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第十一章
482:救世主
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「コナカさん、いい? 私に何かあったときは、あなたがこの仕事をするのよ。私だって、あなたに嫌な思いをさせたくて言っているのではないの。ただ、あなたにできるようになって欲しいから、仕事には厳しくしているだけ。わかるわね?」
「はい……」
携帯端末を手にしたカネサキから厳しい言葉が飛ぶ。
コナカにもカネサキが言っていることは理解できる。
ただ、そこまでされる価値が自分にあるとは思えないし、そもそもカネサキの求める厳しさの世界そのものが苦手なだけだ。
カネサキが更に何か言おうとした瞬間、コナカにとっての救世主が上方から現れた。
カネサキとコナカを巨大な影が覆ったのだ。
「オオイダ先輩の報告も終わったところだし、すまないけど先輩方、そろそろ出発にしますよ」
ロビーが上半身を折り曲げて、画面を覗き込んだ。
「……わかったわ。もう少し進めば開けた場所に出ると思う。今日のうちに進めるところまで進むべきだと思うわ」
カネサキがそう答えて携帯端末を閉じながら立ち上がった。
カネサキは待ちきれないといった様子で、身体を動かしながら出発を待っている。早く進んで「開けた場所」にたどり着きたいのだろう。
コナカも遅れて立ち上がった。
その様子を見たロビーがカネサキに声をかける。
「おっと、カネサキ先輩。コナカ先輩にやってもらいたい仕事があるので、前に回ってもらいたいのですけど、構わないかな?」
「私はその方が都合がいいけど……コナカさん、いい?」
「はい……」
コナカがうなずくとすぐに隊列が変更され、ロビーが先頭、次にコナカ、次いでカネサキ、オオイダ、アイネス、メイ、最後尾にホンゴウの順となった。
しかし、ロビーは自らの言葉に反し、しばらくの間コナカに指示を与えることもなく、ひたすら前にむけて進んでいった。
時々、アイネスに標高を尋ねたり、カネサキに進行方向を尋ねることはあったが、ロビーはコナカに話しかけるそぶりすら見せない。
こうして二時間ほど進み、アイネスが読み上げる標高が四〇〇メートル台半ばにさしかかった。
いつの間にか足元から雪は消えかかっており、ぬかるんだ地面が顔を覗かせていた。
そして、隊の右手にあった崖は緩やかな下り坂へと変わっていた。
坂の下には細い川が顔を覗かせている。
川の水面までは高さで数十メートルくらいであろう。
「……もうそろそろだな。カネサキさん、どんな感じだ?」
ロビーが前を向いたまま問うた。
「そうね……
画像だともう少し先に平らな場所があるように見えるわよ。今までの進むペースを考えたら一〇分くらいだと思うわ」
カネサキが携帯端末の画面から視線を上げて答えた。
間を歩くコナカからすれば、自分の頭上を飛び越えて会話がなされているので、何となく疎外されているような気分になる。これはコナカの考えすぎではあるのだが……
「わかった、もう少し進んでみよう。悪いがもう少し我慢して欲しい」
ロビーが首だけ後ろに向けて、隊の皆に向けて指示した。
ロビーの指示を拒否する返答は聞かれなかった。
カネサキの言葉どおり、一〇分ほど進むと右手の坂がほとんど平らになっていた。
そして、左手に切り立っていた崖もなだらかになっており、視界も急速に開けてきている。
ロビーは不意に隊の歩みを止め、足元を確認するように命じた。
「どうだ? 地面はぬかるんでいないように俺は思うが……」
「そんな気もしますね……」
ロビーの問いかけに最初に答えたのはホンゴウであった。
ホンゴウの答えにロビーはうなずくと、この場所が居住に適しているかどうか調べたいという意志を示した。
これに対し、カネサキが隊を二手に分けることを提案した。
地盤を調査する組と周辺の状況を調べる組とに分けた方が効率的だとしたのである。
そして、カネサキは併せて自らを含めた「とぉえんてぃ? ず」の三名を周辺の状況を調べる組に割り振ることを提案した。
地盤調査をする機械の操作には体力が要る。このため体力のある男性陣を地盤調査に割り当て、残ったカネサキらが周辺の状況を調べればよいという考えに基づいたものであった。
メイが周辺の状況を調べるメンバーに入っていないのは、カネサキが意図的に無視した結果だと思われた。
ロビーは少し考えてから、カネサキの提案からホンゴウとコナカを入れ替えたチーム編成を行い、ホンゴウに周辺の調査を命じたのだった。
「はい……」
携帯端末を手にしたカネサキから厳しい言葉が飛ぶ。
コナカにもカネサキが言っていることは理解できる。
ただ、そこまでされる価値が自分にあるとは思えないし、そもそもカネサキの求める厳しさの世界そのものが苦手なだけだ。
カネサキが更に何か言おうとした瞬間、コナカにとっての救世主が上方から現れた。
カネサキとコナカを巨大な影が覆ったのだ。
「オオイダ先輩の報告も終わったところだし、すまないけど先輩方、そろそろ出発にしますよ」
ロビーが上半身を折り曲げて、画面を覗き込んだ。
「……わかったわ。もう少し進めば開けた場所に出ると思う。今日のうちに進めるところまで進むべきだと思うわ」
カネサキがそう答えて携帯端末を閉じながら立ち上がった。
カネサキは待ちきれないといった様子で、身体を動かしながら出発を待っている。早く進んで「開けた場所」にたどり着きたいのだろう。
コナカも遅れて立ち上がった。
その様子を見たロビーがカネサキに声をかける。
「おっと、カネサキ先輩。コナカ先輩にやってもらいたい仕事があるので、前に回ってもらいたいのですけど、構わないかな?」
「私はその方が都合がいいけど……コナカさん、いい?」
「はい……」
コナカがうなずくとすぐに隊列が変更され、ロビーが先頭、次にコナカ、次いでカネサキ、オオイダ、アイネス、メイ、最後尾にホンゴウの順となった。
しかし、ロビーは自らの言葉に反し、しばらくの間コナカに指示を与えることもなく、ひたすら前にむけて進んでいった。
時々、アイネスに標高を尋ねたり、カネサキに進行方向を尋ねることはあったが、ロビーはコナカに話しかけるそぶりすら見せない。
こうして二時間ほど進み、アイネスが読み上げる標高が四〇〇メートル台半ばにさしかかった。
いつの間にか足元から雪は消えかかっており、ぬかるんだ地面が顔を覗かせていた。
そして、隊の右手にあった崖は緩やかな下り坂へと変わっていた。
坂の下には細い川が顔を覗かせている。
川の水面までは高さで数十メートルくらいであろう。
「……もうそろそろだな。カネサキさん、どんな感じだ?」
ロビーが前を向いたまま問うた。
「そうね……
画像だともう少し先に平らな場所があるように見えるわよ。今までの進むペースを考えたら一〇分くらいだと思うわ」
カネサキが携帯端末の画面から視線を上げて答えた。
間を歩くコナカからすれば、自分の頭上を飛び越えて会話がなされているので、何となく疎外されているような気分になる。これはコナカの考えすぎではあるのだが……
「わかった、もう少し進んでみよう。悪いがもう少し我慢して欲しい」
ロビーが首だけ後ろに向けて、隊の皆に向けて指示した。
ロビーの指示を拒否する返答は聞かれなかった。
カネサキの言葉どおり、一〇分ほど進むと右手の坂がほとんど平らになっていた。
そして、左手に切り立っていた崖もなだらかになっており、視界も急速に開けてきている。
ロビーは不意に隊の歩みを止め、足元を確認するように命じた。
「どうだ? 地面はぬかるんでいないように俺は思うが……」
「そんな気もしますね……」
ロビーの問いかけに最初に答えたのはホンゴウであった。
ホンゴウの答えにロビーはうなずくと、この場所が居住に適しているかどうか調べたいという意志を示した。
これに対し、カネサキが隊を二手に分けることを提案した。
地盤を調査する組と周辺の状況を調べる組とに分けた方が効率的だとしたのである。
そして、カネサキは併せて自らを含めた「とぉえんてぃ? ず」の三名を周辺の状況を調べる組に割り振ることを提案した。
地盤調査をする機械の操作には体力が要る。このため体力のある男性陣を地盤調査に割り当て、残ったカネサキらが周辺の状況を調べればよいという考えに基づいたものであった。
メイが周辺の状況を調べるメンバーに入っていないのは、カネサキが意図的に無視した結果だと思われた。
ロビーは少し考えてから、カネサキの提案からホンゴウとコナカを入れ替えたチーム編成を行い、ホンゴウに周辺の調査を命じたのだった。
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