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第六章
ウチのルール
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ユーリ、オリヴィアの二人をパートナーとして家に迎えてから一週間が過ぎた。
「ケルークス」ではスタッフと相談員仲間、そして常連客などから盛大に祝ってもらった。
長年「ケルークス」を支えていたユーリが私とオリヴィアいうパートナーを得たことで、「ケルークス」の今後が気になる常連客もいた。
結論から言うと、「ケルークス」の店長は引き続きユーリが務めることになった。
店に出る時間はかなり減ってしまうが、それは勘弁してもらった。
というよりも今までの「ケルークス」はブラック企業さながらの勤務体系だったからだ。
五名、正確には三体 (精霊:ブリス、クアン、ピア)プラス二名 (魂霊:ユーリ、シンさん、ってシンさんだけは「さん」をつけた方がしっくりくる)で、二四時間三六五日ほぼ無休で店を回していた。
相談所本体もそれに近いのだが、こちらは所長と副所長だけが長時間勤務している状況だからなぁ……
これを機に「ケルークス」の営業時間と勤務体系の見直しが行われた。
営業時間については、週に一日だがニニ時から翌七時まで不定休が入ることになった。
また、従業員も増員された。五体募集のところ、現在までに三体が決まっている。
最初は家事を司る火の精霊シルキーのオンディ。
彼女は相談所の掃除に来てくれているので、ある程度「ケルークス」のことを知っている。馴染むまで時間はかからないだろう。
次に相談所近くの湧き水を司っているニンフのリオ。
カーリンやリーゼと同じ種族で、背格好も似たりよったりだ。こちらは水色のストレートの髪をベリーショートにしている。
三体目は光の精霊ポルターガイストのルイジ。
色々な意味で大丈夫か? と思われそうだが、ユーリやアイリスは結構頼りにしている。
外見は黒髪で大人しい少年、といった感じ。男性型だが線は細めだ。
ポルターガイストというと部屋の中を滅茶苦茶に散らかすイメージがあるけど、あれは「揺らい」だり「溢壊」した者による影響なのだ。
本来は整理整頓を司る精霊で、厨房の片付けがはかどると高評価を得ている。
残りの二枠が空いているが、これが埋まればユーリは週四日の九~一〇時間勤務くらいになるのだそうだ。
これでも精霊界ではかなりのハードワーカーに該当するのが気になるが、ユーリの希望でもあるのでしばらく様子を見ることにした。
「アーベルさま。そろそろスケジュール表も作り替えないと、です」
全員が集まったリビングでリーゼが壁に掲げたボードを指差した。
「そうだったな。ユーリとオリヴィアが来たのだから直さないと……」
リーゼが「スケジュール表」と呼んだボードは、今夜誰が私の寝室に来るかを示すためのものだ。
今のものにはユーリとオリヴィアの名前がないので、これらを追加する必要がある。
ちなみにユーリとオリヴィアが来てからはずっと「全員」のところにマーカーが置かれたままになっている。
「ユーリ、オリヴィア。『全員』じゃない日は二階の小さい寝室だから間違えないようにね」
「はーい」「わ、わかった」
カーリンがユーリとオリヴィアにルールを説明する。
そういえばユーリとオリヴィアは小さい方の寝室に来たことがなかったな。
「順番はカーリン、リーゼ、私、ニーナ、ユーリ、オリヴィア、全員か……これだと同じ曜日に行くことになるわね。ルールを変えた方が良くない?」
「メラニー、毎週順番を決めなおしましょう。曜日が固定になるとユーリが『ケルークス』で仕事がしにくくなります」
メラニーとニーナがローテーションの順番について話をしている。
精霊は人間ほど曜日を意識していないけど「ケルークス」は曜日や時間帯によって客の入りに差がある。
「ケルークス」のシフトも客の入りの差を考慮して組まれるだろうから、曜日が固定されるローテーションはユーリにとって都合が悪そうだ。
全員による話し合いの結果、毎週日曜にその週のローテーションをサイコロで決めるということに落ち着いた。
そのため、スケジュール表もそれぞれの名前を書いたプレートを貼り付けるタイプに改造することになった。
今日は日曜なのでローテーションを決めることになる。
最初にジャンケンでサイコロを振る順番を決める。競争や勝負事が嫌いな精霊でもこのくらいは大丈夫らしい。
順番に八面体のサイコロを振っていき、それぞれの曜日を決める。同じ目が出た場合は、後で振った方が振りなおすのだ。
「今夜はまた全員になっちゃいましたね。ユーリやオリヴィアにうちのやり方に慣れてもらうことにしましょう」
カーリンがボードに名札とマーカーを貼り付けていく。
今週の順番は全員→リーゼ→ユーリ→オリヴィア→メラニー→カーリン→ニーナとなった。
「そうだ! 部屋の準備もできたのよね? オリヴィアとユーリを案内しないと!」
メラニーががばっと立ち上がった。
ニーナの作業場とした部屋をユーリが、来客用の寝室とした部屋をオリヴィアがそれぞれ寝室として使うことになる。
どちらもあまり使われた形跡もないから用途変更にも支障はないようだ。というより、もともとそのつもりだったのだろう。
リーゼの作業場の扱いが気になるが……今日のところは気にしないことにする。
「まだ夜まで時間があるから、私は木の様子を見に行ってくるね」
「私とリーゼは泉の中を見てきます」
「わたくしは二階のシャワーのお掃除を」
ローテーションが決まってスケジュール表が完成すると、次々にパートナーたちがリビングから出ていった。
理由は解っている。新しくパートナーとなったユーリ、オリヴィアと私だけの状態にするためだ。
今のうちに、私に聞きたいことを聞いて言いたいことを言っておいてという気遣いである。
恐らく事前にメラニーかカーリンあたりがユーリとオリヴィアには説明しているはずだ。
「え、えっと……」
「ユーリ、自分の番が回ってきたときのことを相談したら?」
尻込みしているユーリをオリヴィアが後ろから押すようにして私の方に向かわせる。
「オリヴィア、聞きたいこととか言いたいことがあったら先に言ってくれないか?」
私がオリヴィアにそう頼んだのは、恐らく彼女は答えを持っているだろうと思ったからだ。
オリヴィアが先に話してくれた方がユーリが話しやすいとも考えた。オリヴィアは精霊でユーリはもと人間の魂霊だから、価値観も微妙に異なる。
「えっ? ワタシ?」
「うん、オリヴィアから先に話してもらおうかな」
「いいけど……ワタシの順番のとき、ユーリと一緒に行っていいかな? カーリンとリーゼから一緒に行くことがあるって聞いているけど」
オリヴィアがあっけらかんと尋ねてきた。
「ああ、一緒に行くメンバー同士で話がついていれば問題ないよ」
「ちょ、ちょっとオリヴィア! アーベルもっ!」
ユーリが慌てて止めに入ってきた。
「ってユーリだってコレットに根掘り葉掘り聞いていたじゃないの。どうして欲しいかちゃんと言わないと」
「オリヴィア、アーベルの前でそれはっ!」
オリヴィアと止めようとユーリが必死になるが、オリヴィアは止まらない。
見事なまでに精霊ともと人間の感覚の違いが明らかになった場面だ。
オリヴィアはユーリをからかっているのではない。
そもそも精霊は人間でいうところの夜の生活について、隠すべきという感覚を持っていない。
彼女たちにとってはコミュニケーションの一形態であり、その中でも一番必要性が高いもの、といった感じなのだと思う。
精霊は魔術で生み出されるものだから生殖の概念がないのだよなぁ……
「オリヴィアは他に要望とか質問とかあるかい? 先に聞いておきたいけど」
「うーん、他は別にいいかな。カーリンやリーゼの話を聞いている限りワタシには合いそうだし、何回か順番が来ればワタシに合うやり方がわかると思うんだよね、うんうん」
オリヴィアは一人で納得してうなずいている。逆に勝手に期待しているのではないかと心配になってくるが……
「あ、ユーリが嫌がることはしたくないから、嫌なら無理に寝室に来る必要は……」
何度も言うがユーリはもと人間の魂霊だから、どうも勝手が違う。
「あー、アーベルっ! それは絶対に嫌っ!」
私が無理に他のパートナーたちに合わせなくてもいいと言おうとしたら、ユーリがものすごい剣幕で拒否してきた。
「そ、そうか……」
私が何と声をかけようか迷っていると、ユーリが「耳を貸して」と私のところにそーっと近づいてきた。
「あ、あのね……私、人間時代に経験が……なかったの……今も、だけど……」
ユーリが私の耳元でそう告げてきた。
彼女が挙動不審なのはそういうことかと理解した。別に問題があることではないのだが、彼女の場合はまだ人間の感覚が多めに残っているのだろう。
私はどうも感覚が精霊寄りにだいぶ傾いているようで、冷静にユーリの話を聞くことができている。
「気にしないでいい。ここではそんなことは問題にならないから」
「う、うん……でも……私だって、カーリンとかリーゼとかみたいにアーベルにして欲しいっ! アーベルに満足してもらえるか……自信ないけど……」
「……わかった。希望に沿えるようにしてみる」
人間の感覚がまだ多く残っている状態で、私にこれを伝えるのは勇気のいることだと思う。
私こそユーリの希望に沿えるかわからないが、何とかしたいところだ。
「うーん、そんなに頑張ることかなぁ?」
ユーリが肩で息をしているのを見たオリヴィアが不思議そうな顔をしている。
魂霊も呼吸は不要だから本来肩で息をすることはあり得ないのだが、恐らく精神的なものだろう。
「アーベル、終わったから戻ってきたよ。お茶にしない?」
ちょうどいいタイミングというより入ってくるタイミングを見計らっていたのだろう。メラニーがリビングに戻ってきた。
それが合図だったのか、カーリンとリーゼ、ニーナまでもが続々とリビングに戻ってきた。
「アーベルさん、お茶、いや今日はグラネトエールにしましょう。マナのストックもありますから準備しちゃいますね」
カーリンがキッチンの方へと向かう。
「では、私はグラネトエールの樽を持ってこよう」
カーリンに合わせて私は地下の倉庫に向かった。
「アーベル、ユーリのことは任せて」
リビングを出たところでメラニーが私にそっと耳打ちしてきた。
私に話しにくいことでも、メラニー相手ならユーリにも話しやすいだろう。
オリヴィアは平気そうだが、ユーリにも徐々にでよいのでこの家に慣れてもらいたい。
せっかく縁あって契約を結ばせてもらったのだから。
「ケルークス」ではスタッフと相談員仲間、そして常連客などから盛大に祝ってもらった。
長年「ケルークス」を支えていたユーリが私とオリヴィアいうパートナーを得たことで、「ケルークス」の今後が気になる常連客もいた。
結論から言うと、「ケルークス」の店長は引き続きユーリが務めることになった。
店に出る時間はかなり減ってしまうが、それは勘弁してもらった。
というよりも今までの「ケルークス」はブラック企業さながらの勤務体系だったからだ。
五名、正確には三体 (精霊:ブリス、クアン、ピア)プラス二名 (魂霊:ユーリ、シンさん、ってシンさんだけは「さん」をつけた方がしっくりくる)で、二四時間三六五日ほぼ無休で店を回していた。
相談所本体もそれに近いのだが、こちらは所長と副所長だけが長時間勤務している状況だからなぁ……
これを機に「ケルークス」の営業時間と勤務体系の見直しが行われた。
営業時間については、週に一日だがニニ時から翌七時まで不定休が入ることになった。
また、従業員も増員された。五体募集のところ、現在までに三体が決まっている。
最初は家事を司る火の精霊シルキーのオンディ。
彼女は相談所の掃除に来てくれているので、ある程度「ケルークス」のことを知っている。馴染むまで時間はかからないだろう。
次に相談所近くの湧き水を司っているニンフのリオ。
カーリンやリーゼと同じ種族で、背格好も似たりよったりだ。こちらは水色のストレートの髪をベリーショートにしている。
三体目は光の精霊ポルターガイストのルイジ。
色々な意味で大丈夫か? と思われそうだが、ユーリやアイリスは結構頼りにしている。
外見は黒髪で大人しい少年、といった感じ。男性型だが線は細めだ。
ポルターガイストというと部屋の中を滅茶苦茶に散らかすイメージがあるけど、あれは「揺らい」だり「溢壊」した者による影響なのだ。
本来は整理整頓を司る精霊で、厨房の片付けがはかどると高評価を得ている。
残りの二枠が空いているが、これが埋まればユーリは週四日の九~一〇時間勤務くらいになるのだそうだ。
これでも精霊界ではかなりのハードワーカーに該当するのが気になるが、ユーリの希望でもあるのでしばらく様子を見ることにした。
「アーベルさま。そろそろスケジュール表も作り替えないと、です」
全員が集まったリビングでリーゼが壁に掲げたボードを指差した。
「そうだったな。ユーリとオリヴィアが来たのだから直さないと……」
リーゼが「スケジュール表」と呼んだボードは、今夜誰が私の寝室に来るかを示すためのものだ。
今のものにはユーリとオリヴィアの名前がないので、これらを追加する必要がある。
ちなみにユーリとオリヴィアが来てからはずっと「全員」のところにマーカーが置かれたままになっている。
「ユーリ、オリヴィア。『全員』じゃない日は二階の小さい寝室だから間違えないようにね」
「はーい」「わ、わかった」
カーリンがユーリとオリヴィアにルールを説明する。
そういえばユーリとオリヴィアは小さい方の寝室に来たことがなかったな。
「順番はカーリン、リーゼ、私、ニーナ、ユーリ、オリヴィア、全員か……これだと同じ曜日に行くことになるわね。ルールを変えた方が良くない?」
「メラニー、毎週順番を決めなおしましょう。曜日が固定になるとユーリが『ケルークス』で仕事がしにくくなります」
メラニーとニーナがローテーションの順番について話をしている。
精霊は人間ほど曜日を意識していないけど「ケルークス」は曜日や時間帯によって客の入りに差がある。
「ケルークス」のシフトも客の入りの差を考慮して組まれるだろうから、曜日が固定されるローテーションはユーリにとって都合が悪そうだ。
全員による話し合いの結果、毎週日曜にその週のローテーションをサイコロで決めるということに落ち着いた。
そのため、スケジュール表もそれぞれの名前を書いたプレートを貼り付けるタイプに改造することになった。
今日は日曜なのでローテーションを決めることになる。
最初にジャンケンでサイコロを振る順番を決める。競争や勝負事が嫌いな精霊でもこのくらいは大丈夫らしい。
順番に八面体のサイコロを振っていき、それぞれの曜日を決める。同じ目が出た場合は、後で振った方が振りなおすのだ。
「今夜はまた全員になっちゃいましたね。ユーリやオリヴィアにうちのやり方に慣れてもらうことにしましょう」
カーリンがボードに名札とマーカーを貼り付けていく。
今週の順番は全員→リーゼ→ユーリ→オリヴィア→メラニー→カーリン→ニーナとなった。
「そうだ! 部屋の準備もできたのよね? オリヴィアとユーリを案内しないと!」
メラニーががばっと立ち上がった。
ニーナの作業場とした部屋をユーリが、来客用の寝室とした部屋をオリヴィアがそれぞれ寝室として使うことになる。
どちらもあまり使われた形跡もないから用途変更にも支障はないようだ。というより、もともとそのつもりだったのだろう。
リーゼの作業場の扱いが気になるが……今日のところは気にしないことにする。
「まだ夜まで時間があるから、私は木の様子を見に行ってくるね」
「私とリーゼは泉の中を見てきます」
「わたくしは二階のシャワーのお掃除を」
ローテーションが決まってスケジュール表が完成すると、次々にパートナーたちがリビングから出ていった。
理由は解っている。新しくパートナーとなったユーリ、オリヴィアと私だけの状態にするためだ。
今のうちに、私に聞きたいことを聞いて言いたいことを言っておいてという気遣いである。
恐らく事前にメラニーかカーリンあたりがユーリとオリヴィアには説明しているはずだ。
「え、えっと……」
「ユーリ、自分の番が回ってきたときのことを相談したら?」
尻込みしているユーリをオリヴィアが後ろから押すようにして私の方に向かわせる。
「オリヴィア、聞きたいこととか言いたいことがあったら先に言ってくれないか?」
私がオリヴィアにそう頼んだのは、恐らく彼女は答えを持っているだろうと思ったからだ。
オリヴィアが先に話してくれた方がユーリが話しやすいとも考えた。オリヴィアは精霊でユーリはもと人間の魂霊だから、価値観も微妙に異なる。
「えっ? ワタシ?」
「うん、オリヴィアから先に話してもらおうかな」
「いいけど……ワタシの順番のとき、ユーリと一緒に行っていいかな? カーリンとリーゼから一緒に行くことがあるって聞いているけど」
オリヴィアがあっけらかんと尋ねてきた。
「ああ、一緒に行くメンバー同士で話がついていれば問題ないよ」
「ちょ、ちょっとオリヴィア! アーベルもっ!」
ユーリが慌てて止めに入ってきた。
「ってユーリだってコレットに根掘り葉掘り聞いていたじゃないの。どうして欲しいかちゃんと言わないと」
「オリヴィア、アーベルの前でそれはっ!」
オリヴィアと止めようとユーリが必死になるが、オリヴィアは止まらない。
見事なまでに精霊ともと人間の感覚の違いが明らかになった場面だ。
オリヴィアはユーリをからかっているのではない。
そもそも精霊は人間でいうところの夜の生活について、隠すべきという感覚を持っていない。
彼女たちにとってはコミュニケーションの一形態であり、その中でも一番必要性が高いもの、といった感じなのだと思う。
精霊は魔術で生み出されるものだから生殖の概念がないのだよなぁ……
「オリヴィアは他に要望とか質問とかあるかい? 先に聞いておきたいけど」
「うーん、他は別にいいかな。カーリンやリーゼの話を聞いている限りワタシには合いそうだし、何回か順番が来ればワタシに合うやり方がわかると思うんだよね、うんうん」
オリヴィアは一人で納得してうなずいている。逆に勝手に期待しているのではないかと心配になってくるが……
「あ、ユーリが嫌がることはしたくないから、嫌なら無理に寝室に来る必要は……」
何度も言うがユーリはもと人間の魂霊だから、どうも勝手が違う。
「あー、アーベルっ! それは絶対に嫌っ!」
私が無理に他のパートナーたちに合わせなくてもいいと言おうとしたら、ユーリがものすごい剣幕で拒否してきた。
「そ、そうか……」
私が何と声をかけようか迷っていると、ユーリが「耳を貸して」と私のところにそーっと近づいてきた。
「あ、あのね……私、人間時代に経験が……なかったの……今も、だけど……」
ユーリが私の耳元でそう告げてきた。
彼女が挙動不審なのはそういうことかと理解した。別に問題があることではないのだが、彼女の場合はまだ人間の感覚が多めに残っているのだろう。
私はどうも感覚が精霊寄りにだいぶ傾いているようで、冷静にユーリの話を聞くことができている。
「気にしないでいい。ここではそんなことは問題にならないから」
「う、うん……でも……私だって、カーリンとかリーゼとかみたいにアーベルにして欲しいっ! アーベルに満足してもらえるか……自信ないけど……」
「……わかった。希望に沿えるようにしてみる」
人間の感覚がまだ多く残っている状態で、私にこれを伝えるのは勇気のいることだと思う。
私こそユーリの希望に沿えるかわからないが、何とかしたいところだ。
「うーん、そんなに頑張ることかなぁ?」
ユーリが肩で息をしているのを見たオリヴィアが不思議そうな顔をしている。
魂霊も呼吸は不要だから本来肩で息をすることはあり得ないのだが、恐らく精神的なものだろう。
「アーベル、終わったから戻ってきたよ。お茶にしない?」
ちょうどいいタイミングというより入ってくるタイミングを見計らっていたのだろう。メラニーがリビングに戻ってきた。
それが合図だったのか、カーリンとリーゼ、ニーナまでもが続々とリビングに戻ってきた。
「アーベルさん、お茶、いや今日はグラネトエールにしましょう。マナのストックもありますから準備しちゃいますね」
カーリンがキッチンの方へと向かう。
「では、私はグラネトエールの樽を持ってこよう」
カーリンに合わせて私は地下の倉庫に向かった。
「アーベル、ユーリのことは任せて」
リビングを出たところでメラニーが私にそっと耳打ちしてきた。
私に話しにくいことでも、メラニー相手ならユーリにも話しやすいだろう。
オリヴィアは平気そうだが、ユーリにも徐々にでよいのでこの家に慣れてもらいたい。
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【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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