「君を愛することはない」からの溺愛展開ってデフォルト設定だと思ってたんですが違いますか?

つかさ文研

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アホの子

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「ここにきてこんだけ休暇を取らされるとは思わなかったよ」
 キルシュは面倒くさそうに帝都中心の商店街を歩いている。白銀に輝く髪が目を惹き、周りの人は魔術師団長であると気付いてそわそわしているようだ。
「そもそもお前は休暇を取らなすぎなんだよ。新婚なんだからハレアちゃんを旅行にでも連れてってあげりゃいいだろ」
 キルシュの隣でロンが呆れている。
 ハレアは足の速い彼らについて行くために、後ろで小走りをしている。キルシュとハレアの距離感を見て、誰も彼らが夫婦であるとは思っていないだろう。
「それにしてもハレアちゃんのアレを知ってるってことは相当仲のいいご学友だったんだね」
「いや、私のそれを見ていただけで、連絡先も知らないような関係でしたよ」
「魔力量の件を知っている可能性はあるな」
 キルシュは難しい顔をする。
「いや、それを悪用するような人間だったらハレアちゃんを監禁でもしてるだろ」
「監禁って……」
 ハレアは冗談だろうと「ふふふ」と笑った。
「いや、全然あり得る話だからね~」
 ロンは苦笑いをしている。
「大体他に知っている人がいるならちゃんと言っておいてほしかったものだな」
 キルシュは少し怒った声色だ。
「い、一応学校の同期で例のものを壊してるのを知ってる人がいるっては言ってましたけど!」
 ハレアはむくれながら言い返す。
「そうな衝撃的なこと言われたら他のことなんか忘れるだろ!」
「言ったことには違わないですし!」
「まあまあ、ただでさえたまにしか会わない夫婦なんだから仲良くしなよ」
 ロンが二人の言い合いをなだめる。

 歩くペースの早いキルシュとロンは、お目当ての魔道具店には目もくれず、通り過ぎた。
「あの~!ここです!こっちです!」
 ハレアは彼らを大声で呼び止めた。
「ごめんごめん!」
 ロンはハレアの元へと駆け寄った。それとは対照的にゆっくりと魔道具店に向かうキルシュ。
「古そうだな……」
 店の外観を見てキルシュがぼそっと呟いた。
「老舗っていうんですよ」
 ハレアはキルシュの扱いに慣れてきたのか言い返すようになった。
 キルシュは「ふうん……」と不機嫌そうに言い、魔道具店のドアを開いた。

「いらっしゃい……って団長!?」
 突然、本物の魔術師団長を前にカミュレスも驚きを隠せないようだ。
 キルシュの後ろからハレアがひょこっと顔を出す。
「カミュ!お久しぶりです!」
「ハレア・ロンダム!お前!」
 カミュレスはハレアの元へと駆け寄って彼女の手を無理やり引き、キルシュから離した。

「これどういうことだよ!あのことバレたんじゃねぇだろうな!」
 カミュレスはハレアに耳打ちをする。
「それに隣の人もあれ第四隊長だろ!」
「バレたも何も……。私の旦那さんで~す!」
 そう言ってハレアはドアの前に立つキルシュに両手を向けて示した。
「は?どっち?」
「団長の方!」
「えっ、結婚相手ってキルシュ団長かよ!」
「あれ?言わなかったっけ?」
「言われてねーよ!!!」

「ねえ、キルシュ、秘密を知るご学友があんなイケメン男子だったって知ってたの?」
 ロンは仲良さそうに内緒話をするハレアとカミュレスを見て、ジトっとした目をしている。
「いや、聞いてない」
 相変わらずキルシュは特に表情は変わらない。
「ハレアちゃん、やっぱモテるんじゃね?可愛いし、天真爛漫だし、ちょっとアホだし」
「アホなのはモテる要素じゃないと思いますけど」
 キルシュは少し眉をひそめ、ハレアを見た。
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