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第十三章
592:一日の猶予
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ヌマタは突然の通信に顔をしかめながら携帯端末を開いた。
「は? ジンダイの奴か」
ヌマタの予想通り通信の主はピーター・ウェル農場にいるジンダイであった。
時間から考えて、朝の作業を追えたタイミングで連絡したのであろう。
「ジンダイか? 事件の話は見たが、その後何かあったのか?」
「昨晩送ったメッセージは確認されたかな、と思って連絡したところです」
「それは確認した。新しい情報は何かないか?」
ヌマタは新たな情報に期待したが、ジンダイからはめぼしい情報は得られなかった。
これは、ジンダイがヌマタに情報を送ってからそれほど時間が経過していないためであった。
ヌマタは少し考えるそぶりを見せた。
その間、ジンダイは律儀に言葉を発することなく待っている。
「……ジンダイ、今日のそっちの予定はどうなっている?」
「こちらは、いつも通りなので余力はあります」
「……俺の仕事は?」
「今日は別の業者さんが通るそうなので、そちらにお願いするつもりとのことですが」
再びヌマタは考え込む。
(今日一日は時間があるということか……うむ、調査くらいなら……資格も何もなかろう)
考えは決まった。
「わかった。俺はちょっと調べることがあるから、帰るのは夕飯の頃になる。それと……例の事件について、そっちで調べられるのなら調べてくれ」
「……特に知りたいことなどはありますか?」
「そうだな……」
ヌマタはジンダイに三つの事柄を告げた。
まず、犯人が判明したら犯人の正体を。
次に爆破されたホテルに宿泊していた著名人がいれば、その人物を。
最後にIMPUとOP社の動向、であった。
「わかりました、カワエさん。ニュース情報くらいしか調べられませんが、やってみます」
「悪い、頼んだ」
ジンダイはヌマタのことを「カワエさん」と呼ぶ。
これはヌマタが未だ本名を明かしていないためであり、ジンダイらピーター・ウェル農場」の人々は偽名の姓である「カワエ」と彼を認識している。
(……どうもジンダイの奴に偽名で呼ばれると違和感があるが……まあいい、とっとと荷物を渡して……行くか!)
「カワエさん、IMPUの会見は七時からです。では」
「あんがとよ、じゃあな」
会見の時間を伝えてきた画面の中のジンダイに軽く手を上げて答えてから、ヌマタは通信を切った。
(まったく、律儀な奴だな……まあ、助かってはいるが)
時計はいつの間にか五時半を示していた。
受取人が到着するとされた時刻である。
(遅いな、遅れているのか……?)
周囲を見回すと、一人の背の高い男がこちらに向けて息を切らせながら走ってきた。
「お、遅くなってすまない。荷物の配達だよね?」
「ええ、荷物はこちらの包みになります」
ヌマタが業務モードの口調で答えた。
歯に衣着せないタイプではあるが、最低限の礼儀はわきまえている。
相手は工場の工場長とのことであった。
近くに住んでいるので、朝一番で鍵を開けにくるのだそうだ。
「これから、市街に向かわれるのかな?」
「……多分そうでしょう。社からの連絡待ちですが」
すると工場長の表情が曇る。
「……どうされました?」
「聞いているかもしれないが、昨晩、街中のホテルで爆発事件があったばかりだ。ニュースでやっていたが、まだ市内は混乱しているようだ」
そして、工場長は市内の安全が確認できるまで工場にとどまってはどうかと申し出てくれた。
ヌマタは申し出に甘えることにし、ニュースを見せてもらうことにした。
IMPUの記者会見はまだ始まっていなかったが、マスコミ各社は市内のホテル爆発事件をトップニュースとして扱っていた。
評論家などが事件の背景や犯人像について意見を述べているが。情報が少ないためか推測の域を出ないようだ。
(……情報らしい情報が出ているわけではなさそうだな。IMPUがECN社なんかと会談していることとの関係があるのかどうかすら、はっきりしねぇな)
IMPU、ECN社、OP社、「勉強会」グループの間で行われている会談については、マスコミにも情報が流れているため、会談の状況はともかく、会談をしているということはヌマタですら知っている。
IMPUが会見を開くことから、会談と何らかの関係があることが推測されているが、関係が何なのかははっきりしていないようだ。
これは事件が起きたホテルに原因があった。
このホテルはインデストの中心部にあるということ以外は、おおよそ会談に関係しそうもなかったためだ。
ホテルとしては運送業者や観光客が使う安宿に近い部類で、会談の関係者が宿泊することが考えにくい。
また、会談に適した会議室などの設備も十分とはいえず、会談に使われるとも考えにくい。
レイカはこうした状況を知ってあえてこのホテルを滞在場所に選択したのだ。
だが、その事実は公には伏せられていたため、会談の一部の関係者を除き知る者はなかったのである。
「は? ジンダイの奴か」
ヌマタの予想通り通信の主はピーター・ウェル農場にいるジンダイであった。
時間から考えて、朝の作業を追えたタイミングで連絡したのであろう。
「ジンダイか? 事件の話は見たが、その後何かあったのか?」
「昨晩送ったメッセージは確認されたかな、と思って連絡したところです」
「それは確認した。新しい情報は何かないか?」
ヌマタは新たな情報に期待したが、ジンダイからはめぼしい情報は得られなかった。
これは、ジンダイがヌマタに情報を送ってからそれほど時間が経過していないためであった。
ヌマタは少し考えるそぶりを見せた。
その間、ジンダイは律儀に言葉を発することなく待っている。
「……ジンダイ、今日のそっちの予定はどうなっている?」
「こちらは、いつも通りなので余力はあります」
「……俺の仕事は?」
「今日は別の業者さんが通るそうなので、そちらにお願いするつもりとのことですが」
再びヌマタは考え込む。
(今日一日は時間があるということか……うむ、調査くらいなら……資格も何もなかろう)
考えは決まった。
「わかった。俺はちょっと調べることがあるから、帰るのは夕飯の頃になる。それと……例の事件について、そっちで調べられるのなら調べてくれ」
「……特に知りたいことなどはありますか?」
「そうだな……」
ヌマタはジンダイに三つの事柄を告げた。
まず、犯人が判明したら犯人の正体を。
次に爆破されたホテルに宿泊していた著名人がいれば、その人物を。
最後にIMPUとOP社の動向、であった。
「わかりました、カワエさん。ニュース情報くらいしか調べられませんが、やってみます」
「悪い、頼んだ」
ジンダイはヌマタのことを「カワエさん」と呼ぶ。
これはヌマタが未だ本名を明かしていないためであり、ジンダイらピーター・ウェル農場」の人々は偽名の姓である「カワエ」と彼を認識している。
(……どうもジンダイの奴に偽名で呼ばれると違和感があるが……まあいい、とっとと荷物を渡して……行くか!)
「カワエさん、IMPUの会見は七時からです。では」
「あんがとよ、じゃあな」
会見の時間を伝えてきた画面の中のジンダイに軽く手を上げて答えてから、ヌマタは通信を切った。
(まったく、律儀な奴だな……まあ、助かってはいるが)
時計はいつの間にか五時半を示していた。
受取人が到着するとされた時刻である。
(遅いな、遅れているのか……?)
周囲を見回すと、一人の背の高い男がこちらに向けて息を切らせながら走ってきた。
「お、遅くなってすまない。荷物の配達だよね?」
「ええ、荷物はこちらの包みになります」
ヌマタが業務モードの口調で答えた。
歯に衣着せないタイプではあるが、最低限の礼儀はわきまえている。
相手は工場の工場長とのことであった。
近くに住んでいるので、朝一番で鍵を開けにくるのだそうだ。
「これから、市街に向かわれるのかな?」
「……多分そうでしょう。社からの連絡待ちですが」
すると工場長の表情が曇る。
「……どうされました?」
「聞いているかもしれないが、昨晩、街中のホテルで爆発事件があったばかりだ。ニュースでやっていたが、まだ市内は混乱しているようだ」
そして、工場長は市内の安全が確認できるまで工場にとどまってはどうかと申し出てくれた。
ヌマタは申し出に甘えることにし、ニュースを見せてもらうことにした。
IMPUの記者会見はまだ始まっていなかったが、マスコミ各社は市内のホテル爆発事件をトップニュースとして扱っていた。
評論家などが事件の背景や犯人像について意見を述べているが。情報が少ないためか推測の域を出ないようだ。
(……情報らしい情報が出ているわけではなさそうだな。IMPUがECN社なんかと会談していることとの関係があるのかどうかすら、はっきりしねぇな)
IMPU、ECN社、OP社、「勉強会」グループの間で行われている会談については、マスコミにも情報が流れているため、会談の状況はともかく、会談をしているということはヌマタですら知っている。
IMPUが会見を開くことから、会談と何らかの関係があることが推測されているが、関係が何なのかははっきりしていないようだ。
これは事件が起きたホテルに原因があった。
このホテルはインデストの中心部にあるということ以外は、おおよそ会談に関係しそうもなかったためだ。
ホテルとしては運送業者や観光客が使う安宿に近い部類で、会談の関係者が宿泊することが考えにくい。
また、会談に適した会議室などの設備も十分とはいえず、会談に使われるとも考えにくい。
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