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第十二章
534:エリック対シシガ
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興味を持ったのか、シシガが身を乗り出してきてエリックにミヤハラのことを根掘り葉掘り聞きだそうとしている。
エリックは気圧されながらも慎重に言葉を選びながら質問に答えていく。
(エリックも受け流すなり、ガツンと一言言うなりして止めればいいのにねぇ)
そうは考えるものの、ウィリマが二人を止める様子は見受けられないし、彼女にもその気はなかった。
止めない方がウィリマにとって面白いからで、彼女自身に実害がない限り、このまま二人を放置しておくつもりである。
どちらも大真面目なのが面白くもあり、かつ迷惑でもあるのだが、この程度は慣れっこだ。
追及の矛先がウィリマ自身に向かない限りは、このまま観客に徹していられそうだった。
「あれだけ目立つ立場にいながら、評判らしい評判は何もない、ってそれは何か隠しているなりしていると思いませんか?」
「た、確かにその可能性はあると思うけど…」
「でしたら、エリックの立場なら何か情報が入っていると思います。何か思い当たることはありませんか?」
「ミヤハラ社長と顔を合わせることは多いけど、大抵報告を受けたら、あとはよきにはからえ、だからなぁ…」
グイグイ追及してくるシシガにエリックはタジタジになっている。
(話が完全に脱線しちゃっているねぇ。シシガも自分の目的を忘れていやしないか?)
二人が言い合っている、というよりもシシガが一方的にまくしたてている中、ウィリマは悠然と紅茶を飲みながら高みの見物を決め込んでいる。
シシガの攻撃? をエリックがどう耐え切るか見ものだ。
意地の悪そうな笑みを浮かべながら、ウィリマは二人のやり取りを見守っている。
久しぶりのエンターテイメントを楽しんでやろう、そんな不謹慎なことすら考えている。
シシガの攻撃? を真正面から受け止めて、相手をし続ける人物はそう多くない。エリックは貴重な一人である。
「どんな小さなことでもいいです。何か見落としていたりしていることはないですか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
「何でしょうか? エリック」
「一体何が目的でどういう情報が欲しいのかよくわからないんだ。それを教えてくれないかな」
やっとの思いでエリックがそう尋ねると、不意にシシガが我を取り戻した。
「あ、そうでしたね……」
そうつぶやいてシシガは立ち上がると、エリックと自らのティーカップに紅茶を注いだ。基本的には冷静な人物なのだが、夢中になると止まらなくなるタイプなのだ。研究者らしい一面ともいえる。
「さて、僕が確認したかったことだけど……」
シシガはそう言ってティーカップに軽く口をつけた。
紅茶を少し口に含んで、気持ちを落ち着かせてから話を再開する。
どうやら彼の関心事は、このまま落ち着いて研究を続けられるかどうか、という点にあるらしい、とエリックは思った。
シシガの希望がかなえられるためには、今のまま状況が落ち着く必要がある。
シシガは今の状況を乱す可能性のある要素を三つ考えた。
すなわち、行方不明になったハドリの帰還、
同じく行方不明となったオイゲンの帰還、
そして、ミヤハラ自身が更なる野心を燃やす、というケースである。
シシガがこうしたことを気にするのも無理はないな、とエリックは思った。
エリックの知る限り、シシガは自らの研究の成果について希望する者には惜しみなく提供する人物だ。
そして、希望しない者にそれを提供する意思は一切ないだろう、とも思っている。
要するに他人の邪魔をするつもりはないから、こちらの邪魔をしないでくれ、という心境にあると推測しているが、それがどこまで正しいかはエリックにはわからない。
実のところエリックは、シシガの心境についてほぼ完全に読み切っていたのであるが、彼自身そのことにはまったく気づいていなかったのである。
シシガは自らの研究に人生を賭けていた。
エリックはシシガの生い立ちから研究の目的までも、シシガ自身から聞かされていたから、彼が何故現在の環境に身を置いているかは理解できる。
そして、恐らくシシガの選択は正しい、とエリックは考えている。
現在、サブマリン島で今後の島の状勢に最も影響力を持っているのはミヤハラであろう。
そのミヤハラが自らの野心により現在のシシガやウィリマの安寧を奪うのであれば、彼らは何らかの対抗手段を講じる必要がある、そうシシガは考えたらしかった。
ミヤハラの心情についてエリックは理解しているとは言い難いが、少なくともエリックの知る限り、ミヤハラが今のサブマリン島に動乱を呼び込もうとは考えていないと思っている。
エリックの知るミヤハラは面倒事が嫌いであり、とても自ら望んで動乱を引き起こそうと考えるようには見えない。
そう説明するとシシガはある程度納得できたらしく、「ミヤハラ社長についてはそれほど心配しなくてもよいのだね」とエリックに伝えてきた。
更にハドリかオイゲンがもし生存していたなら、すぐに伝えてほしいとエリックに注文を付けた。
ハドリならば警戒を強めるし、オイゲンなら一度会ってみたい、ということらしい。
エリックは気圧されながらも慎重に言葉を選びながら質問に答えていく。
(エリックも受け流すなり、ガツンと一言言うなりして止めればいいのにねぇ)
そうは考えるものの、ウィリマが二人を止める様子は見受けられないし、彼女にもその気はなかった。
止めない方がウィリマにとって面白いからで、彼女自身に実害がない限り、このまま二人を放置しておくつもりである。
どちらも大真面目なのが面白くもあり、かつ迷惑でもあるのだが、この程度は慣れっこだ。
追及の矛先がウィリマ自身に向かない限りは、このまま観客に徹していられそうだった。
「あれだけ目立つ立場にいながら、評判らしい評判は何もない、ってそれは何か隠しているなりしていると思いませんか?」
「た、確かにその可能性はあると思うけど…」
「でしたら、エリックの立場なら何か情報が入っていると思います。何か思い当たることはありませんか?」
「ミヤハラ社長と顔を合わせることは多いけど、大抵報告を受けたら、あとはよきにはからえ、だからなぁ…」
グイグイ追及してくるシシガにエリックはタジタジになっている。
(話が完全に脱線しちゃっているねぇ。シシガも自分の目的を忘れていやしないか?)
二人が言い合っている、というよりもシシガが一方的にまくしたてている中、ウィリマは悠然と紅茶を飲みながら高みの見物を決め込んでいる。
シシガの攻撃? をエリックがどう耐え切るか見ものだ。
意地の悪そうな笑みを浮かべながら、ウィリマは二人のやり取りを見守っている。
久しぶりのエンターテイメントを楽しんでやろう、そんな不謹慎なことすら考えている。
シシガの攻撃? を真正面から受け止めて、相手をし続ける人物はそう多くない。エリックは貴重な一人である。
「どんな小さなことでもいいです。何か見落としていたりしていることはないですか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
「何でしょうか? エリック」
「一体何が目的でどういう情報が欲しいのかよくわからないんだ。それを教えてくれないかな」
やっとの思いでエリックがそう尋ねると、不意にシシガが我を取り戻した。
「あ、そうでしたね……」
そうつぶやいてシシガは立ち上がると、エリックと自らのティーカップに紅茶を注いだ。基本的には冷静な人物なのだが、夢中になると止まらなくなるタイプなのだ。研究者らしい一面ともいえる。
「さて、僕が確認したかったことだけど……」
シシガはそう言ってティーカップに軽く口をつけた。
紅茶を少し口に含んで、気持ちを落ち着かせてから話を再開する。
どうやら彼の関心事は、このまま落ち着いて研究を続けられるかどうか、という点にあるらしい、とエリックは思った。
シシガの希望がかなえられるためには、今のまま状況が落ち着く必要がある。
シシガは今の状況を乱す可能性のある要素を三つ考えた。
すなわち、行方不明になったハドリの帰還、
同じく行方不明となったオイゲンの帰還、
そして、ミヤハラ自身が更なる野心を燃やす、というケースである。
シシガがこうしたことを気にするのも無理はないな、とエリックは思った。
エリックの知る限り、シシガは自らの研究の成果について希望する者には惜しみなく提供する人物だ。
そして、希望しない者にそれを提供する意思は一切ないだろう、とも思っている。
要するに他人の邪魔をするつもりはないから、こちらの邪魔をしないでくれ、という心境にあると推測しているが、それがどこまで正しいかはエリックにはわからない。
実のところエリックは、シシガの心境についてほぼ完全に読み切っていたのであるが、彼自身そのことにはまったく気づいていなかったのである。
シシガは自らの研究に人生を賭けていた。
エリックはシシガの生い立ちから研究の目的までも、シシガ自身から聞かされていたから、彼が何故現在の環境に身を置いているかは理解できる。
そして、恐らくシシガの選択は正しい、とエリックは考えている。
現在、サブマリン島で今後の島の状勢に最も影響力を持っているのはミヤハラであろう。
そのミヤハラが自らの野心により現在のシシガやウィリマの安寧を奪うのであれば、彼らは何らかの対抗手段を講じる必要がある、そうシシガは考えたらしかった。
ミヤハラの心情についてエリックは理解しているとは言い難いが、少なくともエリックの知る限り、ミヤハラが今のサブマリン島に動乱を呼び込もうとは考えていないと思っている。
エリックの知るミヤハラは面倒事が嫌いであり、とても自ら望んで動乱を引き起こそうと考えるようには見えない。
そう説明するとシシガはある程度納得できたらしく、「ミヤハラ社長についてはそれほど心配しなくてもよいのだね」とエリックに伝えてきた。
更にハドリかオイゲンがもし生存していたなら、すぐに伝えてほしいとエリックに注文を付けた。
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