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第十五章
710:レイカ、再びインデストへ
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LH五二年七月二二日、インデストの空は薄い雲に覆われていた。
わずかに陽が射しており、雨は降っていない。
このような空模様のためか、ここ数日のうだるような暑さはなく、過ごしやすい日であった。
インデストの検問所の周辺に集まった人々にとって、この天気は救いであっただろう。
検問所の前後数百メートルの街道は、人で埋め尽くされていた。
遥か遠くのハモネスから、島一番の美人であり有名人であるとも噂されるレイカ・メルツが検問所に到着する、との報が流されたためだ。
レイカたちECN社メンバーの歩みは速く、予定よりも二日ばかり早い到着である。
実はレイカは敢えて予定に余裕を持たせていた。
ハドリもしばしば用いていた手法であったが、予定より早く到着することで相手の準備の時間を削ることを目論んだのだ。
二手に分かれて出発したレイカ達は、昨日インデスト郊外の「オーシャンリゾート」で合流した。
そして今日、ロビー・タカミ率いる後発部隊を「オーシャンリゾート」に残し、レイカたち先発部隊が検問所に向けて出発したのである。
レイカはIMPU、OP社インデスト支店などの関係者に対して、検問所への到着は午後一時くらいになると通知していた。
一二時四五分過ぎ、街道の西側にレイカたちの姿が見えた。
一五人程度の集団が整然と向かってくる。
街道の両脇に集まった群衆から「わぁ」とか「おおっ」といった歓声があがった。
検問所からも二名の警備員がレイカの方に向かって走った。
そして、レイカたちの隊列に合流する。
レイカの隊は彼女を守るように取り囲み、押し寄せる人々をブロックしながら検問所へとゆっくり進んでいく。
急ごうにも、群衆が押し寄せてくる圧力が強すぎ、思うように進めないのだ。
「すみません、もう少し道を空けていただけないでしょうか!」
レイカの隊のザライ・モモギが叫んだ。
警備の専門家として、今の状況に危険を感じたためだった。
モモギは走ってきた検問所の警備員に道の両脇にロープを張るなどして、通り道の確保をするよう依頼した。
そうしている間にも群衆は次々とレイカたちに向けて押し寄せ、ついには身動きが取れなくなってしまった。
このような状況でも、モモギやジンゴ・シバノイなどといった、前回レイカに同行したメンバーがレイカや「とぉえんてぃ? ず」の三人を内に入れるようにして安全を守っている。
しばらくして、検問所から更に五名ほどの警備員がロープとポールを持って表れ、群衆を街道の左右に分け始めた。
その間、作業の邪魔にならないよう、レイカたちはその場で待機することを余儀なくされた。
ロープが張られ、ようやく道が確保できたところで、レイカたちは検問所へと向けての歩みを再開した。
検問所の入口で番をしている警備員に止められる。
どうやら、建物の中が検問を受ける人でいっぱいになっており、レイカたちを入れる余裕がないらしい。
シバノイがレイカや「とぉえんてぃ? ず」などの女性だけでも先に中に入れて欲しい、と要求したが、警備員は頑として受け入れない。
シバノイと警備員が押し問答になっている間に、後方から一人の若い男性が走ってきた。
モモギがすばやく反応して、後方を警戒する。
走ってくる男性はレイカたちの知らない顔であった。
「あ、うちの職員です。通してください」
モモギが隊の最後方に移動するとほぼ同時に警備員が言った。
「職員の人か。だったら脇を空けて通れるようにしましょう」
カネサキが隊を建物入口の右方に寄せるように移動させる。
そして、カネサキ自身は隊から少し離れた右の方へ立つ。
警備員と押し問答をしているシバノイとカネサキだけが建物の方を向き、他のメンバーは後方から走ってくる男性の方を向いている。
男性はレイカたちの脇を抜けて建物に入るのだろう、とレイカたちは考えていたが、彼が一考に向きを変える様子はない。
そして、男性はモモギの目の前で停止した。
「遅くなってすみません。手続きを急がせますので、少しお待ちください」
それだけ告げて、男性は携帯端末を手に建物の中へと消えていった。
レイカたちの中に男性を知る者はなかったが、彼は「判定者とその支援者」という団体でディンと呼ばれている者であった。
ディンが建物の中に消えた直後、群衆が騒がしくなった。
騒ぎの様子からレイカに接触しようと強引に街道に出ようとした者がおり、それを阻止しようとした者達との間で乱闘が始まったらしい。
慌てて警備員がそれを止めに飛び出した。
レイカたちも、乱闘騒ぎの起こっているほうを警戒する。
例外は押し問答中のシバノイと、乱闘から一番遠い位置におり、騒ぎに気付いていないカネサキであった。
カネサキは建物の陰で何かが動いているような気がして、そちらに注意を向けていた。
レイカたちの位置からは死角になるが、隊から少し離れていたカネサキにはわずかに何かが動いているのが見えた。
それが何かを確かめようと、カネサキが建物の方へ向けて足を踏み出した。
わずかに陽が射しており、雨は降っていない。
このような空模様のためか、ここ数日のうだるような暑さはなく、過ごしやすい日であった。
インデストの検問所の周辺に集まった人々にとって、この天気は救いであっただろう。
検問所の前後数百メートルの街道は、人で埋め尽くされていた。
遥か遠くのハモネスから、島一番の美人であり有名人であるとも噂されるレイカ・メルツが検問所に到着する、との報が流されたためだ。
レイカたちECN社メンバーの歩みは速く、予定よりも二日ばかり早い到着である。
実はレイカは敢えて予定に余裕を持たせていた。
ハドリもしばしば用いていた手法であったが、予定より早く到着することで相手の準備の時間を削ることを目論んだのだ。
二手に分かれて出発したレイカ達は、昨日インデスト郊外の「オーシャンリゾート」で合流した。
そして今日、ロビー・タカミ率いる後発部隊を「オーシャンリゾート」に残し、レイカたち先発部隊が検問所に向けて出発したのである。
レイカはIMPU、OP社インデスト支店などの関係者に対して、検問所への到着は午後一時くらいになると通知していた。
一二時四五分過ぎ、街道の西側にレイカたちの姿が見えた。
一五人程度の集団が整然と向かってくる。
街道の両脇に集まった群衆から「わぁ」とか「おおっ」といった歓声があがった。
検問所からも二名の警備員がレイカの方に向かって走った。
そして、レイカたちの隊列に合流する。
レイカの隊は彼女を守るように取り囲み、押し寄せる人々をブロックしながら検問所へとゆっくり進んでいく。
急ごうにも、群衆が押し寄せてくる圧力が強すぎ、思うように進めないのだ。
「すみません、もう少し道を空けていただけないでしょうか!」
レイカの隊のザライ・モモギが叫んだ。
警備の専門家として、今の状況に危険を感じたためだった。
モモギは走ってきた検問所の警備員に道の両脇にロープを張るなどして、通り道の確保をするよう依頼した。
そうしている間にも群衆は次々とレイカたちに向けて押し寄せ、ついには身動きが取れなくなってしまった。
このような状況でも、モモギやジンゴ・シバノイなどといった、前回レイカに同行したメンバーがレイカや「とぉえんてぃ? ず」の三人を内に入れるようにして安全を守っている。
しばらくして、検問所から更に五名ほどの警備員がロープとポールを持って表れ、群衆を街道の左右に分け始めた。
その間、作業の邪魔にならないよう、レイカたちはその場で待機することを余儀なくされた。
ロープが張られ、ようやく道が確保できたところで、レイカたちは検問所へと向けての歩みを再開した。
検問所の入口で番をしている警備員に止められる。
どうやら、建物の中が検問を受ける人でいっぱいになっており、レイカたちを入れる余裕がないらしい。
シバノイがレイカや「とぉえんてぃ? ず」などの女性だけでも先に中に入れて欲しい、と要求したが、警備員は頑として受け入れない。
シバノイと警備員が押し問答になっている間に、後方から一人の若い男性が走ってきた。
モモギがすばやく反応して、後方を警戒する。
走ってくる男性はレイカたちの知らない顔であった。
「あ、うちの職員です。通してください」
モモギが隊の最後方に移動するとほぼ同時に警備員が言った。
「職員の人か。だったら脇を空けて通れるようにしましょう」
カネサキが隊を建物入口の右方に寄せるように移動させる。
そして、カネサキ自身は隊から少し離れた右の方へ立つ。
警備員と押し問答をしているシバノイとカネサキだけが建物の方を向き、他のメンバーは後方から走ってくる男性の方を向いている。
男性はレイカたちの脇を抜けて建物に入るのだろう、とレイカたちは考えていたが、彼が一考に向きを変える様子はない。
そして、男性はモモギの目の前で停止した。
「遅くなってすみません。手続きを急がせますので、少しお待ちください」
それだけ告げて、男性は携帯端末を手に建物の中へと消えていった。
レイカたちの中に男性を知る者はなかったが、彼は「判定者とその支援者」という団体でディンと呼ばれている者であった。
ディンが建物の中に消えた直後、群衆が騒がしくなった。
騒ぎの様子からレイカに接触しようと強引に街道に出ようとした者がおり、それを阻止しようとした者達との間で乱闘が始まったらしい。
慌てて警備員がそれを止めに飛び出した。
レイカたちも、乱闘騒ぎの起こっているほうを警戒する。
例外は押し問答中のシバノイと、乱闘から一番遠い位置におり、騒ぎに気付いていないカネサキであった。
カネサキは建物の陰で何かが動いているような気がして、そちらに注意を向けていた。
レイカたちの位置からは死角になるが、隊から少し離れていたカネサキにはわずかに何かが動いているのが見えた。
それが何かを確かめようと、カネサキが建物の方へ向けて足を踏み出した。
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