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ラストダンス
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パーティーにおけるラストダンスーー
誕生日や結婚披露パーティーにおけるそれは主賓にとっての特別なものである。結婚披露であれば、主賓の新婚夫婦が踊る。誕生パーティーであれば、主賓夫婦や婚約者と踊るものだ。婚約者がいない場合、主賓である者の最も気になる人、もしくは想い人を誘い踊る。多くの来賓の前で踊るそれは事実上のプロポーズのようなものである。
「ハレア・インハート夫人、私とラストダンスを踊っていただけますか?」
前代未聞だった。主賓である第三皇子殿下がラストダンスに誘ったのは既婚者であるハレアだったのだ。事実上の略奪宣言になる。
跪いて手を取る皇族の誘いをハレアは断れることもなく、キルシュの隣から引き剥がされるように会場の中央へと手を引かれた。
「殿下、私……」
ハレアは第三皇子、フェイリス殿下に断りを入れようかと言葉を発するが、なんと言えばいいのか分からず言葉に詰まっていた。そんなことはお構いなしに会場の大きなシャンデリアの下へとハレアを誘導した。
ハレアの声も虚しく、オーケストラの音楽が始まる。フェイリス殿下は踊り出し、ハレアもそれにつられるようにステップを踏んだ。ダンスを踊るのは約八年ぶりだが、殿下のリードがうまいのか見られる程度にはなっていた。
「ハレアさん、お上手ですね」
ハレアの腰を抱いて、踊りながらフェイリス殿下は屈託のない笑顔で言った。それは帝国を乗っ取ろうとしたり、人の妻を略奪するような悪い人には思えない、子どものような笑顔だった。
「で、殿下のリードが上手なんですよ」
「ゼゼでいいですよ。家族や親しい人は皆そう呼ぶので」
フェイリス殿下がそう言った時に、ラストダンスの曲が終わった。殿下はハレアの右手を取り、手の甲にキスをした。
「では、ハレアさん。またお誘いいたしますね」
フェイリス殿下はくしゃっとした笑顔でそう言った。去年魔術学校で見かけていた色んな女性と歩いていたフェイリス殿下とはかけ離れていて、同じ人物なのか自分の記憶を疑ったくらいだ。
―――
「全く、君は……。あれがどういうことなのか分かっているのか?」
帰りの馬車の中で足を組んでいるキルシュがため息交じりで目の前のハレアのことを見下げた。相変わらず、ハレアの隣を死守しているリールはおどおどとしている。
「まあまあ、キルシュ。皇族の誘いを伯爵家が断れるわけがないだろ」
ルードがキルシュをなだめるように言った。
「第三皇子は何か言ってたか?」
キルシュは眉間にしわを寄せ、高圧的にハレアを問いただす。
「また誘うとだけ……。あっ、ゼゼと呼んでほしいとも言ってました」
ハレアはキルシュの態度に少し不服のようで口を尖らせながら語った。
「ゼゼってミドルネームだよな?遠回しに恋人になれってことか?」
ルードは相変わらず冷静に分析をしている。
「正直、フェイリス殿下とは学校でたまに見かけた程度で、面識はないようなものなんですよね」
「気付いてるんじゃないのか?お嬢のこと。森で魔石破壊してたこととか、魔力放出とか、その辺のやつ。正直、そうじゃなければ皇子殿下が既婚の伯爵夫人に興味を示すとは思えない」
ルードは意外と失礼なことをズバズバと言う。
「まあ、実際のところはそうだろうな」
キルシュは「コイツに魔力量以外での魅力はないし」と言わんばかりの目でハレアを見た。
ハレアはその雰囲気を感じ取り、キルシュに対して舌を出し「ベー」と小さく威嚇した。
誕生日や結婚披露パーティーにおけるそれは主賓にとっての特別なものである。結婚披露であれば、主賓の新婚夫婦が踊る。誕生パーティーであれば、主賓夫婦や婚約者と踊るものだ。婚約者がいない場合、主賓である者の最も気になる人、もしくは想い人を誘い踊る。多くの来賓の前で踊るそれは事実上のプロポーズのようなものである。
「ハレア・インハート夫人、私とラストダンスを踊っていただけますか?」
前代未聞だった。主賓である第三皇子殿下がラストダンスに誘ったのは既婚者であるハレアだったのだ。事実上の略奪宣言になる。
跪いて手を取る皇族の誘いをハレアは断れることもなく、キルシュの隣から引き剥がされるように会場の中央へと手を引かれた。
「殿下、私……」
ハレアは第三皇子、フェイリス殿下に断りを入れようかと言葉を発するが、なんと言えばいいのか分からず言葉に詰まっていた。そんなことはお構いなしに会場の大きなシャンデリアの下へとハレアを誘導した。
ハレアの声も虚しく、オーケストラの音楽が始まる。フェイリス殿下は踊り出し、ハレアもそれにつられるようにステップを踏んだ。ダンスを踊るのは約八年ぶりだが、殿下のリードがうまいのか見られる程度にはなっていた。
「ハレアさん、お上手ですね」
ハレアの腰を抱いて、踊りながらフェイリス殿下は屈託のない笑顔で言った。それは帝国を乗っ取ろうとしたり、人の妻を略奪するような悪い人には思えない、子どものような笑顔だった。
「で、殿下のリードが上手なんですよ」
「ゼゼでいいですよ。家族や親しい人は皆そう呼ぶので」
フェイリス殿下がそう言った時に、ラストダンスの曲が終わった。殿下はハレアの右手を取り、手の甲にキスをした。
「では、ハレアさん。またお誘いいたしますね」
フェイリス殿下はくしゃっとした笑顔でそう言った。去年魔術学校で見かけていた色んな女性と歩いていたフェイリス殿下とはかけ離れていて、同じ人物なのか自分の記憶を疑ったくらいだ。
―――
「全く、君は……。あれがどういうことなのか分かっているのか?」
帰りの馬車の中で足を組んでいるキルシュがため息交じりで目の前のハレアのことを見下げた。相変わらず、ハレアの隣を死守しているリールはおどおどとしている。
「まあまあ、キルシュ。皇族の誘いを伯爵家が断れるわけがないだろ」
ルードがキルシュをなだめるように言った。
「第三皇子は何か言ってたか?」
キルシュは眉間にしわを寄せ、高圧的にハレアを問いただす。
「また誘うとだけ……。あっ、ゼゼと呼んでほしいとも言ってました」
ハレアはキルシュの態度に少し不服のようで口を尖らせながら語った。
「ゼゼってミドルネームだよな?遠回しに恋人になれってことか?」
ルードは相変わらず冷静に分析をしている。
「正直、フェイリス殿下とは学校でたまに見かけた程度で、面識はないようなものなんですよね」
「気付いてるんじゃないのか?お嬢のこと。森で魔石破壊してたこととか、魔力放出とか、その辺のやつ。正直、そうじゃなければ皇子殿下が既婚の伯爵夫人に興味を示すとは思えない」
ルードは意外と失礼なことをズバズバと言う。
「まあ、実際のところはそうだろうな」
キルシュは「コイツに魔力量以外での魅力はないし」と言わんばかりの目でハレアを見た。
ハレアはその雰囲気を感じ取り、キルシュに対して舌を出し「ベー」と小さく威嚇した。
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