偽りの聖女に断罪された本物の聖女、神と騎士に愛される

林 真帆

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プロローグ

第9話 囁かれる疑念

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 晩餐会から一夜明け、王都は新たな噂で満ちていた。


「リディア様こそ真の聖女に違いない」

「セシリア様は聖女ではなかったのでは……?」

 
 まるで雪崩のように広がる声に、セシリアは息苦しさを覚えていた。

 
 王宮の回廊を歩いているだけで、廷臣たちの視線が彼女の背中を追う。その中には同情と敬意を混ぜたものもあれば、好奇心と侮りを含んだものもある。


(悪い夢ならば今すぐに覚めて……)

 
 セシリアは心の中で繰り返した。だが現実は変わらない。

 
 その頃、ルシアは人目につかぬ一室で腹心の侍女に命じていた。


「証拠を集めなさい。――セシリアが“聖女の力を失いつつある”と、人々に思わせるためのね」

 
 侍女は恭しく頷く。
 
 ルシアの策略はこうだ。ほんの些細な失敗や偶然を「聖女の力が衰えた証」として言い立て、噂として広げる。民は都合のいいものしか信じない。

 
 一方、リディアは母に命じられた通りの場所に行き、そこで次々と訪れる人々の前で“癒し”を行っていた。
 
 
 その多くは事前に仕込まれた寸劇であったが、群衆の前で「光が満ちる」演出を見せつけられれば、誰も疑わなかった。


「リディア様……どうか、息子を」

「聖女様にお救いいただければ、我らは一生お仕えします」

 
 祈りの言葉に包まれ、リディアの胸は甘美に震える。

(皆が私を必要としている……お母さまの言う通りにしていれば大丈夫だわ)

 
 日課通りその場を訪れたセシリアの耳に、冷たい囁きが届いた。


「セシリア様よりもリディア様の方が我が国に平和をもたらすのではないか?」


「聖女の座は、分家のリディア様へ――」

 
 膝が震えるのを必死にこらえながら、セシリアは祈るように心の中でつぶやいた。


(私は……聖女ではなかったの……?)

 
 だが、その迷いこそが、ルシアの狙う隙であった。
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