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ロンダム伯爵家③
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談話室にて――
「そもそもパパはあんな大事な話を玄関先でするなんて信じられないわ」
ハレアの母親であるルミアが扇子で口元を隠しながら憤る。
「お父様!俺はハレアの結婚には断固反対です!」
兄のソレートはハレアの右隣に座り、彼女の肩を抱きかかえている。
「えっ!ねぇね、結婚しちゃうの?僕と結婚してくれるんじゃないの?」
弟のジュードはハレアの腰に巻き付くように抱き着き、上目遣いで彼女に訴える。
兄弟たちと向かい合って座る両親。厳しい顔をするルミアとは対照的に、あわあわと慌てている父のラルベス。伯爵家当主とは思えないほど、妻には頭が上がらず情けない。ハレアは家の中での父の姿しか見たことがないため、本当に文官として働けているのか日頃から心配している。
「そもそもソレートが『ハレアの可愛い花嫁衣裳を見ないと俺も結婚しない』と言っていたじゃないか!だから、パパが最高の結婚相手を探してきたぞ!」
「いや、お父様!それは言葉の綾でまだ結婚する気はないから~……」
ハレアはソレートを軽蔑の眼差しで見る。
「お兄ちゃん、私を理由にしてたのね!ひっど~い!」
そう言い放ち顔をプイッと反らした。
「いや、ハレア?ちがっ!あのね、お兄ちゃんの話聞いて?こっち向いて?」
「もういいです!埒が明かないので私が説明するわ」
やはりここでも、ルミアが治める。鶴の一声というべきか。彼女が喋るとロンダム家はピタリと静かになる。
「まあ、結婚相手としては申し分ない方よ。キルシュ・ウェル・インハート伯爵よ」
ハレアはハッとした。魔術をたしなむ者として彼の名前を知らないものはいない。本来なら12歳から18歳までの6年間通う魔術学校を主席、飛び級でたった2年で卒業。14歳で帝国魔術師になったという魔術の天才。そして23歳という異例の若さで魔術師団長にまで上り詰めた方だ。彼の炎の魔術を一目でも見れば、圧倒的な力の差にひれ伏すと話題だ。
本来なら、ソレートもハレアも魔術学校で被る年齢のため、見かける事もありそうだが、飛び級卒業のため、二人が入学時にはすでに学校にはいなかった。そして彼が残した数々の伝説だけが学校中に残っていた。
「インハート伯爵が今年、魔術師団長になったけどまだ既婚じゃないからって皇帝陛下にせかされて、今回の縁談の話が来たの。あちらとしては同等の身分で魔力量の多い令嬢をご所望でハレアはどうかしらってなったのよね~。ハレアは魔術の出来はアレでも魔力量は多いみたいじゃない?それでパパ経由で打診したらあれよあれよと決まっちゃって!もう婚約なんかすっ飛ばしちゃって、結婚しましょってね!キャー!運命よ~!」
血筋だろうか。ハレアの母親ルミアもまた恋愛話が大好きなのだ。
「しかし、お母様!確かに魔術師団長なら結婚相手としては申し分ないですが、彼は……」
ソレートが止めに入る。
「そうなの!インハート伯爵って世間では『炎の冷徹魔術師』って呼ばれているのよね~」
依然として喜々としているルミア。
「そんな冷たい人のところに嫁いだら苦労するのはハレアではないですか!」
「ねぇね、いじめられちゃうの?」
「それは世間の評価であって悪いようにはしないと、パパは思うぞ~!」
ハレアの考えなど無視に会話は進んでいく。
「それにね、ハレア!」
ルミアの扇子を閉じるカシャッという音が響く。それを合図にああでもないこうでもないと騒いでいた男性陣がまたしても口を閉じる。
「見たくない?『炎の冷徹魔術師』が結婚相手の献身的な愛に溶かされ溺愛しちゃう様を!」
その瞬間、ハレアの目がキラキラと輝く。そう、これは物語の主人公の始まり。
(私と冷徹魔術師との愛の物語!プロローグ!)
「パパ!ママ!私、インハート伯爵と結婚します!」
ハレアは腰に巻き付くジュードも、肩を抱くソレートも振り払って立ち上がり拳を上げて宣言した。
「そもそもパパはあんな大事な話を玄関先でするなんて信じられないわ」
ハレアの母親であるルミアが扇子で口元を隠しながら憤る。
「お父様!俺はハレアの結婚には断固反対です!」
兄のソレートはハレアの右隣に座り、彼女の肩を抱きかかえている。
「えっ!ねぇね、結婚しちゃうの?僕と結婚してくれるんじゃないの?」
弟のジュードはハレアの腰に巻き付くように抱き着き、上目遣いで彼女に訴える。
兄弟たちと向かい合って座る両親。厳しい顔をするルミアとは対照的に、あわあわと慌てている父のラルベス。伯爵家当主とは思えないほど、妻には頭が上がらず情けない。ハレアは家の中での父の姿しか見たことがないため、本当に文官として働けているのか日頃から心配している。
「そもそもソレートが『ハレアの可愛い花嫁衣裳を見ないと俺も結婚しない』と言っていたじゃないか!だから、パパが最高の結婚相手を探してきたぞ!」
「いや、お父様!それは言葉の綾でまだ結婚する気はないから~……」
ハレアはソレートを軽蔑の眼差しで見る。
「お兄ちゃん、私を理由にしてたのね!ひっど~い!」
そう言い放ち顔をプイッと反らした。
「いや、ハレア?ちがっ!あのね、お兄ちゃんの話聞いて?こっち向いて?」
「もういいです!埒が明かないので私が説明するわ」
やはりここでも、ルミアが治める。鶴の一声というべきか。彼女が喋るとロンダム家はピタリと静かになる。
「まあ、結婚相手としては申し分ない方よ。キルシュ・ウェル・インハート伯爵よ」
ハレアはハッとした。魔術をたしなむ者として彼の名前を知らないものはいない。本来なら12歳から18歳までの6年間通う魔術学校を主席、飛び級でたった2年で卒業。14歳で帝国魔術師になったという魔術の天才。そして23歳という異例の若さで魔術師団長にまで上り詰めた方だ。彼の炎の魔術を一目でも見れば、圧倒的な力の差にひれ伏すと話題だ。
本来なら、ソレートもハレアも魔術学校で被る年齢のため、見かける事もありそうだが、飛び級卒業のため、二人が入学時にはすでに学校にはいなかった。そして彼が残した数々の伝説だけが学校中に残っていた。
「インハート伯爵が今年、魔術師団長になったけどまだ既婚じゃないからって皇帝陛下にせかされて、今回の縁談の話が来たの。あちらとしては同等の身分で魔力量の多い令嬢をご所望でハレアはどうかしらってなったのよね~。ハレアは魔術の出来はアレでも魔力量は多いみたいじゃない?それでパパ経由で打診したらあれよあれよと決まっちゃって!もう婚約なんかすっ飛ばしちゃって、結婚しましょってね!キャー!運命よ~!」
血筋だろうか。ハレアの母親ルミアもまた恋愛話が大好きなのだ。
「しかし、お母様!確かに魔術師団長なら結婚相手としては申し分ないですが、彼は……」
ソレートが止めに入る。
「そうなの!インハート伯爵って世間では『炎の冷徹魔術師』って呼ばれているのよね~」
依然として喜々としているルミア。
「そんな冷たい人のところに嫁いだら苦労するのはハレアではないですか!」
「ねぇね、いじめられちゃうの?」
「それは世間の評価であって悪いようにはしないと、パパは思うぞ~!」
ハレアの考えなど無視に会話は進んでいく。
「それにね、ハレア!」
ルミアの扇子を閉じるカシャッという音が響く。それを合図にああでもないこうでもないと騒いでいた男性陣がまたしても口を閉じる。
「見たくない?『炎の冷徹魔術師』が結婚相手の献身的な愛に溶かされ溺愛しちゃう様を!」
その瞬間、ハレアの目がキラキラと輝く。そう、これは物語の主人公の始まり。
(私と冷徹魔術師との愛の物語!プロローグ!)
「パパ!ママ!私、インハート伯爵と結婚します!」
ハレアは腰に巻き付くジュードも、肩を抱くソレートも振り払って立ち上がり拳を上げて宣言した。
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