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第六章
239:狙いはウォーリ・トワただ一人
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二月一八日に一般向けに発表された声明だが、詳しい内容は次の通りであった。
・「タブーなきエンジニア集団」はOP社が定めたルールに反し、犯罪を助長する行為を組織的に継続して実施している。
・このためOP社は「タブーなきエンジニア集団」をサブマリン島の治安維持に仇なす者みなすことにする。
・処罰のためOP社は「タブーなきエンジニア集団」の幹部を捕えることを決定した。居場所を知る者はOP社にこれを伝えること。
OP社は治安改革活動の中で、これまでにもルールに抵触したとする「タブーなきエンジニア集団」の関係者を捕えたり、罰したことはあった。
ただしその多くは「タブーなきエンジニア集団」を狙い撃ちしたものではなかった。
あくまでルールに抵触したという事実 (OP社が捏造したものもあるが)を調べたところ、犯人が「タブーなきエンジニア集団」に所属する者だったというだけだ。
今回の声明で特徴的なのは、まず「タブーなきエンジニア集団」を名指しでOP社の敵としたことにある。
OP社が治安改革活動上で特定の組織や団体を名指しで敵と認めたのは、「エクザローム防衛隊」とフジミ・タウンに巣食っていた賊に続いて三度目のことだ。
また、捕らえる対象の指定も特徴的であった。
トップのウォーリーは対象から外されており、ミヤハラとサクライの二名のみが対象となっていた。
同時に声明では幹部以外の者については、拘束する予定はないとされていた。
表向きの理由はジンやハモネスなどにおける治安改革センターの襲撃事件で指揮を執っていた、というものであった。
これらの襲撃は実際にミヤハラとサクライが指揮していたから、ウォーリーが対象から外される理由としては、不思議なものではない。
だが、対象からウォーリーを外した最大の理由はハドリが彼を自ら処断したいためだった。勿論、これは公に発表されていない。
一方、拘束する対象を幹部に限ったのは次のような理由からであった。
一つ目は純粋に一般のメンバーや協力する市民まで拘束しても、それを収容する能力はOP社といえども持っていないことだった。
OP社の試算では一般のメンバーと協力する市民を合わせると楽に数万に達する。
自社従業員数一八万、関連会社、グループ会社を合わせると三〇万を超える大集団といえども、これだけの人数を押し込んでおく施設など持ち合わせていない。
OP社は事業に必要な施設や設備などは潤沢に保有しているが、それ以外の施設や設備は徹底して保有しないという方針をとっている。
そのため、数万どころか数百の人数を拘束して閉じ込めておく施設すら保有していないのが実態だ。これでは幹部以外の者を拘束したところで、それ以上の対処ができない。
二つ目の理由は、ハドリとて「タブーなきエンジニア集団」の人間を根絶やしにする意思がない、ということである。
ハドリとしては彼らがハドリにひれ伏し、OP社のやり方に従いさえすればよいのである。
ハドリの見るところ、幹部を屈服させれば他の者はそれに同調するだろうと思われる。
「タブーなきエンジニア集団」の中心的なメンバーはECN社から転じた者が多い。
ECN社にはOP社から調査のメンバーを送り、その内情を調査している。
調査からECN社にはそれほど骨のある社員はいないと思われる。
これについてはたるみ切った社風がそうさせているとハドリは推測している。
「タブーなきエンジニア集団」に走った者達は、ECN社に残った者達よりも多少骨っぽいだろうが、ごく一部の例外を除き、大した障害ではないだろう。
ジンやハモネスなどで治安改革センターを襲撃した際も、一部のメンバーが行動するのを見守るだけの者が多かったという報告があった。
そうであるならば、尻馬に乗るだけの者ばかりであり、こちらが力を示せば容易に屈服するはずだ。
ならば、幹部を拘束しさえすればよい。
現在、OP社は数十名の「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを拘束している。
ただし、これは「タブーなきエンジニア集団」がOP社の敵とされたことが理由ではなかった。
彼らは未だにOP社のルールに反した行動を取っている者達だ。そのためルールに従って身柄を拘束したのだ。
OP社は彼らに労働による罰を与えたが、彼らの全てがそれに対してサボタージュで応じた。結果、彼らは未だに解放されずにいたのだった。
海洋調査隊での調査員の業務を命じられた者も含まれているとはいえ、罰としての労働を終えればハドリは彼らを釈放したから、ハドリが特別狭量だった訳ではない。単にOP社が自ら定めたルールに従った結果であった。
しかし、ウォーリーに対する態度だけは異なる。
ウォーリーに関しては自らの手でその血を根絶やしにしない限り、ハドリの気が済まない。この点だけに関しては、普段の冷徹なまでの理性が機能しなかった。
このこととフジミ・タウンの攻略を除いては、このような刃こぼれが生じていた訳ではなかったから、ハドリの理性が後退したわけではない。
ハドリといえども完璧ではなく、突かれると冷静さを欠くポイントが確実に存在しているのだ。
主にハドリの意思によりOP社と「タブーなきエンジニア集団」の直接対決の時期は、確実に近づいている。
ハドリの理性と感情が交錯する中で、彼らに訪れる運命はどのようなものになるのだろうか?
このとき、それを知っている者は少なくともサブマリン島には存在していなかった。
・「タブーなきエンジニア集団」はOP社が定めたルールに反し、犯罪を助長する行為を組織的に継続して実施している。
・このためOP社は「タブーなきエンジニア集団」をサブマリン島の治安維持に仇なす者みなすことにする。
・処罰のためOP社は「タブーなきエンジニア集団」の幹部を捕えることを決定した。居場所を知る者はOP社にこれを伝えること。
OP社は治安改革活動の中で、これまでにもルールに抵触したとする「タブーなきエンジニア集団」の関係者を捕えたり、罰したことはあった。
ただしその多くは「タブーなきエンジニア集団」を狙い撃ちしたものではなかった。
あくまでルールに抵触したという事実 (OP社が捏造したものもあるが)を調べたところ、犯人が「タブーなきエンジニア集団」に所属する者だったというだけだ。
今回の声明で特徴的なのは、まず「タブーなきエンジニア集団」を名指しでOP社の敵としたことにある。
OP社が治安改革活動上で特定の組織や団体を名指しで敵と認めたのは、「エクザローム防衛隊」とフジミ・タウンに巣食っていた賊に続いて三度目のことだ。
また、捕らえる対象の指定も特徴的であった。
トップのウォーリーは対象から外されており、ミヤハラとサクライの二名のみが対象となっていた。
同時に声明では幹部以外の者については、拘束する予定はないとされていた。
表向きの理由はジンやハモネスなどにおける治安改革センターの襲撃事件で指揮を執っていた、というものであった。
これらの襲撃は実際にミヤハラとサクライが指揮していたから、ウォーリーが対象から外される理由としては、不思議なものではない。
だが、対象からウォーリーを外した最大の理由はハドリが彼を自ら処断したいためだった。勿論、これは公に発表されていない。
一方、拘束する対象を幹部に限ったのは次のような理由からであった。
一つ目は純粋に一般のメンバーや協力する市民まで拘束しても、それを収容する能力はOP社といえども持っていないことだった。
OP社の試算では一般のメンバーと協力する市民を合わせると楽に数万に達する。
自社従業員数一八万、関連会社、グループ会社を合わせると三〇万を超える大集団といえども、これだけの人数を押し込んでおく施設など持ち合わせていない。
OP社は事業に必要な施設や設備などは潤沢に保有しているが、それ以外の施設や設備は徹底して保有しないという方針をとっている。
そのため、数万どころか数百の人数を拘束して閉じ込めておく施設すら保有していないのが実態だ。これでは幹部以外の者を拘束したところで、それ以上の対処ができない。
二つ目の理由は、ハドリとて「タブーなきエンジニア集団」の人間を根絶やしにする意思がない、ということである。
ハドリとしては彼らがハドリにひれ伏し、OP社のやり方に従いさえすればよいのである。
ハドリの見るところ、幹部を屈服させれば他の者はそれに同調するだろうと思われる。
「タブーなきエンジニア集団」の中心的なメンバーはECN社から転じた者が多い。
ECN社にはOP社から調査のメンバーを送り、その内情を調査している。
調査からECN社にはそれほど骨のある社員はいないと思われる。
これについてはたるみ切った社風がそうさせているとハドリは推測している。
「タブーなきエンジニア集団」に走った者達は、ECN社に残った者達よりも多少骨っぽいだろうが、ごく一部の例外を除き、大した障害ではないだろう。
ジンやハモネスなどで治安改革センターを襲撃した際も、一部のメンバーが行動するのを見守るだけの者が多かったという報告があった。
そうであるならば、尻馬に乗るだけの者ばかりであり、こちらが力を示せば容易に屈服するはずだ。
ならば、幹部を拘束しさえすればよい。
現在、OP社は数十名の「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを拘束している。
ただし、これは「タブーなきエンジニア集団」がOP社の敵とされたことが理由ではなかった。
彼らは未だにOP社のルールに反した行動を取っている者達だ。そのためルールに従って身柄を拘束したのだ。
OP社は彼らに労働による罰を与えたが、彼らの全てがそれに対してサボタージュで応じた。結果、彼らは未だに解放されずにいたのだった。
海洋調査隊での調査員の業務を命じられた者も含まれているとはいえ、罰としての労働を終えればハドリは彼らを釈放したから、ハドリが特別狭量だった訳ではない。単にOP社が自ら定めたルールに従った結果であった。
しかし、ウォーリーに対する態度だけは異なる。
ウォーリーに関しては自らの手でその血を根絶やしにしない限り、ハドリの気が済まない。この点だけに関しては、普段の冷徹なまでの理性が機能しなかった。
このこととフジミ・タウンの攻略を除いては、このような刃こぼれが生じていた訳ではなかったから、ハドリの理性が後退したわけではない。
ハドリといえども完璧ではなく、突かれると冷静さを欠くポイントが確実に存在しているのだ。
主にハドリの意思によりOP社と「タブーなきエンジニア集団」の直接対決の時期は、確実に近づいている。
ハドリの理性と感情が交錯する中で、彼らに訪れる運命はどのようなものになるのだろうか?
このとき、それを知っている者は少なくともサブマリン島には存在していなかった。
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