【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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88. 異世界1420日目 古代の連絡通路

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88. 異世界1420日目 古代の連絡通路
 翌日朝一で調査のために出発する。ロンさんにはこの町の北にあるムニアの町で待ってもらうことにしている。おそらく尾行はしてくると思うけど、付いてこれるかなあ・・・。車の速度も違うし、特に歩きになった後はおそらく無理だろう。
 ムニアの町までは通常だと10日ほどかかるみたいだけど、自分たちなら7日間くらいで到着できるだろう。そこから遺跡までは工程がどうなっているか分からないけどおそらく3日くらいだと思う。うまく遺跡が見つかってロンさんに連絡すればすぐにハクさんに連絡が行くようになっているみたいなのでなんとかなるかな?
 今は12月23日なので遺跡到着が1月始め、調査とかに時間がかかったとしても順調にいけば1月中旬には結果を報告できると思う。そう考えると遅くなったとしてもなんとか1月末にはけりが付くかな?
 去年の年末年始はかなりのんびり過ごしたけど、今年はあまりくつろぐ余裕もなさそうだ。まあすべて終わったらそのあとでゆっくりしてもいいけどね。

 ここから少し大きな町のアルマを経由して北上する。本当は町の様子を見ていきたかったが、とりあえず寄るのはやめておいた。そこから遺跡に一番近いムニアの町に到着したのは予想通り12月30日のお昼だった。

「急ぎたい気持ちもあるけど、ちょうど年末だし、1日くらいはゆっくりしようか?もう遅いから結局拠点に泊まらないといけないくらいだしね。」

「そうね。最近ずっとばたばただったし、大晦日くらいはゆっくりしていきましょう。」

「まあ魔獣のことも確認しないといけないからどっちにしろ町には寄っていかないといけなかったからね。」


 町に入るときに身分証明証の確認があったけど、特に問題なく町に入ることができた。この町は魔獣退治の前線基地のようなところで城壁も高く、冒険者の数がかなり多いところだった。もし連絡通路が見つかったら商業の中継地点としてかなり発展するかもしれないね。
 町の雰囲気はヤーマンに近い印象だ。20年ほど前に革命で貴族社会が倒れてしまったので貴族という身分はなくなっているのでもちろん貴族エリアなどもない。町によってはその名残が残っているところもあるらしいけどね。

 まずは見た感じ良さそうな宿を予約してから役場に行ってあたりの状況を確認する。ここから山の方に向かっては魔獣が強くなって行くみたいで、目的の場所のあたりは優階位の魔獣も出そうな感じだ。調査するには魔獣の退治もしないといけないけど、優階位の魔獣か・・・。なんとか倒すしかないだろうなあ。
 出現する魔獣を確認し、弱点や特徴などを改めて確認しておく。これをするだけでもかなり戦闘の役に立つのでおろそかにはできない。逆にこのような情報が公開されているのに見ない冒険者は生き残っていないだろう。
 ただ優階位になってくるとどのようなところに潜んでいるか、どのような攻撃をしてくるか、使う魔法は何なのかなどの説明が多くを占めており、弱点というものはほとんど書かれていない。
 ジェンと一緒に一通りの魔獣の確認を終えてから役場を後にする。役場にいる冒険者の装備を見てみると、並階位~良階位までかなり幅広くいるみたいだ。

 宿の近くにある店に入ってみてみると、いろいろな商品がそろっていた。農業国と言うこともあって、食料関係はかなり充実している。驚いたのはお米の種類だ。タイガ国で見たよりもお米の種類がかなり多い。そしてお味噌の種類もかなり多い。もしかして日本に一番近いのはこの国なのかもしれないな。今の案件が一段落したらいろいろと見て回ろう。
 食堂に行くとご飯系のメニューも充実している。これは食べるしかないだろうと言うことでカツ丼のようなメニューを食べることにした。カツ丼は卵とじではなくソースカツ丼という感じだった。これはこれで好きなんだよなあ。旅行先で見つけるとソースカツ丼のタレを買っていたからね。
 ジェンが注文したのは親子丼のような感じのもので、少し食べさせてもらったけど、ちょっと甘めという感じだった。他にも色々とありそうなのでこの国をいろいろと見て回らないといけないかもしれない。
 このあと教会にも寄ってお祈りをしてみるが、特に声は聞こえなかった。まあそんなにすぐに回答があるわけでもないだろう。

 宿に戻り、久しぶりにゆっくりする。ここのところかなりバタバタだったからなあ。久しぶりに夜の生活も・・・。



 翌朝は毎年恒例の朝日を見ることにした。今年は天気も良くてなかなかいい眺めだ。昨日のうちに目星を付けていた建物に登って朝日を眺める。山があるせいで日の出は遅かったけどこれは仕方が無いだろう。冬ではないので寒さは気にしなくていいのが救いだ。

「「新年おめでとう!!今年もよろしく(ね)。」」

 挨拶の後にキスをする。これは恒例になるのかなあ・・・。今年は外なのでそこまでだけどね。だけど宿に戻ってから早速だったよ。うん、年始めからお互いを感じ合うのっていいね。


 このあと遅めの朝食をとってから誕生日プレゼントを渡す。去年はお互いに普段使いのバッグだったんだけど、今年は自分は手鏡を渡した。飾りの付いたかわいい感じのもので、色々と工夫して作ったものだ。
 ジェンからは帽子をもらった。普段使う様のものなんだけど、前に二人で見ていたものだった。あのときは買わなかったんだけど、プレゼントとして探していたのかもしれないなあ。普段は帽子なんて被らないから言われるがままに試していたんだよなあ。

 この日は店も開いていないので結局宿でゆっくり過ごすことになった。まあゆっくりはしたんだけど、疲れがとれたかというとちょっと違ったかもしれない。まあそういう一日があってもいいよね。



 翌朝早くに出発して山の方へと向かう。このあたりには車の走れる道はないので走って行くしかない。さすがに年始のせいか他の冒険者の姿がないので気にしなくていけるのがいいところだ。

「町を出たときには後ろをつけてくるような気配があったけど、さすがに追いつけなかったかな?」

「ええ、そうかもしれないわね。索敵を警戒してかなり離れていたみたいだけど、おそらく付いてこられなかったと思うわ。よほど隠密能力が高い人だったらわからないけど、最初に気配を感じられたからそれはないと思うけどね。」

「かなり迂回したルートを通ったから、最初の方向で進んでいっても見つかることはないとは思うけどね。」

 町を出てから目的よりも南側の方向に進んでから徐々に北側にルートを変えていった。おそらくこれである程度ごまかせると思う。

「どっちにしろ優階位の魔獣がでるエリアまでは付いてこなかったとは思うけどね。それとも優階位の実力がある人が追いかけてくるつもりだったのかな?」

 途中から木々も茂ってきて進むペースも落ちてきた。あとで案内することも考えて途中から魔法で道を造っていくが、すぐにわからないように一定おきに飛んだりしてごまかしている。まあもしこの跡を見つけたとしても最終的な遺跡を見つけられるかは別だろうから大丈夫だろう。
 さすがに一日で到着はできないので途中は拠点に泊まっていくしかない。拠点と言っても大きなものは出せないので交代で眠る用の小さなものだ。


 二日目からは良階位の魔獣も現れ始めた。今回初めて遭遇するのは灰牙豹だ。他にも猛毒スライムや巨大蜘蛛、巨魔鹿など前に倒したことのある魔獣も出てきた。
 灰牙豹は木の上などに潜んで突然襲いかかってくる暖かい地方にいる豹の一種で大きな牙と鋭い爪で襲ってくる魔獣だ。なので索敵で先に見つけられるかが鍵となる。
 索敵で見つけた後は、遠距離から魔法で攻撃することでかなり優位に倒すことができる。水弾と風弾でダメージを与えた後は牙と爪の攻撃を躱したり受けたりして首筋を攻撃して首を切り落とすのがベストだ。先に足を切り落とすことができればもう勝負は付いたものになる。
 やはり先制攻撃できるのはかなり大きい。これだけで魔獣の動きがかなり遅くなるからね。ただ油断してかまれたらその時点で骨まで折られてしまう可能性もあるので気をつけないといけない。体長は1キヤルドはあるし、大きなものは2キヤルドになるらしいからかなりの迫力だ。


 三日目になるとついに優階位の魔獣が出てくるようになった。あとのことを考えるとできるだけ倒しておかないといけないんだけど、さすがにかなり厳しい戦いになるだろう。
 索敵範囲は自分たちの方が上回っているようなので先に見つけることができるのは有利な点だ。もし逆だったらいきなり襲われてしまうからなあ。あとはそこまで強くない隠密関係の魔道具も使っている。
 最初に遭遇したのは魔山猫だ。良階位の灰牙豹よりも一回り大きいくらいで、最大で3キヤルドの個体もいるらしい。攻撃は牙と爪で、それに加えて風魔法を使うのが面倒なところだ。風斬みたいな攻撃を仕掛けてくるので魔法の攻撃を察知したらその直線上から避けなければ危ない。爪もかなり長いので間合いの取り方も気をつけなければならない。

 他の魔獣が周りにいないことを確認してからある程度近づいていく。認識阻害の魔道具を装備しているので気がつかれにくいが魔力をためていくと気がつかれてしまうので、ジェンとは少し離れてからある程度近づいたところで自分が先に魔力をためていく。
 魔獣がこちらに気がついて近づいてきたところで一気に魔力に集中するのと同時に風魔法を避けるために意識を集中する。風魔法はほとんど見えないので、魔法を出した瞬間を見極めて避けるしかない。
 魔物が近づく直前に収納魔法から盾を取り出して最初の攻撃を防ぐ。そのときに水盾と風盾もだして衝撃を和らげる。
 すぐに盾を回り込んでこちらに攻撃を仕掛けてきたが、盾と水盾でひたすら耐えていく。そのすきに魔力をためたジェンがある程度の至近距離から水弾を撃ち込むとうまい具合にダメージを与えることができた。さすがにかなりの威力の水弾を受けたために動きが遅くなった。
 このあとはジェンと二人で取り囲み、魔法と剣で少しずつダメージを与えていく。なかなか刃が通らないので同じ箇所を攻撃して少しずつダメージを与えていくしかない。ジェンの風斬と自分の剣の攻撃を中心に戦い、なんとか首を切り落とすことができた。

「ギリギリだけど、優階位でも一匹ならなんとか倒すことはできそうだね。」

「ええ、でも最初に魔法で大きなダメージを与えなければちょっと厳しいかしら?最初の一撃が重要ね。」

「ペースは落ちるけど索敵を優先して移動していこう。」

 さすがに皮はかなり傷が入ってしまったので買い取り価格は安くなるが、それでも2000ドール以上はするだろう。牙とか爪とかまで考えるとこれ一匹で1万ドールくらいにはなりそうだ。ただ魔道具もかなり使うので収支としては下がるのはしょうがないかな。良階位の自分たちが優階位の魔獣を倒せるだけでも十分だ。

 他に出てきた優階位の大蹴兎はさすがに動きが速くて大変だった。同じように最初に魔法でダメージを与えても早さに追いつかないくらいだったからね。これは収納の盾を両側に出して動くエリアを狭くすることでなんとか迎撃することができたから良かったけどね。
 風魔法を使うせいか、飛びかかってきても空中で動きを変えるのが怖かった。最初に知っていなかったら避けられなかったかもしれない。

 今回はできるだけそれぞれの魔獣に対する戦法を考えていたからなんとかなったけど、そうでなかったらとてもではないが倒せないだろう。それ以前に索敵で先に見つけることができなかったらおそらくアウトだろうな。隠密の魔道具もね。

 こうやって地道に経験をしていけばいずれは倒せるようになるのかね?本当はもっと実力をつけてから優階位の魔獣に対応したかったんだけど今回はしょうが無い。優階位の魔獣はそこまでいるわけではなかったので5匹ほどでなんとか遺跡のある場所までやってきた。
 どうも遺跡の付近は魔素が薄いのか出てくる魔獣が若干弱くなったような気もする。おかげで遺跡が近くなると、魔獣も上階位~良階位くらいまでしか出なくなった。



 遺跡があると書かれていたが、詳細な地図があったわけではない。しかし見つかった地図に「とい・めい・うら」の数値が書かれたいたので助かった。道しるべの玉で位置を確認することでまっすぐに遺跡の場所にやってくることができたからね。これが無くて地図だけだと簡単に見つけるのは無理だっただろう。

「たぶんこの辺りだよね?」

 場所を確認すると、入口付近は土砂で埋もれていた。まあ山の斜面に造られているようだったので崩れ落ちているのは想定内だ。それにそのまま残っていたらいくら場所がへんぴなところだったとしてもすでに見つかっていたと思うからね。

「調査の途中で襲われてもいやなので、まずは付近の魔獣を倒しておいたほうがいいよね。」

「ええ、このあたりは上階位くらいまでしかいなさそうだけど、やっぱり魔獣がいると安心できないもんね。」

「この辺りは魔素が薄いのかねえ。まあある意味助かるけど。」

「遺跡の効果なのか、もともと薄い場所に作ったのかよく分からないけどね。」


 魔獣を退治した後、収納魔法を使って崩れ落ちている土砂を除いていくと、土砂の中に壁らしきものが見えてきた。

「この遺跡かな?」

 さらに掘り進むと空洞が見えてきた。

「空洞が空いてるね。とりあえず魔獣の気配はなさそう。」

「わずかだけど、風が出てきているわね。空気の流れがあるって事は空気孔かあるのか、反対側が空いているって事かしら?」

 とりあえず安全君を中に入れてみるが問題は無いようだ。 

 土砂を取り除いて中に入って確認すると今回通ってきた連絡通路と同じような感じだった。広さは片側2車線くらいの大きさで車は余裕で通れそうだ。照明はやはり劣化しているせいか使うことはできない。やっぱりケーブルがやられているのだろう。ただ壁はしっかりしているのでいきなり壊れると言うことはなさそうだ。

「壁はしっかりしていそうだからいきなり崩れると言うことはなさそうだよね。」

「そうね。もし崩れてきたときは中から岩を出して避難空間を作ってから対応する感じなのよね?空気浄化の魔道具は大丈夫よね?」

「完全じゃないけど、二酸化炭素と一酸化炭素を分解するようにはなっているはずだよ。一応実験はやったしね。」

 空間に閉じ込められたときに酸欠を防ぐための魔法具を作っておいたのでもしもの時はそれで対応するつもりだ。

 すでに昼を過ぎていたので拠点を出してからここでいったん泊まっていくことにした。おそらく反対側まで結構な時間がかかると思うんだけど、中で泊まるのはできれば避けたいからね。このあたりには上階位までの魔獣しかいないようなので今回は通常の拠点を出して休むことにした。
 掘った土などは収納魔法で遠くに移動させ、掘った穴もわかりにくいようにしたのでもしここに誰かやってきてもよほど探す目的がなければ見つかることもないだろう。


 翌日は朝早めに起きてから移動を開始する。確認が取れないと車の移動はさすがに危ないのでここからは走って行くしかないだろう。入口は少しの空気穴だけ開けて塞いでおく。魔獣に入られてもいやだからね。
 中では光魔法であたりを照らして進んでいく。入口付近に小さな魔獣石が落ちているのでやはり内部でも魔獣が湧くこともあったんだろうね。全部足しても数千ドールあったけど、年数を考えるとかなり湧く頻度は少なかったと思われる。
 途中で何カ所か壁の一部が崩れているところがあったけど、通路が崩壊して埋まっているというところはなかった。このくらいだったらまだ容易に修復できるだろう。

 さすがに車ではないのでペースは遅いけど、6時間ほどかかって反対側付近までやってきた。距離がわからないけど、南にあった連絡通路よりは長いような気もする。
 このあたりにも魔獣石が同じくらい落ちていたので魔獣も出口近くまでやってきて死んでいったんだろう。土砂を取り除いていくが、思ったよりも埋まっていたみたいで時間がかかってしまった。外に出ると外はすでに暗くなっていたので探索はできそうにない。周辺を索敵するがやはり上階位の魔獣しか見当たらなかったので拠点を出して休むことにした。

 ガイド本の地図を確認してみると、前に行ったタラトクの町の先にあった爆弾か何かで消滅した遺跡付近につながっているようだ。


 翌朝早く近くを散策すると、予想通り湖があったので間違いはなさそうだった。それから通路に戻り、来た道を引き返す。壁などを確認しながら行ったので時間がかかってしまったけどそれはしょうが無い。タイカン国に戻ったときにはすでに夜中になっていた。とりあえず車で走っても大丈夫そうな感じだったのでよかった。
 拠点で休みを取ってから翌朝早くから移動を開始する。睡眠はあまりとれなかったけど、急いで戻ってから宿で休んだ方がいいだろうと強行軍でムニアの町を目指す。魔獣がほとんどいないことと、途中の道を通りやすくしていたこともあり、行きよりも1日早く3日でムニアの町に戻って来ることができた。さすがに疲れていたのでこの日は宿に入ってから速攻で眠りについた。


 翌日はかなり遅めに起きたので大分すっきりとすることができた。ロンさんに連絡を取り、遺跡を発見したことを伝える。遺跡の確認をしてもらわないといけないので、明日の朝一で出発することにして、この日はゆっくりと過ごすことにした。


 さらに翌日の朝に町の入口でロンさんと合流して出発する。二人だけだと走った方がいいんだけど、ロンさんもいるので行けるところまでは車で移動することにした。ある程度行ったところで車を降りて走って移動をすることになるが、ロンさんのペースがどのくらいかわからないので徐々にペースを上げるしかないだろう。

「ペースを少しずつ上げていきますので、無理と思ったところで早めに言ってください。無理をすると結局遅くなりますので。」

「わかった。こう見えても移動速度には自信があるから大丈夫だと思うよ。」

 そう言っていたので徐々に移動速度を上げていくが、いつもの7割くらいの速度で声がかかった。

「すまない。これ以上はちょっと厳しい。」

 やっぱり全力で走ると無理か・・・。しょうが無いので5~6割くらいの速度で走って行くことにした。移動時間は倍くらいはかかるかなあ?まあその辺はしょうが無いだろう。

 途中で拠点で泊まることになるが、ロンさんにはゆっくり休んでもらい、自分たちは交代で見張りをすることにする。もちろん泊まるのは小さな拠点の方だ。

「正直いって驚きです。自分もそれなりに脚に自信があったのですが、さすがについて行けませんでした。」

 ロンさんは申し訳なさそうに言ってきたが、まあしょうがないだろうな。体重をかなり軽くして移動している自分たちと比べたらこれでも十分に付いてきている方だと思う。重量軽減魔法は正直反則だよな。

「気にしないでください。走る速度と持久力にはかなり自信があるので・・・。自分たちが交代で見張りをしますので早めに休みを取ってください。」


 翌日から7日かけて連絡通路の入口に到着する。さすがに優階位の魔獣が出るエリアになると移動ペースも落とさないといけなかったのはしょうがない。先に倒していたこともあり、新たに発見した優階位の魔獣は一匹だけだったのでまだよかったよ。
 ロンさんには待機してもらい、前と同じように魔道具を使って退治したんだけど、さすがに優階位の魔獣を倒したことには驚いていた。まあ戦闘方法は見せていないので特殊な倒し方をしているのはわからなかったと思うけどね。

 遺跡に到着してからここでいったん休憩を取り、連絡通路は車で移動することにした。一応トンネル内を確認していることと、移動時間を考えると車の方が安全という判断からだ。反対側に抜けてから持ってきていた大陸の地図をベースに大体の位置を説明する。

「方向や位置関係からここがモクニク国のこの位置になると思われます。証明はできませんが、あの湖は以前きたところなので間違いは無いと思います。」

 しばらくあたりの様子をうかがっていたロンさんが答えてきた。

「大丈夫です。時間や太陽の位置、山の位置などから考えてもモクニク国であるのは間違いなさそうです。詳細な場所は私もわかりかねますが、ジュンイチさんの言われている場所で間違いないと思いますよ。
 よかった。これで交渉もうまくいくでしょう。ありがとうございます。」


 引き返すには時間も厳しいため、今回もここで泊まっていくことになった。この日はロンさんといろいろと話をした。連絡通路が見つかってほっとしたのか、ハクさんや革命軍のことも少し話をしてくれた。
 ただ連絡通路のことについて本当に教えてもらって良かったのかと改めて聞いてきた。おそらくこの連絡通路と先に見つかった通路のことを考えるとこの大陸の流通の大きな革命が起こるだろう。その経済価値は計り知れないものになりそうだ。
 今回の連絡通路が与える影響について少し話をする。

「そこまで理解していたのですか・・・。」

 連絡通路の価値について思ったよりも理解していることにちょっと驚いていたようだ。この世界での輸送手段のベースが陸送のみと言うことを考えると価値は半端ないよね。

「そこまでの価値があるとわかっていながら、対価として求めるものがタイカン国への入国許可証のみで良かったのですか?」

「ええ、今のところ生活にすごく困っているというわけでもありませんし、対価を考えても特に欲しいものがあるわけでもありませんよ。もちろんもっとお金があればもっと贅沢ができるとは思いますが、いまでも十分な感じですからね。」

 まあそれにそこまでお金があったとしても元の世界に戻ると考えると必要がないものだからなあ。

「それにしてもあまりにも・・・。」

「あと、できればこの革命がこの一回でうまくいってほしいと思っているんです。革命は起こすよりその後のことが大変だと思います。ロンさん達には失礼な言い方ですが、革命がうまくいったとしてもそのあとの政権が破綻して再び革命が起きたり、起きなくても前よりもひどい状態になったと言うことは過去の歴史においても多くの実例があります。
 そして新しい国を造る際には経済は重要なこととなります。おそらく今回の革命の援助の対価の支払いはかなりの負担になると思いますが、この連絡通路はその負担をかなり軽減できるものだと思っています。ここからはあなたたちの力が問われることだと思います。」

「そうね。おそらくすでに色々検討されているとは思いますし、今の詳細な数値はわかりませんが、従来の交易ルートと、あなた方が見つけたルート、そして今回のこのルートを考えると、流通量が単純に3倍というわけではないでしょう。今のルートの輸送時間を考えると・・・」

 少しでも助言になればと思い、具体的な数値を上げながら今回のルートにおける経済性の説明をしていく。ロンさんは自分たちの話に聞き入っていた。

「まあ、あくまで一般的な内容から推測した数値ですので、どこまで正しいかわかりませんが、今後の参考にしていただけたらと思います。一応簡単に紙にも書いておきましたので渡しておきますね。」

「あ、ありがとうございます。大変参考になりました。」



 翌朝早めに出発してからタイカン国側に戻り、そこから走ってムニアの町に戻る。町に着くとロンさんはすぐに連絡を取ってから町を出て行った。やはり詳細については直接話さないとまずいのだろう。

 今回の依頼は遺跡の調査依頼と言うことで正式に冒険者の依頼ということにしてくれていた。報奨金は申し訳程度だったんだけど、確認してみると、少し上乗せしてくれていたようだ。ありがたいものだ。

 ちなみにもう一つの連絡通路のことも話をしておいたが、こっちは魔獣のレベルが高いので調査はできなかったと言うことでおおよその場所だけは伝えておいた。そこまで必要は無いとは思うが、いずれ調査してもらってもいいのかもしれないね。地図だけで見つけられるかはわからないけどね。


~魔獣紹介~
灰牙豹:
良階位中位の魔獣。暖かい地域の森に生息し、大半を木の上で過ごす猫型の魔獣。体長は1~2キヤルドくらいあり、隠密スキルを持っているみたいで発見しにくく、木の上から襲いかかってくる。生息エリアでは木の上にも十分注意して早めに発見できるように心がけなければならない。
鋭い牙と爪で攻撃してくるが、かなり素早いため、攻撃を当てるのには苦労するかもしれない。また牙も大きく、かみつかれるとなかなか引きはがすことができなくなる。
素材として毛皮と牙が買い取り対象となっている。

魔山猫:
優階位中位の魔獣。森に生息し、大半を木の上で過ごす猫型の魔獣。体長は1キヤルドくらいあり、隠密スキルを持っているみたいで発見しにくく、木の上から襲いかかってくる。大きなものは3キヤルドほどあったという報告もある。生息エリアでは木の上にも十分注意して早めに発見できるように心がけなければならない。
鋭い牙と爪で攻撃してくるが、かなり素早いため、攻撃を当てるのには苦労するかもしれない。また風魔法で鋭い刃のような攻撃や弾丸のような攻撃をしてくるため、魔獣の動きを見てよけるしかない。
素材として牙、毛皮、爪が買い取り対象となっている。

大蹴兎
優階位中位の魔獣。森や草原、山岳地帯などあらゆる場所に穴を掘って生活している。蹴兎よりも二回りほど大きな体躯となっている。耳が大きく、音に敏感なため、先に見つけるのは難しい。
獲物を見つけると一気に突進してきて、大きな後ろ足で攻撃してくる。後ろ足には鋭い爪もあり、打撃だけでなく、裂傷にも注意が必要。動きが素早く、攻撃を当てることが難しく、風魔法で空中でも進路を変えることができるので、行動の先読みは困難。風魔法による攻撃をされたという報告はないため、狭い場所に誘い込んだ方が倒しやすい。ただし逃げられなくなるという危険性もある。
素材としての買い取り対象は肉と毛皮となる。


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