【完結】ハッタツ戦記 -ぼくらは、異世界転生しなくても常に戦場の中-

〈一〉おねしょをするほどの強いストレス

　その日、ぼくは深夜に目が覚め、股の辺りにいつもとは違う生暖かさを感じた。でも、まさか、ぼくはもう30歳になる大人だ。おねしょをするはずがない。

「きっと、これは夢に違いない」

　目の前の現実を受け入れられず、夢だと思った。だが、パンツやズボンがぐっしょりと濡れた感覚、布団の湿り具合が夢とは明らかに異なった。間違いなく、現実だ。ぼくは、30歳にして、おねしょをしてしまったのだ。

　ぼくは、階段を降り、風呂場に向かった。脱衣場で、パジャマを脱いで、洗濯機に放り込んだ。風呂場でシャワーを浴び、服を着た。ぼくは、洗面台に近づき、置いてあるドライヤーを手に取った。洗面台の鏡に映った顔の中の目は真っ赤だった。

「あれだけ泣いたんだもんな。寝てもすぐには元には戻らないか……」

　ぼくは、ぽつりとつぶやいた。

　階段を上り、自分の部屋に入ってドライヤーの電源を入れた。布団を乾かしながら、ぼくは数時間前にあった出来事を思い出した。