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終
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目的地に察しがついた美月は思わず尚哉の腕を掴んで立ち止まった。
「さっき、風の中で香ったんだ。最近忙しくて嬉しい悲鳴だけど、帰りはお互い直帰だったからさ……多分、見頃だよ」
「ここまで来てやっと私にも解ったのに、やっぱり尚哉ってすごいね! 楽しみ!」
今までとは打って変わって早足で目的の場所を目指す美月に引っ張られる形で尚哉は弾む美月の後ろ頭を眺めつつ歩く。身長差がある分、美月の早足は尚哉にとっては大股で充分に追いつける程度だった。
「うわぁ……!」
暗闇の中でも見える銀木犀の木々が咲かせている花が、手に届く星のように二人を迎えた。
起業に関して諸々の手続きや契約先の検討と並行してサンプル送付の依頼、大量のメールの遣り取り、段ボールの中にぎっしりと詰め込まれたケースの片付けにホームページの立ち上げ、作業部屋を快適に使えるようにと荷物を運び込み、組み立てては配置と美月の意見を聞きつつ模様替えを繰り返していた駆け足の日々の中、尚哉は秋になると風に乗って香ってくる存在に気を引かれていたが、微弱な甘い香りに美月は気づいていないようだった。
二人が初めて出会ったこの場所に来るのは、仕事が軌道に乗ってからーーそう決めていた尚哉は、その日が今日だと決めて美月を誘ったのだ。
「あの日、病院の帰りに匂いに惹かれてここに来たんだ。正直、心の中ではこれからどうしようかって絶望してたよ」
深緑の葉にそっと手を伸ばして尚哉は愛おしそうに撫でつつ、数年前の出会いに思いを馳せていた。
「社会生活なんて絶望的。でもどうにかしなければ生きてはいけない。そんな時、美月に会ったんだ」
「あの時の私ったら、めっちゃ喋るし、泣くしで変な人確定だったよね」
くすくすと笑う美月は小さな声で尚哉に同調して過去に思いを馳せた。
自分にしか匂いが解らない世界は美月にとってはひどく孤独だった。周りの人達には怪訝な目で見られ、気づけば遠巻きにされている。それは子供の頃からずっと変わらず続いていた。そんな中で一般企業に入社するというのは、孤独が延々と続くのと同義で、尚哉と同じく頭を抱えていたのだ。
あの時、儚気ながらも銀木犀の香りの小雨を浴びて心地良さそうに立っている尚哉と出会って、自分がいても香りが解る人間がいることを初めて知った。そして、彼から淡々と紡がれる過去に知らぬうちに自分を重ねてしまい、自嘲するように未来の話をする尚哉に起業する! と勢いで宣言してしまったのも思い出す。
聞く耳など持ってもらえないのも当たり前だと思っていたら、尚哉は笑って話をどんどん具体的にしてゆき、勢いで声高に宣言したはずの美月と立場が逆転したのも良い思い出だ。
一笑されて終わりかと思った案も、美月の頭が追いつかないほどの販売方法を提起された上に、それら商品を作れるスキルがあるかもしっかりと確認されて、息巻いていた自分が逆におろおろとする羽目になってしまった。そんな美月を見る尚哉は変わらず微笑んでいた。
しかも起業に必要な資金も折半の予定が、半分以上をポンと目の前に出してきた時には顎が外れるかと思ったのだが、本人は
「遺産の一部だから……うーん、いつか返してくれたら良いですよ。っていうか俺も社員になるわけだから、先行投資で回収できるくらい稼ぎましょ」
などと言ってのけるものだから、美月はより一層気を引き締めた。
絶対に成功させなくては二人して行き場がなくなってしまう。その思いで、他社にはない物。自分にしか作れない物に試行錯誤する日々だった。そしてあの日から数年。大々的に店舗展開はしていないものの、ネットを通しての販売というのも時代に合っていたのか、売り上げは僅かばかりではあるが右肩上がりというありがたい現状だ。
「何年経ったんだろう……私ったらすっかり忘れてた……」
「うん、いつも一生懸命に調合したり、試作品作ったり、文章のチェックしたりインタビュー受けたり? 俺は部屋にこもってそういう面倒事は全部美月に任せていたから大変だったと思う」
いつもありがとう、とつけ加えた尚哉の視線は花に向けられたままだ。
「最初は私達、橋垣さん佐々木さんって呼び合っていたのに、今じゃ呼び捨てできるくらいだものね。時間と慣れってすごいなぁ……あ、私が図々しいのかな!?」
思い出話に盛り上がり、気負いなく笑う美月の頬に月明かりが差す。
一本一本木々を見上げて話をしていた尚哉は、一番多く花を纏っている一本を見つけると美月に手招きした。
「わぁ! 素敵! この香りで何か作れたら良いんだけれど、蒸留が難しいのよね……だから見るだけで泣きたくなるし、とんでもなく幸せな気持ちになるの……何年も忘れていたくせに勝手だよね」
申し訳なさそうに木の幹に手をついて胸の内を吐露する美月の肩を叩いた尚哉は悪戯っ子のような顔で穏やかに口の端を微かにあげている。
「ここで美月に出会えたから、今笑って生きていられると思うんだ。だから、もし良かったら……結婚しよう」
「え……け、こん? 待って、まだお金返しきれてない!」
「俺は今、会社を離れた美月個人の本音が聞きたいんだ」
突然のプロポーズに美月は嬉しさと申し訳なさがない混ぜとなって胸の中を渦巻いていた。
尚哉のことはもちろん好きだ。でなければ一緒に二人きりで何年も仕事なんてできない。いつも穏やかで冷静に自分の意見を言う姿には安心感をもらえたし、一生懸命にケース詰めに悪戦苦闘しつつも諦めない姿は叱咤激励されている気分にもなっていた。
尚哉とは行動を共にすることが多く、その度に細やかでさり気ない気配りに胸をときめかせたり、実務優先! と考えないようにしていた二人の今後にポン、と肩を叩かれた気がした。
会社……仕事を離れたら? 真剣な眼差しを逸らさない尚哉から視線が外せないまま、鈍い頭をフル回転させる。フル回転させて思い知る……嬉しい、と。
ーーザァア!
いきなり風が吹き、群生した木々を揺らし、辺り一帯を切なくも温かい香りで包み込んだ。その瞬間の嬉しそうな尚哉の顔を見た時、美月は思い知った。
……ああ、彼だけなんだ。私という人間空気清浄機が傍にいてもちゃんと同じ香りを楽しめるのは。私の作り出した香りを解ってくれるのは……
尚哉に出会う前の自分は表には出さないまでも内心やさぐれていて、中途半端な人間で、社会不適合だと思い込んでいた。
「普通の世界じゃ生きられないなら、俺達だけの世界で笑って生きよう?」
その言葉が素直に美月を頷かせた。
「良かった……今更だけど照れくさいもんだね……あの、これ」
耳まで赤くしている尚哉から渡された小箱には銀木犀の花によく似たモチーフの中に煌めくダイヤの指輪が一つ。
「え! そんなこんな素敵な……まだお金返せていないのに……」
「はぁ……ちょっと会社のことは忘れて、俺の一世一代のプロポーズに真剣に付き合ってよ。サイズ、合う?」
唇を尖らせた尚哉の拗ねた様子に恐る恐る指輪をケースから取り出し指を通す。
「うぅ、なんで解るのぉ? ピッタリだよぉ……どうしよう……嬉しいよぉ……」
再び風が吹く。二人を祝うように香りが強くなり、尚哉は半泣きの美月を初めて抱きしめた。
いつも明るく笑って、真剣に試作に取り組む美月はこんなに小さくて細かったのかと尚哉は内心驚きながら、空を見上げて胸の中に銀木犀の香りを目一杯に取り込んで目を閉じた。
「式はいつにする?」
「気が早いわよ」
「だって、じいちゃんとばあちゃんが生きているうちに……」
「え? 孫、見せたい、とか……?」
「いや、美月の花嫁姿を見せたい。ついでに俺のタキシードも。子供のことは……」
「怖いもんね。それはゆっくり話し合ってからだね。式はね、来年! 場所はココ! 私が来るまでにお祖父様とお祖母様にこの香りの素晴らしさを楽しんでもらって」
「先に顔合わせ、じゃないの?」
いつもの元気を腕の中で取り戻した美月の意見に答えを返す。子供に関しては考えていないわけではないが、怖いのは確かだ。
「ん? ねえ? 顔合わせより先にお付き合い、じゃないの?」
不思議そうに見上げてくる美月の言うことに尚哉は声を上げて笑った。
「確かに! ゼロ日婚約、今日から公私共によろしくお願いします」
「今までと変わらなくない? うふふ、明日挙動不審になりそう」
それはそれでおもしろそうだと思いつつ、尚哉は抱きしめる腕に更に力を込めた。
一般社会の歯車になれない異質な人間が二人。
別々の場所で、それぞれの孤独や苦痛に耐えて銀の花の下で出会った二人。
静かに寄り添って、互いを尊重し合って生き抜いていく二人。
明日からも同じ景色を見て、歩数を合わせて進む二人を、月に照らされて銀色に輝く小さな無数の花々が見守っている静かな静かな夜。
「さっき、風の中で香ったんだ。最近忙しくて嬉しい悲鳴だけど、帰りはお互い直帰だったからさ……多分、見頃だよ」
「ここまで来てやっと私にも解ったのに、やっぱり尚哉ってすごいね! 楽しみ!」
今までとは打って変わって早足で目的の場所を目指す美月に引っ張られる形で尚哉は弾む美月の後ろ頭を眺めつつ歩く。身長差がある分、美月の早足は尚哉にとっては大股で充分に追いつける程度だった。
「うわぁ……!」
暗闇の中でも見える銀木犀の木々が咲かせている花が、手に届く星のように二人を迎えた。
起業に関して諸々の手続きや契約先の検討と並行してサンプル送付の依頼、大量のメールの遣り取り、段ボールの中にぎっしりと詰め込まれたケースの片付けにホームページの立ち上げ、作業部屋を快適に使えるようにと荷物を運び込み、組み立てては配置と美月の意見を聞きつつ模様替えを繰り返していた駆け足の日々の中、尚哉は秋になると風に乗って香ってくる存在に気を引かれていたが、微弱な甘い香りに美月は気づいていないようだった。
二人が初めて出会ったこの場所に来るのは、仕事が軌道に乗ってからーーそう決めていた尚哉は、その日が今日だと決めて美月を誘ったのだ。
「あの日、病院の帰りに匂いに惹かれてここに来たんだ。正直、心の中ではこれからどうしようかって絶望してたよ」
深緑の葉にそっと手を伸ばして尚哉は愛おしそうに撫でつつ、数年前の出会いに思いを馳せていた。
「社会生活なんて絶望的。でもどうにかしなければ生きてはいけない。そんな時、美月に会ったんだ」
「あの時の私ったら、めっちゃ喋るし、泣くしで変な人確定だったよね」
くすくすと笑う美月は小さな声で尚哉に同調して過去に思いを馳せた。
自分にしか匂いが解らない世界は美月にとってはひどく孤独だった。周りの人達には怪訝な目で見られ、気づけば遠巻きにされている。それは子供の頃からずっと変わらず続いていた。そんな中で一般企業に入社するというのは、孤独が延々と続くのと同義で、尚哉と同じく頭を抱えていたのだ。
あの時、儚気ながらも銀木犀の香りの小雨を浴びて心地良さそうに立っている尚哉と出会って、自分がいても香りが解る人間がいることを初めて知った。そして、彼から淡々と紡がれる過去に知らぬうちに自分を重ねてしまい、自嘲するように未来の話をする尚哉に起業する! と勢いで宣言してしまったのも思い出す。
聞く耳など持ってもらえないのも当たり前だと思っていたら、尚哉は笑って話をどんどん具体的にしてゆき、勢いで声高に宣言したはずの美月と立場が逆転したのも良い思い出だ。
一笑されて終わりかと思った案も、美月の頭が追いつかないほどの販売方法を提起された上に、それら商品を作れるスキルがあるかもしっかりと確認されて、息巻いていた自分が逆におろおろとする羽目になってしまった。そんな美月を見る尚哉は変わらず微笑んでいた。
しかも起業に必要な資金も折半の予定が、半分以上をポンと目の前に出してきた時には顎が外れるかと思ったのだが、本人は
「遺産の一部だから……うーん、いつか返してくれたら良いですよ。っていうか俺も社員になるわけだから、先行投資で回収できるくらい稼ぎましょ」
などと言ってのけるものだから、美月はより一層気を引き締めた。
絶対に成功させなくては二人して行き場がなくなってしまう。その思いで、他社にはない物。自分にしか作れない物に試行錯誤する日々だった。そしてあの日から数年。大々的に店舗展開はしていないものの、ネットを通しての販売というのも時代に合っていたのか、売り上げは僅かばかりではあるが右肩上がりというありがたい現状だ。
「何年経ったんだろう……私ったらすっかり忘れてた……」
「うん、いつも一生懸命に調合したり、試作品作ったり、文章のチェックしたりインタビュー受けたり? 俺は部屋にこもってそういう面倒事は全部美月に任せていたから大変だったと思う」
いつもありがとう、とつけ加えた尚哉の視線は花に向けられたままだ。
「最初は私達、橋垣さん佐々木さんって呼び合っていたのに、今じゃ呼び捨てできるくらいだものね。時間と慣れってすごいなぁ……あ、私が図々しいのかな!?」
思い出話に盛り上がり、気負いなく笑う美月の頬に月明かりが差す。
一本一本木々を見上げて話をしていた尚哉は、一番多く花を纏っている一本を見つけると美月に手招きした。
「わぁ! 素敵! この香りで何か作れたら良いんだけれど、蒸留が難しいのよね……だから見るだけで泣きたくなるし、とんでもなく幸せな気持ちになるの……何年も忘れていたくせに勝手だよね」
申し訳なさそうに木の幹に手をついて胸の内を吐露する美月の肩を叩いた尚哉は悪戯っ子のような顔で穏やかに口の端を微かにあげている。
「ここで美月に出会えたから、今笑って生きていられると思うんだ。だから、もし良かったら……結婚しよう」
「え……け、こん? 待って、まだお金返しきれてない!」
「俺は今、会社を離れた美月個人の本音が聞きたいんだ」
突然のプロポーズに美月は嬉しさと申し訳なさがない混ぜとなって胸の中を渦巻いていた。
尚哉のことはもちろん好きだ。でなければ一緒に二人きりで何年も仕事なんてできない。いつも穏やかで冷静に自分の意見を言う姿には安心感をもらえたし、一生懸命にケース詰めに悪戦苦闘しつつも諦めない姿は叱咤激励されている気分にもなっていた。
尚哉とは行動を共にすることが多く、その度に細やかでさり気ない気配りに胸をときめかせたり、実務優先! と考えないようにしていた二人の今後にポン、と肩を叩かれた気がした。
会社……仕事を離れたら? 真剣な眼差しを逸らさない尚哉から視線が外せないまま、鈍い頭をフル回転させる。フル回転させて思い知る……嬉しい、と。
ーーザァア!
いきなり風が吹き、群生した木々を揺らし、辺り一帯を切なくも温かい香りで包み込んだ。その瞬間の嬉しそうな尚哉の顔を見た時、美月は思い知った。
……ああ、彼だけなんだ。私という人間空気清浄機が傍にいてもちゃんと同じ香りを楽しめるのは。私の作り出した香りを解ってくれるのは……
尚哉に出会う前の自分は表には出さないまでも内心やさぐれていて、中途半端な人間で、社会不適合だと思い込んでいた。
「普通の世界じゃ生きられないなら、俺達だけの世界で笑って生きよう?」
その言葉が素直に美月を頷かせた。
「良かった……今更だけど照れくさいもんだね……あの、これ」
耳まで赤くしている尚哉から渡された小箱には銀木犀の花によく似たモチーフの中に煌めくダイヤの指輪が一つ。
「え! そんなこんな素敵な……まだお金返せていないのに……」
「はぁ……ちょっと会社のことは忘れて、俺の一世一代のプロポーズに真剣に付き合ってよ。サイズ、合う?」
唇を尖らせた尚哉の拗ねた様子に恐る恐る指輪をケースから取り出し指を通す。
「うぅ、なんで解るのぉ? ピッタリだよぉ……どうしよう……嬉しいよぉ……」
再び風が吹く。二人を祝うように香りが強くなり、尚哉は半泣きの美月を初めて抱きしめた。
いつも明るく笑って、真剣に試作に取り組む美月はこんなに小さくて細かったのかと尚哉は内心驚きながら、空を見上げて胸の中に銀木犀の香りを目一杯に取り込んで目を閉じた。
「式はいつにする?」
「気が早いわよ」
「だって、じいちゃんとばあちゃんが生きているうちに……」
「え? 孫、見せたい、とか……?」
「いや、美月の花嫁姿を見せたい。ついでに俺のタキシードも。子供のことは……」
「怖いもんね。それはゆっくり話し合ってからだね。式はね、来年! 場所はココ! 私が来るまでにお祖父様とお祖母様にこの香りの素晴らしさを楽しんでもらって」
「先に顔合わせ、じゃないの?」
いつもの元気を腕の中で取り戻した美月の意見に答えを返す。子供に関しては考えていないわけではないが、怖いのは確かだ。
「ん? ねえ? 顔合わせより先にお付き合い、じゃないの?」
不思議そうに見上げてくる美月の言うことに尚哉は声を上げて笑った。
「確かに! ゼロ日婚約、今日から公私共によろしくお願いします」
「今までと変わらなくない? うふふ、明日挙動不審になりそう」
それはそれでおもしろそうだと思いつつ、尚哉は抱きしめる腕に更に力を込めた。
一般社会の歯車になれない異質な人間が二人。
別々の場所で、それぞれの孤独や苦痛に耐えて銀の花の下で出会った二人。
静かに寄り添って、互いを尊重し合って生き抜いていく二人。
明日からも同じ景色を見て、歩数を合わせて進む二人を、月に照らされて銀色に輝く小さな無数の花々が見守っている静かな静かな夜。
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