【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

文字の大きさ
402 / 430
再編集版

89. 異世界1453日目 タイカン国

しおりを挟む
89. 異世界1453日目 タイカン国
 せっかく新しい国に来たんだから、やっぱりこの国を楽しまないといけないよね。

「ジェン、せっかく新しい国に来たんだからいろいろと回っていこうと思うけど、どこか行きたいところはある?」

「久しぶりに大きな港町に行ってみたいというのはあるわね。もう新鮮な魚もあまり残っていないから仕入れておきたいわ。」

 たしかに大型の魚はもう切り身が少し残っているくらいになっていたような気もする。あれだけ仕入れていたけど、結構日数も経っているし、寄付とかもしたから仕方が無いよな。

「たしかにこっちの大陸に来てから港町に行く機会が少なかったからなあ。途中の小さな港町だとあまりいい魚も仕入れられなかったしね。
 今は1月で秋くらいになってきているんだけど、少し北上すれば結構温かいらしいよ。なので王都に移動してから徐々に北上していく感じでタイカン国を見て回るかな。西海岸の方に行けば大きな港町もあるみたいだからね。」

「そうね。王都は冬になっても雪が積もると言うこともほとんど無いみたいだから、いろいろと見て回りましょう。」

 地図を見ながらおおよそのルートを確認するが、日程については成り行きでいいだろう。まずは南下して途中寄らなかったアルマに行き、そこから西にある王都のタイカンへ。そこから北西にある港町のミントウアリアに寄ってからルイトウを経由してモクニクとの国境の町アルトバに向かう感じだろう。
 あとどのくらいこっちの世界にいられるのかはわからないけど、それを気にしていたら何もできないから残りの時間は余り考えずにやりたいこと、できることをやっていこう。



 まずは途中に寄っていなかったアルマまで南下する。アルマはもともとこのあたりでは結構大きな町だったが、サビオニアへの窓口となっているロニアの町との中継点になっていることもあり、手狭になってきたらしく、町の規模を広げるための工事が行われていた。

 町に入ってから宿を予約して役場へ行くことにした。今回の遺跡調査で魔獣を狩っていたんだけど、ムニアの町では買取額が若干安いという話を聞いていたので売っていなかった。まあせっかくこっちに戻って来るのなら高いところで売った方がいいのは当たり前だからね。
 今回は良階位の魔獣だけでなく、優階位の魔獣まであったので最低金額とは言え、結構な金額となるはずだ。もちろん普通のところで買い取ってもらった方が金額が高くなるんだけど、せっかくなので役場に買い取って実績ポイントもつけておくことにした。
 優階位へ上がれるための実績ポイントはかなり必要なのであと3年近くこっちでがんばったとしても上がれることは無いと思うけど、せっかくなので実績はためるようにしている。優階位の魔獣をガンガン狩ることができればなんとかなるかもしれないけど、さすがにそれもきついからなあ。

 さすがに冒険者も多くて買取の方にも少し列ができていた。もう少し早めに着いていたら良かったんだけどこれはしょうが無い。

「おいおい、ここの買取は基本的に良階位以上の魔獣の素材だぞ。上階位までは町の買取に出すのはわかっているよな?」

「上階位でも買い取りできる魔獣を狩ったのかもしれないだろう。頑張っているんだから茶々を入れるなよ。荷物もそんなにないからすぐに終わるだろ。」

 誰に言っているのかと思ったらどうも自分たちに向かって言っているようだった。まあ自分たちの見た目では良階位には見られないかもしれないね。普段は温度調節の魔道具のついたマントも羽織っているから装備もわからないからね。荷物もほとんど無いし・・・。

「ご心配ありがとうございます。ちゃんと買取対象の魔獣の素材なので大丈夫です。」

 買い取りの部屋に入ってからお願いするが、思ったよりも量が多かったので時間がかかってしまった。まあこればかりはしょうが無い。この辺りだと優階位の魔獣の買い取りは少ないみたいだしね。

 買取を終えて頭を下げていくと、かなり緊張した顔をしていた。買い取り時間が思ったよりも長かったので思っていた以上に実力があると思われたのかもしれない。


 ここの町にはカサス商会も出店しているので顔を出すと驚いていた。サビオニアに行っているはずだったのにいきなりタイカンにいれば驚くだろう。なんとか国境を越えてこれたと言うことでごまかしていたけど、いずれはどうやって来たかわかるだろうな。
 魔符核の納入を求められたので作っておいた分を渡すとかなり喜ばれた。まああれから半年くらい経っているからね。需要は大分落ち着いてきているようなので足りなくなるほどではなかったようだ。
 前までは振り込んでもらっていたんだけど、最近は貯金だけでなく、そのまま魔獣石で受け取っている。収納魔法があるので必要ないからだ。インスタントラーメンの特許代などは振り込んでもらっているけど、こういう場合は魔獣石で受け取っている。すぐに必要な場合に貯金していると面倒だからね。


 町はまだ貴族支配の時の名残が所々残っていた。エリアは現在は分かれていないんだが、もともと貴族エリアだったんだろうというところもあり、前は貴族エリアと思われる場所の家は大きなものが多く、今はお金を持っている人達が住んでいるようだ。
 ヤーマンとは異なり、貴族というのはなくなっているけど、貴族がすべて殺されたりしたわけではないので、財産はかなりとられたとはいえかなりの資産を持っている元貴族もいるだろう。日本のもと華族みたいなものかもしれないね。

 町はいろいろと拡張していることもあって、かなり活気がある。あちこちで建設も行っているし、屋台などの店もかなり出ていて通りの賑わいもすごい。出店でも色々と売られているけど、かなり怪しげなものも多いのはよくあることか?なにか掘り出し物はないかと探してみたけど、だいたいがガラクタだし、値段相応のものだった。
 まあそれでも久々に賑やかなところなのでジェンと二人でいろいろと買い食いしたりと見て回るだけでも楽しかった。

 宿はロンさんから聞いていたところにしたんだけど、特に良くもなく悪くもなくという感じの普通のところだった。宿代は二人で1000ドールとかなのでまあ普通だろう。
 宿の一階にある食堂に行くと先ほど少し絡んできた冒険者の姿があった。せっかくだから話を聞いて見るかな?

「こんにちは。もしよろしければ話を聞かせてもらっていいでしょうか?」

「なんだ?・・・え、あ、はい、かまいませんよ。」

「いえ、そんなに気を遣わなくてもいいですよ。先ほどのことも別に気にしていませんので。あと自分たちは良階位ですけど、年齢も下だと思いますので。」

「いや、見た目だけで判断して悪かった。それについては謝らせてくれ。」

 思ったよりも律儀な人たちだった。話を聞くと先ほどの3人と女性の冒険者が2人の5人パーティーのようだ。

 彼らはここ最近はこの町を拠点にしている良階位の冒険者で半年ほど前に昇格したらしい。今日は遠征から戻ってきたところのようだ。
 自分たちはヤーマン国の冒険者であることを伝えると、一度は他の国に行ってみたいんだよなあとうらやましそうにしていた。今は車の購入を考えてお金を貯めているところらしい。タイカン国内はある程度いろいろと行ったことがあるみたいでいろいろと情報を教えてもらった。
 こっちももし行くことがあったらと他の国のことを話す。自分たちが二人で狩りをしていることにかなり驚いていた。まあ普通のパーティーは3人以上というのが多いからね。

 結局この町で2泊してから王都を目指すことにした。やっぱり別の国に来たら王都に一回は行っておくべきだろうしね。


 途中の町に寄ったりしながら6日間で王都のタイカンに到着する。途中の町は木造建築が多かった。タイガ国で見た建物は木材も使っているという程度だったんだが、ここタイカンでは完全に木造建築と言えるような建物も多くある。どうやら石材がそれほど採れないため、木造建築が多いという話を聞いた。さすがに藁葺きや瓦葺きではないけど、なんか懐かしさを感じるなあ。

 王都が近づいてくると、かなりの広さの水田が広がっていた。まもなく収穫の時期なのか一面黄金色になっている。今までも小麦畑などを見たけど、ここまで一面に広がっている景色はなかったなあ・・・。まあ水田なので高低差がないから余計に綺麗に見えるのもあるのかもしれない。
 近くに大きな川もあるんだけど、魔獣の退治には結構気を遣っているんだろうな。土手も造られて治水にもかなりきっちりしているように思える。

 さすがにやってくる人が多いせいか、王都の入口にかなりの行列ができているのは仕方が無い。でも入口の受付の数もかなり多いので列の進み方が早いのは助かる。手続きが終わるまで60分ほどかかったけど、それでも十分早いほうだろう。ここにはもう貴族専用の通路とかもないからね。
 中に入ると町並みは今までと大差なかったけど、ここも多くの建物が木造建築で驚いた。もちろん高い建物は石造りなんだけど、3階建てくらいまでの建物は木造建築が多い。こっちの世界に来てからここまでの木造建築を見るのは初めてだなあ。
 店の中に入って見てみると、外壁だけが木材というわけでもなく、木の柱も使われているのでやはり木造建築で間違いないだろう。木造建築にしては柱が思ったほど多くないので魔法で強化されているのかもしれない。

 米を取り扱っている専門店を覗いてみると、かなりの種類を置いてあった。米はもともとはタイガ国がルーツらしいけど、今はこっちの国の方が色々と発展しているらしい。お米の種類も多いので希望の内容を伝えるといくつか薦められたので少量ずつ買っていく。

「お米ってそんなに味が違うものなの?」

「全然違うよ!!」

 うちは父がかなり米の味にこだわっていたので、外食の時に食べてがっかりすることも多かったくらいだ。

「こっちの米もちょっと不満があったんだけど、異世界だからしょうが無いと諦めていたんだ。だけどここにこんなに置いているのはラッキーだったよ。これだけあれば気に入ったものがあるはずだ。」

 ジェンに米の良さを力説していると、店主から声をかけられる。

「そこまで米の味にこだわっているのでしたらこれを買ってみてはどうでしょうか?お値段は少し高くなっていますが、美味しいご飯が炊けると評判なんですよ。」

 炊飯器は持っていたんだけど、やはり炊き方が不十分なのか、鍋で炊いた方が美味しかったからなあ。面倒なときは炊飯器で炊いていたけど、余裕があるときはいつも鍋でやっていたからね。店主からの説明を聞いてから購入することにした。値段は普通の炊飯器の2倍の値段だったが、悔いは無い。

「ふふふ・・・今日から早速おにぎりを造って食べ比べを・・・。」

 なんかジェンに引かれてしまった。いや、ほんとにおいしい米は味が違うから・・・。

 他にも味噌や醤油なども購入していく。醤油は甘みのある醤油もあったのでよかった。これで刺身がもっと楽しめる。あと味噌も色々と購入してみる。八丁味噌のようなものもあったのでかなり味に幅が出そうだ。母から隠し味にいいと色々と聞いていたからね。

 ジェンはいろいろとお酒を購入していた。どうやら米から造ったお酒やその蒸留酒もあったみたいでいろいろと集めていた。かなりの年代物のものも買っていたんだけど、値段を見ているよね?一本数千ドールとか言うものまで買っているようなんだけど・・・。なんか秘蔵のお酒とか話しているような気もするけど気のせいだよね?

 いろいろと買い物をしていたら思ったよりも時間がかかってしまった。宿はちょっと高めの宿に泊まることにしたんだけど、旅館という雰囲気のところでちょっと贅沢感がある。木造建築のせいもあるかもしれない。残念ながら露天風呂はなかったけど、大きな浴場があったのはうれしい。


 翌日は役場でいろいろと資料を読んだり、いろいろな店を見て回ったりしていたせいでこの町に3泊もすることになってしまった。なんか久しぶりにゆっくりとした日々だったなあ。

 ここでサビオニアの情報が入ってきた。どうやら革命軍が王都を陥落させたらしく、王族は全員捕まったみたいだ。他にも多くの貴族も捕まったみたいで、現在処罰が進んでいるらしい。
 暫定政府が成立し、すでに他国との交渉を進めているようだ。タイカン国とはすでに交渉が始まっていたらしく、タイカン国との直接の交易ルートができるようになると発表されていた。ただ詳細についてはまた後日発表されるみたい。


~ハクSide~
 やっと王都を陥落させることができた。やっと先代から引き継いだタイラス様の夢が叶えられたのは感慨深い。

 俺の数代前はタイラス様に仕えていたらしい。平民だったがその仕事ぶりを評価されて重要な仕事を任せられるまでになったようだ。もちろん他の貴族からは影で嫌がらせを受けたりもしたが、それでも尽くす主と決めて仕事に励んだようだ。
 そしてタイラス様が国政改革を打ち出したとき、その改革を手助けするために尽力した。数は少ないが賛同する貴族、多くの平民からの支持を受けて改革は順調に進んでいくものと思われた。
 しかし一部の裏切りにより、タイラス様は捕まり、反乱者という汚名を着せられて処刑されることとなった。改革の中心人物を失ったことで、その改革は中断され、前よりもひどい状況となってしまった。
 俺の祖先は家族、仲間とともになんとか山を越えてタイカン国に逃げることができたが、多くの仲間は途中で亡くなってしまったと聞いている。

 タイカン国ではもちろん苦労したが、仲間とともに商会を立ち上げ、徐々に地盤を固めていった。「いつか夢途中で散ったタイラス様の願いを叶えるために」が我々の目的となったようだ。
 俺が商会の手伝いを始めた頃に、祖先が山越えをしたときの日記を見つけた。その中に気になることが書かれていた。山脈の途中で古代遺跡のような跡を見つけたということだ。
 俺は信頼の置ける仲間とともに遺跡の調査に向かった。まだ発見されていない古代遺跡であれば多くの古代の遺物が期待できるからだ。しかし発見したものは別の意味で期待を裏切るものだった。

 通路を見つけたときは地下遺跡かと興奮した。しかし通路を進んでいっても何もなかった。いつまでも続く通路で、あるのは時々落ちている魔獣石だけだ。途中には一部落盤した跡があったりしたが、特に何の発見も無いまま2日間歩き続けた先にあったのは行き止まりだった。行き止まりだが土砂で埋まっているだけみたいだったので、掘り進むとそこに見えたのは外の風景だった。
 このときは正直愕然とした。遺跡だと思ったのに何もなかったからだ。現実を直視できず、途中で何か見落としたのかと思ったが、外に出て何か違和感を覚えた。山の位置がおかしいのだ。太陽や月の位置や時間など調べて現在地を確認したところ、山脈の反対側に来ていることがわかった。山脈を貫く連絡道路と言うことがわかったのだ。

 ある程度商会も大きくなっていたことから、サビオニアでの商売を考えて金の力で貴族相当の権利を購入した。もちろんそれぞれの国にも証明するための相応の金額を払う必要があったが、サビオニア国内で商売をするのに必要なものだった。

 そしてサビオニアでも商会を立ち上げ商売を始めた。形式上はモクニク経由で輸送してきているようにしていたが、実際にはこの通路を使って物資の輸送をした。サビオニアでは特に食料などの物資が不足していたため、これを取引することで一気に商会の規模が大きくなった。
 そして商売とあわせてサビオニア国内にも同士を増やしていった。俺の商会の名前をみて探りを入れてくる人間も結構いたからだ。もちろんこちらでもいろいろと調査して堅実に仲間を増やしていった。
 サビオニア側の領主も仲間に引き入れてからは一気に商売の規模は大きくなった。もちろん領主には形上の仲間であり、同士ではないんだがな。

 先代から商会を引き継ぎ、俺の代になったところでタイカン国の中枢にも話をつけて革命の準備を進めていった。タイカン国はその見返りとして今ある通路の権利やサビオニアでの多くの鉱山などの長期に渡る権利を主張された。革命を成功させるには援助も必要なため、ある程度飲まざるを得ない内容だった。
 あまりに権利を渡してしまえば革命が成功したとしても国として運営ができなくなってしまう。このためできるだけ短期間で決着をつけるしかなかった。革命が1年にわたってしまえば、大半の鉱山を渡さなければならなくなってしまう。ただそこまでかかってしまえば、革命が成功してもタイカン国やモクニク国に蹂躙されてしまう可能性もある。

 そして俺たちの意思とは関係なく起こった反乱を好機と判断し、国中に決起の依頼書を発行した。思った以上に賛同者が出たのには驚いたが、それでも思ったよりも時間がかかってしまったのはしょうが無いだろう。


 あの二人との出会いは本当に偶然だった。優階位の魔獣を倒した能力は使えると思い、町の入口の行列に並んでいる二人を誘ってみた。
 もし味方に付いてくれればと言う軽い気持ちだったんだが、話をしていてかなり驚いた。まさかそこまで知っていたとは思わなかった。どこでその内容を知ったのかわからなかったが、タイラス様のこともかなり詳細に知っていたからだ。
 何より驚いたのは連絡通路のことだった。複数の連絡通路があるというのはたしかに考えられない話ではない。古代遺跡の調査を行っていると聞いていたが、まさかそのようなことまでわかっているというのは正直驚きだった。
 そのあと急遽関係者を集めて会議を行ったが、ほとんどの人間が「信じられない」ということだった。それは連絡通路があるということではなく、たかが国を出るためだけにその情報を渡すと言うことが信じられないと言うことだった。ただ、こちらにとっては損はない話なので許可証を発行してもらうこととなった。
 それに加えて、できるだけ早めにこの国から出てもらいたいという意見もあった。タイカン国に出してしまえばもし何かあったとしてもこっちに直接手出しはできないはずだからな。


 ハーマン爵を救出に向かうというのは予定外だった。ただこれについては後をつけさせて監視を行ったが、純粋に助けに行ったようだった。連絡が遅れたせいで危うく救出が間に合わなくなるところだったが、なんとかなって良かった。

 タイカン国に抜けた後、二人は調査に向かうと言うので後をつけさせたが、残念ながら追いつけなかったらしい。そのあとロンも一緒に行くことになったようだが、あまりの速さに付いていくのが精一杯だったらしい。ロンがついていけないと言っていたが、二人にはまだ余裕があったようだ。
 二人は良階位の冒険者と言っていたがどこまで実力があるのか正直わからなくなってしまった。途中で優階位の魔獣も出ていたらしいが、なんとか倒していたようだ。二人組の良階位のパーティーが優階位の魔獣を倒すというのは結構大変なことだと思うんだが・・・。

 連絡通路はもちろん補修の必要があるが、十分使えるものだったようだ。しかもモクニク国東部への直接ルートであり、かなり重要なことというのがわかった。
 このルートのおかげでタイカン国との交渉は予想以上にうまくいった。それはそうだ。今までは西側に一つしか無かったルートが直接東エリアと取引できるようになるのだ。鉱石の優先的な輸出は仕方が無いが、鉱山の長期貸し出しについては帳消しにできたのが大きい。モクニク国への交渉にも使えたのも大きなことだ。さらにも一つのルートまで可能性があるからこれはそのうちに開発できるかもしれない。おそらくこの大陸の流通ルートが大きく変わるだろう。それだけの価値があるのだ。

 あの二人はこの利益について正確には把握していないと思っていた。しかしロンの報告を聞くとそういうわけではなかった。今後の流通による経済効果などについても具体的な金額などを含めて話をしていたらしい。
 そのときにもらった資料を見て俺を含めて経済担当の者達はかなり驚いていた。もちろん基本となる金額については仮定の額と書かれていたが、それに対する数値についてはかなり具体性があったのだ。しかも今後の対応案なども書かれていたのだ。あの二人を経済の顧問に雇えないのかという話まで出たくらいだ。
 それだけのことがわかっているのに、見返りが国を出るための権利だけでいいのかと聞いたところ、この国のことを考えるとその方がいいというかなりお人好しな回答だったらしい。
 二人のことは一部の人間にしか話していない。もちろんこの話を提供した人間のことはある程度広まっているが、あくまで架空の英雄という形で広まっている。本人達にはあまり広めないでくれと言われているが、いずれは何かのお礼をしたいところだな。


~サビオニア簡易年表(後の歴史書より)~

946年 暗黒王即位 多くの貴族、平民が粛正される
956年 タイラスの反乱
967年 暗黒王崩御
968年 継承権2位の三男が王位継承 平民王即位 平民登用への改革
978年 平民王崩御 毒殺という噂がある
979年 継承権3位の三男が王位継承 貴族王即位 貴族主体の政権
1005年 貴族王崩御 愚王即位
1018年 サビオニア革命(タイラスの革命)
1019年 新生サビオニア国誕生


~あとがき~
 今回の章について、異世界に行った人が革命などを手助けするという話もよくありますが、革命などかなり秘密裏に行わなければならないことを会ったばかりの人に打ち明けるか?重要な役目を任せたりするか?と考えるとやはり違和感しかありませんでした。このため今回はこのような関わりとなりました。
 実際にこのような交渉をするとなるともっといろいろな駆け引きが必要となりますが、話の主軸とは違うこととなってしまうこと、自分の知識と執筆能力のことから、かなり明確にわかる内容となっています。

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...