動するときに寄ればいいし、まずはルイサレムに行くことを優先でいいわよ。」

 今回はせっかくなので前にいた南西の港町のオカニウムではなく、南東にある港町ルイサレムに行くことにした。途中に州都であるオーマトの町があり、ルイサレム方面はこの町経由の方が本数が多くて便利と聞いている。


 バス乗り場に行って予定表を確認してみると、明後日の朝出発のバスに乗るのが一番都合が良さそうだ。

「明後日のバスが一番短い時間でオーマトまでいけそうだよ。それを逃すと移動時間が2日以上長くなりそうだね。途中の状況にも寄るけど、予定通り付いたらルイサレム行きの乗り継ぎもいい感じ。
 高速バスだともっと時間は短くなるけど、値段が結構上がるからなあ・・・。こっちだと高速バスよりは遅いけど指定席だからまだ移動は楽な方だと思う。」

「値段を考えたらそのバスかな?ばたばたになるけど、出来るだけ早めに移動した方がいいかもね。もし寒気とか来て雪でも積もったらそれこそ動けなくなるからね。」

「お世話になった人たちに挨拶するとしても明日まで時間があれば何とかなると思う。まあ家にいなかったらそれはそれで挨拶するのはあきらめるしかないよ。」

「まあコーランさんもスレインさん達も忙しい人だからねえ。」

「荷物は収納バッグにすべてはいるから特に準備はいらないかな。ただ着替えとか最低限のものはリュックに詰めていった方がいいだろうね。荷物が全くないというのはちょっと不自然すぎるからね。」



 方針は決めたのでまずはカサス商会に行ってカルニアさんに挨拶していく。明後日にルイサレムに向けて出発し、少なくとも冬の間はあっちにいることを説明すると、もしなにか新しいことを思いついたら向こうの店の人に伝えてほしいと頼まれる。

 他にもいろいろと取り組んでいる商売の状況を教えてくれた。フードコートの席を共用にしたとき、店によってかなり反対意見も出たみたいだけど、グループでもいろいろな料理を食べられると評判も良く、売り上げがかなり上がったらしい。反対していた店も、売り上げがあがったので今では全く文句も出なくなったようだ。
 半年か1年に一回、最低限の売り上げを出せない店舗は撤退させる可能性があることを伝えているので店も必死みたい。ただ出店の店舗の申し込みも多いようで、店舗エリアの拡張も考えているらしい。

 配膳を客がするスタイルは当初こそ混乱してしまったため案内係を置くことになっていたようだけど、いまでは浸透してきているらしい。店の方も配膳係がいらなくなったので良かったようだ。

 お客も増えたことで併設の店の売り上げも上がっていて、かなり繁盛しているみたい。もう少し様子を見て問題なさそうだったら他の町にも拡張していくようだ。そういえば視察の時以来顔を出していなかったなあ。町を移動する前に一度行ってみるか?

 インスタントラーメンについてもかなり好評みたいで売れ行きもよく、他の町での販売も前倒しで行うことになったらしい。ちなみに販売はいまのところそのショッピングモールのみで行っているみたいで、それも客寄せになっているようだ。



 せっかくなのでお昼はフードコートに行ってみることにした。お昼を過ぎているんだけど、まだ結構混んでいる。配膳方法などを説明しているスタッフもいるが、すでに慣れている人も多いみたいで混乱している感じはない。周りの声を聞いてみると、やはりどの店で食べるかもめることがないので助かるという声が多い。

 食事の後、店内をまわってみるとインスタントラーメンの販売コーナーがあったんだけど、人の姿はない。そこには「本日の予定数の販売は終了しました。」と札が貼られているので、聞いていたとおり速攻で売り切れているのだろう。すごいな。


 夕方にスレインさん達の家に行って挨拶すると、「それじゃあ、壮行会をやろう!」ということになってしまった。ちょっと挨拶のつもりだったんだけどなあ・・・。

 どこかの店に行くのかと思ったんだけど、テイクアウトの料理をいくつか買ってきてスレインさん達の家で夕食を食べることになった。まあこの方がまだ気を遣わなくてもいいかもしれないね。スレインさん達はどこに行っても人目を気にしないといけないからねえ。

 最初は普通の食事会だったんだけど、途中からスレインさん達が酔っ払ってちょっと羽目が外れてきたのはびっくりだった。お酒を飲むことはあったけど、酔っ払うのを見るのは初めてのような気もする。家では結構羽目を外しているんだろうか?
 ちょっとエッチなスレインさん達はちょっと自分には刺激が強すぎです。いや、うれしいんだけどね。胸を顔に押し当ててくるとか、本当にうれしいんだけどね。これでも健全な高校生なんですよ。


 結局かなり遅くまで盛り上がったせいで泊めてもらうことになってしまった。さすがに宿に帰ろうかと思っていたんだけど、夜中にあまりうろつくのはちょっと怖かったこともある。自分もお酒を飲まされて酔っ払っていたしね。お客さん用の部屋があるから気にしないでと言われたんだけど、ちょっと図々しかったかなあ?
 だけど昨日はみんなテンションが高かったよなあ。先に休ませてもらったけど、あの後は大丈夫だったんだろうか?かなり酔っていたからねえ。かなりきわどい格好だったし、いろいろとうれしい事もあったけどね・・・。

 ベッドの中で昨日のことを思い出しながらまどろんでいると、なんかちょっと違和感を受ける。あれ?隣に誰かいる?そう思って横を振り向くと、ジェンと目が合った。

「「え・・・・!!」」

「あ、・・・お、おはよ。」

「お、おは・・よ。

・・・・って、なんで同じベッドにいるのよ~~~っ!!」

 ベッドからたたき落とされてしまう。

「まって、誤解だ。何もしてない。不可抗力だ。」

「なんで隣に寝ていたのよ!!」

 そう言いながら枕で自分を殴ってくる。

「ちょっとまってって!!その前に自分の格好を見てよ!!」

 ジェンは下着にスケスケのネグリジェというかなり刺激的な格好をしている。しかも上は着けていないからうっすらと・・・。

「~~~~~!!」

 自分の格好に気がついたのか、あわてて布団に潜り込むジェン。あれ?だけど昨日は確かジェンはみんなと盛り上がっていたので、自分が先に寝たよな?

「なあ、ベッドに入ったのは自分が先だよな?自分は間違いなくこのベッドに入ったはずだよ。なんでそこにジェンがいるんだ?」

 お客用と言うことでベッドは部屋に3つ置いてあるし、そもそも説明ではジェンは別の部屋で寝ると言っていたはずだ。

「~~~~、覚えてない・・・。」

 ジェンは飲み過ぎたせいなのか夕べのことは覚えていないみたい。なんかドアの方に視線を感じて見てみると、みんなが覗いていた。

「「「「夕べはお楽しみでしたか?」」」」

 スレインさん達がとニヤニヤしながら聞いてきた。

「あんた達の仕業か~~~!!」



 どうやら夕べは自分が寝た後も管理人の二人も混じって盛り上がったらしい。そのあとジェンが寝落ちしそうになっていたのでベッドに連れて行ったようだ。それも俺が寝ていたベッドに、あの格好に着替えさせて・・・。

「勘弁してください。自分たちはそんな関係じゃないから。」

 いくら言っても適当に流されてしまう。ジェンもなにか言ってよと思ったが、まだ照れていて黙ったままだ。もういいや。


 落ち着いたところで準備してもらった朝食をいただく。朝食と言ってももう1時半になっていたのでかなり遅めの朝食になってしまった。
 朝食の後は庭で訓練したり話をしたりして、そのまま一緒にお昼に行くことになった。店は前にも行った店で、サンドイッチをつまみながらいろいろと話をしてからみんなと別れる。


 このあといくつかの店を回って買い物をしてから夕方に役場に行って知り合った冒険者に挨拶していく。
 ただなぜか蠍の尾のメンバーの家に行ったことが知られているのはどうしてなんだ?しかも泊まったことまで知っている人もいるし・・・。なんか激励の言葉にとげがあるし、握手の時の力が強くて痛いんだけど・・・。


~他の冒険者Side~

「ジュンイチのやつが蠍の尾メンバーの家に行ったらしいが、そのまま泊まってきたらしいぞ。」

「マジか?あれだけかわいいパートナーがいながらそれだけで足りないって?それ以前に5人も一緒に相手をしたのか?」

「最近なんか優しくなってきたと思ったら男ができたからだったのか?」

「「「「「うらやまし~~~~~!!」」」」」

 完全な誤解なんだが、家に泊まったという事実があるため、冒険者の間では真実として話が伝わっていた。

~~~~~~~~~~


 宿に戻ってから夕べは戻れなかったことを謝罪してから部屋に移動。残っていた荷物も収納バッグに入れて準備は完了だ。収納バッグがなかったら大変だったよなあ。

 しばらく大浴場は入れないと思ってゆっくりとお風呂に入ってさっぱり。最後の夜となるので夕食もちょっと豪華に宿の食堂で食べることにした。今回はコース料理ではないけどね。


 今回のサクラの滞在でがんばった甲斐もあって、一通りの最低限のスキルを手に入れることができた。まだまだ学びたいことも多いけど、これでとりあえず自分だけでも鍛錬することが出来るだろう。

 学識関係は元々高かったことと加護がついて学習効率が高くなっていることもあり順調に上がっているけど、問題は戦闘系のスキルだなあ。まあ、これはちょっとずつでも鍛錬していくしかないだろう。レベルが3あれば無理しなければ十分なレベルだと思うけどね。

 魔法についてもイメージ的なものがあるからまだレベルアップは早いほうだと思う。やはり戦うときは魔法を主体に考えた方がいいかもしれない。魔法のレベルを上げていけば次元魔法も使えるようになるからね。

 ガイド本のレベルが3にあがったせいか、ガイド本への本の取り込みが本を見るだけでできるようになった。おかげで図書館で閲覧できる本の大半を取り込むことができたのはかなりの収穫だ。まあこの中から必要なものを探すのが大変なんだけどね。

 収納バッグの仕様についてはあのあといろいろ試して大分使いやすくなってきた。頭の中に浮かぶだけだとやはりわかりにくいのでイメージが目の前に表示できるように変更。
 収納するときに鑑定結果をイメージすることで詳細も表示されるし、分類別にしておくことで見やすくなった。同じ種類のものについては個数で表示するようにして、取り出すときは古いものから出てくるようにした。
 実はこの個数表示についてはかなり苦労した。やはり世の中に全く同じものが存在しないからね。入れるときにどれに分類するかをあらかじめ決めてイメージすることで解決できたけどね。
 もちろんパネルでの操作だと困る場合もあるので、頭の中からでも取り出しはできる様にしている。


~イントSide~
 ジュンイチとジェンが冬の間は南の方に行くと言って挨拶にやってきた。しばらく会えなくなるため、急遽壮行会をやろうと言うことになり、買い出しへいくことになった。

 いろいろと話しながら途中までは普通に食事をしていたのだけど、お酒を飲んでいたこともあってみんなちょっと羽目を外しだした。今まで他の人たちの前でここまで酔っ払うことはなかったんだけど、大丈夫かな?
 私はお酒には結構強いのでまだほろ酔い程度なんだが、せっかくなのでみんなと同じようにジュンイチをからかってみた。胸を押しつけたときのジュンイチの反応がかわいい。


 私にはそういうつもりはないのだけど、いつも男性に色目を使っていると言われてきた。胸も大きいし、男性の好きな体型であるのは自覚している。初めて会う人も気がついていないと思っているのか、大体が私の体をいやな目で見てくる。

 ジュンイチと初めて会ったとき、警戒はしたんだけどいやな目線を感じなかった。訓練の時に私を指名してきたので「やっぱりなあ。」と邪推してしまったんだけど、単純に戦闘スタイルが近いので習いたかっただけのようだった。そのあとも普通に接してくるので、「もしかして女性に興味ないのかな?」と思ったくらいだった。

 会ったときはこんなにじゃれ合うまでの仲になるとは思っていなかったけど、こんな関係もいいものね。他の人たちからは変な誤解をされているみたいだけど、まあそれはそれでかまわないかな。


 ジュンイチはあまりお酒を飲んだことがなかったらしく、早々にダウンしたので客間に連れて行った。さすがにこの状態で家に帰れとはいえないもんね。
 そのあとはせっかくだからとジャニーとルリアンも加わっていろいろと話をした。やはりこの年齢だといろいろと異性に興味があるようだ。自分たちも興味がないとは言わないが、それよりも嫌悪感が勝っているかんじだからね。

 ジェンはジュンイチとツインの部屋に泊まっているのだけど、キス以前に付き合うことにもなっていないらしい。

「「「「「「え~~~、同棲状態なのに何もないの~~!!」」」」」」

 みんなからいろいろ言われてお酒を飲むペースが上がったのか、ジェンも眠そうになってきたようなので部屋に案内する。部屋に置いているベッドの一つにはすでにジュンイチが寝ていたんだけど、みんな悪い顔になっていた。
 ジェンの服を脱がせてサイズの合いそうなネグリジェを着せて、イチの隣に寝かせてあげる。うん、なんて優しいんだろうね、私たち。そしてその後もそのことで盛り上がり、夜更けに眠りについた。



 翌朝、大きな叫び声が聞こえてきた。大急ぎで客室の方に行くと他のみんなもやってきていた。ドアの隙間からのぞくとベッドの上で言い合っている二人がいた。

「「「「夕べはお楽しみでしたか?」」」」

 みんなの声がそろっていた。

「あんた達の仕業か~~~!!」ジュンイチの絶叫が響いた。


 このあともしばらくからかっていたのだが、ジェンは照れてしまっていてまったく言葉がない。ちょっと悪いことしたかなあ?
 結局お昼まで一緒に食べてから二人を見送る。きっと又会うこともあるだろう。私もジュンイチみたいな人を捕まえられるのかなあ?ちょっとうらやましく思ってしまったのはみんなには内緒だ。


~コーランSide~
 カサス商会では通信の魔道具を使って定期的に支店の情報交換を行っている。本当は全支店での連絡が出来ればいいのだが、さすがに小さな町からは厳しいため、エリアを分けて管理してもらっている。
 通信にもかなりの魔獣石が必要なため、基本的には書類で資料が回されており、緊急の内容のみが説明される。通常は簡単な状況確認で終了するのであるが、この日の打ち合わせでは少し長めの会議となっていた。

 議題に上がったのはジュンイチとジェニファー両名についてである。今までもフードコートやインスタントラーメンのこと、そのほか商売に関する斬新的なアイデアが共有されていたが、今回はサクラでの二人の研修内容についての報告があった。

「この報告内容について間違いはないだろうね?」

「はい、それぞれの担当者から確認が取れており、いくつかは鑑定を行っています。」

 見たことのない文字での魔道具の作成とその効果、薬の高グレード作成についてとその知識、錬金技術や採掘技術についてと、どう考えても初心者ではあり得ない上達スピードが報告されていた。

「もともと技術を持っていたと言うことではないのか?」

「担当者の話だと、よほどうまくごまかさなければあり得ないと言っています。」

 通信機から沈黙が流れる。

「とりあえず、現段階ではわからないことが多い。二人とは友好な関係が築けていると思うので、各支店長は無理な勧誘などはしないことを徹底する。また過剰な接待も行わないこと。彼らとは今後も信頼関係を築いていきたいのでその点を頭に置いておくように。」

 通信を切った後、私は二人のことを思い浮かべる。見た目とは年齢が異なるのか?ただ最初に話した感じからはそうは思えない。単純にどこかで多くの知識を得たと言うことなのか?二人は同じ出身と言うことだったのでそこに鍵があるのだろうか?

 うちの商会は無理に知識を求めるようなことはしていないが、他の商会に知られると強引な手段に出てくるところがあるかもしれない。どこかでちゃんと伝えておいたほうがよいだろう。このあとルイサレムに移動するみたいなので私も直接話をした方がいいかもしれないな。


~ジュンイチとジェニファーのステータス~
名前:ジュンイチ(大岡純一郎)
生年月日:998年10月30日
年齢:17歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(上階位・アース)
賞罰:なし
資格:なし
クラス:戦士(武術力向上-1)、魔法使い(魔力向上-1)、学者(思考力向上-2)、神の祝福(物理耐性上昇-2、魔法耐性上昇-2)
婚姻:なし

スキル:
体術-2、片手剣-3、両手剣-2、刀剣-1、短剣-2、盾-3
威圧-1、突撃-1、回避-1
一般魔法-3、火魔法-3、風魔法-3、水魔法-3、土魔法-3、氷魔法-1、雷魔法-1、光魔法-1、闇魔法-1
治癒魔法-3、回復魔法-2
肉体硬化-1、筋力強化-1、持久力強化-1、俊敏強化-1、魔力強化-1
毒耐性-1、麻痺耐性-1、睡眠耐性-2
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-1、工作-2、料理-2、裁縫-1
日本語-5、英語-3、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5
思考強化-2、鑑定-3
索敵-3、罠探知-2、罠解除-2、隠密-1
錬金-2、付与-1、商人-1
採掘-2、採取-1、解体-3、解体魔法-3

知識スキル:
戦学-3、武学-3、防学-3
魔法学-4、魔素吸収-3、魔素放出-3、魔素操作-3
算学-4、自然科学-4、社会科学-3、生物学-4、植物学-4、地学-4-、神学-3、医学-3、天文学-4、言語学-3
罠学-3、鍛冶学-1、調合学-1、錬金学-2、付与学-3
ガイド本-3

秘匿スキル:
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)


名前:ジェニファー(ジェニファー・クーコ)
生年月日:998年12月15日
年齢:17歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(上階位・アース)
賞罰:なし
資格:なし
クラス:戦士(武術力向上-1)、魔法使い(魔力向上-1)、治癒士(治癒力向上-1)、学者(思考力向上-2)、神の祝福(物理耐性上昇-2、魔法耐性上昇-2)
婚姻:なし

スキル:
体術-2、片手剣-1、短剣-3、弓-2、盾-3
威圧-1、突撃-1、回避-1
一般魔法-3、火魔法-3、風魔法-3、水魔法-3、土魔法-3、氷魔法-1、雷魔法-1、光魔法-1、闇魔法-1
治癒魔法-3、回復魔法-3
肉体硬化-1、筋力強化-1、持久力強化-1、俊敏強化-1、魔力強化-1、治癒力強化-1
毒耐性-1、麻痺耐性-1、睡眠耐性-2
演奏-3、歌唱-2、絵画-3、彫刻-1、舞踊-3、料理-2、裁縫-2
英語-5、スペイン語-4、ドイツ語-3、フランス語-3、中国語-2、日本語-3、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5
思考強化-2、鑑定-3
索敵-2、隠密-1
調合-1、錬金-1、付与-1、商人-2
採掘-1、採取-1、解体-3、解体魔法-3

知識スキル:
戦学-3、武学-3、防学-3
魔法学-4、魔素吸収-3、魔素放出-3、魔素操作-3
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4、神学-3、医学-3、天文学-4、言語学-4
罠学-1、鍛冶学-1、調合学-3、錬金学-1、付与学-3
ガイド本-3

秘匿スキル:
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)


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