【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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82. 異世界1208日目 未発見の遺跡へ

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82. 異世界1208日目 未発見の遺跡へ
 カルニクを出発し、南西方向にある遺跡へと向かうことにした。さすがに主要街道から外れてしまうので道路の状態は少し悪くなるが、それでもちゃんとした道があるだけまだいいだろう。3日ほど走ったところでこっち方面の最後の町であるタラトクに到着した。
 この町は木材の切り出しを主産業としているところみたいで、立派な城壁のある町だった。前に他の国でもあった開拓の前線基地と言ったところか?このあたりは質の良い木材が特産品となっているらしい。

 町に入ると、高階位の冒険者の拠点にもなっているようで冒険者の姿も結構多い。

「なんか辺境というイメージだったからもっとへんぴなところかと思っていたけど、思ったよりも大きな町だね。」

「確かにそうね。思ったよりも町が発展しているし、冒険者もかなり多い感じだわ。」

「門には一応貴族用の通路もあったけど普段は使っていないみたいだし、貴族エリアもないみたいだから貴族はかなり少なそうだね。まあその方が気楽だけど。」

「確かにね。」

 貴族は少ないみたいで生活エリアは分かれていないが、貴族専用の宿や店はあるみたいだ。ただ貴族と平民兼用の店の方が圧倒的に多い。まあそもそも人が少ないので区別していたら商売が成り立たないのだろう。

「この町の情報はあまりないからまずは宿を決めてから町を見て回ろう。」

 カステルさんからはこの町のことはあまり情報を聞けなかったので、適当に町をうろついて良さそうな感じの宿に泊まることにした。泊まったのは貴族と平民兼用のカルクトという3階建ての宿屋だ。少し奥まったところにあるんだけど、周りの環境も良さそうだし、建物も結構綺麗なので大丈夫だろう。貴族も泊まれるところなのでそれほど悪いところでは無いと思う。
 受付は貴族でも平民でも同じ受付となっているようだけど、最初から対応は丁寧だった。まあ貴族も来るから変な対応はできないだろうけどね。
 部屋は貴族用と平民用に分かれていて、貴族用はエレベーターで3階になっている。料金は2000ドールとそこそこの料金だが、せっかくなので貴族用の部屋にすることにした。
 部屋はすごく広いというわけではないけど、寝室とリビングに分かれており、トイレとシャワールームまであるので充分だろう。まあ事前に部屋の大きさについても説明があるので、これで満足できないような人はここには泊まらないだろうしね。

 役場に行って資料を確認すると、町の周りは初~並階位、少し離れたところは並~上階位の魔獣がおり、車で移動するエリアになると良~優階位の魔獣がいるみたい。かなり幅広い魔獣がいるので、冒険者には人気のところのようだ。
 このため素材の買取の店も結構多いけど、若干買取額は安い印象だ。まあここですべて消費できるならいいけど、移動のコストを考えるとこのあたりはしょうが無いだろう。他にも鍛冶屋もあるので冒険者として活動するにはいいところなのかもしれない。

 一通り町を見て回ったけど、思ったよりも町の雰囲気はいい感じだった。夕食は宿の一階にある食堂で食べたんだけど、”肉!!”という感じの料理が多かった。今回は牛肉のようなステーキを食べたけど、値段の割にはかなりのボリュームだった。
 冒険者の人達も多くていろいろな話が飛び交っている。ジェンと話をしながら聞き耳を立ててみるが、魔獣がどうしたとか、狩りの具合がどうだったとか、新しい装備がとか普通の会話だけで気になるような内容はなかった。
 夕食の後は少し部屋でお酒を酌みながら今後の予定を話す。翌日からはまた拠点での生活となるが、明日も早いのでこの日はほどほどで寝ることにした。


 翌朝早くから出発して3時間ほど走ったところで車での移動が厳しくなったのでここからは走って行くことにする。このあたりの魔獣の階位は上階位くらいなんだが、この先はおそらく高階位の魔獣も出てくるだろう。

「まだ時間は早いけど、距離や魔獣の階位を考えるとこのあたりで泊まっていった方がいいかもしれないね。」

 ちゃんとした拠点で泊まれるのはここまでだろうからいったんここで泊まっていった方が体を休めることができるだろう。

「そうね。森に入ったら見張りとかもしないといけないだろうからそれがいいかも。」

 ジェンも同じことを考えていたようだ。森から離れたところでいい場所を見つけて拠点を出す。

 拠点も使い始めてかなり経つけど、浄化魔法があるせいで綺麗なままと言うのがありがたい。まあ周りの外壁は都度都度補修しているんだけどね。魔物よけなどの魔道具もいろいろとそろえたので上階位の魔獣までは近くに寄ってこないし、認識阻害もかけているので見つかりにくくなっているのもいいところだ。
 あまり魔獣のいないエリアを選んでいることもあるけど、今まで魔獣に襲われたのは数回だ。攻撃されてもしばらくは耐えてくれるので基本的に見張りを置かなくても十分に対応できるのがありがたい。


 翌朝から森の中を進むが、やはり魔獣の階位も上がってきた。ただ優階位の魔獣はまだ遭遇していない。巨大蜘蛛や蹴兎、猛毒スライム、巨猪など良階位の魔獣までしか遭遇していない。
 索敵能力はこちらが上なので、良階位の魔獣でも先制攻撃ができて助かる。不意打ちされるとかなり危ないからね。このため移動速度は下がってしまうがしょうが無い。

 森とは言っても熱帯雨林のような深い森ではないのでまだ進みやすいのが救いだ。歩きにくいことには変わりないけど、風魔法でつるや枝を切り払いながら進むので、鉈などで切り開きながらというわけではないだけまだいい方だろう。二人で風斬で切り開き、風弾で地面付近を固める感じで切り開いていくので、自分たちが通った後は道のようになっている。
 前に試練の遺跡に行ったときに森の中を進むのに苦労したのでなんとかならないかといろいろと試してみたところ、この方法が一番効率的だった。
 ただ途中で飛んだり、魔法を使わずに分け入ったりして跡はつけられないようにはしている。できることは最低限しておかないと後で後悔はしたくない。

 さすがに遺跡まで1日では到着できなかったので、途中で拠点をだして泊まることにした。こんなところでは大きな拠点は出せないので広さが1畳くらいの小さなテントのようなものを出す。
 これはヤーマンにいるときに造った物で、魔獣よけや消音などは普段使っている拠点と同程度の機能は持っているものだ。寝ることだけを考えたものなので、もちろん料理などはできないし、スペースは狭いが、交代で寝るには十分なものである。
 最初は普通に売っているものを買おうかと思ったんだけど、なかなか納得できるものがなかったこともあり、結局土魔法を使って作ったものだ。ただトイレだけは携帯用のものを使うしかないのがジェンには不満だったようだけどこればかりは仕方が無い。

 夕食は保存しておいたものを食べてからまずはジェンから眠りにつく。野営のときの見張りは自分が前半、ジェンが後半という形に決めており、2.5時間交代なので睡眠時間は短いが、長期間でなければ十分に対応できる。
 ジェンが眠りに入ったところで警戒に入るが、特にやることはない。階位の低い魔獣のエリアではたき火はした方がいいんだけど、良階位以上の魔獣がいるところでは逆に目印になってしまうのでやらない方が安全だ。この階位の冒険者になると見張りは索敵能力を持っていることが普通なのでそちらで警戒するし、明かりとしては光魔法や魔道具を使うことにしている。
 なので見張りをしている間は索敵をしながらガイド本に取り込んだ本を読んで過ごすことくらいしかできない。ガイド本もかなり色々と使っているけど、レベルは上がらないのでレベルは3までしかないのかもしれない。まあそれでも十分な機能なんだけどね。
 特に魔獣が現れることもなく、時間になったところで浄化魔法で体を綺麗にしてからジェンと交代して拠点に入る。

「絶対に無理をしないで、何かあったらすぐに起こしてよ。」

 優階位の魔獣の気配を感じたときはすぐに移動するようにしているし、良階位の魔獣についても危ないと思ったらすぐに起こすようにしている。良階位でも単独の魔獣であれば一人でも対応できるけど、何かあってやられるわけにはいかないので安全重視だ。

「わかっているわ。無理はしないわよ。」

 拠点に入ってから横になるとすぐに眠りに落ちていった。



 0時に起きるが、さすがに眠い。鎧は着たままだったので速攻で眠っていたけど眠りは浅かったみたいだ。そうはいっても鎧を脱ぐわけにもいかないからなあ。

「おはよう。」

「おはよう。ちゃんと眠れた?朝食の準備はできているわよ。」

 拠点から出てジェンに挨拶をすると、ジェンは元気に返事を返してきた。夕べは良階位の魔獣が一回襲ってきたので退治したらしい。良階位と言っても蹴兎が一匹だけだったのですぐに対処できたようだ。

「ありがとう。いただくよ。」

 サンドイッチと温かいコーヒーで簡単に朝食を済ませてから拠点を収納し、すぐに出発する。ここからさらに2時間ほど歩いて目的の場所近くにやってきたんだけど、そこは大きな湖になっていた。

「ここ・・・だよね?」

 ジェンが湖を見ながら声を上げる。

「場所的にはこの湖の真ん中付近みたいだけど、標高はもう少し上の位置だね。」

 対岸は見えるが向こうまでは数メヤルドはありそうな感じでかなり大きな湖という感じ。カルデラ湖のように湖の周りが盛り上がっていて丸い感じになっている。

「これって町が吹っ飛んでクレーターになってしまったという感じかな?形も丸いし、爆弾でも落とされたのかなあ?」

 町の大きさがどのくらいだったかわからないけど、今まで見た遺跡の大きさを考えると町すべてが吹っ飛んでしまったと考えてもおかしくないレベルだ。まいったね。

「そんな感じかもしれないわね。さすがに遺跡や遺物は残っていないと考えた方がいいわね。もし残骸があったとしても湖の底だわ。」

「まあそうかもしれないけど、一応湖の周りを調査してみようか。1周するのに1日くらいあればなんとかなると思うし。」


 湖の外周に沿ってある程度地中も探索しながら回ってみたんだが、特に手がかりになるようなものは見つからなかった。残念ながら新たな発見はなかったけど、古代兵器で町を一つ滅ぼす兵器があったことは間違いないだろう。
 調査しながらだったので思ったよりも時間がかかってしまい、結局この湖の周りを回るだけで3泊することとなってしまった。
 もしかしたら町から離れたところにも何かあるかもしれないけど、さすがにこの森の中を調査するのは危なすぎるし、どれだけ期間がかかるかもわからないのでこれは諦めるしかないだろう。
 魔獣は良階位だけでなく、かなり遠かったけど優階位らしき気配も感じていたのであまり長い時間このあたりに滞在するのも怖い。さすがに優階位の魔獣を相手にすることは難しいからね。まあ逃げることに重点を置いたらなんとか逃げることはできると思っているけどね。

 今回の簡易拠点も結構使えたのは良かった。もう少し床材を改良する余地はあるけど、十分拠点として使えるな。ジェンにも聞いたけど、特に不満は無かったらしい。「一緒に寝られないのが寂しいけどね。」とかちょっと可愛いことを言っていたけど、不意打ちでそんなことを言うのは勘弁してくれ。

 来たと時同じく4日かけてタラトクの町に戻る。ほんとに収納魔法があって良かったと思う。他にも戻ってきている冒険者の車がいたんだけど、車の上まで魔獣の素材を乗せていたからね。収納バッグを持っていたとしてもそこまで大きなものを持っている人は少ないだろうからね。


 今回手に入れた魔獣の素材でいらないもので買取対象となっているものは役場で引き取ってもらう。価格は安いけど実績にはなるからね。素材の買取をしていると、ジェンが近くにいた冒険者と話をしていた。どうやら女性3人のパーティーみたいだ。

「ジェン、買取は終わったけど・・・。」

 えらく会話が盛り上がっているので遠慮がちに声をかける。

「あっ、ありがとう。えっと、こちらはハルネというパーティーの人達でヤーマンとかのホクサイ大陸の国に興味があるみたいで色々と話をしていたのよ。」

「えっと、初めまして、ジェンとパーティーを組んでいるジュンイチと言います。」

 ちょっと警戒するような目で見られたんだけど、なんかスレインさんたちに最初会ったときのことを思い出すなあ。男性に少し不信感を持っているような感じだ。

「もしホクサイ大陸の話を聞きたいのであればこのあと一緒に食事をしながら話しませんか?自分たちもこの国のことなどを色々と聞きたいので情報交換できればありがたいのですが・・・。」

 彼女たちはどうするか悩んでいたが、事前にジェンと話して興味が湧いていたのか、彼女たちの行くお店でいいならと一緒に食事をすることとなった。まあいきなりよくわからない店に行くのはやはり怖いのだろう。

 彼女たちはこの辺りを拠点としているハルネという女性3人の良階位の冒険者だ。リーダーのハスルさんは剣士、ルイトリアさんは魔法使い、ネルミアさんが剣士兼治癒士のようだ。
 もともとは別々のパーティーだったんだけど、男性と一緒だといろいろと大変だったことから女性のみでパーティーを組んで活動をするようになったらしい。
 やはりこの国では女性軽視の風潮があるみたいで女性と言うだけで下に見られる傾向があるようだ。特に貴族になるとその傾向が強いみたいで、貴族の男性冒険者とは一緒に行動したくないと言っていた。
 お金が貯まったらホクサイ大陸に移住したいと考えているみたいで、頑張ってお金を貯めているようだ。ヤーマンのことなどいろいろと聞いてきたので答えられる範囲で教えてあげると、こっちの国のことなど色々と話してくれた。

 さすがに疲れもたまってきていたので二日ほどは町でゆっくりする。このあとサビオニアに行くので国境の町タラクに行く予定なんだけど、ここから直接行く街道はないのでいったん北上してカルニクの町に戻ることになった。


~ハルネのハスルSide~
 遠出をしての狩りからタラクトの町に戻って素材の買取をしてもらっていると、横にいた女性が声をかけてきた。女性だけのパーティーが珍しかったのだろうかと適当に話をしていたんだが、ヤーマンから来た冒険者だったみたいで興味を引かれた。
 彼女は今素材の買取をしている男性と夫婦でパーティーを組んでいるらしく、見聞を広げることを目的にいろいろなところを回っているらしい。
 せっかくならいろいろと情報交換をしたいのでこのあと一緒に食事に行かないかと言われ、悩んだ末一緒に行くことにした。同じパーティーの男性も一緒だと言うことがちょっと引っかかったがその心配は杞憂だった。女性と言って下に見るようなことはなかったからだ。
 パーティーの話を聞くと、いろいろな雑用も二人で分担してしていると聞いてちょっと驚いた。こっちの国では女性が雑用をするのが当たり前だからだ。料理はジュンイチの方が得意という話を聞いてさらに驚いた。

 ホクサイ大陸に行きたいという話をすると、いろいろと話を聞かせてもらうことができた。すでにホクサイ大陸の4つの国には行ったことがあるらしく、国の特徴を色々と教えてもらえた。やっぱり行くならヤーマンが一番いいかな?
 他にもいろいろと情報を教えてくれたので私たちも知っていることを色々と話をした。このあとサビオニアにいくと言うことだったのでちょっと注意はしておいたけど大丈夫かな?特にジェニファーさんは認識阻害をかけていたみたいだけど、かなり可愛いので変な貴族に目をつけられないかが心配だわ。そのあたりがわかっているのでフードを被って認識されにくくしているのだろうけどね。


~~~~~

 カルニクの町で十分に休養と買い出しを終えてから、サビオニアとの国境の町タラクへと向けて出発する。
 サビオニアの言葉はここモクニクとは少し異なるので勉強していたんだけど、ある程度は話せるようになったのでなんとかなるだろう。そうそうに話せるようになっていたジェンの言語の習得能力がうらやましい。これでも加護で身につけやすくなったいるからここまで習得できたんだろうけど、何もなかったらまだ片言しかできなかっただろうな。
 車で音楽の代わりに勉強用の教材を流したり、ジェンと会話して勉強はしているけど、いろいろな言葉を覚えていくと時々こんがらがってしまうんだよなあ。しかもちゃんと使っていないと忘れていくから一日おきに使う言葉を変えて語学力を維持している。地球にいたときから考えると、こんなに頑張るとは思いもしなかったよなあ。

 サビオニアはモクニクと比較すると国の経済力が低いため、いろいろな物資が手に入らない可能性もあると言うことを聞いていたので食料や装備の補修用品などいろいろと購入しておいた。収納魔法様々だ。おそらくここで買っていかないと国境の町では手に入らない可能性もあるからね。


 カルニクの町を出発して1日ほどでもともとの国境だったと思われる砦跡のところにやってきた。日本だったら旧跡として観光地になりそうなところだが、もちろん観光案内板などはない。
 もともとは立派な砦だったらしいけど、国境が変わったために必要性がなくなったこと、新しい町の建材として必要なものが取り去られたことから今はただのがれきの山だ。

 さらに街道を走って10日ほどかかってタラクの町に到着。タラクの町までは他の国との主要道路なんだけどそれほど大きくないし走っている車もかなり少ない。これらはおそらくサビオニアとの取引があまりさかんでないためだろう。
 今は6月でヤーマンでは夏も終わりに近づいているんだけど、こっちは今が冬の終わりという感じらしい。南下してきているせいか気温も大分下がってきているけど、南半球になるのか季節が反対になるのでこのあとは徐々に温かくなっていくみたいだ。

 タラクの町は国境の町と言うことで城壁が横に広がっていて人が通れないようになっていた。山の方まで城壁がつながっているので結構な距離となっている。途中に見張り台のようなものもあるので監視がそれなりに厳しいのだろう。

「やっぱり朝早くても行列はできているわね。」

 まだ時間は朝の1時なのに、すでに行列ができていた。門が開くのを外で待っていた人達もいたんだろうな。

「でも前にアルモニアとかハクセンに行ったときと比べたらかなり人が少なくない?国境の町だったらもっと多いような気もするけど。」

「サビオニアとの交流があまり盛んじゃないって言うことみたいだし、途中の車の数を考えてもこんなものなんじゃない?」

「そうかもね。やっぱり事前に色々と買い込んでおいて正解だったね。」

 貴族用の入口の行列はそれほど無かったのですぐに町に入ることができた。


 町に入ると戦争を考えた造りなのか町の中がごちゃごちゃしている。道路の幅が狭いのもあるけど、道がかなり曲がりくねっていて歩きにくい。

 いつものようにおすすめの宿に行って予約を済ませてから頼まれていた魔符核を納めるためカサス商会に顔を出す。サビオニアに行っている間は納めることができないので時間がある間はひたすら作っていたので、1年分くらいは納めたような気がする。
 出来るだ情報を得られないかと思っていたら、カサス商会の支店長のハルキさんと少し話をすることができた。サビオニアの状況はカサス商会でも把握はしているようだけど、やはりこの国に支店を出すのはためらっているらしい。

「そもそも貴族で商売を独占しているので参入ができない状況なのですよ!!」

 ハルキさんはかなり強い口調で叫んでいた。

「競争のない商売なので価格競争もなく、サービスも悪く、品質が悪くて高いものが普通に売られているのです。カサス商会の目玉の重量軽減バッグも自分たちが使っているにもかかわらず、国内の商会を保護するために輸入を禁じているのですよ。
 あの国に一般的に流通している魔道具は1、2世代くらい前のものなのです。競争もないので魔道具の開発も進まないし、正式に輸入もされないせいで時間が止まっているのです。」

 いろいろとサビオニアに関しての愚痴を聞かされてジェンと二人で苦笑いするしかなかった。よほど頭にきているんだろう。まあそんなところに他の国の商会が参入されると困るだろうし、もし商売できたとしてもすごい額の関税とかがかけられそうだな。
 こういう話を聞くと、サビオニアでの生活はかなり厳しい感じだよなあ。まあ拠点があるし、食料もあるから極力町に寄らないのがいいかもしれないな。

 このあと役場に行っていろいろと資料を見てみる。細かくは書かれていないけど、サビオニアにいる魔獣はやはり南に行くと寒冷地にいる魔獣になってくるようだ。まあこのあたりはアルモニアとかで経験しているから大丈夫だろう。種類は若干異なるみたいだけど、特性はあまり変わらないようだからね。

 一通りの用事は済ませたのであとはこっちの料理を堪能してから早々に休みに入る。サビオニアではどんなことになるかわからないからね。



 こっちの国にやってきてからも孤児院をしている教会などにいって治療や寄付を行っていたんだけど、治療を行うことがいいこととは限らないと言うことがあって少し足が遠のいている。もともとクリスさんからそういう話しは聞いていたんだけどね。
 孤児院では子どもがある程度大きくなると職業を斡旋したりしているけど、人身売買のようなことを行っているところもあるみたい。ただ、売られているというとかなりあくどいことのように思えるけど、普通に養子として育てられたり、見習いとして働くことも多く、あくまで就職先という感じではある。その手当として孤児院がお金をもらっていると言うことで、大金をもらっているわけでもないようだ。
 このため買い取られることを望んでいる子供も多いみたいで「子供の売買=悪」と決めつけることもできないのだ。代わりに自分たちが保護できるわけでもないからね。

 ただ前に顔に結構大きな傷を持っている女の子がいたので治療をしようとしたんだけど、拒絶されたのだ。なにかつらい思い出でもあるのかと思って話を聞くと、その娘に執着している評判の悪い貴族がいてその女の子を手に入れようとしていたらしい。それで自ら顔に傷をつけたということだった。
 この国では貴族に逆らうことはできないし、逆らったら援助がなくなってしまうこともあるため孤児院としてもかなりつらい立場のようだ。
 そこの経営者はまだ良心的なところだったので詳細を教えてくれて治療は行わないことに落ち着いたけど、もし子供を売ることしか考えていない人だったら黙って治療をさせていたかもしれない。もちろんもしその心配が無くなって機会があったら治療をしてほしいとは言われたけどね。

 ただサビオニアについては孤児の扱いはむごい扱いを受けているところが多く、引き取られた子供達も結構厳しい環境という話を聞いた。ただ貴族が絡んでいることが多いため訴えても意味が無いだろうという状況らしい。

 正直なところ自分たちのやっていることがどこまでいいことなのかがわからなくなってしまっている。もともと自分たちの訓練をかねて始めたことだけど、その治療がその子に不幸を与えてしまうこともあるということも考えなくてはならない。


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