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第十五章
680:オオイダ先輩の本来の姿
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「しまった! それじゃ秘書さんにイナ社長の情報が届かない!」
ロビーは叫んだ後に頭を抱えた。
「秘書さん」ことメイ・カワナは、ロビー達と一緒に「東部探索隊」の第一次隊に参加していた。
そして第二次隊出発直前に隊を離れ、どこともなく姿を消した。
恐らく行方不明となったオイゲンの姿を求めてインデストへ向かったのではないか、と推測されていた。
ロビーの声にいち早く反応したのがカネサキだった。
「それで、どうしよう、って言うのよ?」
「秘書さんを探してハモネスに連れ戻すか、イナ社長に秘書さんを捜索させるかして、秘書さんにイナ社長への処分を決めてもらうのさ」
ロビーがそれしかない、と言わんばかりに言い切った。
「気持ちはわからないでもないけど、社としてそれを通すかしら……?」
「秘書さんも『東部探索隊』の関係者ですからね、先輩。第一次隊のトップとしてこれは譲れませんよ」
ロビーの考え方はECN社という組織に属する者としては自由すぎる、とカネサキなどは考えてしまう。二人の間には組織人としての経験に差があるので、仕方のない面もあるのだが。
自由な言動がロビーのよさではあるが、ECN社という巨大組織がそれをどこまで許容できるかという点について、カネサキは疑問を抱かざるを得ない。
今まではロビーのECN社における地位が低いこともあり、ロビーの言動を気にかける者は殆どいなかったはずだ。
しかし、「東部探索隊」の先鋒として島東部の居住可能区域発見、そして今回は島東端への到達と成果をあげている。
今のところ正式な通達はないが、帰還後、ロビーにはサブマネージャーの地位が用意されているらしいという噂がある。
サブマネージャーは現在のECN社全体で二〇〇人に満たない役職で、これはエリック・モトムラ率いるタスクユニットの中ではナンバースリーグループに入る。
このままロビーが二四歳でサブマネージャーに昇格すれば、ウォーリー・トワ、アツシ・サクライと並んでECN社史上最年少のサブマネージャーとなる。
ロビーの実績がこの両名と比較して劣るとは思えないが、彼らと比較してロビーがECN社に在籍していた期間は短い。
その点がECN社の古参社員から快く思われないのではないか、という懸念がある。
カネサキがこうした懸念を抱くのは、ロビーを好ましく思っていることもあるが、それ以上に妹分のコナカの将来が気にかかるからだ。
しかし、そこまで考えたところでカネサキは首を横に振った。
(私もECN社に来て日が浅いし、すべてを知っているわけではない。それに彼は私があれこれ言えるようなサイズの器じゃないかもしれない……)
カネサキの様子を見たロビーが時計に目をやって、思い出したように手を叩いた。
「おっと、これで方針決定ってことでいいですかね? そろそろ宴会に入りたいところでしょうし」
「ちょっと待ちなさい! どこの世界に仕事より優先される宴会があるのよ!」
慌ててカネサキが止めに入ったが、オオイダがここぞとばかりにテーブルの上を片付け始めた。
「はいはいはい、リーダーが宴会っていいましたからね。指示には従いましょうねぇ~!」
わざとらしくオオイダが大声を出して、コナカに食器類を持ってくるように指示した。
「あのね、オオイダ! まだ打ち合わせが終わったとは言ってないわよ!」
「みなさーん、宴会に入りましたよ~」
カネサキがオオイダを止めようとするが、オオイダは意図的にそれを無視している。
「……ホンゴウさん、オオイダに何か言ってやってください!」
カネサキが渋い顔をしながらホンゴウのほうを向いた。
しかし、カネサキの必死の訴えも虚しく、ホンゴウも彼女の味方をしなかった。
「ですが……皆さん、お疲れですし、今日のところはこのあたりで切り上げたほうがよいかと。これからもまだ話し合う時間はありますし」
「まあ、しょうがないわね……」
社会人としての大先輩のホンゴウにそう返されてしまっては、カネサキにも立つ瀬がなかった。このあたりがカネサキという人物の限界であろう。
「先輩方、かなり集中が切れていたようですからね、予定時間も迫っていましたしこれ以上話をしたら疲れるだけでしょう」
ロビーが小声でカネサキに伝えた。フォローのつもりなのだろうとカネサキは考えた。
どうやらロビーは周辺の様子を観察して、議論を打ち切る判断をしたようだった。
「……そうね。オオイダなんかおあずけ食らって、肝心の話は上の空、だったからね。今後のことは帰り道でじっくり考えていくことね」
「先輩、助かります」
すると、カネサキは楽しそうにテーブルに食料を並べているオオイダを一瞥してからこう言った。
「あの様子じゃ、とても仕事の話なんか耳に入らないからね」
ロビーは、まああれがオオイダ先輩ですから、と苦笑した。
これが「東部探索隊」メンバーの本来の姿、なのであろう。
任務を終えて日常が戻ってきたようであった。
ロビーは叫んだ後に頭を抱えた。
「秘書さん」ことメイ・カワナは、ロビー達と一緒に「東部探索隊」の第一次隊に参加していた。
そして第二次隊出発直前に隊を離れ、どこともなく姿を消した。
恐らく行方不明となったオイゲンの姿を求めてインデストへ向かったのではないか、と推測されていた。
ロビーの声にいち早く反応したのがカネサキだった。
「それで、どうしよう、って言うのよ?」
「秘書さんを探してハモネスに連れ戻すか、イナ社長に秘書さんを捜索させるかして、秘書さんにイナ社長への処分を決めてもらうのさ」
ロビーがそれしかない、と言わんばかりに言い切った。
「気持ちはわからないでもないけど、社としてそれを通すかしら……?」
「秘書さんも『東部探索隊』の関係者ですからね、先輩。第一次隊のトップとしてこれは譲れませんよ」
ロビーの考え方はECN社という組織に属する者としては自由すぎる、とカネサキなどは考えてしまう。二人の間には組織人としての経験に差があるので、仕方のない面もあるのだが。
自由な言動がロビーのよさではあるが、ECN社という巨大組織がそれをどこまで許容できるかという点について、カネサキは疑問を抱かざるを得ない。
今まではロビーのECN社における地位が低いこともあり、ロビーの言動を気にかける者は殆どいなかったはずだ。
しかし、「東部探索隊」の先鋒として島東部の居住可能区域発見、そして今回は島東端への到達と成果をあげている。
今のところ正式な通達はないが、帰還後、ロビーにはサブマネージャーの地位が用意されているらしいという噂がある。
サブマネージャーは現在のECN社全体で二〇〇人に満たない役職で、これはエリック・モトムラ率いるタスクユニットの中ではナンバースリーグループに入る。
このままロビーが二四歳でサブマネージャーに昇格すれば、ウォーリー・トワ、アツシ・サクライと並んでECN社史上最年少のサブマネージャーとなる。
ロビーの実績がこの両名と比較して劣るとは思えないが、彼らと比較してロビーがECN社に在籍していた期間は短い。
その点がECN社の古参社員から快く思われないのではないか、という懸念がある。
カネサキがこうした懸念を抱くのは、ロビーを好ましく思っていることもあるが、それ以上に妹分のコナカの将来が気にかかるからだ。
しかし、そこまで考えたところでカネサキは首を横に振った。
(私もECN社に来て日が浅いし、すべてを知っているわけではない。それに彼は私があれこれ言えるようなサイズの器じゃないかもしれない……)
カネサキの様子を見たロビーが時計に目をやって、思い出したように手を叩いた。
「おっと、これで方針決定ってことでいいですかね? そろそろ宴会に入りたいところでしょうし」
「ちょっと待ちなさい! どこの世界に仕事より優先される宴会があるのよ!」
慌ててカネサキが止めに入ったが、オオイダがここぞとばかりにテーブルの上を片付け始めた。
「はいはいはい、リーダーが宴会っていいましたからね。指示には従いましょうねぇ~!」
わざとらしくオオイダが大声を出して、コナカに食器類を持ってくるように指示した。
「あのね、オオイダ! まだ打ち合わせが終わったとは言ってないわよ!」
「みなさーん、宴会に入りましたよ~」
カネサキがオオイダを止めようとするが、オオイダは意図的にそれを無視している。
「……ホンゴウさん、オオイダに何か言ってやってください!」
カネサキが渋い顔をしながらホンゴウのほうを向いた。
しかし、カネサキの必死の訴えも虚しく、ホンゴウも彼女の味方をしなかった。
「ですが……皆さん、お疲れですし、今日のところはこのあたりで切り上げたほうがよいかと。これからもまだ話し合う時間はありますし」
「まあ、しょうがないわね……」
社会人としての大先輩のホンゴウにそう返されてしまっては、カネサキにも立つ瀬がなかった。このあたりがカネサキという人物の限界であろう。
「先輩方、かなり集中が切れていたようですからね、予定時間も迫っていましたしこれ以上話をしたら疲れるだけでしょう」
ロビーが小声でカネサキに伝えた。フォローのつもりなのだろうとカネサキは考えた。
どうやらロビーは周辺の様子を観察して、議論を打ち切る判断をしたようだった。
「……そうね。オオイダなんかおあずけ食らって、肝心の話は上の空、だったからね。今後のことは帰り道でじっくり考えていくことね」
「先輩、助かります」
すると、カネサキは楽しそうにテーブルに食料を並べているオオイダを一瞥してからこう言った。
「あの様子じゃ、とても仕事の話なんか耳に入らないからね」
ロビーは、まああれがオオイダ先輩ですから、と苦笑した。
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