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第1章:異世界でもワタシって遠慮しないタイプなんで!
第6話 自立した女はやっぱり働かないと!
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「私、モード商で働くことになったから!」
帰宅早々、マルタに伝えると、マルタは泡を吹いて倒れそうになった。
「そんなに驚くこと? 私は自立した女なんだから働いて当然じゃない!」
「しかし、お嬢様――、貴族のお嬢様というのは、外で働いたりしないものです……しかも庶民の店で働くことになるなんて……」
挙句の果てにマルタはよよよと泣き始める。
「泣くほどのこと? 私のこの才能を生かす絶好のチャンスなのよ? それに、この家だってお金が必要でしょ? 一石二鳥じゃない!」
「私がついていながら……情けない……」
マルタはまだウジウジ言っている。
「はー、困ったもんね。ま、この私が超人気デザイナーになってこの貧乏暮らしから抜け出せば、私が正しかったってわかるでしょ」
サロン・ド・ヴェルディエールの扉をくぐったその瞬間から、空気は冷たく張り詰めていた。
「あら、……貴族のお嬢様がいらしたわ」
目配せしながら囁き合う声、明らかに意図的な無視。誰も挨拶のひとつすら返してこない。
(なるほどねー。あの上顧客のリュシエンヌ様直々のご紹介の期待の新人だもの。そりゃあ、僻みたくなるわ)
まるで芸能界のライバルチェックみたいなもの。自分の中で勝手に納得し、余裕の笑みを浮かべて空いている作業台に腰を下ろす。
「よろしくお願いしまーす♪」
隣の作業台にいるお針子に明るく声をかける。
「そこ、貴族さまのお席じゃありませんので」
針を持った手を止めることなく、隣のお針子がぶっきらぼうに告げる。すると、くすくすと馬鹿にしたような笑いが聞こえた。
「まあまあ、私は今日が初めての新人なんだから、勝手がわからなくて当然よね? ま、貴族と言っても底辺貴族で庶民と大して変わらないから!」
ちょっと自虐っぽく言ってウケを狙ってみたけど、周囲は無反応どころか、さらに冷え込んだような空気になった。
(冗談も通じないの? せっかく私が歩み寄ってあげたのに)
そのとき、背後でガシャンという音がした。振り返ると、小柄な少女が床に大量の裁縫道具を落としていた。
「あっ、ご、ごめんなさい……!」
少女はおどおどとした様子で、床に這いつくばるように落とした道具を拾っている。誰も手を貸そうとしない。むしろあきれた視線を向けている。
「リリー、またなの? 本当に使えないんだから」
「雑用もろくにできないようじゃ、いつまでたってもドレス作りは任せられないわね」
あちこちから罵声を浴びせられる少女を見て、私は眉をひそめた。
「ちょっと、これくらいのこと責めすぎじゃない? 人間、ミスくらいあるでしょ」
私はそう言って少女を手伝おうと屈んだ。
その場にいたお針子たちの敵意が一斉に私に向けられた。
「……貴族さまはお優しいのね」
「ええ、庇えば庇うほど、私たちの仕事が増えるってわかってないみたい」
(うん、これはあれだね。才能と気品に対する、分かりやすい嫉妬だわ)
私は、何を言われようが気にせず、淡々とやるべきことを進める。
「さ、これでおしまい。あなた、名前は?」
「り、リリーといいます……」
「リリー、あなた、もっと堂々とした方がいいわよ。この私みたいに!」
ぽかんとするリリーに笑いかけながら、サヤーナは新しい環境での一歩を、堂々と踏み出したのだった。
帰宅早々、マルタに伝えると、マルタは泡を吹いて倒れそうになった。
「そんなに驚くこと? 私は自立した女なんだから働いて当然じゃない!」
「しかし、お嬢様――、貴族のお嬢様というのは、外で働いたりしないものです……しかも庶民の店で働くことになるなんて……」
挙句の果てにマルタはよよよと泣き始める。
「泣くほどのこと? 私のこの才能を生かす絶好のチャンスなのよ? それに、この家だってお金が必要でしょ? 一石二鳥じゃない!」
「私がついていながら……情けない……」
マルタはまだウジウジ言っている。
「はー、困ったもんね。ま、この私が超人気デザイナーになってこの貧乏暮らしから抜け出せば、私が正しかったってわかるでしょ」
サロン・ド・ヴェルディエールの扉をくぐったその瞬間から、空気は冷たく張り詰めていた。
「あら、……貴族のお嬢様がいらしたわ」
目配せしながら囁き合う声、明らかに意図的な無視。誰も挨拶のひとつすら返してこない。
(なるほどねー。あの上顧客のリュシエンヌ様直々のご紹介の期待の新人だもの。そりゃあ、僻みたくなるわ)
まるで芸能界のライバルチェックみたいなもの。自分の中で勝手に納得し、余裕の笑みを浮かべて空いている作業台に腰を下ろす。
「よろしくお願いしまーす♪」
隣の作業台にいるお針子に明るく声をかける。
「そこ、貴族さまのお席じゃありませんので」
針を持った手を止めることなく、隣のお針子がぶっきらぼうに告げる。すると、くすくすと馬鹿にしたような笑いが聞こえた。
「まあまあ、私は今日が初めての新人なんだから、勝手がわからなくて当然よね? ま、貴族と言っても底辺貴族で庶民と大して変わらないから!」
ちょっと自虐っぽく言ってウケを狙ってみたけど、周囲は無反応どころか、さらに冷え込んだような空気になった。
(冗談も通じないの? せっかく私が歩み寄ってあげたのに)
そのとき、背後でガシャンという音がした。振り返ると、小柄な少女が床に大量の裁縫道具を落としていた。
「あっ、ご、ごめんなさい……!」
少女はおどおどとした様子で、床に這いつくばるように落とした道具を拾っている。誰も手を貸そうとしない。むしろあきれた視線を向けている。
「リリー、またなの? 本当に使えないんだから」
「雑用もろくにできないようじゃ、いつまでたってもドレス作りは任せられないわね」
あちこちから罵声を浴びせられる少女を見て、私は眉をひそめた。
「ちょっと、これくらいのこと責めすぎじゃない? 人間、ミスくらいあるでしょ」
私はそう言って少女を手伝おうと屈んだ。
その場にいたお針子たちの敵意が一斉に私に向けられた。
「……貴族さまはお優しいのね」
「ええ、庇えば庇うほど、私たちの仕事が増えるってわかってないみたい」
(うん、これはあれだね。才能と気品に対する、分かりやすい嫉妬だわ)
私は、何を言われようが気にせず、淡々とやるべきことを進める。
「さ、これでおしまい。あなた、名前は?」
「り、リリーといいます……」
「リリー、あなた、もっと堂々とした方がいいわよ。この私みたいに!」
ぽかんとするリリーに笑いかけながら、サヤーナは新しい環境での一歩を、堂々と踏み出したのだった。
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