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87. 異世界1408日目 国からの脱出
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87. 異世界1408日目 国からの脱出
車も少ないこともあり、結構なペースで走ったせいか5日でハーマン領に到着することができた。町にはすでに革命軍の旗が揚がっていたのですでに貴族は捕まるかどうかしたのかもしれない。遅かったかな?町に入ってみるが、特に戦闘があった様子はない。
宿屋に行くと前に泊まったことを覚えていたみたいで、領主に世話になったのだけどどうなったのかを聞いてみた。どうやら今回の戦いを聞いたところで町の関係者に色々と指示を出して町から出て行ったらしい。行き先については正直わからないようだ。
「確かに領主様は貴族だったと思いますが、この町では色々と世話になったんじゃないんですか?黙って出て行くのを見ていたのですか?」
「そんなことはない・・・。あの方達には本当にお世話になった。いつも必死になって我々を守ってくれたんだ。この町の住人であの方達に恨みを持つものなんていないくらいだ。だから・・・。」
話をしていると、なにやら外が騒がしくなってきた。
「領主様が・・・」とか「裏切り者が出た」とか聞こえてくる。
「すみません。どういうことなんですか?もしかしてどこかにかくまわれていたのですか?お願いします、今ならまだなんとか間に合うかもしれません。教えてもらえないでしょうか?」
もともと自分たちが領主に歓待されていたことを知っていたせいか、宿屋の主人に問い詰めると町の外れにある小屋にかくまっていることを教えてくれた。町の中だと何かあったときに住民に迷惑がかかるからと言って町の外に出たらしい。どうもその情報を革命軍に売った住人がいたようだ。「あれだけ世話になっておきながら・・・」と嘆いている。
場所を聞いてから移動すると、何人かが森の影に潜んで様子をうかがっていた。革命軍と思われる兵士が小屋を取り囲んでいる。
「元領主一家は抵抗はしないようだ。とりあえず護送することになると思うので、いったん確認をしてくるからここで見張っていろ。
近くに潜んでいるのは分かっている。すなおに町に戻るのであれば今回は見逃そう。」
どうやら索敵能力のある人がいるみたいで辺りにいる人たちに町に戻るように言っている。ただ気配を消している自分たちのことは気がついていないみたい。しばらくすると辺りにいた人たちはいなくなったようだ。
「建物の中にはいないけど、兵士が4人も残っているのがやっかいだな。見張りの4人は強い人でも上階位レベルかな?十分倒せるレベルだけど、さすがに殺すわけにもいかないよなあ。」
「さすがに敵というわけでもないしね。」
こんなとき漫画とかだと延髄に手刀を入れて一瞬で気絶させるとかしるけど、あれって脳しんとうを起こしていることになるので簡単にはできないし、もし本当に気絶していたら障害や下手したら死ぬこともあるんだよなあ。魔素を打ち込んでもできるかもしれないけど、危険度は同じだ。
ダメージを与えて動けないようにするというのも正直なところ無理だ。人間ってそんなに簡単に動けないようにはならないからな。峰打ちだとか言って刀で殴られただけで動けなくなるというのも漫画や小説だけの話だろう。
「見張りの人達も安心してきているようだからいけるかな?」
「他に方法もないし、やってみましょう。」
ここで使うのは闇魔法の睡眠だ。ジェンと二人で魔力をためてから睡眠魔法を飛ばしていく。もちろんその場でいきなり眠り落ちるわけではないんだけど、何度も魔法をかけていくと眠気にあがなえないのか、眠りについた。残った人は索敵のレベルも低いようだったので助かったよ。
ちなみにこの睡眠魔法は眠気を強くすると言うものなので、今回のようにあまり緊張していない相手には効くけど、戦いの最中など緊張している場合には効果が無い。たとえ眠りについたとしても衝撃があれば起きるし、眠っているからと攻撃し放題というわけでもない。ゲームのように眠らせている間に攻撃というのには使えないものだ。
もしそんなものがあったら本当にできたら危なすぎるよ。睡眠剤を使うまでもなく意識を刈り取ることができると言うことだからね。泥棒でも何でもやりたい放題になってしまう。
建物に入ると自分たちの姿をみて驚いていた。すぐに静かにするようなジェスチャーをしてから話を始める。
「どうも、お久しぶりです。自分たちのこと覚えていらっしゃいますか?」
「あ、ああ、アースのジュンイチさんとジェニファーさんだったか?周りに見張りがいたと思うが、大丈夫なのか?」
「ええ、ですがあまり時間はありません。詳細はまた後で話しますが、すぐにどうするかの決断をしてもらわなければなりません。よろしいでしょうか?」
「ああ、分かった。」
今の状況とこっちの態度を見て時間が無いのは理解してくれたようだ。
「変に疑われてもしょうが無いので最初に言っておきます。革命軍の上の方達と話をしてこの国から出る手配をしてもらっています。
100%信頼できるわけではありませんが、このままこの国にいてもちょっとまずいことになりかねないので自分たちはこの話に乗って国外に出るつもりです。それであなた方のことを思い出して話をしたところ、同じように国外へ出る手配をしてくれるとのことでした。
そこでこのまま捕まって革命軍に今後のことをゆだねるのか、それとも他の国に行くことを選ぶのか選択してもらえないでしょうか?話しを聞いた限りではおそらくこの革命は成功するのでは無いかと思っています。」
「革命軍と話をつけたのか?よくそんな伝があったものだな。」
さすがに驚いているようだが、自分たちもそんな展開になるとは思っていなかったので当然だろう。
「ええ。まだ完全に信頼を置いてもらえているかはわかりませんが、向こうにもメリットのある取引をしているので裏切ることは無いと思っています。
そうだ、冒険者のカルバトスさんって覚えていますか?」
「ああ、数年前にうちの領地に魔獣退治に来てもらった冒険者のリーダーだな。かなりの実力者でそれほど報酬は出せなかったんだが、期待以上の仕事をしてくれた冒険者達だった。上階位だが実力は優階位に迫るくらいはあったと思う。冒険者時代の話をしていろいろと楽しかったな。」
「そうみたいですね。彼は革命軍でそれなりの地位らしく、彼も助言をしてくれたんですよ。それもあって今回の救出に来ることができたんです。」
「そうか・・・。」
家族の人たちと話をしていたが、すぐに一緒に行くことを選択してくれた。今の混乱の時だといくら善政を敷いていたとしてもどうなるか分からないからなあ。
もちろんこの人たちを完全に信頼しているわけでもないけど、あちこちでの話しを聞く限り変なことにはならないだろう。それに彼らの立場を考えると自分たちを裏切ってメリットもないしね。
家族を引き連れてこっそりと森から出てからすぐに車に乗り込んで出発する。デミルさんも車を持っているようだけど、このあとの事を考えると自分たちの車で行った方がいいだろう。
助手席にデミルさん、一番後部座席にはジェンに乗ってもらって一応警戒してもらうことにした。あとデミルさんが持ってきていた収納バッグについては申し訳ないけど預からせてもらう。話をすると素直に渡してくれたので意図が分かっているのかもしれない。
「今の車はこんなに良くなっているのか?」
どうやら自分たちの車の性能に驚いているようだ。たしかにこの国では旧型の車しか見なかったもんなあ。まあ最近出たばかりだし、まだこの国に入ってきていないかもしれないね。
「いろいろとバタバタで申し訳ありません。時間も無かったし、あの状況だったのですぐに出発するしかありませんでした。」
とりあえず今後のことについて話をすることにした。
「それはかまわないよ。前のこともあるし、状況も状況だったからね。まあどっちにしろ殺されてしまう覚悟はしていたので可能性がある方に人生をかけるのもいいと思ったんだよ。」
「先ほど少し話をしましたが、おそらくこの革命は成功すると思います。かなり組織だった対応をしていますし、占拠された町の様子を見てもそれは感じます。
ただ貴族に対する扱いについては正直いってあまりいいものではない可能性が高いと思います。いくら上の方が止めたいと思っていたとしても、民衆の恨みのはけ口は必要でしょうからね。そのための犠牲とされると思いますよ。」
「まあそうだろうな。近隣の領主の話はいくつか聞いているよ。住民達から一家全員が暴行、凌辱されて殺されてしまったところもあるようだ。うちの領地ではそれはなかったが、先ほどの場所を案内したのは以前罪を犯して処罰した者だった。どのような運営をやっていたとしても全く恨みを買わないと言うことはないだろうからな。」
「でもよい領主だったからこそ、町の住人の大半があなた方をかくまっていたのだと思いますよ。」
そのほかにもいろいろと今の状況について話をしながら車を走らせる。
さすがに町に入るわけにもいかないので途中の宿泊は拠点となる。拠点は前に改造したままでお客さん用の部屋も準備できているのでそのまま使用してもらうことにした。デミルさんたちの部屋にはベッドは二つしか無いけど、かなり大きなものを置いているので子供が二人いてもなんとかなるだろう。
拠点を見て驚いていたが、中に入るとさらに驚いていた。部屋の中は土足ではない形だけど、デミルさんと奥さんのカルーサさんはこのスタイルも知っていたみたいだ。子供達はちょっと戸惑っていたけどね。
部屋の中の説明をしてから食事の準備をして夕食をとる。さすがに今日は出来合のものを簡単に温めたものだけだ。食事の後はいろいろと話をするが、最初はずっとこの拠点の話になってしまった。土魔法を使って造ったことを話すとかなり驚いていたけどね。やはりかなり珍しいようだ。
今預かっている収納バッグはデミルさんが冒険者時代に持っていた収納バッグで、二人の冒険者時代の稼ぎや装備関係をすべて入れていたらしく、すぐにでも冒険者として活動できると言っていた。ただ訓練はしていたけど、さすがに勘が鈍っているのでランクの低い魔物からやっていかないといけないとはいっているけどね。
資金についても冒険者時代に貯めていたものと、貴族になってからの個人的な収入については持ってきているので生活するには問題が無いらしい。それを元手に商売を始めるかどうするかは今後考えていくようだ。
子供のダミアンくんとカルミちゃんには貴族の心得については教育していたけど、もともと国を出るつもりだったので他国での生活のことなどは教えており、家でも基本的に自分のことは自分でするという方針でやっていたようなので、他国での生活も大丈夫だろうと言っている。
子供達は拠点の生活にかなり興奮しているようだ。それに久しぶりに両親と一緒に寝られるのがうれしいみたい。
車での移動時間が長いのでさすがに子供達にはきついだろうと途中で適度に休憩を取りながら南下していく。休憩の時にはおもちゃやお茶請けを出したりもしたのでなんとか大丈夫そうだ。移動中は音楽もかけてあげていたので喜んでいた。まあ今までの車だとうるさすぎて音楽どころじゃなかっただろうからね。
交代で運転をしていったせいもあり、5日目の昼過ぎにオカロニアに戻ることができた。町に入るときには身分証明の確認があるのでいったん自分たちだけで町に入りハクさんに連絡をつける。
ハクさんはまだこの町に滞在していたのでハクさん自ら対応してくれた。とりあえず用意したペンダントで町中に入ることができたので商会に移動してから話をすることになった。
子供達は少し休憩してもらうことにする。さすがに打ち合わせの席にいるのはつらいだろうからね。まだ聞き分けのいい子たちでよかったよ。
挨拶をしたいというのでカルバトスさんも一緒に顔を出してきた。
「お久しぶりです。あの節はいろいろとお世話になりました。」
「いやいや、こちらこそ、あのときは予定の魔獣以外にもいろいろとやっていただいて、おかげで助かりましたよ。」
しばらく挨拶をして出て行った後、ハクさんとの話となった。
「カルバトスがわざわざ顔を出すとはよほど気に入られたんだなあ。」
「いや、依頼者として普通の対応をしただけですよ。」
「それが普通できないんだけどな・・・」と、ハクさんは少し笑いながら話を進めてきた。
「とりあえずペンダントは先ほど渡したように準備をしたんだが、やはり身分証明証の確認があるためそのままではタイカン国への入国はできない可能性が高い。特にデミル爵については第一職業に貴族と書かれているため隠すことができないからな。」
どうやら現在はサビオニア国での職業書き換えについては全面停止されているらしく、勝手に行った場合は関係者全員が処罰されることになっているらしい。そもそもその魔道具が差し押さえられているため無理らしい。また記録の照合も行われるために書き換えたとしても結局はばれてしまうことになるようだ。
「そこで国を出るには一つしか方法がないと思っているが・・・。」
「奴隷ですか・・・。」
ダミアンさんが小さくつぶやいた。
「ああ、奴隷であれば今のところ身分証明証の確認をされることはない。やはりもと貴族となると奴隷になるというのは耐えがたいらしく、奴隷に身分を落としてという動きはまだないようなんだ。奴隷に落ちてその後解放されるという保証もないし、経歴には残るからな。
ただ状況によっては今後は奴隷も確認されることになるかもしれないが、現時点では奴隷に関してはまだ確認作業は行われていないのでもし国を出るなら今しかないだろう。」
デミルさんとカルーサさんはうなずき合ってから声を上げた。
「私たちはその件に関しては問題ない。この二人の奴隷ということにしてもらえば、ちゃんと開放もしてくれるだろう。ヤーマンの爵位を持っていることから、護衛という形であればちょうどいいと思う。すぐに奴隷商人の手配をお願いしたい。」
ハクさんはちょっと驚いた表情をしていたが、そう言うとわかっていたのかすぐに奴隷商人を連れて戻ってきた。
子供達は特に奴隷契約は必要ないようなので二人に奴隷契約を行う。契約を行うと、顔に紋章が浮かび上がってきた。そして自分の身分証明証に二人の名前が所有者として記載された。
デミルさんの職業には奴隷の次に冒険者の記載があるので奴隷から解放されれば冒険者と言うことになるだろうと言われる。タイカン国で奴隷商人の手配を行ってくれるようなのでそのあたりは大丈夫だろう。購入金額や借金内容などの書類を作成して形上の手続きは完了した。
許可証の準備にもう少し時間がかかるようなので、準備が終わるまでオカロニアの宿に泊まることになった。奴隷のため部屋を別に取ることはできないので自分とジェンで一部屋ずつ部屋を取り、一部屋を家族で使ってもらうことにした。
さらに食事も奴隷だけでできないので自分たちと一緒にしなければならないという制約はあるが、買い物などについてはお使いもあるので問題ないため、結構町での生活は楽しんでいるみたいだった。子供達も屋台巡りなど結構楽しんでいるようだ。
遺跡調査のことについても詳細を詰めなければならないこともあり、その打ち合わせをしているときにハクさんから現在の状況について話を聞いた。もうすでに大局は決してしまっているため、少々の情報は話しても大丈夫らしい。
すでに北にあるモクニクとの国境の町ラルトニアは革命軍が抑えているらしく、国境の警備は革命軍が取って代わったようだ。兵士の多くはもともと平民だったので、命令系統は変わったが、実務はそのまま引き継いでもらっているみたいだけどね。
モクニク国とは現在静観してもらうことで話が付いているのでおそらく大丈夫だろうと言うことだ。タイカン国との関係もあるし、いろいろな方面から根回ししているのだろう。ただ争乱の期間が長くなれば状況も変わってくる可能性もあるため、早めに決着をつけたいようだ。
現在は国の行き来は完全に止められているので、もしモクニク国側が脱出者を見つけた場合はこちらの国に強制送還させる手はずとなっているらしい。結構捕まっている人達も多いようだ。
ほとんどの戦闘は終わっており、本格的な抵抗があるのは王都だけになっているようだ。ただ平民の多くはすでに王都を脱出しているらしく、王都に残っているのは貴族が大半らしい。もちろん貴族に仕えるものや奴隷もいるのでどのくらいが戦力なのかはまだはっきりとはわかっていないようだ。
貴族が中心の兵士達の質はそれほど高くはないが、やはりそれなりの数がいるのですぐに陥落させるのは難しい状況ということだった。ただ指揮を執る人間が知識も経験も無いらしく、そこがつけいるところと考えているようだ。
ハクさんは食糧の輸送など兵站に関わっているんようなんだけど、先日の戦いで王都の包囲の食料備蓄がかなり楽になったと笑っていた。どうやら王都から討伐隊と言うことで大々的にかなりの兵力が出発したみたいなんだけど、ある程度進んだところで夜襲をかけたら大半の兵士が逃げ帰ったらしい。そのときに回収した食料がすごい量だったようだ。
長期間の遠征で反乱軍をすべて倒していくつもりだったのかもしれないけど、それにしてもあまりにお粗末な戦いだったらしい。
「ここまできたらもう負けることはないので、あとはどこまで早く鎮圧できるか、どの段階で他国との交渉に入るだな。」
「ということは古代遺跡の通路は早めに情報が欲しいと言うことですね。」
「ああ、そうだ。今の状況から考えると、早ければ一ヶ月以内、遅くても二ヶ月以内には何かしらの決着が付くと考えているし、決着が付く前に交渉は始まるかもしれない。古代遺跡の通路があればそれだけ有利に交渉が出来るからな。できれば来年の1月末には結果がほしいところだな。」
「出来るだけがんばってみようと思っていますが、こればっかりは確約は出来ませんよ。もしあったとしてもすぐに使える状態かどうかも分かりませんしね。」
「まあすぐに使えなくても可能性があればそれだけで交渉のひとつになるのでそれは大丈夫だ。」
古代遺跡があったのは間違いないと思うけど、遺跡が埋没していないかが一番の問題だな。その場合はすぐに発見できない可能性が高い。とりあえず大体の調査日数と、その後の確認についての手順を決めておいた。
~サビオニア国王Side~
一体何があったというのだ。なぜ平民風情がこの私に逆らうのだ。たしかにここ最近で他の国との折衝が少しうまくいかなかったと聞いているが、それは私のせいではない。臣下の者たちが悪いのだ。
愚かしくも反乱が起きたというのですぐに討伐命令を下すと、しばらくして討伐が終わったという報告が上がってきた。反乱に加担したもの達はすべて処刑したと言っている。馬鹿な奴らだ。その首謀者の首でも拝もうかと思ったんだが、すでに焼却してしまったと言っていた。
それからしばらくは問題なかったんだが、なにか城の様子がおかしくなってきた。どういうことかと問いただしても王に聞かせるようなことではないと言って詳細な説明が上がってこないのだ。
まあいい。私は私の責務を果たせばいいのだからな。そう思い、昼間からお気に入りの妾を呼んで戯れることにした。
それからさらに日が経ったところでなぜか城の外から大きな歓声が聞こえてきた。歓声?怒号?どういうことだ?問いただそうと思って宰相を呼ぶが姿が見当たらないと返事があった。どういうことだ?改めて確認してみると、上位爵のもの達の姿がほとんどないではないか?どういうことだ?
近くにいた侍従に話を聞くが、「私は何も存じません。」と言うばかりだ。どういうことか聞き回っていると、小さな頃に少しの間だけ武術の指導をしてくれたものが状況を教えてくれた。
どういうことだ?反乱は鎮圧したのではないのか?
王都が反乱軍に取り囲まれている?すでに他の町は反乱軍によって鎮圧された?
王都からもすでに多くの貴族が逃げ出している?
どういうことだ?
どういうことだ?
そのものは「どのようになさいますか?判断をお願いします。」と聞いてきた。私に判断しろと?何を言っているんだ。それは臣下の役目だろう?
私は知らんぞ。私は知らん。
~ある下位爵Side~
この国はもう終わりだろう。先々代の王に申し訳ない。先々代の王はその先代の王の愚行を反省し、多くの改革を進めた素晴らしい王だった。しかしその王が早くに亡くなり、そのときの後継者争いで王位継承権3位の三男が王位を継いだのがこの国のさらなる不幸の始まりだ。あのとき長男が継いでいたらまた違っていただろう。
王としての政務はすべて投げ出し、家臣の言いなりとなってしまった。その家臣は先々代の王からは遠ざけられたはずなのに、機会を虎視眈々と狙っていたのだろう。王にうまく取り入り、反対する勢力は徐々に排除されてしまった。おかげで国は疲弊し、財政はみるみる傾いていった。そしてその息子が後を継いでからさらにひどくなってしまった。
私も閑職に追いやられ王にもほとんど会う機会が無くなってしまった。唯一今の王が小さな頃に武術指導の機会が与えられたが、すぐにやめさせられてしまった。やはり私が話すことが都合悪かったのだろう。
反乱軍に対しても十分に巻き返せる兵力はあったはずだ。ただ兵士の資質は考えていた以上にひどかった。指揮する人間もひどいが、兵士の資質もひどいものだった。
なぜあれほど見え見えの陽動作戦に引っかかるのだ?反乱軍もまさかと思ったのではないだろうか。勢いが止まらず、気がついたときには伏兵に囲まれて何もできなくなってしまった。こうなったときには一点突破で壁を破るしかないのにそれを指揮することもできていなかったのだ。
なんとか残った兵力をまとめて決死の覚悟で壁の薄い箇所を狙い脱出して戻ってきた私たちに「逃げてくるとは何という卑怯者だ!」と罵声を浴びせられた。決死の覚悟で戻ってきた兵士の気持ちはどうなるのだ?
そして兵士をまとめて出撃していった大軍はそうそうに逃げ帰ってきた。聞けば夜襲をかけられて敵の姿も見ていないと言うことだった。
国王は城の奥に引きこもり出てこないし、上位爵の貴族はすでに脱出したのか姿が見えない。王都を出てどこに行こうというのだろうか?おそらく反乱軍にすでに捕まっているのではないだろうか?
王都は現在包囲されているが、反乱軍はおそらく無駄な死者を出さずに終わらせたいのだろう。食料の備蓄はまだあるようだが、それが何になるのか?どこからも援軍はやってこないだろうし、最終的にはこの王都を落とさなくても別にかまわないと考えるかもしれない。
町の風紀は最悪な状態まで落ちている。罰則を厳しくして対処するしか無くなっている状態だ。それでも犯罪が止まらないのはもう後がないと思っているからだろう。ある意味平民がほとんどいないのは救いだったかもしれないな。
結局誰も今の状況を打破することができない状態なのだ。こっそり町を抜け出す人間も出てきているが、捕まってどうなっているのかは不明だ。そのまま殺されているのかもしれないし、捕虜となっている状態かもしれない。私もどうするかを考えなければならないだろう。
ハーマン下位爵に賛同し、小さいところだが頑張って領地経営をしていたんだが、結局大局は変えられなかったな。すなおに領地に引きこもって討伐された方がまだ良かったんだろうか?息子達だけは先に信用できる人にお願いしたが無事だろうか?苦労をかけたくなかったので爵位を継がせずにいたのはまだ救いだったかもしれないな。
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入国許可証の準備ができたというのでハーマン一家と一緒に移動することとなった。案内役のロンという人が車で先導してくれることになったんだけど、途中に遺跡の保護と言うことで城壁とゲートがあった。このようなものを作っていると言うことはここの領主とも組んでやっているのだろうな。
そこを抜けた後、道がどんどんと細くなっていくんだけど、先導車はかまわず走って行く。そして最後は壁に突っ込んでいき、壁の中に消えてしまった。
「ええ~~~。大丈夫!?」
そういう悲鳴を聞きながら壁に当たるとすり抜けてしまった。事前に壁の中に入ると聞いていたけどかなり怖いなあ。どうやら幻覚魔法の魔道具で道を隠していたようだ。
ここからの道はきちんと整備されていて、途中に宿泊の為のスペースも造られていた。ちゃんとした魔獣よけの壁もあり、宿泊用の建物もあった。管理者もちゃんといるみたいなので夜もちゃんと眠ることはできるみたい。ただ食事の提供はないので持ってきたものを食べるしかない。子供達は「いつもの拠点の方がいいのに・・・」と文句を言っていたらしい。
そこからさらに西へと進み、途中で同じ様な施設でもう一泊してからやっと古代遺跡の入口に到着した。
入口で身分証明証とペンダント、入国証明証の確認をしてもらい、扉を開けてもらう。中はいかにもトンネルという感じで半円の形となっており、片側2車線くらいの大きさがあった。照明器具のようなものはあるけど光は灯っていない。あと道路の下も空洞になっているようなので地球のトンネルと同じように丸く穴を掘った後でこの形にしたんだろうか?
「すごいですね。これがタイカン国までつながっているんですか?」
「ええ、一部崩壊していたところがあったのですが、今は補修も終了しています。魔法で補強も行っているので大丈夫なはずです。」
「壁にあるのは照明具のようですがさすがに壊れているのかな?あと道路の下にも通路があるみたいですがこっちの調査は行ったんですか?」
「よくわかりましたね。照明具は残念ながら壊れていますので移動中は車のライトが頼りとなります。いずれは照明をつけたいと考えていますけどね。
あと道路の下の空洞についてはまだきっちりと調査は行っていません。思った以上に地面が固いので穴を開けるのに時間がかかることと、危険はなさそうなので通路を使うことを優先しているのです。」
「多分どっかに入口があると思うんですけどね。そのあたりの調査は行ったんですか?」
「一応行ったはずですが、まだ調査途中という感じですね。」
うーん、普通は下に空洞があると、そこに入る通路が造られているはずなんだけどなあ?ちょっと待ってもらってから近くの探索を行うと、予想通り通路らしきものを発見する。
「多分ここから行くことができそうですね。」
岩を取り除くと、通路のようなものが見つかった。
「まあ特に何があるわけではないと思いますが、わざわざ穴を開けなくても入口はあると思いますよ。多分反対側とか途中にもあるはずです。」
あっさりと入口を見つけたことで案内人のロンさんはかなり驚いていた。
「古代遺跡の資料にそのような説明があったのですか?」
「まあ、そんなところです。」
「あ、ありがとうございます。調査は後々やっていこうと思います。」
車に乗り込んでから、ロンさんの先導車に付いていく。途中に魔獣が出ることもあるらしいけど、出てきても初階位レベルなので車に乗っていれば気にならないだろうということだった。
トンネルは曲がることもなく一直線なのはいいんだけど、単調すぎて眠気が襲ってくる。途中でジェンやあとはデミルさんにも運転を代わってもらいながら一気に走って通路の反対側に到着する。さすがに距離があるので3時間もかかってしまったよ。
こちらでも身分証明証などを確認されるようだ。ここでやっとタイカン国に入ることができたと言うことかな。まあここまでして何かされることは無いとは思うんだけど、気を抜くことはできないよな。
ここから整備された道路を走り、途中にあった宿泊所に泊まる。やはりこちら側もまだあまり公にされていないのだろう。でもこの通路が公開されたらこのような宿泊所が町になるんだろうなあ。
翌朝出発してから少し走ったところでゲートになっていた。ここも遺跡調査のためのゲートとなっているようだ。
そしてその日の夕方にタイカン側の町のロニアに到着できた。この町はこの通路が見つかってから秘密裏にできた町みたいなんだけどかなり賑わっていた。いずれもっと大きくなるんだろうな。
まずは奴隷商人のところに行ってデミルさんたちの奴隷解放を行った。予定通り、デミルさんとカルーサさんの職業は冒険者となったので大丈夫だろう。
それから役場に行ってデミルさんたちとともに冒険者の登録を済ませた。デミルさん達は休止申請をしていたので再登録となるが、デミルさんは良階位、カルーサさんは上階位のようだ。手続きには数日かかるようなのでしばらくはこの町に滞在するらしい。一緒に国籍の変更も行ってくれるようなので助かった。これでもう疑われる可能性も低くなるだろう。
この日はデミルさんたちと一緒に夕食をとる。このあと自分たちは遺跡の調査に向かうため、これが最後となる可能性が高いからだ。
デミルさんたちはしばらくこの国で冒険者として活動しながら平民の生活のリハビリをして、それからどうするか考えるらしい。もしかしたらこのままこの国にいるかもしれないし、場合によってはサビオニアに戻るかもしれないし、また他の国に行くかもしれないということだった。
~デミルSide~
貴族としてこの国に戻ってきてからもう10年以上となる。他の国のことを知ってからいかにこの国がおかしいかと言うことがわかった。こんなことをやっていたらこの国は終わってしまうだろうと感じたが、この国の貴族はうちの両親を含めてそのようなことは考えていないようだった。
貴族として領地を継いでから領地の改革に取りかかった。もちろん今後のことを考えて農業だけではなく、商売にも精を出した。
この国の商売のやり方は遅れていたので他国の商売を参考にすることでうまく経営することができたのは良かった。おかげで領地の改善にも取りかかれたし、領民への負担を軽減できた。徐々に領民達も心を開いてくれるようになっていった。
他の貴族達にも今後のことを話をしてみたが、全く相手にしてくれなかった。何人か賛同してくれた人はいたが、大半の貴族達は笑って話していた。「あんなゴミみたいな奴らに何ができるんだ?」という答えだった。
そしてそれは起こってしまった。
気がついたのは役場の特別依頼だ。魔獣の発生状況も確認しなければならないため、依頼書はすべて確認していたんだが、その依頼書を見たときについにこの国は終わるのかと思ってしまった。
依頼書は珍しい特別依頼ではあるが、誰でも受けることができる内容となっていた。報酬額も安い調査依頼なので受けようとする人間はほとんどいないだろう。よくある緊急性はないができる人がいればやってほしいという依頼だ。
記録から消された過去の英雄タイラス・チャクシー。60年前にこの国を改革しようとし、平民達から絶大な支持を得た元中位爵だ。しかしその改革は失敗し、記録からはすべて抹消された。理想を掲げすぎたことと、やはり性急すぎたのが失敗の大きな要因だろう。
しかしその精神は平民の間に生き続いていた。いつか意志を継ぐものが再びこの国を開放するために立ち上がる。そのときの合図はタイラス・チャクシーとなるだろうと言われた。
そしてその依頼書について気がつかないものは気がつかないだろう。ただそれを意識しているもの達にはその依頼書の中に読むことができるはずだ。”タイラスの時が来た。”この依頼書はこの国全土に出されているだろう。
東の国で反乱が起きたという話を聞いた。きっとこれが呼び水となりこの国全体にその反乱が広がるだろう。前の二の舞にならないために、密かに準備されていたはずだし、おそらくこのタイミングならできるという判断が出たためのあの指示だったのだろう。
予想通り革命の勢いは一気に広がった。我が領地も他人事ではない。私達が残って変に戦渦に巻き込まれるよりも先に町を出て行った方がいいだろうと思い、信頼できる町のリーダーを呼んで話をした。
ただ貴族という肩書きがある私は逃げることができないだろうと言われ、落ち着くまでは隠れていてくれと言われた。迷惑はかけたくなかったが、他に方法も見つからなかったので、町の外の建物で過ごすことにした。ここであればたとえ見つかっても町の住人には迷惑がかからないだろう。
冒険者の時を思い出し魔獣を狩り、生活をしていた。時々町の住人が差し入れをしてくれたり、現在の情報を伝えてくれたりしたので特に困ることはなかった。しかししばらくしたところで革命軍と名乗る団体がやってきた。同行しているのは町の住人だ。前に不正行為で処罰したこを恨んでいたのかもしれない。
こうなってしまったら逆らっても逃げ切るのは厳しいだろう。建物の近くには町の住人達の気配がするので様子を見に来ているのかもしれないが、彼らに手を出させるわけにもいかない。いったん対応を考えると言って数名が町にいったん戻るようだが、その際に周りにいた住人達も引き連れて戻っていった。
このあとはどうなるのだろうか?見せしめとして殺されてしまうのだろうか?気がついたときに町から遠くに逃げてしまっていた方が良かったのだろうか?しかしその後もずっと隠れて生活していくつもりだったのか?
色々と考えていると建物を見張っている人たちの気配が弱まった。不思議に思っているとドアが開いて前に見たことのある冒険者の二人が姿を現した。
簡単に状況の説明を受けたんだが、私はこの二人のことを信じることにした。もし疑ったとしても他に選択肢がないからな。
途中の移動は思った以上に快適だった。車の進化にも驚いたが、彼らが用意してくれた拠点にも驚いた。子ども達も今までよりも楽しそうにしている。
オカロニアについてから革命軍の関係者と話をした。やはり爵位を持ったままだと国を出るのは厳しいらしい。このため奴隷に身分を落とすしかないと言われ、承諾する。そのくらいで出られるのなら文句はない。
このあと町での生活は懐かしさを感じた。やはり私には貴族生活はあわなかったんだろう。ただ驚いたのはモクニク国に行くと思っていたんだが、行き先はタイカン国ということだ。詳細はまた説明してくれると言うことだったが・・・。
このあと古代遺跡の連絡通路と言われるところを抜けてタイカン国に入った。こんな遺跡が残っていることには驚いたが、ジュンイチの知識にも驚くことになった。タイカン国の町で二人と別れることになった。お互い生きていたらまた会うこともあるだろう。
冒険者時代の装備などはすべて残していたし、そのときの資金もまるごと残している。必要な荷物は冒険者時代に手に入れた収納バッグに入っているので当面の生活には問題ないだろう。貴族となってからも鍛錬は続けていたので良階位の魔獣は無理でも上階位の魔獣であれば十分に対応できるはずだ。
しばらく冒険者業をしながら今後のことを考えていけばいいだろう。とりあえず子供達の教育のこともあるからしばらくは拠点を決めてやっていかないといけないからな。しかしこの後のことを考えると不安と言うより正直わくわくしてくるのはおかしいのだろうか?妻も同じようなことを言っていた。
車も少ないこともあり、結構なペースで走ったせいか5日でハーマン領に到着することができた。町にはすでに革命軍の旗が揚がっていたのですでに貴族は捕まるかどうかしたのかもしれない。遅かったかな?町に入ってみるが、特に戦闘があった様子はない。
宿屋に行くと前に泊まったことを覚えていたみたいで、領主に世話になったのだけどどうなったのかを聞いてみた。どうやら今回の戦いを聞いたところで町の関係者に色々と指示を出して町から出て行ったらしい。行き先については正直わからないようだ。
「確かに領主様は貴族だったと思いますが、この町では色々と世話になったんじゃないんですか?黙って出て行くのを見ていたのですか?」
「そんなことはない・・・。あの方達には本当にお世話になった。いつも必死になって我々を守ってくれたんだ。この町の住人であの方達に恨みを持つものなんていないくらいだ。だから・・・。」
話をしていると、なにやら外が騒がしくなってきた。
「領主様が・・・」とか「裏切り者が出た」とか聞こえてくる。
「すみません。どういうことなんですか?もしかしてどこかにかくまわれていたのですか?お願いします、今ならまだなんとか間に合うかもしれません。教えてもらえないでしょうか?」
もともと自分たちが領主に歓待されていたことを知っていたせいか、宿屋の主人に問い詰めると町の外れにある小屋にかくまっていることを教えてくれた。町の中だと何かあったときに住民に迷惑がかかるからと言って町の外に出たらしい。どうもその情報を革命軍に売った住人がいたようだ。「あれだけ世話になっておきながら・・・」と嘆いている。
場所を聞いてから移動すると、何人かが森の影に潜んで様子をうかがっていた。革命軍と思われる兵士が小屋を取り囲んでいる。
「元領主一家は抵抗はしないようだ。とりあえず護送することになると思うので、いったん確認をしてくるからここで見張っていろ。
近くに潜んでいるのは分かっている。すなおに町に戻るのであれば今回は見逃そう。」
どうやら索敵能力のある人がいるみたいで辺りにいる人たちに町に戻るように言っている。ただ気配を消している自分たちのことは気がついていないみたい。しばらくすると辺りにいた人たちはいなくなったようだ。
「建物の中にはいないけど、兵士が4人も残っているのがやっかいだな。見張りの4人は強い人でも上階位レベルかな?十分倒せるレベルだけど、さすがに殺すわけにもいかないよなあ。」
「さすがに敵というわけでもないしね。」
こんなとき漫画とかだと延髄に手刀を入れて一瞬で気絶させるとかしるけど、あれって脳しんとうを起こしていることになるので簡単にはできないし、もし本当に気絶していたら障害や下手したら死ぬこともあるんだよなあ。魔素を打ち込んでもできるかもしれないけど、危険度は同じだ。
ダメージを与えて動けないようにするというのも正直なところ無理だ。人間ってそんなに簡単に動けないようにはならないからな。峰打ちだとか言って刀で殴られただけで動けなくなるというのも漫画や小説だけの話だろう。
「見張りの人達も安心してきているようだからいけるかな?」
「他に方法もないし、やってみましょう。」
ここで使うのは闇魔法の睡眠だ。ジェンと二人で魔力をためてから睡眠魔法を飛ばしていく。もちろんその場でいきなり眠り落ちるわけではないんだけど、何度も魔法をかけていくと眠気にあがなえないのか、眠りについた。残った人は索敵のレベルも低いようだったので助かったよ。
ちなみにこの睡眠魔法は眠気を強くすると言うものなので、今回のようにあまり緊張していない相手には効くけど、戦いの最中など緊張している場合には効果が無い。たとえ眠りについたとしても衝撃があれば起きるし、眠っているからと攻撃し放題というわけでもない。ゲームのように眠らせている間に攻撃というのには使えないものだ。
もしそんなものがあったら本当にできたら危なすぎるよ。睡眠剤を使うまでもなく意識を刈り取ることができると言うことだからね。泥棒でも何でもやりたい放題になってしまう。
建物に入ると自分たちの姿をみて驚いていた。すぐに静かにするようなジェスチャーをしてから話を始める。
「どうも、お久しぶりです。自分たちのこと覚えていらっしゃいますか?」
「あ、ああ、アースのジュンイチさんとジェニファーさんだったか?周りに見張りがいたと思うが、大丈夫なのか?」
「ええ、ですがあまり時間はありません。詳細はまた後で話しますが、すぐにどうするかの決断をしてもらわなければなりません。よろしいでしょうか?」
「ああ、分かった。」
今の状況とこっちの態度を見て時間が無いのは理解してくれたようだ。
「変に疑われてもしょうが無いので最初に言っておきます。革命軍の上の方達と話をしてこの国から出る手配をしてもらっています。
100%信頼できるわけではありませんが、このままこの国にいてもちょっとまずいことになりかねないので自分たちはこの話に乗って国外に出るつもりです。それであなた方のことを思い出して話をしたところ、同じように国外へ出る手配をしてくれるとのことでした。
そこでこのまま捕まって革命軍に今後のことをゆだねるのか、それとも他の国に行くことを選ぶのか選択してもらえないでしょうか?話しを聞いた限りではおそらくこの革命は成功するのでは無いかと思っています。」
「革命軍と話をつけたのか?よくそんな伝があったものだな。」
さすがに驚いているようだが、自分たちもそんな展開になるとは思っていなかったので当然だろう。
「ええ。まだ完全に信頼を置いてもらえているかはわかりませんが、向こうにもメリットのある取引をしているので裏切ることは無いと思っています。
そうだ、冒険者のカルバトスさんって覚えていますか?」
「ああ、数年前にうちの領地に魔獣退治に来てもらった冒険者のリーダーだな。かなりの実力者でそれほど報酬は出せなかったんだが、期待以上の仕事をしてくれた冒険者達だった。上階位だが実力は優階位に迫るくらいはあったと思う。冒険者時代の話をしていろいろと楽しかったな。」
「そうみたいですね。彼は革命軍でそれなりの地位らしく、彼も助言をしてくれたんですよ。それもあって今回の救出に来ることができたんです。」
「そうか・・・。」
家族の人たちと話をしていたが、すぐに一緒に行くことを選択してくれた。今の混乱の時だといくら善政を敷いていたとしてもどうなるか分からないからなあ。
もちろんこの人たちを完全に信頼しているわけでもないけど、あちこちでの話しを聞く限り変なことにはならないだろう。それに彼らの立場を考えると自分たちを裏切ってメリットもないしね。
家族を引き連れてこっそりと森から出てからすぐに車に乗り込んで出発する。デミルさんも車を持っているようだけど、このあとの事を考えると自分たちの車で行った方がいいだろう。
助手席にデミルさん、一番後部座席にはジェンに乗ってもらって一応警戒してもらうことにした。あとデミルさんが持ってきていた収納バッグについては申し訳ないけど預からせてもらう。話をすると素直に渡してくれたので意図が分かっているのかもしれない。
「今の車はこんなに良くなっているのか?」
どうやら自分たちの車の性能に驚いているようだ。たしかにこの国では旧型の車しか見なかったもんなあ。まあ最近出たばかりだし、まだこの国に入ってきていないかもしれないね。
「いろいろとバタバタで申し訳ありません。時間も無かったし、あの状況だったのですぐに出発するしかありませんでした。」
とりあえず今後のことについて話をすることにした。
「それはかまわないよ。前のこともあるし、状況も状況だったからね。まあどっちにしろ殺されてしまう覚悟はしていたので可能性がある方に人生をかけるのもいいと思ったんだよ。」
「先ほど少し話をしましたが、おそらくこの革命は成功すると思います。かなり組織だった対応をしていますし、占拠された町の様子を見てもそれは感じます。
ただ貴族に対する扱いについては正直いってあまりいいものではない可能性が高いと思います。いくら上の方が止めたいと思っていたとしても、民衆の恨みのはけ口は必要でしょうからね。そのための犠牲とされると思いますよ。」
「まあそうだろうな。近隣の領主の話はいくつか聞いているよ。住民達から一家全員が暴行、凌辱されて殺されてしまったところもあるようだ。うちの領地ではそれはなかったが、先ほどの場所を案内したのは以前罪を犯して処罰した者だった。どのような運営をやっていたとしても全く恨みを買わないと言うことはないだろうからな。」
「でもよい領主だったからこそ、町の住人の大半があなた方をかくまっていたのだと思いますよ。」
そのほかにもいろいろと今の状況について話をしながら車を走らせる。
さすがに町に入るわけにもいかないので途中の宿泊は拠点となる。拠点は前に改造したままでお客さん用の部屋も準備できているのでそのまま使用してもらうことにした。デミルさんたちの部屋にはベッドは二つしか無いけど、かなり大きなものを置いているので子供が二人いてもなんとかなるだろう。
拠点を見て驚いていたが、中に入るとさらに驚いていた。部屋の中は土足ではない形だけど、デミルさんと奥さんのカルーサさんはこのスタイルも知っていたみたいだ。子供達はちょっと戸惑っていたけどね。
部屋の中の説明をしてから食事の準備をして夕食をとる。さすがに今日は出来合のものを簡単に温めたものだけだ。食事の後はいろいろと話をするが、最初はずっとこの拠点の話になってしまった。土魔法を使って造ったことを話すとかなり驚いていたけどね。やはりかなり珍しいようだ。
今預かっている収納バッグはデミルさんが冒険者時代に持っていた収納バッグで、二人の冒険者時代の稼ぎや装備関係をすべて入れていたらしく、すぐにでも冒険者として活動できると言っていた。ただ訓練はしていたけど、さすがに勘が鈍っているのでランクの低い魔物からやっていかないといけないとはいっているけどね。
資金についても冒険者時代に貯めていたものと、貴族になってからの個人的な収入については持ってきているので生活するには問題が無いらしい。それを元手に商売を始めるかどうするかは今後考えていくようだ。
子供のダミアンくんとカルミちゃんには貴族の心得については教育していたけど、もともと国を出るつもりだったので他国での生活のことなどは教えており、家でも基本的に自分のことは自分でするという方針でやっていたようなので、他国での生活も大丈夫だろうと言っている。
子供達は拠点の生活にかなり興奮しているようだ。それに久しぶりに両親と一緒に寝られるのがうれしいみたい。
車での移動時間が長いのでさすがに子供達にはきついだろうと途中で適度に休憩を取りながら南下していく。休憩の時にはおもちゃやお茶請けを出したりもしたのでなんとか大丈夫そうだ。移動中は音楽もかけてあげていたので喜んでいた。まあ今までの車だとうるさすぎて音楽どころじゃなかっただろうからね。
交代で運転をしていったせいもあり、5日目の昼過ぎにオカロニアに戻ることができた。町に入るときには身分証明の確認があるのでいったん自分たちだけで町に入りハクさんに連絡をつける。
ハクさんはまだこの町に滞在していたのでハクさん自ら対応してくれた。とりあえず用意したペンダントで町中に入ることができたので商会に移動してから話をすることになった。
子供達は少し休憩してもらうことにする。さすがに打ち合わせの席にいるのはつらいだろうからね。まだ聞き分けのいい子たちでよかったよ。
挨拶をしたいというのでカルバトスさんも一緒に顔を出してきた。
「お久しぶりです。あの節はいろいろとお世話になりました。」
「いやいや、こちらこそ、あのときは予定の魔獣以外にもいろいろとやっていただいて、おかげで助かりましたよ。」
しばらく挨拶をして出て行った後、ハクさんとの話となった。
「カルバトスがわざわざ顔を出すとはよほど気に入られたんだなあ。」
「いや、依頼者として普通の対応をしただけですよ。」
「それが普通できないんだけどな・・・」と、ハクさんは少し笑いながら話を進めてきた。
「とりあえずペンダントは先ほど渡したように準備をしたんだが、やはり身分証明証の確認があるためそのままではタイカン国への入国はできない可能性が高い。特にデミル爵については第一職業に貴族と書かれているため隠すことができないからな。」
どうやら現在はサビオニア国での職業書き換えについては全面停止されているらしく、勝手に行った場合は関係者全員が処罰されることになっているらしい。そもそもその魔道具が差し押さえられているため無理らしい。また記録の照合も行われるために書き換えたとしても結局はばれてしまうことになるようだ。
「そこで国を出るには一つしか方法がないと思っているが・・・。」
「奴隷ですか・・・。」
ダミアンさんが小さくつぶやいた。
「ああ、奴隷であれば今のところ身分証明証の確認をされることはない。やはりもと貴族となると奴隷になるというのは耐えがたいらしく、奴隷に身分を落としてという動きはまだないようなんだ。奴隷に落ちてその後解放されるという保証もないし、経歴には残るからな。
ただ状況によっては今後は奴隷も確認されることになるかもしれないが、現時点では奴隷に関してはまだ確認作業は行われていないのでもし国を出るなら今しかないだろう。」
デミルさんとカルーサさんはうなずき合ってから声を上げた。
「私たちはその件に関しては問題ない。この二人の奴隷ということにしてもらえば、ちゃんと開放もしてくれるだろう。ヤーマンの爵位を持っていることから、護衛という形であればちょうどいいと思う。すぐに奴隷商人の手配をお願いしたい。」
ハクさんはちょっと驚いた表情をしていたが、そう言うとわかっていたのかすぐに奴隷商人を連れて戻ってきた。
子供達は特に奴隷契約は必要ないようなので二人に奴隷契約を行う。契約を行うと、顔に紋章が浮かび上がってきた。そして自分の身分証明証に二人の名前が所有者として記載された。
デミルさんの職業には奴隷の次に冒険者の記載があるので奴隷から解放されれば冒険者と言うことになるだろうと言われる。タイカン国で奴隷商人の手配を行ってくれるようなのでそのあたりは大丈夫だろう。購入金額や借金内容などの書類を作成して形上の手続きは完了した。
許可証の準備にもう少し時間がかかるようなので、準備が終わるまでオカロニアの宿に泊まることになった。奴隷のため部屋を別に取ることはできないので自分とジェンで一部屋ずつ部屋を取り、一部屋を家族で使ってもらうことにした。
さらに食事も奴隷だけでできないので自分たちと一緒にしなければならないという制約はあるが、買い物などについてはお使いもあるので問題ないため、結構町での生活は楽しんでいるみたいだった。子供達も屋台巡りなど結構楽しんでいるようだ。
遺跡調査のことについても詳細を詰めなければならないこともあり、その打ち合わせをしているときにハクさんから現在の状況について話を聞いた。もうすでに大局は決してしまっているため、少々の情報は話しても大丈夫らしい。
すでに北にあるモクニクとの国境の町ラルトニアは革命軍が抑えているらしく、国境の警備は革命軍が取って代わったようだ。兵士の多くはもともと平民だったので、命令系統は変わったが、実務はそのまま引き継いでもらっているみたいだけどね。
モクニク国とは現在静観してもらうことで話が付いているのでおそらく大丈夫だろうと言うことだ。タイカン国との関係もあるし、いろいろな方面から根回ししているのだろう。ただ争乱の期間が長くなれば状況も変わってくる可能性もあるため、早めに決着をつけたいようだ。
現在は国の行き来は完全に止められているので、もしモクニク国側が脱出者を見つけた場合はこちらの国に強制送還させる手はずとなっているらしい。結構捕まっている人達も多いようだ。
ほとんどの戦闘は終わっており、本格的な抵抗があるのは王都だけになっているようだ。ただ平民の多くはすでに王都を脱出しているらしく、王都に残っているのは貴族が大半らしい。もちろん貴族に仕えるものや奴隷もいるのでどのくらいが戦力なのかはまだはっきりとはわかっていないようだ。
貴族が中心の兵士達の質はそれほど高くはないが、やはりそれなりの数がいるのですぐに陥落させるのは難しい状況ということだった。ただ指揮を執る人間が知識も経験も無いらしく、そこがつけいるところと考えているようだ。
ハクさんは食糧の輸送など兵站に関わっているんようなんだけど、先日の戦いで王都の包囲の食料備蓄がかなり楽になったと笑っていた。どうやら王都から討伐隊と言うことで大々的にかなりの兵力が出発したみたいなんだけど、ある程度進んだところで夜襲をかけたら大半の兵士が逃げ帰ったらしい。そのときに回収した食料がすごい量だったようだ。
長期間の遠征で反乱軍をすべて倒していくつもりだったのかもしれないけど、それにしてもあまりにお粗末な戦いだったらしい。
「ここまできたらもう負けることはないので、あとはどこまで早く鎮圧できるか、どの段階で他国との交渉に入るだな。」
「ということは古代遺跡の通路は早めに情報が欲しいと言うことですね。」
「ああ、そうだ。今の状況から考えると、早ければ一ヶ月以内、遅くても二ヶ月以内には何かしらの決着が付くと考えているし、決着が付く前に交渉は始まるかもしれない。古代遺跡の通路があればそれだけ有利に交渉が出来るからな。できれば来年の1月末には結果がほしいところだな。」
「出来るだけがんばってみようと思っていますが、こればっかりは確約は出来ませんよ。もしあったとしてもすぐに使える状態かどうかも分かりませんしね。」
「まあすぐに使えなくても可能性があればそれだけで交渉のひとつになるのでそれは大丈夫だ。」
古代遺跡があったのは間違いないと思うけど、遺跡が埋没していないかが一番の問題だな。その場合はすぐに発見できない可能性が高い。とりあえず大体の調査日数と、その後の確認についての手順を決めておいた。
~サビオニア国王Side~
一体何があったというのだ。なぜ平民風情がこの私に逆らうのだ。たしかにここ最近で他の国との折衝が少しうまくいかなかったと聞いているが、それは私のせいではない。臣下の者たちが悪いのだ。
愚かしくも反乱が起きたというのですぐに討伐命令を下すと、しばらくして討伐が終わったという報告が上がってきた。反乱に加担したもの達はすべて処刑したと言っている。馬鹿な奴らだ。その首謀者の首でも拝もうかと思ったんだが、すでに焼却してしまったと言っていた。
それからしばらくは問題なかったんだが、なにか城の様子がおかしくなってきた。どういうことかと問いただしても王に聞かせるようなことではないと言って詳細な説明が上がってこないのだ。
まあいい。私は私の責務を果たせばいいのだからな。そう思い、昼間からお気に入りの妾を呼んで戯れることにした。
それからさらに日が経ったところでなぜか城の外から大きな歓声が聞こえてきた。歓声?怒号?どういうことだ?問いただそうと思って宰相を呼ぶが姿が見当たらないと返事があった。どういうことだ?改めて確認してみると、上位爵のもの達の姿がほとんどないではないか?どういうことだ?
近くにいた侍従に話を聞くが、「私は何も存じません。」と言うばかりだ。どういうことか聞き回っていると、小さな頃に少しの間だけ武術の指導をしてくれたものが状況を教えてくれた。
どういうことだ?反乱は鎮圧したのではないのか?
王都が反乱軍に取り囲まれている?すでに他の町は反乱軍によって鎮圧された?
王都からもすでに多くの貴族が逃げ出している?
どういうことだ?
どういうことだ?
そのものは「どのようになさいますか?判断をお願いします。」と聞いてきた。私に判断しろと?何を言っているんだ。それは臣下の役目だろう?
私は知らんぞ。私は知らん。
~ある下位爵Side~
この国はもう終わりだろう。先々代の王に申し訳ない。先々代の王はその先代の王の愚行を反省し、多くの改革を進めた素晴らしい王だった。しかしその王が早くに亡くなり、そのときの後継者争いで王位継承権3位の三男が王位を継いだのがこの国のさらなる不幸の始まりだ。あのとき長男が継いでいたらまた違っていただろう。
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王都は現在包囲されているが、反乱軍はおそらく無駄な死者を出さずに終わらせたいのだろう。食料の備蓄はまだあるようだが、それが何になるのか?どこからも援軍はやってこないだろうし、最終的にはこの王都を落とさなくても別にかまわないと考えるかもしれない。
町の風紀は最悪な状態まで落ちている。罰則を厳しくして対処するしか無くなっている状態だ。それでも犯罪が止まらないのはもう後がないと思っているからだろう。ある意味平民がほとんどいないのは救いだったかもしれないな。
結局誰も今の状況を打破することができない状態なのだ。こっそり町を抜け出す人間も出てきているが、捕まってどうなっているのかは不明だ。そのまま殺されているのかもしれないし、捕虜となっている状態かもしれない。私もどうするかを考えなければならないだろう。
ハーマン下位爵に賛同し、小さいところだが頑張って領地経営をしていたんだが、結局大局は変えられなかったな。すなおに領地に引きこもって討伐された方がまだ良かったんだろうか?息子達だけは先に信用できる人にお願いしたが無事だろうか?苦労をかけたくなかったので爵位を継がせずにいたのはまだ救いだったかもしれないな。
~~~~~
入国許可証の準備ができたというのでハーマン一家と一緒に移動することとなった。案内役のロンという人が車で先導してくれることになったんだけど、途中に遺跡の保護と言うことで城壁とゲートがあった。このようなものを作っていると言うことはここの領主とも組んでやっているのだろうな。
そこを抜けた後、道がどんどんと細くなっていくんだけど、先導車はかまわず走って行く。そして最後は壁に突っ込んでいき、壁の中に消えてしまった。
「ええ~~~。大丈夫!?」
そういう悲鳴を聞きながら壁に当たるとすり抜けてしまった。事前に壁の中に入ると聞いていたけどかなり怖いなあ。どうやら幻覚魔法の魔道具で道を隠していたようだ。
ここからの道はきちんと整備されていて、途中に宿泊の為のスペースも造られていた。ちゃんとした魔獣よけの壁もあり、宿泊用の建物もあった。管理者もちゃんといるみたいなので夜もちゃんと眠ることはできるみたい。ただ食事の提供はないので持ってきたものを食べるしかない。子供達は「いつもの拠点の方がいいのに・・・」と文句を言っていたらしい。
そこからさらに西へと進み、途中で同じ様な施設でもう一泊してからやっと古代遺跡の入口に到着した。
入口で身分証明証とペンダント、入国証明証の確認をしてもらい、扉を開けてもらう。中はいかにもトンネルという感じで半円の形となっており、片側2車線くらいの大きさがあった。照明器具のようなものはあるけど光は灯っていない。あと道路の下も空洞になっているようなので地球のトンネルと同じように丸く穴を掘った後でこの形にしたんだろうか?
「すごいですね。これがタイカン国までつながっているんですか?」
「ええ、一部崩壊していたところがあったのですが、今は補修も終了しています。魔法で補強も行っているので大丈夫なはずです。」
「壁にあるのは照明具のようですがさすがに壊れているのかな?あと道路の下にも通路があるみたいですがこっちの調査は行ったんですか?」
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「多分どっかに入口があると思うんですけどね。そのあたりの調査は行ったんですか?」
「一応行ったはずですが、まだ調査途中という感じですね。」
うーん、普通は下に空洞があると、そこに入る通路が造られているはずなんだけどなあ?ちょっと待ってもらってから近くの探索を行うと、予想通り通路らしきものを発見する。
「多分ここから行くことができそうですね。」
岩を取り除くと、通路のようなものが見つかった。
「まあ特に何があるわけではないと思いますが、わざわざ穴を開けなくても入口はあると思いますよ。多分反対側とか途中にもあるはずです。」
あっさりと入口を見つけたことで案内人のロンさんはかなり驚いていた。
「古代遺跡の資料にそのような説明があったのですか?」
「まあ、そんなところです。」
「あ、ありがとうございます。調査は後々やっていこうと思います。」
車に乗り込んでから、ロンさんの先導車に付いていく。途中に魔獣が出ることもあるらしいけど、出てきても初階位レベルなので車に乗っていれば気にならないだろうということだった。
トンネルは曲がることもなく一直線なのはいいんだけど、単調すぎて眠気が襲ってくる。途中でジェンやあとはデミルさんにも運転を代わってもらいながら一気に走って通路の反対側に到着する。さすがに距離があるので3時間もかかってしまったよ。
こちらでも身分証明証などを確認されるようだ。ここでやっとタイカン国に入ることができたと言うことかな。まあここまでして何かされることは無いとは思うんだけど、気を抜くことはできないよな。
ここから整備された道路を走り、途中にあった宿泊所に泊まる。やはりこちら側もまだあまり公にされていないのだろう。でもこの通路が公開されたらこのような宿泊所が町になるんだろうなあ。
翌朝出発してから少し走ったところでゲートになっていた。ここも遺跡調査のためのゲートとなっているようだ。
そしてその日の夕方にタイカン側の町のロニアに到着できた。この町はこの通路が見つかってから秘密裏にできた町みたいなんだけどかなり賑わっていた。いずれもっと大きくなるんだろうな。
まずは奴隷商人のところに行ってデミルさんたちの奴隷解放を行った。予定通り、デミルさんとカルーサさんの職業は冒険者となったので大丈夫だろう。
それから役場に行ってデミルさんたちとともに冒険者の登録を済ませた。デミルさん達は休止申請をしていたので再登録となるが、デミルさんは良階位、カルーサさんは上階位のようだ。手続きには数日かかるようなのでしばらくはこの町に滞在するらしい。一緒に国籍の変更も行ってくれるようなので助かった。これでもう疑われる可能性も低くなるだろう。
この日はデミルさんたちと一緒に夕食をとる。このあと自分たちは遺跡の調査に向かうため、これが最後となる可能性が高いからだ。
デミルさんたちはしばらくこの国で冒険者として活動しながら平民の生活のリハビリをして、それからどうするか考えるらしい。もしかしたらこのままこの国にいるかもしれないし、場合によってはサビオニアに戻るかもしれないし、また他の国に行くかもしれないということだった。
~デミルSide~
貴族としてこの国に戻ってきてからもう10年以上となる。他の国のことを知ってからいかにこの国がおかしいかと言うことがわかった。こんなことをやっていたらこの国は終わってしまうだろうと感じたが、この国の貴族はうちの両親を含めてそのようなことは考えていないようだった。
貴族として領地を継いでから領地の改革に取りかかった。もちろん今後のことを考えて農業だけではなく、商売にも精を出した。
この国の商売のやり方は遅れていたので他国の商売を参考にすることでうまく経営することができたのは良かった。おかげで領地の改善にも取りかかれたし、領民への負担を軽減できた。徐々に領民達も心を開いてくれるようになっていった。
他の貴族達にも今後のことを話をしてみたが、全く相手にしてくれなかった。何人か賛同してくれた人はいたが、大半の貴族達は笑って話していた。「あんなゴミみたいな奴らに何ができるんだ?」という答えだった。
そしてそれは起こってしまった。
気がついたのは役場の特別依頼だ。魔獣の発生状況も確認しなければならないため、依頼書はすべて確認していたんだが、その依頼書を見たときについにこの国は終わるのかと思ってしまった。
依頼書は珍しい特別依頼ではあるが、誰でも受けることができる内容となっていた。報酬額も安い調査依頼なので受けようとする人間はほとんどいないだろう。よくある緊急性はないができる人がいればやってほしいという依頼だ。
記録から消された過去の英雄タイラス・チャクシー。60年前にこの国を改革しようとし、平民達から絶大な支持を得た元中位爵だ。しかしその改革は失敗し、記録からはすべて抹消された。理想を掲げすぎたことと、やはり性急すぎたのが失敗の大きな要因だろう。
しかしその精神は平民の間に生き続いていた。いつか意志を継ぐものが再びこの国を開放するために立ち上がる。そのときの合図はタイラス・チャクシーとなるだろうと言われた。
そしてその依頼書について気がつかないものは気がつかないだろう。ただそれを意識しているもの達にはその依頼書の中に読むことができるはずだ。”タイラスの時が来た。”この依頼書はこの国全土に出されているだろう。
東の国で反乱が起きたという話を聞いた。きっとこれが呼び水となりこの国全体にその反乱が広がるだろう。前の二の舞にならないために、密かに準備されていたはずだし、おそらくこのタイミングならできるという判断が出たためのあの指示だったのだろう。
予想通り革命の勢いは一気に広がった。我が領地も他人事ではない。私達が残って変に戦渦に巻き込まれるよりも先に町を出て行った方がいいだろうと思い、信頼できる町のリーダーを呼んで話をした。
ただ貴族という肩書きがある私は逃げることができないだろうと言われ、落ち着くまでは隠れていてくれと言われた。迷惑はかけたくなかったが、他に方法も見つからなかったので、町の外の建物で過ごすことにした。ここであればたとえ見つかっても町の住人には迷惑がかからないだろう。
冒険者の時を思い出し魔獣を狩り、生活をしていた。時々町の住人が差し入れをしてくれたり、現在の情報を伝えてくれたりしたので特に困ることはなかった。しかししばらくしたところで革命軍と名乗る団体がやってきた。同行しているのは町の住人だ。前に不正行為で処罰したこを恨んでいたのかもしれない。
こうなってしまったら逆らっても逃げ切るのは厳しいだろう。建物の近くには町の住人達の気配がするので様子を見に来ているのかもしれないが、彼らに手を出させるわけにもいかない。いったん対応を考えると言って数名が町にいったん戻るようだが、その際に周りにいた住人達も引き連れて戻っていった。
このあとはどうなるのだろうか?見せしめとして殺されてしまうのだろうか?気がついたときに町から遠くに逃げてしまっていた方が良かったのだろうか?しかしその後もずっと隠れて生活していくつもりだったのか?
色々と考えていると建物を見張っている人たちの気配が弱まった。不思議に思っているとドアが開いて前に見たことのある冒険者の二人が姿を現した。
簡単に状況の説明を受けたんだが、私はこの二人のことを信じることにした。もし疑ったとしても他に選択肢がないからな。
途中の移動は思った以上に快適だった。車の進化にも驚いたが、彼らが用意してくれた拠点にも驚いた。子ども達も今までよりも楽しそうにしている。
オカロニアについてから革命軍の関係者と話をした。やはり爵位を持ったままだと国を出るのは厳しいらしい。このため奴隷に身分を落とすしかないと言われ、承諾する。そのくらいで出られるのなら文句はない。
このあと町での生活は懐かしさを感じた。やはり私には貴族生活はあわなかったんだろう。ただ驚いたのはモクニク国に行くと思っていたんだが、行き先はタイカン国ということだ。詳細はまた説明してくれると言うことだったが・・・。
このあと古代遺跡の連絡通路と言われるところを抜けてタイカン国に入った。こんな遺跡が残っていることには驚いたが、ジュンイチの知識にも驚くことになった。タイカン国の町で二人と別れることになった。お互い生きていたらまた会うこともあるだろう。
冒険者時代の装備などはすべて残していたし、そのときの資金もまるごと残している。必要な荷物は冒険者時代に手に入れた収納バッグに入っているので当面の生活には問題ないだろう。貴族となってからも鍛錬は続けていたので良階位の魔獣は無理でも上階位の魔獣であれば十分に対応できるはずだ。
しばらく冒険者業をしながら今後のことを考えていけばいいだろう。とりあえず子供達の教育のこともあるからしばらくは拠点を決めてやっていかないといけないからな。しかしこの後のことを考えると不安と言うより正直わくわくしてくるのはおかしいのだろうか?妻も同じようなことを言っていた。
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しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
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スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
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地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
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昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
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ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
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だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
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小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
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