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第十五章
679:悪くない重大発表
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四月一七日一六時半、ロビー達の姿は東端より数キロ西の平地にあった。
東端付近は十分な広さの平地がなくキャンプに不適切と判断されたため、二時間近くかけてキャンプに向く場所まで戻ってきたのだ。
彼らはそこで本社と通信し、状況の報告を済ませた。
本社側はミヤハラとサクライが対応し、ロビー達に対して労いの言葉がかけられた。
今後の処遇については、エリックから連絡があるだろうとのことで、通信の中で明らかにされることはなかった。
「まあ、何と言うか、あまり大それたことをやったという実感はないのだが……」
通信を終えた後のロビーは、どちらかというと少し拍子抜けした様子であった。
結果についてはセスに対して、胸を張って報告できる。ほぼすべての目的が達成できたからだ。
唯一の心残りは、セスが生存している間に報告が間に合わなかったことだが、このことについてはある程度覚悟はできていた。
ここまでの「東部探索隊」はあくまでセスとロビーのプロジェクトであった。
そして、セスとロビーのプロジェクトはその目的を達し、これから解散を迎える。
後の「東部探索隊」はECN社のプロジェクトとなり、セスとロビーのプロジェクトとは別のものになっていくであろう。
「隊長、飲もうよ。さすがにくたびれたよ」
いつもなら飲みの誘いはカネサキからなのだが、この日はオオイダが待ちくたびれた様子で声をかけてきた。
「そうですね、飲みますか、先輩方!」
そう答えてロビーが酒宴の準備を始めようとしたところ、申し訳なさそうにホンゴウが声をかけてきた。
「……すみません、その前にひとつ、報告しなければならないことがあるのですが……」
「え~、飲みながらじゃダメですか?」
「そうですね、少し込み入った話もあるので素面のときが望ましいかと。タカミさん、ちょっといいですか?」
「ああ」
ホンゴウに促されるがまま、ロビーとホンゴウの姿が物陰へと消えていった。
オオイダが興味津々といった様子で覗きに行こうとするが、カネサキに止められる。
ロビーとホンゴウの密談はそれほど時間を要さず、二人とも数分後に戻ってきた。
「食事の前に報告してもらう。当面の間どうするかの基本方針を決めてから、その後は飲み会、ということで」
「えぇ~っ! ここでおあずけってアリぃ?」
ロビーの決定にオオイダが不満の声をあげた。
しかし、ロビーが三〇分で片付けると告げるとオオイダは、それならいいかとあっさり引き下がった。
どうやら飲み会の前に延々と議論させられると思っていたようだった。
「じゃあ、ホンゴウさん、まずは今後の処遇について報告してください」
ロビーの指示にホンゴウは今後の自らの処遇について簡潔に報告する。
ホンゴウによれば今後は当面、エリックが行っている調査を手伝うため、ハモネスのECN社本社に向かうことになるとのことであった。
相変わらず立場はECN社への協力者の立場であり、ECN社に雇用される関係にはならないという。
今までロビー達に知らされなかったのは、どうやらミヤハラやエリックの意向らしい。
「ちょっとひどいな。後でモトムラマネージャーに文句言ってやる」
ロビーの様子は言葉とは裏腹に、大して腹を立てているというものではないようだった。
しかし、すぐにロビーの表情が神妙なものに変わる。次にホンゴウが報告することの内容が問題だからだ。
「で、次の報告は俺も内容を聞いていないのだが、ここにいる全員が関係する機密情報、だったか?」
「ええ、悪い情報ではない、と思うのですが……」
そう前置きすると、ホンゴウは大きく息を吸い込んでから話を始めた。
「……皆さん、行方不明となったオイゲン・イナ前社長と仕事をされたことがあるとお伺いしていますが、間違いないですか?」
「……」
唐突に出たオイゲンの名前に皆、顔を見合わせながらも首を縦に振った。
「実は私も仕事でご一緒したことがあります。行方不明だったイナ社長が発見されて、今、ECN社が保護しているそうです。ただ、そのことはごく一部の人にのみ知らされているとのことでしたが」
「はぁ? 何で今頃になって……」
と言いかけてロビーは、しまった、という表情を見せた。
そしてコナカの方を見やる。
コナカは驚いた様子であったが、数秒ほど考えて、ロビーの考えに気づいたようであった。
「……ホンゴウさん、そのことを知っているのは具体的に誰と誰か? そして、イナ社長は今どこにいる?」
ロビーの勢いにホンゴウは一瞬気圧されかけたが、すぐに我に返り、知る限りの情報をロビーに伝えた。
すなわち、情報を知る者はここにいる以外にミヤハラ、サクライ、エリック、そして人事総務担当役員のマコト・トミシマのみであろうこと。
オイゲン・イナの身柄については正確な場所は不明であるが、ハモネス付近の外部からシャットアウトされた場所に確保されているらしいこと、である。
「しまった! それじゃ秘書さんにイナ社長の情報が届かない!」
ロビーが慌てた様子で叫んだ。
東端付近は十分な広さの平地がなくキャンプに不適切と判断されたため、二時間近くかけてキャンプに向く場所まで戻ってきたのだ。
彼らはそこで本社と通信し、状況の報告を済ませた。
本社側はミヤハラとサクライが対応し、ロビー達に対して労いの言葉がかけられた。
今後の処遇については、エリックから連絡があるだろうとのことで、通信の中で明らかにされることはなかった。
「まあ、何と言うか、あまり大それたことをやったという実感はないのだが……」
通信を終えた後のロビーは、どちらかというと少し拍子抜けした様子であった。
結果についてはセスに対して、胸を張って報告できる。ほぼすべての目的が達成できたからだ。
唯一の心残りは、セスが生存している間に報告が間に合わなかったことだが、このことについてはある程度覚悟はできていた。
ここまでの「東部探索隊」はあくまでセスとロビーのプロジェクトであった。
そして、セスとロビーのプロジェクトはその目的を達し、これから解散を迎える。
後の「東部探索隊」はECN社のプロジェクトとなり、セスとロビーのプロジェクトとは別のものになっていくであろう。
「隊長、飲もうよ。さすがにくたびれたよ」
いつもなら飲みの誘いはカネサキからなのだが、この日はオオイダが待ちくたびれた様子で声をかけてきた。
「そうですね、飲みますか、先輩方!」
そう答えてロビーが酒宴の準備を始めようとしたところ、申し訳なさそうにホンゴウが声をかけてきた。
「……すみません、その前にひとつ、報告しなければならないことがあるのですが……」
「え~、飲みながらじゃダメですか?」
「そうですね、少し込み入った話もあるので素面のときが望ましいかと。タカミさん、ちょっといいですか?」
「ああ」
ホンゴウに促されるがまま、ロビーとホンゴウの姿が物陰へと消えていった。
オオイダが興味津々といった様子で覗きに行こうとするが、カネサキに止められる。
ロビーとホンゴウの密談はそれほど時間を要さず、二人とも数分後に戻ってきた。
「食事の前に報告してもらう。当面の間どうするかの基本方針を決めてから、その後は飲み会、ということで」
「えぇ~っ! ここでおあずけってアリぃ?」
ロビーの決定にオオイダが不満の声をあげた。
しかし、ロビーが三〇分で片付けると告げるとオオイダは、それならいいかとあっさり引き下がった。
どうやら飲み会の前に延々と議論させられると思っていたようだった。
「じゃあ、ホンゴウさん、まずは今後の処遇について報告してください」
ロビーの指示にホンゴウは今後の自らの処遇について簡潔に報告する。
ホンゴウによれば今後は当面、エリックが行っている調査を手伝うため、ハモネスのECN社本社に向かうことになるとのことであった。
相変わらず立場はECN社への協力者の立場であり、ECN社に雇用される関係にはならないという。
今までロビー達に知らされなかったのは、どうやらミヤハラやエリックの意向らしい。
「ちょっとひどいな。後でモトムラマネージャーに文句言ってやる」
ロビーの様子は言葉とは裏腹に、大して腹を立てているというものではないようだった。
しかし、すぐにロビーの表情が神妙なものに変わる。次にホンゴウが報告することの内容が問題だからだ。
「で、次の報告は俺も内容を聞いていないのだが、ここにいる全員が関係する機密情報、だったか?」
「ええ、悪い情報ではない、と思うのですが……」
そう前置きすると、ホンゴウは大きく息を吸い込んでから話を始めた。
「……皆さん、行方不明となったオイゲン・イナ前社長と仕事をされたことがあるとお伺いしていますが、間違いないですか?」
「……」
唐突に出たオイゲンの名前に皆、顔を見合わせながらも首を縦に振った。
「実は私も仕事でご一緒したことがあります。行方不明だったイナ社長が発見されて、今、ECN社が保護しているそうです。ただ、そのことはごく一部の人にのみ知らされているとのことでしたが」
「はぁ? 何で今頃になって……」
と言いかけてロビーは、しまった、という表情を見せた。
そしてコナカの方を見やる。
コナカは驚いた様子であったが、数秒ほど考えて、ロビーの考えに気づいたようであった。
「……ホンゴウさん、そのことを知っているのは具体的に誰と誰か? そして、イナ社長は今どこにいる?」
ロビーの勢いにホンゴウは一瞬気圧されかけたが、すぐに我に返り、知る限りの情報をロビーに伝えた。
すなわち、情報を知る者はここにいる以外にミヤハラ、サクライ、エリック、そして人事総務担当役員のマコト・トミシマのみであろうこと。
オイゲン・イナの身柄については正確な場所は不明であるが、ハモネス付近の外部からシャットアウトされた場所に確保されているらしいこと、である。
「しまった! それじゃ秘書さんにイナ社長の情報が届かない!」
ロビーが慌てた様子で叫んだ。
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