ストランディング・ワールド(Stranding World) 第二部 ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて新天地を求める~

空乃参三

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第十三章

577:「勉強会」グループによる事情聴取 その1

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 「勉強会」グループはIMPUに対し、地熱発電所放火事件について事情聴取の場を設けるよう要請書を提出した。LH五二年二月一四日のことであった。
 IMPUはその日のうちに要請に応じるとの回答を提示し、二日後の一六日に事情聴取を行うことが決まった。
 IMPUトップのサン・アカシはIMPU全体が犯人扱いされる危険を承知していたが、膠着状態が長期化するよりも事態を進展させる方がインデスト全体にとって益が大きいと考えたのだった。
 回答から事情聴取まで二日という短い期間を受け入れたのも、事態の進展を急いだためであった。
 「勉強会」グループの提示した条件に「オブザーバーとしてインデストに滞在しているECN社の社員を加えたい」というものがあったことも、アカシを受諾へと後押しした。
 こうして二月一六日の午後、「勉強会」グループによるIMPUへの事情聴取が行われることとなった。

 IMPU側として出席したのはアカシと組合の現委員長であるヌガメ・モチナガの二名である。
 一方、聴取を行う「勉強会」グループからは、キンノジョウ・ヒキとマキオ・イラ・イオの二名が参加している。
 IMPU、「勉強会」グループともおなじみのメンバーである。
 オブザーバーとして、ECN社からレイカ・メルツとタイセイ・チタムラが参加している。
 チタムラは長年ECN社で内部の不正をチェックする監査業務に就いており、その経験を買われて今回、レイカに同行することとなった。
 レイカは「勉強会」グループが何か不当な手段でアカシを陥れようとしているのではないか、という疑いを捨て切れていない。
 そこで、チタムラに彼らの行う事情聴取に不審な点がないかをチェックする役割を負わせたのである。

「それではアカシ代表、モチナガさん、本日はよろしくお願い致します」
 イオの挨拶により聴取が始まった。
「アカシ代表、これは何だかわかっておるな」
 ヒキがスクリーンに映し出された画像を指さした。
 ところどころ溶けているが、それはアカシもよく知っている通信機の画像であった。
「先日の調査の際、この通信機は戦闘時に組合で使用していた型番のものに間違いない、と代表は仰られた。間違いないか?」
「間違いありません」
 アカシは首を縦に振った。
 確かに指摘された通りであるから、否定のしようがなかった。
 それにアカシ自身、嘘を答えるつもりは一切ない。
「ならば次。事件現場から回収された通信機の製造番号は読み取ることができなかったが、発見された通信機の部品と現存する通信機から、考えられる製造番号が四つだけわかった」
 そう言ってヒキがスクリーンの表示を切り替えた。
 スクリーンに四つの製造番号が表示され、その脇に行き先と思われる文字列が見える。
 「勉強会」グループの調査によれば、これらの四台の行き先は次のようになっていた。
 ・一台目は組合側のメンバーに配布され、OP社治安改革部隊との戦闘中に破壊されたため、破棄されたというもの。
 ・二台目は同じく組合側のメンバーに配布され、OP社治安改革部隊との戦闘中に紛失したとされたもの。
 ・三台目も同じく組合側のメンバーに配布されたが、こちらはOP社治安改革部隊との戦闘中に傷つき、製造番号が読み取れなくなったもの。
 ・最後は組合で購入したが、初期不良で製造元に返品され、製造元で破棄されたとされるもの。

「モチナガ、どうなんだ?」
 アカシは組合に配布した通信機の製造番号を記憶していなかったため、モチナガに確認を取った。
 事前にモチナガのところには問い合わせがあったらしく、こちらの回答した通りです、と答えた。
 モチナガの答えから、アカシは四台の通信機の行き先について「勉強会」グループが示した通りで間違いないと判断した。

「このうち、戦闘中に傷ついて製造番号が読み取れなくなったものについては、現物を確認させていただきました。戦闘後は組合の倉庫に保管されていたようで、動かされた形跡もありませんでしたし、戦闘中に使用していた組合の方の証言にも不自然なところはありませんでした」
 イオの言葉は落ち着いたものであった。
 それはある種の自信に裏打ちされているようにアカシには思われた。
 どうあっても「勉強会」グループが仕立てあげた  (とアカシは考えている)三人の容疑者が事件の犯人だと思わせることができる、そのように感じられる。
 だが、アカシは「勉強会」グループの見解とは異なり、容疑者とされているシン・スザキ、ヨシヒロ・オギタ、リオナ・サニシの三名が、事件とは無関係であるということを確信している。
 それを示す証拠が今のところないのが歯がゆいところで、何とかして彼らの無実を証明するため力を尽くしていた。

 イオの言葉が続く。
 それによれば、製造元で破棄された通信機についても、破棄を示す書類に製造番号が見える形で撮影された現物の画像が添付されていた。
 そのため、破棄されたという情報にほぼ間違いないだろうと判断したとのことであった。
 このイオの判断についても、アカシにとって異存はない。

 「勉強会」グループとIMPUの静かな戦いは始まったばかりだ。
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