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第三章
相談員の教育研修 後編 精霊の事情と魂霊の事情と人間の事情
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精霊の歴史の講義が終わったところで休憩を挟み、次は精霊界への移住制度に関する講義となった。
この講義が始まるころにはどうにか私もショック状態から立ち直っていた。
「……お主たちのもとの姿、すなわち人間などの存在界の生き物は精霊が作られることがなくなってから生まれた。存在界に生き物が造られた理由は知っておるな? お主、答えてみよ」
ガネーシャが鼻でエリシアを指名した。どうやら手より鼻の方が器用らしい。よく見たら腕は四本あるのだが……
「えっ、オイラ? 精霊が本性をさらけ出せるようにして『揺らぎ』を治すため。もっと言うと溢壊を防ぐためでしょ?」
「……その通り。さすがに易しかったか。まあ、お主ら移住者は己を誇ってよいと思うぞ。『揺らいだ』精霊を救い、精霊たちが司っている『何か』を守ることで存在界をも守っているのだからな。フォッフォッフォッ」
ガネーシャの笑い声が最初と違う。気分によって異なるのだろうか?
「うむ、そんな大それたことをしているつもりはないのだが」
ドナートがさらっと言い放った。
「お主は……千体近くの同胞を救ってくれているのだったな。数が正義とは言わぬが、我ら精霊としては感謝してもし切れぬよ」
「ありがたく受け取っておこう。パートナーたちの感謝の方がありがたいけどな」
「これは一本取られたな、ガハハハハ」
「ガネーシャ教官、教官も興味深い存在ですよ、アハハハハ」
どこか通じ合ったのかドナートとガネーシャが大声で笑いあった。
ドナートではないが、私もそんな大それたことをしているつもりはない。
自分が好きなことをやって、好きな相手に楽しませてもらっているだけで存在界を守っているとは大げさだと思う。
「精霊は精霊界や存在界の何かと密接に結びついている。溢壊するとその結びついている何かに正常ではない影響がでてしまうからの。これを防ぐために試行錯誤して人間が造られ、これを魂霊に魔法で変換する技術が開発された……」
そう、人間は精霊のために造られた。先ほどの講義でいうところ受注生産だったようだが、人間は自らの力で人間を造ることができた。これが精霊との違いだ。
そういう意味では私も受注生産品から造られた子孫、ということになる。
これを知ったら「精霊が勝手なことをした」と怒りを覚える方もいるかもしれない。
私は何故か不思議と怒りが湧いてこないのだが、感覚として理解はできるつもりだ。
「ところで、これは精霊でもごく一部しか知らぬ話だが、人間を精霊界に移住させ始めたのはかなり昔の話だ。相談所ができるずっと前から移住そのものは進められていた……」
ガネーシャがそう言うと、目を閉じて首を横に振った。
「ちょ、待ってよ! オイラは百何十年か前に移住してきたけど、オイラより古い移住者は三人しか知らないよ。一人はゾーイなんだし」
エリシアが慌てた様子で手を挙げた。
「それはそうだ。エリシア、お前さんは相談所経由の移住者としては四番目だからの。ゾーイは二番目。だが、相談所ができる前から移住は進められていたのだよ。今は一人も定着していないが。精霊の都合で彼らには迷惑をかけてしまった」
エリシアがかなりの古株であることは知っていたが、そこまでだったのか。
ゾーイは不幸な出来事により存在を失っていたから、エリシア以上の古株は二人だけということになるようだ。
ガネーシャの説明によると、移住そのものは五、六千年前から進められていたらしい。
最初は人間を魂霊化する魔法が確立していなかったため、不完全な魂霊となってしまい、精霊界に長く留まることができなかったそうだ。
数百回の失敗を経て魂霊化の魔法が確実なものになったのが今から百五十年ほど前。
これをきっかけに「精霊界移住相談所」が設立されたらしい。
そのため、現在精霊界に居住している魂霊の移住者はすべて「精霊界移住相談所」経由で移住したことになる。
「……存在界の人間が知ったら『何を勝手なことを!』と怒る者がいるかもしれないな。俺は自分の意思でこっちに引っ越してきたから文句など言う気はないが……どう思う、アーベル?」
フランシスが尋ねてきた。
「存在界での広報活動に必須という情報ではないと思うが、後で知ったら精霊に反発する理由になる可能性はあるな……」
精霊と人間が争う火種になりそうな情報なので、私にも扱いをどうしてよいかはちょっとわからない。
私もフランシス同様自分の意思で精霊界に来ているので、精霊に文句を言おうとは思わないが……むしろ四体のパートナーたちと出会うきっかけを作ってくれたことに感謝したい。
「フランシスの問いにアーベルが答えたように、人間に知らせるかどうかは判断の難しい情報だな。俺も精霊に文句を言う気はないが、文句を言われても仕方のないことをしているとは思うぞ」
「うむ、私もそう思う」
ドナートの指摘にガネーシャが静かにうなずいた。
幸か不幸か講義を受けている相談員は精霊に対して文句を言おうとする気がなさそうだが、これは契約しているパートナーという恩恵があるからなのかもしれない。
存在界に住んでいる人間は精霊から恩恵を受けていないから、我々とは事情が違うのだよな……
少し間をおいて時期ごとの移住者や契約できた精霊の数についての話があった。
もと人間から見れば非常にゆっくりとしたペースではあるが、着実に移住者、契約出来た精霊の数は増え続けている。
移住者は累計で四〇〇弱、移住者と契約出来た精霊は三〇〇〇くらいになるらしい。
全精霊が移住者との契約を必要としているかはわからないが、もしそうだとしたら桁数が一七、八くらい足りないような……
いくら何でも気が遠すぎる話だ。精霊には無限の時間があるとはいえ、こんなにのんびりしていて良いのだろうか?
ちなみに私アーベルは移住者としては百番目よりちょっと前になるようだ。
「相談員には精霊界への移住の歴史がどうであったかを知ってほしかったからこの話をした。皆がどう思うかは自由だ」
ガネーシャはそう言って移住の歴史に関する講義を締めくくった。ここまでが今日の講義だ。
※※
翌日は精霊界のルールに関する講義であった。これが最後となる。
前に精霊は競争や争いごとが苦手と言ったが、もともと精霊はお互いを傷つけないようにするためそのように造られているのだそうだ。
そのため精霊界に存在するルールはそれほど多くはないらしい。
「長老会議」「移住管理委員会」の二つがルールを決定している。
精霊界への移住と、魂霊と精霊の契約に関するルールは「移住管理委員会」で、その他は「長老会議」で決定される。
もめ事の類は原初の精霊に相談して解決することになっているが、精霊間でもめ事が発生するのはごくまれのことのようだ。
「『長老会議』『移住管理委員会』、それぞれのメンバーは誰なのだろうか?」
ドナートが手を挙げた。
「良い質問だ、ドナート。誰が精霊界のルールを決めているのかは大事なことだからの。まず『長老会議』だが……」
「長老会議」のメンバーは原初の精霊が持ち回りで担当する。メンバーの数は六四で、任期は千年だそうだ。さすがに長い。
「移住管理委員会」は長老会議で指名された者と各「精霊界移住相談所」の所長がメンバーとなる。
「精霊界移住相談所」の所長は「移住管理委員会」から指名されるとのことだ。
「民主主義とは程遠いものなのだな。精霊のやり方に異を唱えるつもりはないが、民主主義にどっぷり浸かった俺にはしっくりこないのだが……」
確かに講義を聞いて、精霊界のルールの決め方には違和感を覚えた。
ドナートやフランシスあたりはこうしたところに敏感な国の出身だったはずだ。
「確かにの。ただ、原初の精霊たちも他の者たちの意向を無視しているわけではない。原初の精霊以外の精霊は皆、原初の精霊の手によって造られたのだからな」
そのあたりが精霊と人間や魂霊との意識の違いなのかもしれない。
「……それで精霊から不平や不満が出ることはないのだろうか? ドナートではないがこちらも民主主義には全身どっぷり浸かっているから気になる」
今度はフランシスだ。予想通り彼もこうしたところには敏感だ。
「精霊たちは争いごとが苦手だ。それが影響しているのだろう。ただ、不平不満を溜め込めば『揺らぎ』につながる。これは精霊の手で解消することができる『揺らぎ』ではあるが……」
「念のため確認させてもらうが、その手の不平不満による『揺らぎ』の解消のため俺たちのような移住者を集めている、ということはないよな?」
ガネーシャの言葉を途中で遮って、ドナートが静かだが凄みのある声で問いかけた。
「……我ら精霊が生き物を造った動機は不純と言われても仕方ない。だが移住者はあくまで精霊が『揺らぎ』や溢壊の苦しみを味わうことなく幸せに暮らすために募っているもの。精霊のエゴと言われればその通りだが」
一触即発、とまではいかないが重苦しい空気が室内を覆いつくした。
「……フランシスはどう判断する?」
ドナートがフランシスに声をかけた。
「口では何とでも言える。これからの行動を見て判断するのがいいのではないか?」
フランシスは淡々と答えたが、その目は真剣だ。
「……そうだな。精霊界のやり方は尊重するが、長老たちが他の精霊に不満を持たせるようなことをやったら、そのときは黙っていない。そういう魂霊がいるということを肝に銘じてくれ」
ドナートの言葉にガネーシャはうなずいて
「……勿論だ。原初の精霊は多くの精霊を造っている。精霊たちを不幸にしたくないという気持ちは魂霊に劣るものではない」
と答えた。
重苦しい空気を引きずったまま、精霊界のルールに関する講義が終わった。
これで研修は終了だ。
精霊界のルールの決め方については、ドナートやフランシスの考え方にも一理あると思う。
ただ、彼らの考え方が精霊に合っているのかは疑問だ。
今後、精霊界のルールどのように変わるのか、または変わらないのかはわからない。
少なくとも私は、契約しているパートナーたちが不幸にならない道となることを祈るばかりだ。
この講義が始まるころにはどうにか私もショック状態から立ち直っていた。
「……お主たちのもとの姿、すなわち人間などの存在界の生き物は精霊が作られることがなくなってから生まれた。存在界に生き物が造られた理由は知っておるな? お主、答えてみよ」
ガネーシャが鼻でエリシアを指名した。どうやら手より鼻の方が器用らしい。よく見たら腕は四本あるのだが……
「えっ、オイラ? 精霊が本性をさらけ出せるようにして『揺らぎ』を治すため。もっと言うと溢壊を防ぐためでしょ?」
「……その通り。さすがに易しかったか。まあ、お主ら移住者は己を誇ってよいと思うぞ。『揺らいだ』精霊を救い、精霊たちが司っている『何か』を守ることで存在界をも守っているのだからな。フォッフォッフォッ」
ガネーシャの笑い声が最初と違う。気分によって異なるのだろうか?
「うむ、そんな大それたことをしているつもりはないのだが」
ドナートがさらっと言い放った。
「お主は……千体近くの同胞を救ってくれているのだったな。数が正義とは言わぬが、我ら精霊としては感謝してもし切れぬよ」
「ありがたく受け取っておこう。パートナーたちの感謝の方がありがたいけどな」
「これは一本取られたな、ガハハハハ」
「ガネーシャ教官、教官も興味深い存在ですよ、アハハハハ」
どこか通じ合ったのかドナートとガネーシャが大声で笑いあった。
ドナートではないが、私もそんな大それたことをしているつもりはない。
自分が好きなことをやって、好きな相手に楽しませてもらっているだけで存在界を守っているとは大げさだと思う。
「精霊は精霊界や存在界の何かと密接に結びついている。溢壊するとその結びついている何かに正常ではない影響がでてしまうからの。これを防ぐために試行錯誤して人間が造られ、これを魂霊に魔法で変換する技術が開発された……」
そう、人間は精霊のために造られた。先ほどの講義でいうところ受注生産だったようだが、人間は自らの力で人間を造ることができた。これが精霊との違いだ。
そういう意味では私も受注生産品から造られた子孫、ということになる。
これを知ったら「精霊が勝手なことをした」と怒りを覚える方もいるかもしれない。
私は何故か不思議と怒りが湧いてこないのだが、感覚として理解はできるつもりだ。
「ところで、これは精霊でもごく一部しか知らぬ話だが、人間を精霊界に移住させ始めたのはかなり昔の話だ。相談所ができるずっと前から移住そのものは進められていた……」
ガネーシャがそう言うと、目を閉じて首を横に振った。
「ちょ、待ってよ! オイラは百何十年か前に移住してきたけど、オイラより古い移住者は三人しか知らないよ。一人はゾーイなんだし」
エリシアが慌てた様子で手を挙げた。
「それはそうだ。エリシア、お前さんは相談所経由の移住者としては四番目だからの。ゾーイは二番目。だが、相談所ができる前から移住は進められていたのだよ。今は一人も定着していないが。精霊の都合で彼らには迷惑をかけてしまった」
エリシアがかなりの古株であることは知っていたが、そこまでだったのか。
ゾーイは不幸な出来事により存在を失っていたから、エリシア以上の古株は二人だけということになるようだ。
ガネーシャの説明によると、移住そのものは五、六千年前から進められていたらしい。
最初は人間を魂霊化する魔法が確立していなかったため、不完全な魂霊となってしまい、精霊界に長く留まることができなかったそうだ。
数百回の失敗を経て魂霊化の魔法が確実なものになったのが今から百五十年ほど前。
これをきっかけに「精霊界移住相談所」が設立されたらしい。
そのため、現在精霊界に居住している魂霊の移住者はすべて「精霊界移住相談所」経由で移住したことになる。
「……存在界の人間が知ったら『何を勝手なことを!』と怒る者がいるかもしれないな。俺は自分の意思でこっちに引っ越してきたから文句など言う気はないが……どう思う、アーベル?」
フランシスが尋ねてきた。
「存在界での広報活動に必須という情報ではないと思うが、後で知ったら精霊に反発する理由になる可能性はあるな……」
精霊と人間が争う火種になりそうな情報なので、私にも扱いをどうしてよいかはちょっとわからない。
私もフランシス同様自分の意思で精霊界に来ているので、精霊に文句を言おうとは思わないが……むしろ四体のパートナーたちと出会うきっかけを作ってくれたことに感謝したい。
「フランシスの問いにアーベルが答えたように、人間に知らせるかどうかは判断の難しい情報だな。俺も精霊に文句を言う気はないが、文句を言われても仕方のないことをしているとは思うぞ」
「うむ、私もそう思う」
ドナートの指摘にガネーシャが静かにうなずいた。
幸か不幸か講義を受けている相談員は精霊に対して文句を言おうとする気がなさそうだが、これは契約しているパートナーという恩恵があるからなのかもしれない。
存在界に住んでいる人間は精霊から恩恵を受けていないから、我々とは事情が違うのだよな……
少し間をおいて時期ごとの移住者や契約できた精霊の数についての話があった。
もと人間から見れば非常にゆっくりとしたペースではあるが、着実に移住者、契約出来た精霊の数は増え続けている。
移住者は累計で四〇〇弱、移住者と契約出来た精霊は三〇〇〇くらいになるらしい。
全精霊が移住者との契約を必要としているかはわからないが、もしそうだとしたら桁数が一七、八くらい足りないような……
いくら何でも気が遠すぎる話だ。精霊には無限の時間があるとはいえ、こんなにのんびりしていて良いのだろうか?
ちなみに私アーベルは移住者としては百番目よりちょっと前になるようだ。
「相談員には精霊界への移住の歴史がどうであったかを知ってほしかったからこの話をした。皆がどう思うかは自由だ」
ガネーシャはそう言って移住の歴史に関する講義を締めくくった。ここまでが今日の講義だ。
※※
翌日は精霊界のルールに関する講義であった。これが最後となる。
前に精霊は競争や争いごとが苦手と言ったが、もともと精霊はお互いを傷つけないようにするためそのように造られているのだそうだ。
そのため精霊界に存在するルールはそれほど多くはないらしい。
「長老会議」「移住管理委員会」の二つがルールを決定している。
精霊界への移住と、魂霊と精霊の契約に関するルールは「移住管理委員会」で、その他は「長老会議」で決定される。
もめ事の類は原初の精霊に相談して解決することになっているが、精霊間でもめ事が発生するのはごくまれのことのようだ。
「『長老会議』『移住管理委員会』、それぞれのメンバーは誰なのだろうか?」
ドナートが手を挙げた。
「良い質問だ、ドナート。誰が精霊界のルールを決めているのかは大事なことだからの。まず『長老会議』だが……」
「長老会議」のメンバーは原初の精霊が持ち回りで担当する。メンバーの数は六四で、任期は千年だそうだ。さすがに長い。
「移住管理委員会」は長老会議で指名された者と各「精霊界移住相談所」の所長がメンバーとなる。
「精霊界移住相談所」の所長は「移住管理委員会」から指名されるとのことだ。
「民主主義とは程遠いものなのだな。精霊のやり方に異を唱えるつもりはないが、民主主義にどっぷり浸かった俺にはしっくりこないのだが……」
確かに講義を聞いて、精霊界のルールの決め方には違和感を覚えた。
ドナートやフランシスあたりはこうしたところに敏感な国の出身だったはずだ。
「確かにの。ただ、原初の精霊たちも他の者たちの意向を無視しているわけではない。原初の精霊以外の精霊は皆、原初の精霊の手によって造られたのだからな」
そのあたりが精霊と人間や魂霊との意識の違いなのかもしれない。
「……それで精霊から不平や不満が出ることはないのだろうか? ドナートではないがこちらも民主主義には全身どっぷり浸かっているから気になる」
今度はフランシスだ。予想通り彼もこうしたところには敏感だ。
「精霊たちは争いごとが苦手だ。それが影響しているのだろう。ただ、不平不満を溜め込めば『揺らぎ』につながる。これは精霊の手で解消することができる『揺らぎ』ではあるが……」
「念のため確認させてもらうが、その手の不平不満による『揺らぎ』の解消のため俺たちのような移住者を集めている、ということはないよな?」
ガネーシャの言葉を途中で遮って、ドナートが静かだが凄みのある声で問いかけた。
「……我ら精霊が生き物を造った動機は不純と言われても仕方ない。だが移住者はあくまで精霊が『揺らぎ』や溢壊の苦しみを味わうことなく幸せに暮らすために募っているもの。精霊のエゴと言われればその通りだが」
一触即発、とまではいかないが重苦しい空気が室内を覆いつくした。
「……フランシスはどう判断する?」
ドナートがフランシスに声をかけた。
「口では何とでも言える。これからの行動を見て判断するのがいいのではないか?」
フランシスは淡々と答えたが、その目は真剣だ。
「……そうだな。精霊界のやり方は尊重するが、長老たちが他の精霊に不満を持たせるようなことをやったら、そのときは黙っていない。そういう魂霊がいるということを肝に銘じてくれ」
ドナートの言葉にガネーシャはうなずいて
「……勿論だ。原初の精霊は多くの精霊を造っている。精霊たちを不幸にしたくないという気持ちは魂霊に劣るものではない」
と答えた。
重苦しい空気を引きずったまま、精霊界のルールに関する講義が終わった。
これで研修は終了だ。
精霊界のルールの決め方については、ドナートやフランシスの考え方にも一理あると思う。
ただ、彼らの考え方が精霊に合っているのかは疑問だ。
今後、精霊界のルールどのように変わるのか、または変わらないのかはわからない。
少なくとも私は、契約しているパートナーたちが不幸にならない道となることを祈るばかりだ。
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