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第十四章
658:広報企画室長のキャラクター
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「皆さんにご相談もせずにこのようなことを決めてしまい申し訳ございませんでした」
通信が切れるとレイカは、メンバーに対して事前相談なしに全員の撤収を決めたことを詫びた。
その上で、これ以上インデストに残留することはIMPUや「勉強会」グループ、OP社インデスト支店などにとってアキレス腱にしかならないことを伝え、彼らの懸念を除くためにも全員が撤収することにした、と告げた。
インデスト行きのメンバーの中ではレイカが最高位にあるので、彼女が撤収を決めれば他のメンバーはそれに従うしかない。
「残って再交渉のための情報収集をするメンバーが不在となりますが、大丈夫でしょうか?」
質問を投げかけたのはナタバだった。
レイカはこの手の質問や提案をはねつけるような狭量な人物ではない、とナタバなりに信頼しての質問である。
「ECN社の者が残ることで、IMPUやOP社などの関係者に負担をかけてしまうでしょう。あのときの事件の狙いは私たちだったかはわかりませんが、今の状況ではECN社のメンバーが何らかの事件に巻き込まれないとは限りません」
「そうは言われても、情報がなければ再交渉は非常に不利になると思いますが」
レイカの答えにナタバが食い下がった。
「確かにそれは否定できませんが、再交渉については手がありますから」
「手があるのですか、どのような?」
レイカの答えに興味を持ったのか、キザシが割り込んできてレイカに尋ねた。
レイカは悪戯っぽく笑ってから、逆にキザシに次のように尋ねた。
「IMPUのアカシ代表、『勉強会』のオオバさん、OP社のオソダ支店長、そして私、この四名が今回の交渉担当、ということは間違いないですよね?」
「……そうですね」
キザシが何を言っているのだ、と言わんばかりの顔を見せた。
他のメンバーは興味深そうに二人のやり取りに耳を傾けている。
「交渉担当がそれぞれの所属組織の中で、何番目くらいの地位にあるか、それが『手』ですよ」
「はあ……」
レイカが伝えたかったのは、OP社とECN社の二者が交渉に組織のトップを出していない、という点であった。
これは今回の交渉担当より上位の者を再交渉の場に出す余地を有していることを意味している。
OP社はその組織構造上から、オソダの上位者となるとトップのノブヤ・ヤマガタくらいである。だが、社の状況を考慮すればこうした交渉に臨む余力はなく、かつ本人の健康状態に懸念があるという情報もある。
また、OP社とECN社は現在協力関係にあり、かつECN社がOP社に発電技術者を派遣するなど「貸し」のある状況である。
レイカはこうした状況を作ったことそのものが「手」である、としたのである。
また、「貸し」は作った側に力がなければ積極的に踏み倒されるが、作った側に力があれば話は別である。
問題は「貸し」を作られた側が手を組んで、作った側に対抗してくるケースである。
現在のECN社の規模はOP社をやや上回る程度であり、OP社が他の勢力と結んだ場合、ECN社の規模を上回る恐れがある。
この点についてはレイカも気にかけており、OP社本社やIMPUとの連携を密にすることで対処するつもりだ。
「皆さん、このような形になってしまいすみません。今回の交渉は、インデストへ発電技術者を派遣する決定がなされたことで一定の成果を得られました。
これも皆さんのご協力のおかげです。
皆さんには途中、野宿を強いるなど色々なご迷惑をおかけしました。皆さんをマネジメントする立場として、このような事態を招いたことをお詫びします。
そして、今回の交渉には最後の仕事が残っています。
全員で無事に本社に戻り、結果を報告するまで、よろしくお願いします」
レイカの言葉に同行のメンバー全員が畏まった。
彼らの目の前に立っているのは、エクザロームでトップクラスの有名人であり、知名度と同じかそれ以上の美人としても知られる相手だ。
他人とは分け隔てなく接するという評判はあるものの、ECN社では役員に次ぐ地位にあり、業務で社内の上級リーダー以下の役職の者と接する機会は決して多くない。
特に今回レイカに同行しているメンバーは、マコト・トミシマ率いる総務のタスクユニットに所属しているため、業務上で彼女との直接のつながりはないのだ。
並みの者であれば舞い上がり、必要以上に高慢になったり、自らを大きく見せようとするものだが、彼女にはそうした様子が見受けられなかった、と同行したメンバーは後に語っている。
その一方で同行者のひとり、ザライ・モモギは「等身大の自分を見せているようにも見えるが、彼女のキャラクターについてはよくわからなかった」と後に語っている。
これはモモギだけがそう考えていたのではなく、レイカと接したことのある多くの者が彼女について「どのような人か、言葉で表すのは難しいし、つかめないようなよくわからない部分がある」と感じていたのである。
ECN社広報企画室長レイカ・メルツとは、良くも悪くもそのような人物であった。
通信が切れるとレイカは、メンバーに対して事前相談なしに全員の撤収を決めたことを詫びた。
その上で、これ以上インデストに残留することはIMPUや「勉強会」グループ、OP社インデスト支店などにとってアキレス腱にしかならないことを伝え、彼らの懸念を除くためにも全員が撤収することにした、と告げた。
インデスト行きのメンバーの中ではレイカが最高位にあるので、彼女が撤収を決めれば他のメンバーはそれに従うしかない。
「残って再交渉のための情報収集をするメンバーが不在となりますが、大丈夫でしょうか?」
質問を投げかけたのはナタバだった。
レイカはこの手の質問や提案をはねつけるような狭量な人物ではない、とナタバなりに信頼しての質問である。
「ECN社の者が残ることで、IMPUやOP社などの関係者に負担をかけてしまうでしょう。あのときの事件の狙いは私たちだったかはわかりませんが、今の状況ではECN社のメンバーが何らかの事件に巻き込まれないとは限りません」
「そうは言われても、情報がなければ再交渉は非常に不利になると思いますが」
レイカの答えにナタバが食い下がった。
「確かにそれは否定できませんが、再交渉については手がありますから」
「手があるのですか、どのような?」
レイカの答えに興味を持ったのか、キザシが割り込んできてレイカに尋ねた。
レイカは悪戯っぽく笑ってから、逆にキザシに次のように尋ねた。
「IMPUのアカシ代表、『勉強会』のオオバさん、OP社のオソダ支店長、そして私、この四名が今回の交渉担当、ということは間違いないですよね?」
「……そうですね」
キザシが何を言っているのだ、と言わんばかりの顔を見せた。
他のメンバーは興味深そうに二人のやり取りに耳を傾けている。
「交渉担当がそれぞれの所属組織の中で、何番目くらいの地位にあるか、それが『手』ですよ」
「はあ……」
レイカが伝えたかったのは、OP社とECN社の二者が交渉に組織のトップを出していない、という点であった。
これは今回の交渉担当より上位の者を再交渉の場に出す余地を有していることを意味している。
OP社はその組織構造上から、オソダの上位者となるとトップのノブヤ・ヤマガタくらいである。だが、社の状況を考慮すればこうした交渉に臨む余力はなく、かつ本人の健康状態に懸念があるという情報もある。
また、OP社とECN社は現在協力関係にあり、かつECN社がOP社に発電技術者を派遣するなど「貸し」のある状況である。
レイカはこうした状況を作ったことそのものが「手」である、としたのである。
また、「貸し」は作った側に力がなければ積極的に踏み倒されるが、作った側に力があれば話は別である。
問題は「貸し」を作られた側が手を組んで、作った側に対抗してくるケースである。
現在のECN社の規模はOP社をやや上回る程度であり、OP社が他の勢力と結んだ場合、ECN社の規模を上回る恐れがある。
この点についてはレイカも気にかけており、OP社本社やIMPUとの連携を密にすることで対処するつもりだ。
「皆さん、このような形になってしまいすみません。今回の交渉は、インデストへ発電技術者を派遣する決定がなされたことで一定の成果を得られました。
これも皆さんのご協力のおかげです。
皆さんには途中、野宿を強いるなど色々なご迷惑をおかけしました。皆さんをマネジメントする立場として、このような事態を招いたことをお詫びします。
そして、今回の交渉には最後の仕事が残っています。
全員で無事に本社に戻り、結果を報告するまで、よろしくお願いします」
レイカの言葉に同行のメンバー全員が畏まった。
彼らの目の前に立っているのは、エクザロームでトップクラスの有名人であり、知名度と同じかそれ以上の美人としても知られる相手だ。
他人とは分け隔てなく接するという評判はあるものの、ECN社では役員に次ぐ地位にあり、業務で社内の上級リーダー以下の役職の者と接する機会は決して多くない。
特に今回レイカに同行しているメンバーは、マコト・トミシマ率いる総務のタスクユニットに所属しているため、業務上で彼女との直接のつながりはないのだ。
並みの者であれば舞い上がり、必要以上に高慢になったり、自らを大きく見せようとするものだが、彼女にはそうした様子が見受けられなかった、と同行したメンバーは後に語っている。
その一方で同行者のひとり、ザライ・モモギは「等身大の自分を見せているようにも見えるが、彼女のキャラクターについてはよくわからなかった」と後に語っている。
これはモモギだけがそう考えていたのではなく、レイカと接したことのある多くの者が彼女について「どのような人か、言葉で表すのは難しいし、つかめないようなよくわからない部分がある」と感じていたのである。
ECN社広報企画室長レイカ・メルツとは、良くも悪くもそのような人物であった。
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