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第十一章
496:広報企画室長、提案する
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IMPUを取り巻く状況は決して良くない。
また、トップのアカシも全面的に支持されているわけではない。
エリックはこうした現実を突きつけてみせたのだった。
「IMPUに社から応援を送ってみた方がよいかもしれませんが、どうしましょうか?」
レイカがミヤハラとサクライに向けて提案した。
とりあえず探りを入れてみた、というべきかもしれない。
「……サクライ、お前に判断は任せる」
ミヤハラが重い口を開いた。
「何ですかそれ?! 社長が決めなくてどうするんですか?」
「……だからお前に任せる、って決めたじゃないか」
「……」
サクライの声はやや怒りを含んでいたが、その調子は必ずしも強くない。
このようなやり取りに慣れてしまったのかも知れない。
サクライは相手をエリックに切り替えて、「お前に任せる」とした。
こうしたあたり、ミヤハラとサクライは精神的に非常に近いグループにあるともいえる。
エリックはミヤハラとサクライを放ったままレイカと相談を始めた。
相談によって判明したことだが、レイカが気に掛けていたのは、「アカシがIMPUを纏めきれるかどうか」「IMPUが分裂、またはアカシが力を失った場合、インデスト全体がECN社に敵対しないか」という点であった。
現在、ECN社はIMPUから金属材料を直接購入しており、以前より低いコストで安定的に材料が調達できている。
ECN社は他に金属材料を調達できるつてを持っていないわけではないが、コストと供給の安定性の観点ではIMPUが圧倒的に優位である。
これもミヤハラやサクライなどがアカシと共に戦った仲だからであり、特にエリックとアカシは面識があるので話もスムーズに進んでいる。また、OP社を介さないということも影響している。
これが他の者との交渉となった場合、ECN社の材料調達に支障が出る可能性があるし、インデストが混乱状態に陥れば、更に重大な事態になるであろう。
レイカはそれを気にして、先手を打とうと主張している。
また、レイカは口には出さなかったが、IMPUとの材料購入交渉の中で、サカデという女性理事が時々口出ししてくるのを危険視している。
本来権限もないのに価格や条件にうるさいサカデの存在は、今後ECN社にとっての脅威となり得るとレイカは考えている。
レイカがIMPUに応援を送り込むというのは、サカデの執拗な介入に対抗するために、楔を打ち込んでおく目的もあった。
「インデストで不足しているのも発電技術者ですよね? それほど余裕はありませんが、直接こちらからインデストに発電技術者を派遣しますか?」
エリックの質問に対し、レイカはそれは止めた方がよい、と言う。
理由を問うと、レイカは次のように答えた。
OP社はインデストでも発電事業を行っており、必要があればOP社自らがインデストに技術者を派遣するだろう。
インデストの電力供給不足は明らかであるが、それにも関わらずOP社がインデストの技術者を増員しないのは、本社の技術者も不足しているからである。
一方、ECN社はOP社本社に技術者を派遣しており、この状況でインデストに技術者を派遣するとなると、OP社から人気取りだと疑いの目をかけられかねない。だから、もし技術者を派遣するのならばOP社本社に派遣している人数を増員すべきだ、と。
実のところ、OP社では昨年末に本社からインデストに一部の発電技術者を戻しており、彼らは一月中旬にはインデストに到着していた。
しかし、本社での過酷な業務やインデストの状況を嫌った者達が大量離脱したため、実際にインデストで発電事業に復帰したのは当初予定の二割に満たない数であった。
「それはよいとして……それでインデストの技術者が増員されるでしょうか?」
エリックの疑問ももっともである。
そしてレイカも、「恐らくインデストへの増員はないでしょう」と切り捨てた。
「じゃあ、どうすると言うのだ?」
背中を向けながらも話を聞いていたサクライが、しびれを切らして質問を投げかけた。
「IMPUとその抵抗勢力、インデストで生活している市民、そして発電事業者、すなわちOP社のインデスト支店との間で電力供給と鉱工業製品の生産について協議する場を設けて、最適な電力供給の方法を決めてきます。交渉の仲介役としてECN社が入ればよいでしょう」
「仲介役は誰がやるんだ?」
「立場的には副社長あたりが適切だとは思いますが……」
「俺か? ちょっと待ってくれ」
サクライが大して慌てた様子も見せずにレイカにストップをかけた。
「ですが……インデストの現状を知るためにも現地に誰かが赴く必要があるでしょう。社のトップが本社を長く空けるのは問題があると思いますので、インデストには私が向かいましょう」
レイカの申し出に、今まで興味がなさそうに椅子にひっくり返っていたミヤハラがのっそりと身体を起こした。
「そうか……だったらメルツ室長、インデストに向かってくれないか」
ミヤハラの口調はのんびりとしたもので、自分の子供に近くへの使いを頼むかのようであった。
レイカがちらりとサクライの方に視線を向けた。
副社長はどうお考えですか、と問いかけているようであった。
また、トップのアカシも全面的に支持されているわけではない。
エリックはこうした現実を突きつけてみせたのだった。
「IMPUに社から応援を送ってみた方がよいかもしれませんが、どうしましょうか?」
レイカがミヤハラとサクライに向けて提案した。
とりあえず探りを入れてみた、というべきかもしれない。
「……サクライ、お前に判断は任せる」
ミヤハラが重い口を開いた。
「何ですかそれ?! 社長が決めなくてどうするんですか?」
「……だからお前に任せる、って決めたじゃないか」
「……」
サクライの声はやや怒りを含んでいたが、その調子は必ずしも強くない。
このようなやり取りに慣れてしまったのかも知れない。
サクライは相手をエリックに切り替えて、「お前に任せる」とした。
こうしたあたり、ミヤハラとサクライは精神的に非常に近いグループにあるともいえる。
エリックはミヤハラとサクライを放ったままレイカと相談を始めた。
相談によって判明したことだが、レイカが気に掛けていたのは、「アカシがIMPUを纏めきれるかどうか」「IMPUが分裂、またはアカシが力を失った場合、インデスト全体がECN社に敵対しないか」という点であった。
現在、ECN社はIMPUから金属材料を直接購入しており、以前より低いコストで安定的に材料が調達できている。
ECN社は他に金属材料を調達できるつてを持っていないわけではないが、コストと供給の安定性の観点ではIMPUが圧倒的に優位である。
これもミヤハラやサクライなどがアカシと共に戦った仲だからであり、特にエリックとアカシは面識があるので話もスムーズに進んでいる。また、OP社を介さないということも影響している。
これが他の者との交渉となった場合、ECN社の材料調達に支障が出る可能性があるし、インデストが混乱状態に陥れば、更に重大な事態になるであろう。
レイカはそれを気にして、先手を打とうと主張している。
また、レイカは口には出さなかったが、IMPUとの材料購入交渉の中で、サカデという女性理事が時々口出ししてくるのを危険視している。
本来権限もないのに価格や条件にうるさいサカデの存在は、今後ECN社にとっての脅威となり得るとレイカは考えている。
レイカがIMPUに応援を送り込むというのは、サカデの執拗な介入に対抗するために、楔を打ち込んでおく目的もあった。
「インデストで不足しているのも発電技術者ですよね? それほど余裕はありませんが、直接こちらからインデストに発電技術者を派遣しますか?」
エリックの質問に対し、レイカはそれは止めた方がよい、と言う。
理由を問うと、レイカは次のように答えた。
OP社はインデストでも発電事業を行っており、必要があればOP社自らがインデストに技術者を派遣するだろう。
インデストの電力供給不足は明らかであるが、それにも関わらずOP社がインデストの技術者を増員しないのは、本社の技術者も不足しているからである。
一方、ECN社はOP社本社に技術者を派遣しており、この状況でインデストに技術者を派遣するとなると、OP社から人気取りだと疑いの目をかけられかねない。だから、もし技術者を派遣するのならばOP社本社に派遣している人数を増員すべきだ、と。
実のところ、OP社では昨年末に本社からインデストに一部の発電技術者を戻しており、彼らは一月中旬にはインデストに到着していた。
しかし、本社での過酷な業務やインデストの状況を嫌った者達が大量離脱したため、実際にインデストで発電事業に復帰したのは当初予定の二割に満たない数であった。
「それはよいとして……それでインデストの技術者が増員されるでしょうか?」
エリックの疑問ももっともである。
そしてレイカも、「恐らくインデストへの増員はないでしょう」と切り捨てた。
「じゃあ、どうすると言うのだ?」
背中を向けながらも話を聞いていたサクライが、しびれを切らして質問を投げかけた。
「IMPUとその抵抗勢力、インデストで生活している市民、そして発電事業者、すなわちOP社のインデスト支店との間で電力供給と鉱工業製品の生産について協議する場を設けて、最適な電力供給の方法を決めてきます。交渉の仲介役としてECN社が入ればよいでしょう」
「仲介役は誰がやるんだ?」
「立場的には副社長あたりが適切だとは思いますが……」
「俺か? ちょっと待ってくれ」
サクライが大して慌てた様子も見せずにレイカにストップをかけた。
「ですが……インデストの現状を知るためにも現地に誰かが赴く必要があるでしょう。社のトップが本社を長く空けるのは問題があると思いますので、インデストには私が向かいましょう」
レイカの申し出に、今まで興味がなさそうに椅子にひっくり返っていたミヤハラがのっそりと身体を起こした。
「そうか……だったらメルツ室長、インデストに向かってくれないか」
ミヤハラの口調はのんびりとしたもので、自分の子供に近くへの使いを頼むかのようであった。
レイカがちらりとサクライの方に視線を向けた。
副社長はどうお考えですか、と問いかけているようであった。
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