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61. 異世界577日目 貴族との対面
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61. 異世界577日目 貴族との対面
朝食は宿にはついていなかったので近くにあった喫茶店のようなところで食べることにする。クロワッサンのようなパンにソーセージとスープに珈琲という感じでなかなか美味しかった。結構濃いめの味付けだけどなかなか食事はいいな。1食100ドールとちょっと値段は高いけどね。
宿は連泊することにしてから昨日も行った貴族街の入口へ。受付に連絡してからしばらくすると受付から呼ばれる。
「ジュンイチとジェニファーでいいのかな。ルイドルフ家への依頼と面談を希望と言うことだが間違いないか?」
「はい。」
身分証明証を求められたので提示すると別の部屋に案内される。そこには40歳くらいの男性が一人立っていた。
「初めまして。ルイドルフ家の執事をしていますクリファリアと申します。」
「初めまして。自分がジュンイチ、隣がジェニファーといいます。」
「さっそくですが、要件をお伝えします。昨日ジョニーファン様からのお手紙と依頼書を確認しました。しかしながら依頼されたのが本当にあなた方なのか確認しなければなりません。なにか証明できるものはお持ちでしょうか?」
まあいきなりやってきた人がそうそう貴族と面談できるわけはないよな。今回は渡すだけではなく、説明までしなければならないんだから。
「証明になるのかわかりませんが、ジョニーファン様からいただいたブローチがあります。これを見せれば依頼者であるとわかると言われています。」
ジョニーファン様から依頼を受けた際に、渡されたブローチを差し出す。シルバーの台座に青く輝く宝石のようなものがはまっており、胸につけられるようになっているものだ。
クリファリアさんは手に取って確認を始めたが、なぜか自分たちが持っていたときと違って黒くなっているような気がする。しばらく確認した後、ブローチを戻してきた。
「申し訳ありませんが、もう一度手に取ったまま見せてもらえますか?」
渡した時に青かったブローチが黒くなっていた。「こんな色だったっけ?」とブローチを手に取ると、先ほどまで黒くなっていた宝石部分が青くなってきた。
「ちゃんと反応していますね。」
「どういうことでしょうか?特に説明を受けていなかったのでよくわからないんですよ。」
「私も原理はわかりかねますが、ジョニーファン様がそれを持たせた人のみに反応する魔道具なのですよ。他の人が持つと先ほどのように黒くなりますが、そのブローチに登録された人だけは青く輝くのです。」
そうだったのか。説明しておいてよ・・・。おそらく固有魔力に反応して内部に仕込んだ光魔法が作動するという感じなんだろう。ドアとかの応用なのかな?
「確認ができましたので屋敷に案内します。どうぞこちらへ。」
そう言って貴族側の出口に案内されると、立派な車が止まっていた。車に乗って少し移動したところで大きな門に到着する。
「でかっ!!!」
思わず叫んでしまったが、ジェンは「貴族、しかも上位爵なんだからこんなものじゃない?」と普通にしている。日本人にとってはこんな屋敷を見ることはそうそう無いんだよ!!
門をくぐってから屋敷の玄関に到着すると、なんか出迎えの人たちが整列していた。
「どうするんだよ、貴族へ礼儀作法なんて分からないぞ。」
正直言って、貴族に対する礼儀作法なんて本で読んだ本当かどうかわからない知識しか無いんだから無理があるぞ。ヤーマンではクリスさんがいたからなんとかなったけど、どうするんだよ。
「イチ、あくまでジョニーファン様からの依頼できているから大丈夫だと思うわよ。相手もそれはわかっていると思うし、私たちに任せるくらいだからそこまで頭の堅い人でも無いと思うのよ。」
「そうだよな・・・、そう信じよう。」
「ご主人様は平民の方への態度はかなり寛容です。ちゃんと礼節をわきまえた行動を示していただければ大丈夫ですよ。貴族同士のしきたりなどを求めたりはしません。」
そういうクリファリアさんの言葉を信じて屋敷へと入っていく。扉を入るとイメージ通りの大きなホールになっていた。うん、場違いすぎるね。このあと近くにある大きな扉の前に案内された。
「こちらにどうぞ。」
案内されて扉の中に入ると、中には机に座った初老の男性がいた。周りには護衛と思われる人たちがいる。まあ当たり前だな。
「ご主人様。ジュンイチ様とジェニファー様をお連れしました。ジョニーファン様から依頼を受けたものであることは確認済みです。」
「ご苦労。」
執事はドア付近に待機するようだ。この執事もかなりの実力者と言うことがわかる。
「ジュンイチ殿、ジェニファー殿、初めまして。私がルイドルフ・ラクマニアだ。今回はジョニーファンからの依頼を受けてもらい感謝する。」
「お初にお目にかかります。最初に断らせてもらいますが、自分達は貴族に対する礼儀作法はほとんどわかりません。失礼なことがあるかもしれませんが、その際はご容赦下さい。またそのことについて指摘していただければ出来るだけ対応したいと思います。」
「まあ、そこまでかしこまらなくてもよい。親友のファンからもいろいろ聞いているからな。」
「ありがとうございます。それでは依頼されたものをお出ししたいと思うのですがよろしいでしょうか?」
「それではこちらにお願いします。」
執事の人に言われて指定された場所に荷物を出していく。
「最後に出したものが今回預かった資料となります。この内容について説明する様に言われていますが、お時間は大丈夫でしょうか?簡単に説明するだけでも1日では終わらない内容となるのですが・・・。」
「事前に到着の時期は確認できていたからな。今日からしばらくは午前中に時間をとるようにしているのでお願いできるか?」
「わかりました。それではさっそく説明をさせていただきます。」
このあとジェンと二人で順番に内容について説明していく。わかる範囲でいいので細かく説明してほしいという要望だった上、いろいろと質問してくるので思いのほか説明のペースが遅いんだけど大丈夫だろうか?いろいろ聞いてくるあたり説明内容には満足はしていると思っていいのかな?
「すまないが、今日はこのくらいで終わりにしよう。昼食を準備したので一緒に食べて行きなさい。」
説明していると、すでに予定の時間になったようだ。昼食の準備まで終わっているようなので折角なのでごちそうになろう。
どんな豪華な内容になるのかちょっとびびっていたんだけど、いわゆるサンドイッチと果物という簡単なものだったのである意味助かった。
「思ったほどの食事でなくてがっかりしたか?」
「いえ、食材はかなりいいものを使っているみたいで、とても美味しいです。果物もこの季節なのにかなり美味しいので手間暇もかかっているものだと思います。ただ先入観で申し訳ありませんが、貴族の方はもっと豪華なものを食べているのかと思っていたのは事実です。」
「まあそういう奴らもいるのは確かだがな。私はいつもそんな食事をするのは体に悪いと思っているのだよ。野菜や果物を多めにとり、あまりしつこくないものを食べる方が健康にいいと思っているんだ。
しかし、よく果物のことがわかったもんだね。果物はこの屋敷で栽培しているものなんだ。あとで庭師の方にも今の言葉を伝えておこう。」
「たしかに長生きの秘訣として野菜などを多くとるのはいいことですし、油関係を抑えるのは肥満も抑えて健康にいいですね。肥満は裕福の象徴という意見もありますが、血が固まり易くなったりとかいろいろな病気の原因にもなってしまうのでいい習慣だと思いますよ。」
「なに?食事療法についても知識があるのか?」
結局食事中もいろいろな話をすることになってしまい、最後は執事に「そろそろお時間が・・・。」と言われてお開きとなった。やっぱりジョニーファン様の友人だな。
明日も午前中に話をすると言うことだったので、宿に戻ろうと思ったんだけど、泊まっていくように言われてしまう。それはこっちとしてはありがたい申し出だけど・・・いいのか?
さすがに辞退しようと思ったんだけど、食事の時にも色々話ができるから頼むと言われてはどうしようもない。宿のキャンセルはしてくれるようなのでお願いする。荷物は持ち歩いているのでその点については大丈夫と言っておいた。
午後は屋敷の中や庭などを案内してもらったけど、広いので夕方までかかってしまった。庭に温室や畑まであって中で果物や野菜がいろいろと栽培されているくらい広いんだもんなあ。まあ見ていて楽しかったけどね。地球だったらお金を払って見学するような感じのところだからね。
夕方にお風呂の準備ができたというので入らせてもらうと、やはりかなり大きなところだった。お風呂にも世話係がいたんだけど、さすがに遠慮させてもらった。お風呂で他の人に世話してもらうなんてどう考えても無理だ。
夕食はなんとラクマニア様の家族と一緒に食べることとなったので、さすがに緊張してしまう。最低限のマナーはあると思うんだけど、こんな世界は知らないし。ジェンはまだなれている風でうらやましい。
今この家に住んでいるのはラクマニア様と奥さんのスレンダさん、次男のルイアニアさんとその奥さんのタスマールさん、その息子のソラニアくんと娘のクリスティファちゃんだ。長男一家は領地の管理をしているらしくそちらに行っており、長女と次女はすでに他家に嫁いだらしい。
ラクマニア様とルイアニアさんはお城に勤めており、結構な要職についているみたいだ。ルイアニアさんもすでに独立して爵位と領地を持っているんだけど、王都にいるときはこの屋敷に滞在しているようだ。
王都での土地事情でなかなか屋敷が持てないらしく、親や兄弟の館で過ごすのは一般的なようだ。館に泊まれない場合は貴族エリアにある宿に泊まるようだ。さすがに平民街のエリアを潰して貴族街にするわけにもいかないよね。昔だったらやっていそうだけど・・・。
簡単に自己紹介をしたところで食事となったけど、まあ普通の美味しい料理という感じでまだよかった。フルコースのようなものとか出てきたら困ってしまうところだったからね。
「すまないな。お客用の料理を頼んでもよかったんだが、昼のことを考えると普段の食事の方が気を遣わないかと思ってな。」
「お気遣いありがとうございます。これだけでも十分です。今回のこの魚料理が特に美味しかったです。最近なかなか魚料理を食べる機会もなかったので、久しぶりに楽しめました。」
収納バッグに魚は入っているけど、刺身として食べるくらいだったからなあ。
「口に合って何よりだ。話しぶりだと色々料理にも詳しそうだな。」
他の家族の人たちも話しやすい人たちで助かった。よく言う貴族らしい対応ではなく、普通に接してくれるので助かる。
今までの冒険の話をしていると、孫の二人がかなり興味を持ったみたいでいろいろと聞いてきた。結局食事の後も寝る時間になるまで相手をすることになってしまったよ。
子供達が眠りについたところで自分たちが泊まる部屋に案内してくれたんだけど、よく物語に出てくるような豪華な部屋だった。広さは広すぎてどのくらいなのかわからない。ソファーにテーブル、ベッドなどが置いてあるんだけど、寝るだけなのにこんな広い部屋はいらないから・・・。
天蓋付きのベッドというのはこんな部屋だからいいんだけど、ベッドが一つというのはどういうことなの?いや、確かに二人でも十分寝られる大きさだよ。キングベッドよりも大きいんだから。でもね、自分たちはただのパーティーメンバーなんですよ。夫婦でもカップルでもないんですよ。
ベッドの追加とかをお願いしても、「遠慮はいらないですから。」と言って聞いてくれない。「防音の魔道具もついていますので気にしないで下さい。」って何をさせようとしているんだよ。しかもジェンが早々に話を切り上げてしまったのでベッドを運ぶという話は終わってしまった。
いつものベッドを出そうかとも思ったが、「これだけ大きいから同じベッドと言ってもいつもと変わらないでしょ。」と言うので諦めて一緒に寝ることにした。もちろん離れてだけどね。
いつものベッドも結構いいものを買っていたんだけど、さすがにレベルが違ってかなりの寝心地だった。こんな天蓋ベッドで寝るなんて地球では考えられないなあ。
このあと1週間も世話になることになってしまったけど、もちろんジェンとは何もなかったよ。時々寝ぼけて抱きついていたことがあるくらいはあったけどそのくらいは許して。あとで大変だったんだから・・・。
1週間もかかったのはラクマニア様は午前中に1、2時間しか時間がとれない上、思った以上にいろいろと聞いてくるので時間がかかったからだ。特に時間は気にしなくていいと言ってしまった手前、途中で切り上げることも出来なかったしね。
食事は屋敷にいる人たちと一緒に取り、午後からは庭やホールを借りて剣術や魔法の訓練をさせてもらった。護衛の人も相手してくれたのでかなり有意義だった。魔法は耐魔装置で使える場所は限られているので魔力循環がメインだったけどね。
あとは二人の子供達に話を聞かせたり、一緒に遊んだりしていたせいで子供達にはかなりなつかれてしまった。
地球にあったおもちゃとかを作ってあげるとかなり喜んでいたからね。あまり高くはないけど、飛翔魔法で一緒に浮かんであげるとかなり感激していた。どうやら乗り物では飛んだことはあるけど、そのまま飛ぶことは初めてだったみたいだ。
おかげで講義が終わって屋敷を後にするときにはかなり泣かれてしまってなだめるのが大変だったよ。また遊びに来ると言って納得させたんだけどね。
貴族に関する話を聞いたところ、やはりこの国も他の国からの影響が出てきているらしい。つまり特権階級をなくそうという動きである。
過激派のようなグループもいるけど、ラクマニア様はどちらかというと差別をなくしていこうとする派閥のようだ。ただもちろん今の体制を維持しようとする派閥もあり、混沌としているようだけど、いずれはアルモニアのようになっていくだろうと思っているようだ。
~ラクマニアside~
先日親友であり、学友仲間でもあるファンから連絡があった。どうやら色々と魔法や古代文明について新しい発見があったらしい。内容がかなり膨大になるので通信では厳しいから書類で送ると言っていたのだが、説明ができる人を派遣してくれるようだ。
直接会う機会がなかなか無いため、今までもお互いに手紙だけでなく人を派遣して情報交換をしてきていたが、今回の使いが冒険者だと言うことにはかなり驚いた。
話を聞くと、研究員などではなく冒険者だが、今までに無い考え方をしており、彼らのおかげで新たな魔法の理論ができたと言っていた。ファンにそこまで言わせるというのはかなりの人材なのだろう。研究が講じて遺跡探検のために冒険者になったという経歴だろうか?
人柄についてはファンが保証すると言っていたが、貴族に対する対応はできないのでそこは勘弁してやってくれと言っていた。ファンに対しても物怖じしないくらいだったらしいのである意味楽しみだった。
他の用事もあるのでおそらく2ヶ月後くらいにはそっちに行くことになるのではないかと聞いていた。このため検問に依頼して動向を探らせていると、ファンの予想通りに入国してきた。
この際に二人の情報も併せて確認したんだが、年齢を見て驚いた。18歳と書かれているのを見たときには書き間違いかと思ってしまった。一応確認してみたが、やはり間違いないらしい。18歳でファンに認められて説明要員に選ばれるとは・・・。
途中の移動は車のようだったんだが、町ではほとんど泊まっていないみたいなので移動用の家を持っているのかもしれないなと判断した。かなり大きめの収納バッグを持っているのだろう。もしかしたらすでに収納魔法を取得しているのかもしれないな。
王都にやってきたとの連絡を受けた後、夕方には手紙を持ってきていた。翌日に本人の確認してもらい、屋敷に来てもらったが、ほんとに若くて驚いた。
このあと資料の説明をしてもらったんだが、たしかに知識量がすごかった。ファンの書かれている内容をちゃんと理解していなければ答えられないようなことまで説明してきたのには驚くばかりだ。ファンが数日相手をしたというのもうなずける。時間を十分にとれたファンの立場がうらやましい。
できるだけ仕事を片付けておいたが、やはり午後からは執務をしなければ終わらないため、午前中に講義を行ってもらうことにした。食事の時にも話を聞きたいため屋敷に泊まってもらったんだが、孫達がなつきすぎて食事中に話があまりできなかったのは残念だった。
二人の関係はファンにも聞いていたので強引に一緒の部屋に押し込めた。二人とも好き合っているのに先に進めないと言っていたからな。多少強引だが、少しは前に進んでくれるといいと思ったが、残念ながらたいした進展はなかったみたいだ。まあ、まだ若いからこれ以上ちょっかいを出すのはやめておいたがな。
結局1週間ほど滞在してもらったが、かなり有意義な時間を過ごすことができて満足できた。孫達がかなり寂しそうにしていたのがちょっと困ったが、正直あそこまでなつくとは思わなかった。見たこともないおもちゃをもらって喜んでいたしな。
ただ浮遊の魔法はやめてほしかった。お付きのメイドが驚いていたからな。古代の魔道具でもかなり貴重なものまで持っているとは思わなかったぞ。息子達もねだられてかなり困っていたからな。
~~~~~
ラクマニア様たちとお昼を一緒に食べた後、わざわざ宿まで車で送ってくれた。ありがたいことだけど、宿に着くと、なぜか周りから注目を浴びまくってしまった。まあ立派な車だったからね。
「いらっしゃいませ。こちらの受付にどうぞ。」
宿についてロビーに入るとすぐに係の人がやってきて受付に誘導してくれたんだけど、そっちは貴族用だから・・・。
「いえ、平民なので平民用でお願いします。」
「えっ?しかし、ルイドルフ家の貴族用の車で来られましたよね?あの車に乗られるのは貴族またはそのご家族だけだったと記憶しているのですが・・・。」
そんな車で送ってくれてたの?貴族じゃないのになんでそんな車に乗せたんだよ、ラクマニア様・・・。どおりで乗り心地が半端なくいいと思ったよ。
「いえ、平民に間違いないです。きっと車が空いてなかったのでしょう。ほら、身分証明証にも貴族の記載は無いでしょ?」
証明証を見せてやっと納得してもらったけど、やっぱりこういうところの従業員は車を見たらどこの車なのかすぐにわかるんだろうな。車に紋章とかも付いているしね。
特に紹介状があったわけではないんだけど、なぜか同じ部屋で2000ドールになったのはラクマニア様の影響だろう。さすが上位爵だ。
宿の手続きを終えたあと、役場に行って依頼の完了手続きを行う。受付の人は依頼者と受領者の名前を見て驚いていた。
「賢者様からルイドルフ様への依頼・・・。」
たしかにただの上階位の冒険者が受ける依頼じゃ無いとは思うんだけどね。
「失礼しました。当初の報酬額は10万ドールだったのですが、確認しましたらルイドルフ様から報酬の上乗せがありまして、合計20万ドールの報酬となりました。」
おお~~、元々の依頼でも結構な額だったのに、ラクマニア様がここまで増額してくれたのか。まあ、いろいろ頑張って説明したしな。よかったよかった、頑張った甲斐があったな。それだけ実績ポイントもついたと思うからね。
しかし、日本円で100万円の依頼が増額で200万円か。お金持ちの感覚はわからないなあ。
「ありがとうございます。報酬は口座に入れておいてください。」
「承知しました。」
依頼などを見てみるが、特に目新しいものは見つからなかった。やはり王都周辺にはそれほど強い魔獣もいないし、ヤーマンとそれほど種類も変わっていない。わざわざここを拠点にして魔獣を狩らなくてもいいな。
役場を出てから紹介してもらった鍛冶屋へ向かう。この町に来るまで掘り出し物がないかちょこちょこ見て回っていたけど、そうそう掘り出し物はなかった。なので装備で売れるものは前に買ったものがほとんどだ。
クロスボウ(低) 良/良/良 耐久性向上-2、風魔法-3
大角牛の革の鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
大角牛の革のハーフ鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
厚手の革パンツ(並) 並/並/並 強度向上-1×2
牙猪の革の籠手(高) 高/高/並 強度向上-1
牙猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2、耐久性向上-1
牙猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2×2
牙猪の革の帽子(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の盾(並) 並/並/並 強度向上-1
鉄の小盾(高) 高/高/高 強度向上-2、筋力増強-2
魔術の指輪(並) 並/並/並 魔力強化-1
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2、治癒力強化-1
ある程度は予備にとっておかないと怖いので売るとしたらクロスボウ(低)と魔術の指輪(並)と魔術の指輪(高)くらいか?クロスボウはいずれ使えるかもと思ってとっておいたけど、今となったら使う機会が無いからねえ。
遠距離攻撃は魔法があるし、それを上回るまで弓のスキルを上げるくらいなら他のスキルを磨いた方がいい。クラス取得のためにスキルを上げるだけならここまでいいものもいらないしね。
ただクロスボウは修理してもらわないと価値が正確には判断されない可能性があるけど、この町だったらちゃんと修理できる人もいるだろう。
事前にラクマニア様から鍛冶屋を紹介してもらったところなので変なことはされないはずだ。紹介状も書いてもらったしね。
紹介された鍛冶屋はスルマーニ鍛冶屋というところでかなり大きな店舗だった。店頭には優階位の装備も展示されているのでかなりの規模のところなんだろう。やってきている人達もかなり立派な装備をした人が大半だ。ちょっと浮いている感じだけどまあ気にしてもしょうが無い。
店の一角が買い取りの受付になっていたのでそちらに向かう。買い取りはそこまで人が多くないので待つ必要が無くて助かる。
受付にいた少し年配の女性に話しかける。
「すみません、装備の修理か買い取りをお願いしたのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、どのようなものでしょうか?」
さすがに周りの装備とか見ていたらランクが低い冒険者というのはわかるだろう。ちょっと不審げな感じを受ける。
「このクロスボウと魔術の指輪を売りたいのですが、鑑定してもらえますか?クロスボウは修理が必要かと思いますが結構いいものだと思うんですよね。」
「買い取りだけの場合は鑑定代がかかりますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「買い取りの際には身分証明証の提示をお願いしていますので提示をお願いします。」
身分証明証を提示してから、紹介状のことを思い出して渡すことにした。
「ああ、あと、この店のことを紹介してもらった方からの紹介状です。先に渡すように言われていました。」
紹介状を受けとると、かなり驚いたような顔をして読んでいた。
「ル、ルイドルフ家からの紹介状ですね。わ、わかりました。鑑定を行いますので少々お待ちください。鑑定代は買取額からの差し引きとさせていただくことになります。クロスボウについては専門家もおりますので、修理をしなくても判断はできると思います。」
「わかりました。とりあえず価格だけでも出してもらえたらと思います。もし買い取りしない場合は鑑定代をお支払いします。」
「承知いたしました。クロスボウについては担当の者を呼んで参りますので少々お待ち下さい。」
商品は目の前で鑑定するのが基本なので鑑定する人を呼びに行ったようだ。
しばらくしてやってきた男性に装備を鑑定してもらう。さすがにクロスボウについては鑑定に時間がかかった。
鑑定の結果、クロスボウは220万ドール、魔術の指輪(高)は6万ドールで二つ、魔術の指輪(並)は1万5千ドールの買取額と言われる。あれ?クロスボウは以前の鑑定で90万ドールくらいの価値と言われていたと思ったんだけどなあ?
「クロスボウはそんなに高いものなんですか?」
「そうですね。材料に魔樹を使っていますのでこのくらいの買取額になりますよ。一つ下の素材だと値段は結構下がりますがね。ただこの付与魔法を考えると、下のクラスに付けていることはまずないですね。
風魔法の付与はかなり貴重なものですので、通常の買取額よりも高くなりますね。これと同程度のものを制作しようとした場合、400万ドール以上してもおかしくないかもしれませんよ。」
魔樹材と結構珍しい材料と思っていたから変とは思っていたんだよな。一つ下のクラスは特殊とはいえ普通の木だからね。まあ木製の装備はよくわからないと言っていたので完全に勘違いなのもしれない。
「正直、うちとしては買い取れるのならありがたいことなのですが、かなりよいものなのでほんとに売ってしまってよろしいのですか?後で同等のものを手に入れるのは結構大変だと思いますよ。良レベルの弓はなかなか出物がないんですからね。注文できる武器屋も少ないですし。」
そう言われると売りたくなくなるのが人情ではあるが、どう考えても使うことはないよね?ジェンとも話たんだが、やはり手放すことにした。
「ありがとうございます。それでは支払いは口座の方に入れておきますね。」
このあと安く買っていた魔道具やアクセサリーなどをカサス商会で売っていく。ちゃんと鑑定してもらうと値段もそれなりに高く売れて、全部で55万ドールと10倍くらいで売ることができた。やっぱり鑑定スキルは異世界ではかなり優位だな。特に一般的になってない場合はね。
付与魔法が施されているものはもちろん値段が高くなるんだけど、古くなってくると付与魔法が削れたりして効果が出なくなってしまうものもあって、状態によって値段が変わってくるのでその状態を見て価格が決められるので効果だけで価値が決まるわけではないようだ。
特にレベルの低いものは付与魔法の彫りも浅くて効果が出なくなることも早いみたい。材質の問題もあるんだけどね。
いまのところ使っているものは大丈夫だけど、そのあたりは気をつけておかないといきなり効果が切れていると言うこともあるらしい。買うときにはその点も気をつけておかないといけないね。
とりあえずこれで全財産は400万ドールくらいになったので武器を少しは更新できるようになったかなあ?日本円で4000万円くらいだよ。高校生がこの金額を持つってすごいな。
ただミスリルの良グレードになると最低でも300万ドールくらいするので簡単には買えないんだよなあ。せっかくだから防具の方も買い換えしたいしね。
このあと町の中を少しぶらついたんだけど、結構活気があっていろいろと見るところは多かった。せっかくだからあと3日ほど泊まってから出発するかな?
夕食にはおすすめらしい食堂で食べることにした。食事内容は結構濃いめの味付けでソースがたっぷりと使ったものが多い。おなかも十分に満足したところで宿に戻る。
ラクマニア様の屋敷ではお風呂を堪能していたんだけど、さすがにここに設置されているのはシャワーだけだ。面倒だったので今日は浄化魔法だけで簡単に済ませる。まあ浄化魔法でも十分綺麗になるので気分の問題だけどね。
屋敷ではひとつのベッドにされていたけど、もちろん部屋はツインの部屋でダブルの部屋ではない。ジェンは何かブツブツ言っていたけど気にしないでおこう。同じベッドに寝てまた抱きついたりされていやじゃないのかなあ?まあこっちはうれしいということしかないけど。
朝食は宿にはついていなかったので近くにあった喫茶店のようなところで食べることにする。クロワッサンのようなパンにソーセージとスープに珈琲という感じでなかなか美味しかった。結構濃いめの味付けだけどなかなか食事はいいな。1食100ドールとちょっと値段は高いけどね。
宿は連泊することにしてから昨日も行った貴族街の入口へ。受付に連絡してからしばらくすると受付から呼ばれる。
「ジュンイチとジェニファーでいいのかな。ルイドルフ家への依頼と面談を希望と言うことだが間違いないか?」
「はい。」
身分証明証を求められたので提示すると別の部屋に案内される。そこには40歳くらいの男性が一人立っていた。
「初めまして。ルイドルフ家の執事をしていますクリファリアと申します。」
「初めまして。自分がジュンイチ、隣がジェニファーといいます。」
「さっそくですが、要件をお伝えします。昨日ジョニーファン様からのお手紙と依頼書を確認しました。しかしながら依頼されたのが本当にあなた方なのか確認しなければなりません。なにか証明できるものはお持ちでしょうか?」
まあいきなりやってきた人がそうそう貴族と面談できるわけはないよな。今回は渡すだけではなく、説明までしなければならないんだから。
「証明になるのかわかりませんが、ジョニーファン様からいただいたブローチがあります。これを見せれば依頼者であるとわかると言われています。」
ジョニーファン様から依頼を受けた際に、渡されたブローチを差し出す。シルバーの台座に青く輝く宝石のようなものがはまっており、胸につけられるようになっているものだ。
クリファリアさんは手に取って確認を始めたが、なぜか自分たちが持っていたときと違って黒くなっているような気がする。しばらく確認した後、ブローチを戻してきた。
「申し訳ありませんが、もう一度手に取ったまま見せてもらえますか?」
渡した時に青かったブローチが黒くなっていた。「こんな色だったっけ?」とブローチを手に取ると、先ほどまで黒くなっていた宝石部分が青くなってきた。
「ちゃんと反応していますね。」
「どういうことでしょうか?特に説明を受けていなかったのでよくわからないんですよ。」
「私も原理はわかりかねますが、ジョニーファン様がそれを持たせた人のみに反応する魔道具なのですよ。他の人が持つと先ほどのように黒くなりますが、そのブローチに登録された人だけは青く輝くのです。」
そうだったのか。説明しておいてよ・・・。おそらく固有魔力に反応して内部に仕込んだ光魔法が作動するという感じなんだろう。ドアとかの応用なのかな?
「確認ができましたので屋敷に案内します。どうぞこちらへ。」
そう言って貴族側の出口に案内されると、立派な車が止まっていた。車に乗って少し移動したところで大きな門に到着する。
「でかっ!!!」
思わず叫んでしまったが、ジェンは「貴族、しかも上位爵なんだからこんなものじゃない?」と普通にしている。日本人にとってはこんな屋敷を見ることはそうそう無いんだよ!!
門をくぐってから屋敷の玄関に到着すると、なんか出迎えの人たちが整列していた。
「どうするんだよ、貴族へ礼儀作法なんて分からないぞ。」
正直言って、貴族に対する礼儀作法なんて本で読んだ本当かどうかわからない知識しか無いんだから無理があるぞ。ヤーマンではクリスさんがいたからなんとかなったけど、どうするんだよ。
「イチ、あくまでジョニーファン様からの依頼できているから大丈夫だと思うわよ。相手もそれはわかっていると思うし、私たちに任せるくらいだからそこまで頭の堅い人でも無いと思うのよ。」
「そうだよな・・・、そう信じよう。」
「ご主人様は平民の方への態度はかなり寛容です。ちゃんと礼節をわきまえた行動を示していただければ大丈夫ですよ。貴族同士のしきたりなどを求めたりはしません。」
そういうクリファリアさんの言葉を信じて屋敷へと入っていく。扉を入るとイメージ通りの大きなホールになっていた。うん、場違いすぎるね。このあと近くにある大きな扉の前に案内された。
「こちらにどうぞ。」
案内されて扉の中に入ると、中には机に座った初老の男性がいた。周りには護衛と思われる人たちがいる。まあ当たり前だな。
「ご主人様。ジュンイチ様とジェニファー様をお連れしました。ジョニーファン様から依頼を受けたものであることは確認済みです。」
「ご苦労。」
執事はドア付近に待機するようだ。この執事もかなりの実力者と言うことがわかる。
「ジュンイチ殿、ジェニファー殿、初めまして。私がルイドルフ・ラクマニアだ。今回はジョニーファンからの依頼を受けてもらい感謝する。」
「お初にお目にかかります。最初に断らせてもらいますが、自分達は貴族に対する礼儀作法はほとんどわかりません。失礼なことがあるかもしれませんが、その際はご容赦下さい。またそのことについて指摘していただければ出来るだけ対応したいと思います。」
「まあ、そこまでかしこまらなくてもよい。親友のファンからもいろいろ聞いているからな。」
「ありがとうございます。それでは依頼されたものをお出ししたいと思うのですがよろしいでしょうか?」
「それではこちらにお願いします。」
執事の人に言われて指定された場所に荷物を出していく。
「最後に出したものが今回預かった資料となります。この内容について説明する様に言われていますが、お時間は大丈夫でしょうか?簡単に説明するだけでも1日では終わらない内容となるのですが・・・。」
「事前に到着の時期は確認できていたからな。今日からしばらくは午前中に時間をとるようにしているのでお願いできるか?」
「わかりました。それではさっそく説明をさせていただきます。」
このあとジェンと二人で順番に内容について説明していく。わかる範囲でいいので細かく説明してほしいという要望だった上、いろいろと質問してくるので思いのほか説明のペースが遅いんだけど大丈夫だろうか?いろいろ聞いてくるあたり説明内容には満足はしていると思っていいのかな?
「すまないが、今日はこのくらいで終わりにしよう。昼食を準備したので一緒に食べて行きなさい。」
説明していると、すでに予定の時間になったようだ。昼食の準備まで終わっているようなので折角なのでごちそうになろう。
どんな豪華な内容になるのかちょっとびびっていたんだけど、いわゆるサンドイッチと果物という簡単なものだったのである意味助かった。
「思ったほどの食事でなくてがっかりしたか?」
「いえ、食材はかなりいいものを使っているみたいで、とても美味しいです。果物もこの季節なのにかなり美味しいので手間暇もかかっているものだと思います。ただ先入観で申し訳ありませんが、貴族の方はもっと豪華なものを食べているのかと思っていたのは事実です。」
「まあそういう奴らもいるのは確かだがな。私はいつもそんな食事をするのは体に悪いと思っているのだよ。野菜や果物を多めにとり、あまりしつこくないものを食べる方が健康にいいと思っているんだ。
しかし、よく果物のことがわかったもんだね。果物はこの屋敷で栽培しているものなんだ。あとで庭師の方にも今の言葉を伝えておこう。」
「たしかに長生きの秘訣として野菜などを多くとるのはいいことですし、油関係を抑えるのは肥満も抑えて健康にいいですね。肥満は裕福の象徴という意見もありますが、血が固まり易くなったりとかいろいろな病気の原因にもなってしまうのでいい習慣だと思いますよ。」
「なに?食事療法についても知識があるのか?」
結局食事中もいろいろな話をすることになってしまい、最後は執事に「そろそろお時間が・・・。」と言われてお開きとなった。やっぱりジョニーファン様の友人だな。
明日も午前中に話をすると言うことだったので、宿に戻ろうと思ったんだけど、泊まっていくように言われてしまう。それはこっちとしてはありがたい申し出だけど・・・いいのか?
さすがに辞退しようと思ったんだけど、食事の時にも色々話ができるから頼むと言われてはどうしようもない。宿のキャンセルはしてくれるようなのでお願いする。荷物は持ち歩いているのでその点については大丈夫と言っておいた。
午後は屋敷の中や庭などを案内してもらったけど、広いので夕方までかかってしまった。庭に温室や畑まであって中で果物や野菜がいろいろと栽培されているくらい広いんだもんなあ。まあ見ていて楽しかったけどね。地球だったらお金を払って見学するような感じのところだからね。
夕方にお風呂の準備ができたというので入らせてもらうと、やはりかなり大きなところだった。お風呂にも世話係がいたんだけど、さすがに遠慮させてもらった。お風呂で他の人に世話してもらうなんてどう考えても無理だ。
夕食はなんとラクマニア様の家族と一緒に食べることとなったので、さすがに緊張してしまう。最低限のマナーはあると思うんだけど、こんな世界は知らないし。ジェンはまだなれている風でうらやましい。
今この家に住んでいるのはラクマニア様と奥さんのスレンダさん、次男のルイアニアさんとその奥さんのタスマールさん、その息子のソラニアくんと娘のクリスティファちゃんだ。長男一家は領地の管理をしているらしくそちらに行っており、長女と次女はすでに他家に嫁いだらしい。
ラクマニア様とルイアニアさんはお城に勤めており、結構な要職についているみたいだ。ルイアニアさんもすでに独立して爵位と領地を持っているんだけど、王都にいるときはこの屋敷に滞在しているようだ。
王都での土地事情でなかなか屋敷が持てないらしく、親や兄弟の館で過ごすのは一般的なようだ。館に泊まれない場合は貴族エリアにある宿に泊まるようだ。さすがに平民街のエリアを潰して貴族街にするわけにもいかないよね。昔だったらやっていそうだけど・・・。
簡単に自己紹介をしたところで食事となったけど、まあ普通の美味しい料理という感じでまだよかった。フルコースのようなものとか出てきたら困ってしまうところだったからね。
「すまないな。お客用の料理を頼んでもよかったんだが、昼のことを考えると普段の食事の方が気を遣わないかと思ってな。」
「お気遣いありがとうございます。これだけでも十分です。今回のこの魚料理が特に美味しかったです。最近なかなか魚料理を食べる機会もなかったので、久しぶりに楽しめました。」
収納バッグに魚は入っているけど、刺身として食べるくらいだったからなあ。
「口に合って何よりだ。話しぶりだと色々料理にも詳しそうだな。」
他の家族の人たちも話しやすい人たちで助かった。よく言う貴族らしい対応ではなく、普通に接してくれるので助かる。
今までの冒険の話をしていると、孫の二人がかなり興味を持ったみたいでいろいろと聞いてきた。結局食事の後も寝る時間になるまで相手をすることになってしまったよ。
子供達が眠りについたところで自分たちが泊まる部屋に案内してくれたんだけど、よく物語に出てくるような豪華な部屋だった。広さは広すぎてどのくらいなのかわからない。ソファーにテーブル、ベッドなどが置いてあるんだけど、寝るだけなのにこんな広い部屋はいらないから・・・。
天蓋付きのベッドというのはこんな部屋だからいいんだけど、ベッドが一つというのはどういうことなの?いや、確かに二人でも十分寝られる大きさだよ。キングベッドよりも大きいんだから。でもね、自分たちはただのパーティーメンバーなんですよ。夫婦でもカップルでもないんですよ。
ベッドの追加とかをお願いしても、「遠慮はいらないですから。」と言って聞いてくれない。「防音の魔道具もついていますので気にしないで下さい。」って何をさせようとしているんだよ。しかもジェンが早々に話を切り上げてしまったのでベッドを運ぶという話は終わってしまった。
いつものベッドを出そうかとも思ったが、「これだけ大きいから同じベッドと言ってもいつもと変わらないでしょ。」と言うので諦めて一緒に寝ることにした。もちろん離れてだけどね。
いつものベッドも結構いいものを買っていたんだけど、さすがにレベルが違ってかなりの寝心地だった。こんな天蓋ベッドで寝るなんて地球では考えられないなあ。
このあと1週間も世話になることになってしまったけど、もちろんジェンとは何もなかったよ。時々寝ぼけて抱きついていたことがあるくらいはあったけどそのくらいは許して。あとで大変だったんだから・・・。
1週間もかかったのはラクマニア様は午前中に1、2時間しか時間がとれない上、思った以上にいろいろと聞いてくるので時間がかかったからだ。特に時間は気にしなくていいと言ってしまった手前、途中で切り上げることも出来なかったしね。
食事は屋敷にいる人たちと一緒に取り、午後からは庭やホールを借りて剣術や魔法の訓練をさせてもらった。護衛の人も相手してくれたのでかなり有意義だった。魔法は耐魔装置で使える場所は限られているので魔力循環がメインだったけどね。
あとは二人の子供達に話を聞かせたり、一緒に遊んだりしていたせいで子供達にはかなりなつかれてしまった。
地球にあったおもちゃとかを作ってあげるとかなり喜んでいたからね。あまり高くはないけど、飛翔魔法で一緒に浮かんであげるとかなり感激していた。どうやら乗り物では飛んだことはあるけど、そのまま飛ぶことは初めてだったみたいだ。
おかげで講義が終わって屋敷を後にするときにはかなり泣かれてしまってなだめるのが大変だったよ。また遊びに来ると言って納得させたんだけどね。
貴族に関する話を聞いたところ、やはりこの国も他の国からの影響が出てきているらしい。つまり特権階級をなくそうという動きである。
過激派のようなグループもいるけど、ラクマニア様はどちらかというと差別をなくしていこうとする派閥のようだ。ただもちろん今の体制を維持しようとする派閥もあり、混沌としているようだけど、いずれはアルモニアのようになっていくだろうと思っているようだ。
~ラクマニアside~
先日親友であり、学友仲間でもあるファンから連絡があった。どうやら色々と魔法や古代文明について新しい発見があったらしい。内容がかなり膨大になるので通信では厳しいから書類で送ると言っていたのだが、説明ができる人を派遣してくれるようだ。
直接会う機会がなかなか無いため、今までもお互いに手紙だけでなく人を派遣して情報交換をしてきていたが、今回の使いが冒険者だと言うことにはかなり驚いた。
話を聞くと、研究員などではなく冒険者だが、今までに無い考え方をしており、彼らのおかげで新たな魔法の理論ができたと言っていた。ファンにそこまで言わせるというのはかなりの人材なのだろう。研究が講じて遺跡探検のために冒険者になったという経歴だろうか?
人柄についてはファンが保証すると言っていたが、貴族に対する対応はできないのでそこは勘弁してやってくれと言っていた。ファンに対しても物怖じしないくらいだったらしいのである意味楽しみだった。
他の用事もあるのでおそらく2ヶ月後くらいにはそっちに行くことになるのではないかと聞いていた。このため検問に依頼して動向を探らせていると、ファンの予想通りに入国してきた。
この際に二人の情報も併せて確認したんだが、年齢を見て驚いた。18歳と書かれているのを見たときには書き間違いかと思ってしまった。一応確認してみたが、やはり間違いないらしい。18歳でファンに認められて説明要員に選ばれるとは・・・。
途中の移動は車のようだったんだが、町ではほとんど泊まっていないみたいなので移動用の家を持っているのかもしれないなと判断した。かなり大きめの収納バッグを持っているのだろう。もしかしたらすでに収納魔法を取得しているのかもしれないな。
王都にやってきたとの連絡を受けた後、夕方には手紙を持ってきていた。翌日に本人の確認してもらい、屋敷に来てもらったが、ほんとに若くて驚いた。
このあと資料の説明をしてもらったんだが、たしかに知識量がすごかった。ファンの書かれている内容をちゃんと理解していなければ答えられないようなことまで説明してきたのには驚くばかりだ。ファンが数日相手をしたというのもうなずける。時間を十分にとれたファンの立場がうらやましい。
できるだけ仕事を片付けておいたが、やはり午後からは執務をしなければ終わらないため、午前中に講義を行ってもらうことにした。食事の時にも話を聞きたいため屋敷に泊まってもらったんだが、孫達がなつきすぎて食事中に話があまりできなかったのは残念だった。
二人の関係はファンにも聞いていたので強引に一緒の部屋に押し込めた。二人とも好き合っているのに先に進めないと言っていたからな。多少強引だが、少しは前に進んでくれるといいと思ったが、残念ながらたいした進展はなかったみたいだ。まあ、まだ若いからこれ以上ちょっかいを出すのはやめておいたがな。
結局1週間ほど滞在してもらったが、かなり有意義な時間を過ごすことができて満足できた。孫達がかなり寂しそうにしていたのがちょっと困ったが、正直あそこまでなつくとは思わなかった。見たこともないおもちゃをもらって喜んでいたしな。
ただ浮遊の魔法はやめてほしかった。お付きのメイドが驚いていたからな。古代の魔道具でもかなり貴重なものまで持っているとは思わなかったぞ。息子達もねだられてかなり困っていたからな。
~~~~~
ラクマニア様たちとお昼を一緒に食べた後、わざわざ宿まで車で送ってくれた。ありがたいことだけど、宿に着くと、なぜか周りから注目を浴びまくってしまった。まあ立派な車だったからね。
「いらっしゃいませ。こちらの受付にどうぞ。」
宿についてロビーに入るとすぐに係の人がやってきて受付に誘導してくれたんだけど、そっちは貴族用だから・・・。
「いえ、平民なので平民用でお願いします。」
「えっ?しかし、ルイドルフ家の貴族用の車で来られましたよね?あの車に乗られるのは貴族またはそのご家族だけだったと記憶しているのですが・・・。」
そんな車で送ってくれてたの?貴族じゃないのになんでそんな車に乗せたんだよ、ラクマニア様・・・。どおりで乗り心地が半端なくいいと思ったよ。
「いえ、平民に間違いないです。きっと車が空いてなかったのでしょう。ほら、身分証明証にも貴族の記載は無いでしょ?」
証明証を見せてやっと納得してもらったけど、やっぱりこういうところの従業員は車を見たらどこの車なのかすぐにわかるんだろうな。車に紋章とかも付いているしね。
特に紹介状があったわけではないんだけど、なぜか同じ部屋で2000ドールになったのはラクマニア様の影響だろう。さすが上位爵だ。
宿の手続きを終えたあと、役場に行って依頼の完了手続きを行う。受付の人は依頼者と受領者の名前を見て驚いていた。
「賢者様からルイドルフ様への依頼・・・。」
たしかにただの上階位の冒険者が受ける依頼じゃ無いとは思うんだけどね。
「失礼しました。当初の報酬額は10万ドールだったのですが、確認しましたらルイドルフ様から報酬の上乗せがありまして、合計20万ドールの報酬となりました。」
おお~~、元々の依頼でも結構な額だったのに、ラクマニア様がここまで増額してくれたのか。まあ、いろいろ頑張って説明したしな。よかったよかった、頑張った甲斐があったな。それだけ実績ポイントもついたと思うからね。
しかし、日本円で100万円の依頼が増額で200万円か。お金持ちの感覚はわからないなあ。
「ありがとうございます。報酬は口座に入れておいてください。」
「承知しました。」
依頼などを見てみるが、特に目新しいものは見つからなかった。やはり王都周辺にはそれほど強い魔獣もいないし、ヤーマンとそれほど種類も変わっていない。わざわざここを拠点にして魔獣を狩らなくてもいいな。
役場を出てから紹介してもらった鍛冶屋へ向かう。この町に来るまで掘り出し物がないかちょこちょこ見て回っていたけど、そうそう掘り出し物はなかった。なので装備で売れるものは前に買ったものがほとんどだ。
クロスボウ(低) 良/良/良 耐久性向上-2、風魔法-3
大角牛の革の鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
大角牛の革のハーフ鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
厚手の革パンツ(並) 並/並/並 強度向上-1×2
牙猪の革の籠手(高) 高/高/並 強度向上-1
牙猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2、耐久性向上-1
牙猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2×2
牙猪の革の帽子(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の盾(並) 並/並/並 強度向上-1
鉄の小盾(高) 高/高/高 強度向上-2、筋力増強-2
魔術の指輪(並) 並/並/並 魔力強化-1
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2、治癒力強化-1
ある程度は予備にとっておかないと怖いので売るとしたらクロスボウ(低)と魔術の指輪(並)と魔術の指輪(高)くらいか?クロスボウはいずれ使えるかもと思ってとっておいたけど、今となったら使う機会が無いからねえ。
遠距離攻撃は魔法があるし、それを上回るまで弓のスキルを上げるくらいなら他のスキルを磨いた方がいい。クラス取得のためにスキルを上げるだけならここまでいいものもいらないしね。
ただクロスボウは修理してもらわないと価値が正確には判断されない可能性があるけど、この町だったらちゃんと修理できる人もいるだろう。
事前にラクマニア様から鍛冶屋を紹介してもらったところなので変なことはされないはずだ。紹介状も書いてもらったしね。
紹介された鍛冶屋はスルマーニ鍛冶屋というところでかなり大きな店舗だった。店頭には優階位の装備も展示されているのでかなりの規模のところなんだろう。やってきている人達もかなり立派な装備をした人が大半だ。ちょっと浮いている感じだけどまあ気にしてもしょうが無い。
店の一角が買い取りの受付になっていたのでそちらに向かう。買い取りはそこまで人が多くないので待つ必要が無くて助かる。
受付にいた少し年配の女性に話しかける。
「すみません、装備の修理か買い取りをお願いしたのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、どのようなものでしょうか?」
さすがに周りの装備とか見ていたらランクが低い冒険者というのはわかるだろう。ちょっと不審げな感じを受ける。
「このクロスボウと魔術の指輪を売りたいのですが、鑑定してもらえますか?クロスボウは修理が必要かと思いますが結構いいものだと思うんですよね。」
「買い取りだけの場合は鑑定代がかかりますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「買い取りの際には身分証明証の提示をお願いしていますので提示をお願いします。」
身分証明証を提示してから、紹介状のことを思い出して渡すことにした。
「ああ、あと、この店のことを紹介してもらった方からの紹介状です。先に渡すように言われていました。」
紹介状を受けとると、かなり驚いたような顔をして読んでいた。
「ル、ルイドルフ家からの紹介状ですね。わ、わかりました。鑑定を行いますので少々お待ちください。鑑定代は買取額からの差し引きとさせていただくことになります。クロスボウについては専門家もおりますので、修理をしなくても判断はできると思います。」
「わかりました。とりあえず価格だけでも出してもらえたらと思います。もし買い取りしない場合は鑑定代をお支払いします。」
「承知いたしました。クロスボウについては担当の者を呼んで参りますので少々お待ち下さい。」
商品は目の前で鑑定するのが基本なので鑑定する人を呼びに行ったようだ。
しばらくしてやってきた男性に装備を鑑定してもらう。さすがにクロスボウについては鑑定に時間がかかった。
鑑定の結果、クロスボウは220万ドール、魔術の指輪(高)は6万ドールで二つ、魔術の指輪(並)は1万5千ドールの買取額と言われる。あれ?クロスボウは以前の鑑定で90万ドールくらいの価値と言われていたと思ったんだけどなあ?
「クロスボウはそんなに高いものなんですか?」
「そうですね。材料に魔樹を使っていますのでこのくらいの買取額になりますよ。一つ下の素材だと値段は結構下がりますがね。ただこの付与魔法を考えると、下のクラスに付けていることはまずないですね。
風魔法の付与はかなり貴重なものですので、通常の買取額よりも高くなりますね。これと同程度のものを制作しようとした場合、400万ドール以上してもおかしくないかもしれませんよ。」
魔樹材と結構珍しい材料と思っていたから変とは思っていたんだよな。一つ下のクラスは特殊とはいえ普通の木だからね。まあ木製の装備はよくわからないと言っていたので完全に勘違いなのもしれない。
「正直、うちとしては買い取れるのならありがたいことなのですが、かなりよいものなのでほんとに売ってしまってよろしいのですか?後で同等のものを手に入れるのは結構大変だと思いますよ。良レベルの弓はなかなか出物がないんですからね。注文できる武器屋も少ないですし。」
そう言われると売りたくなくなるのが人情ではあるが、どう考えても使うことはないよね?ジェンとも話たんだが、やはり手放すことにした。
「ありがとうございます。それでは支払いは口座の方に入れておきますね。」
このあと安く買っていた魔道具やアクセサリーなどをカサス商会で売っていく。ちゃんと鑑定してもらうと値段もそれなりに高く売れて、全部で55万ドールと10倍くらいで売ることができた。やっぱり鑑定スキルは異世界ではかなり優位だな。特に一般的になってない場合はね。
付与魔法が施されているものはもちろん値段が高くなるんだけど、古くなってくると付与魔法が削れたりして効果が出なくなってしまうものもあって、状態によって値段が変わってくるのでその状態を見て価格が決められるので効果だけで価値が決まるわけではないようだ。
特にレベルの低いものは付与魔法の彫りも浅くて効果が出なくなることも早いみたい。材質の問題もあるんだけどね。
いまのところ使っているものは大丈夫だけど、そのあたりは気をつけておかないといきなり効果が切れていると言うこともあるらしい。買うときにはその点も気をつけておかないといけないね。
とりあえずこれで全財産は400万ドールくらいになったので武器を少しは更新できるようになったかなあ?日本円で4000万円くらいだよ。高校生がこの金額を持つってすごいな。
ただミスリルの良グレードになると最低でも300万ドールくらいするので簡単には買えないんだよなあ。せっかくだから防具の方も買い換えしたいしね。
このあと町の中を少しぶらついたんだけど、結構活気があっていろいろと見るところは多かった。せっかくだからあと3日ほど泊まってから出発するかな?
夕食にはおすすめらしい食堂で食べることにした。食事内容は結構濃いめの味付けでソースがたっぷりと使ったものが多い。おなかも十分に満足したところで宿に戻る。
ラクマニア様の屋敷ではお風呂を堪能していたんだけど、さすがにここに設置されているのはシャワーだけだ。面倒だったので今日は浄化魔法だけで簡単に済ませる。まあ浄化魔法でも十分綺麗になるので気分の問題だけどね。
屋敷ではひとつのベッドにされていたけど、もちろん部屋はツインの部屋でダブルの部屋ではない。ジェンは何かブツブツ言っていたけど気にしないでおこう。同じベッドに寝てまた抱きついたりされていやじゃないのかなあ?まあこっちはうれしいということしかないけど。
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